D坂の殺人事件 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488401023

作品紹介・あらすじ

純日本的な家屋における密室状況下の殺人事件を、心理的盲点を衝いて見事に解決してみせるのが、後にわが国を代表する名探偵といわれるようになった明智小五郎である。本書には、その「D坂の殺人事件」をはじめ、大乱歩の短編における傑作を集大成した。「赤い部屋」「白昼夢」「毒草」「火星の運河」「お勢登場」「虫」「石榴」等全10編を収録した。

感想・レビュー・書評

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  • 怖いのグロいのは苦手なんだけど、江戸川乱歩については、醜悪なものを醜悪に書くんではなく、時に美しく見えてしまったり、それが醜悪さ以外の謎や妙な感慨を生むことを書いていて、だからかもしれないけど読める。すごいなー。いくつか名作選と被っていたので既読だった。

  • 以前読んだ創元推理文庫の江戸川乱歩集よりは、物足りない作品が多かったが、やはり乱歩の世界観に魅せられる。
    甘美でありながらも悍ましい。この世界観こそが乱歩の醍醐味なのだろう。

    個人的ベストは『赤い部屋』。
    いくつも登場するトリック個々も面白いが、100人目として自分を殺すと思わせ、銃で撃たれてから、全てが嘘だと判明する。
    その展開自体も秀逸だが、電気がつき、赤い部屋に渦巻いていたミステリアスで幻想的な空気が一掃されるラストが印象的。

  • 短編集で、探偵小説というよりはホラー要素が強い。

    ネタバレ注意。









    「二廃人」
    井原という夢遊病者の下宿で殺人事件が起こり、犯人が井原であるとされたが、その後もしかしたら井原が夢遊病者であると指摘した木村だったのではないかという話になる。
    それを指摘したのは、井原の前に現れた斎藤という木村に良く似た男だった。

    ーー夢遊病者というものが当時はこういった認識なのか、という感想。斎藤が木村ならば何故井原の前に現れたのか、己が陥れた男の境遇がさすがに気になったから?
    なんとなく不完全燃焼。短編だから仕方ないか。


    「D坂の殺人事件」
    明智小五郎初登場の話。
    本屋の女が殺されていた。「私」は状況から明智が犯人ではないかと意気込むが、明智の鮮やかな推理がそれを否定する。案の定、明智の推理通り不義の相手が犯人だった。

    ーー短編だからというのもあるだろうが、全体的に駆け足。


    「赤い部屋」
    赤い部屋には刺激を求める男達が集まる。
    ある日始まったのは、99の人を殺してきたという男の告白だった。何れも罪に問われない方法での殺人である。
    そして、男は100人目を思わぬ方法で殺したいという。殺す相手、それは男自身だーー。

    ーー男の話が本当かどうかも分からない。光の元では全てがその真実の姿を現し、暗がりの中では不可思議にも独特な気配を纏うのだなと思った。結構乱歩らしさが前面に出てるかな? 人の心理を描いていると思う。しかも、ここに描かれた心理は現代にも通用するものだ。


    「白昼夢」
    往来で妻を殺したという男の話を誰もが冗談だと笑って聞く。だが、「私」が男のいう通りショーウィンドウを見ると……。

    ーーぞっとした。あまりにも荒唐無稽に聞こえる事はたとえ事実であっても本当だと受け入れられないのだなぁ。


    「毒草」
    「私」が堕胎できる草の話をした途端、その村では次々と子供が流れた。

    ーー昔の世相をよくうつしている。


    「火星の運河」
    己の体を傷付けて血だらけになりながら、森の外の沼で踊り狂う夢を見た男が、妻に起こされる。

    ーーごめん、ふぅんとしかいいようがなかった。


    「お勢登場」
    子供と隠れん坊をしている病持ちの旦那が隠れた箱に閉じ込められたのをいい事に、浮気していた妻が夫を見殺しにする話。

    ーー奥さんに天誅が下ればいいと思いました。


    「虫」
    厭人癖のある柾木愛造が、初恋の相手で再会した後自分を振った木下芙蓉を殺害し、自宅で防腐処理を施そうとしたり、木乃伊にしようとするが、最終的に本人も死にそこを警察に発見されるという話。

