密室と奇蹟 (J・D・カー生誕百周年記念アンソロジー) (創元推理文庫)

  • 東京創元社
3.33
  • (0)
  • (3)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 94
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488400613

作品紹介・あらすじ

1906年11月30日、アメリカ合衆国ペンシルヴァニア州に生まれ、アガサ・クリスティ、エラリー・クイーンらとともに本格黄金期を代表する作家として並び称されるJ・D・カー(カーター・ディクスン)。現在でも広く愛される不可能犯罪の巨匠の生誕100年を祝して刊行されたアンソロジーが、デビュー長編『夜歩く』発表より90年にあたる2020年に文庫にて復活。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2006年11月東京創元社刊から柄刀一:ジョン・D・カーの最終定理を除き、2020年8月創元推理文庫化。芦辺拓:ジョン・ディクスン・カー氏、 ギデオン・フェル博士に会う、桜庭一樹:少年バンコラン!夜歩く犬、田中啓文:忠臣蔵の密室、加賀美雅之:鉄路に消えた断頭吏、小林泰三:ロイス役し、鳥飼否宇:幽霊トンネルの怪、二階堂藜人:亡霊館の殺人、の7つの短編。芦辺、桜庭、加賀美、二階堂のパスティーシュが面白かった。

  • 赤穂に親戚がいるので、忠臣蔵には馴染みがある。
    赤穂城跡にも行った。神社にも参った。
    案内してくれた伯父は、同じ姓の浪士の一人を指して言った。
    「うちの先祖じゃ」
    「ええ、すごーーい!」
    幼い私は目を輝かせたものである。
    見つめる先には得意げな伯父がいて、そのうしろに立つ伯母はしかし、顔をしかめて大きく手を振っていた。
    「嘘、ウソじゃが!」
    「えーー?!」

    話上手、もてなし上手の伯父の、これはネタの一つだったらしい。
    「まあた、そげえな嘘を」
    「そう言うといたら、本当になるんじゃ」
    伯母がぶつくさ言うのもかまわず、伯父は笑っている。

    そんな縁戚の祖先(ということになっている)浪士が、なかなかに活躍しているので、私はこの話を機嫌よく読んでいた。

    『忠臣蔵の密室』

    ちょっと待って。これ、カーがテーマでしょう?
    ジョン・ディクスン・カー生誕百周年記念アンソロジーでしょう?
    それがなぜ忠臣蔵なの?

    おっしゃるとおり。

    題名どおり、密室ミステリーである。私は面白く読んだ。
    構成に唸った。トリックに頷いた。そして、思った。
    カーをテーマにして、なぜ忠臣蔵なのか。
    その謎が説かれた時、私は本を投げ出した。

    「なんだこりゃー!」

    ジョン・ディクスン・カー、あるいはカーター・ディクスン(1906-1977)は、言わずと知れたミステリ界の偉人である。
    彼についてよく知らないからと、読むのをためらう人もいるだろう。
    しかし、心配は御無用。
    簡単にして明瞭この上ない紹介文が、巻頭に書かれている。
    「なるほど、密室の巨匠なのか」くらいを押さえれば充分だ。
    付け加えるならば、彼の書いた代表的な探偵として、
    アンリ・バンコラン
    ギデオン・フェル博士
    ヘンリー・メルヴェール卿(H.M卿)
    この名前を知っておいたほうがさらによいかと思う。

    掲載作品は以下のとおり。

    『ジョン・ディクスン・カー氏、ギデオン・フェル博士に会う』 芦辺拓
    『少年バンコラン! 夜歩く犬』 桜庭一樹
    『忠臣蔵の密室』 田中啓文
    『鉄路に消えた断頭吏』 加賀美雅之
    『ロイス殺し』 小林泰三
    『幽霊トンネルの怪』 鳥飼否宇
    『亡霊館の殺人』 二階堂黎人

    どれも力作である。
    カーをテーマにして、これという作家たちが、趣向を懲らし、力を入れ、本気で遊び、楽しむ様が、どの作品からもうかがえる。
    トリックに悩み、物語を楽しむ、まさに甲乙つけがたい名作揃いなのだ。

    しかし、私の頭は、この忠臣蔵に、すっかりもっていかれてしまった。
    「なんだこりゃー!」と本を投げ出して、そして、ひっくり返ってゲラゲラ笑いつづけたのだ。

    どうしたらそうなるかって?

    読めばわかる。



  •  トリビュート、と云ってもいろいろ。
     熱心なファン諸賢のレビューとか読んでみたいですね。


     小林泰三や二階堂黎人の筆致はさすが。翻訳モノ感や良い意味での泥臭さもあって、正統派のトリビュート、という感じ。
     桜庭一樹のバンコランが個人的にはいちばんのお気に入りで、冒険小説感もあって楽しく読めました。バンコランシリーズ最初から読んでみようかな…まとまって読めるのあるのかしら。
     『少年バンコラン! 夜歩く犬』なんてタイトルしびれである。


     話に上らないからって面白くないわけじゃないんだよ…? なんとなくまとめかたとかリスペクト具合(?)がいまいちぱっとしないな、というだけで…
     『忠臣蔵の密室』、なんてモチーフ的にも手法的にも結構好み。ただちょっと最後が蛇足感…これもそういうものなの?

     そんなわけで総合☆3.2くらい。

  • ジョン・ディクスン・カーのパスティーシュミステリアンソロジー。カーの作品を読んでいなくても楽しめそうですが、読んでいればさらに楽しいであろうことは請け合いの一冊です。
    お気に入りは小林泰三「ロイス殺し」。これ、「完全・犯罪」に入っているのならたしか読んだことがあるはず……なのですが。おそらくその時は意味がわからなかったと思うのです。そっか、「火刑法廷」だったのかー! 当時はまだ読んでいなかったので分からなかった。けれど、逆に今は「火刑法廷」の細部をしっかりと覚えていないので、もう一回読みなおしたい気がします(苦笑)。
    田中啓文「忠臣蔵の密室」も面白かった。ばりばりの密室ミステリではあるけれど、カーではない……と思ったら。エピローグ2で抱腹絶倒。よくぞここまで見事なオチがつきました!

  • ちょっと無理してこじつけている話あり。
    話としては日本を舞台にしている2作品が良かったかな。

全5件中 1 - 5件を表示

著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

芦辺拓の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
米澤 穂信
アンソニー・ホロ...
今村 昌弘
米澤 穂信
今村 昌弘
今村 昌弘
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×