    ーーこの本の中で一番怖かったし、印象的だった。生来の犯罪者気質の人物を描き切る筆力は流石だと思う。虫とは死斑のこと。死斑がここまでおどろおどろしく描かれているのをはじめ見た。


    「柘榴」
    「私」は猪俣という紳士に請われ、とある廃屋で硫酸を飲まされ顔に掛けられ死亡した男の話をし始める。当時死んだとされていた男ではなく、その犯人と思われていた人物が殺害されていたのではないか。そう自分の推理を話した「私」に、猪俣氏は真実を話し始める。

    ーー裏の裏は表、みたいな話。正直先は読めたが、動機が唐突な感は否めない。


    「防空壕」
    戦時中に出会った若い美人を探し求める男。だが、その美人は……。

    ーー普通な感じ。面白いのは面白かったけど、あっさりしてて物足りなかった。

  • 大正時代の『新青年』掲載作を中心とする短編集。
    愛から憎しみが生まれ、殺意に変じるところまでは、
    一応、常人の理解の範疇だろうけど、
    その後一体何やってんのっ!?――な「白昼夢」「虫」が
    凄まじい。
    乱歩作品の中では、やはり、
    この辺の「どうかしてる」系短編(笑)が好き。

  • 名作短編だらけの一冊でした。

    ・二廢人
    →夢遊病の人と犯罪の話
    ・D坂の殺人事件
    →明智小五郎が出てくるミステリ
    ・赤い部屋
    →赤い部屋で暴露される犯罪にならない犯罪
    ・白昼夢
    →よくわからなかった笑
    ・毒草
    →妊婦の話
    ・火星の運河
    →これもよくわからない
    ・お勢登場
    →乱歩さん得意の女の悪心を描く作品
    ・虫
    →想い人を自分のモノにする話
    ・石榴
    →裏の裏の裏…ミステリ
    ・防空壕
    →空襲の女と男の事情話

    D坂と赤い部屋が面白かった、
    あとは結構人間の棘々系…。
    石榴も面白いけどややこしい、その割シンプル笑

  • 乱歩の短編集を読んだ
    柘榴 だけはおもしろかった

    ◆ D坂の殺人事件 大正14年4月1日号
    SM殺人事件だ
    当時はサドとかマゾとかいう言葉も斬新だったのだろう

    ◆ 柘榴 昭和9年9月号
    良い探偵小説だと思う
    探偵といっても警察官だ
    顔を柘榴のように割られたしたいを、画家志望の若者が熱心に写生しているところから話が始まる
    猟奇的な狂気の演出が恐怖感をそそる
    探偵が犯人を指紋から特定して、この不審な殺人事件を解決したと思いきや、話し相手になっていた男が、更に深い真相究明をしてみせる
    その男が実は真犯人だったのだ

    ◆ 防空壕
    昭和30年7月号 単純におもしろいが、東京空襲という悲惨な現実の中で、このような小説をよく書いたものだと思う

    その他の短編もそれぞれのおもしろさはある
    二廃人
    赤い部屋
    白昼夢
    毒草
    火星の運河
    お勢登場

  • 恐ろしい結末が予測できてしまうところがこわい…
    この人の文章にはおぞましい情景をリアルに想像させる不思議な力があると思う
    寝る前に読まない方がいいですね…奇怪な登場人物が夢に出てきそう

  • 初めての江戸川乱歩明智小五郎初登場作品1925年T14年。19世紀推理、ゴシック小説家で詩人エドガーアランポーよりペンネーム。東京D坂古本屋内で人妻が殺害されるが人の出入りはなかった。ボサボサの書生風明智小五郎が密室謎解きに挑む。謎解きと倒錯した本作はこの時代には驚きだったのかもです。

  • *読んでからレビューを書くまで時間が経っているためあやふやな部分があります。

    書かれた時代が現代ではなく何十年も前のことなので、
    トリックや物語は古臭く感じるところもあるが、
    人間描写が素晴らしく、各短編集を読み終わるごとに背筋が寒くなるのを感じた。

  • 短編10篇が収められています。少々背景が古いですが、心理描写が細かくて、面白いです。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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