乱れからくり (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 1-2)

著者 :
  • 東京創元社
3.65
  • (43)
  • (93)
  • (97)
  • (14)
  • (2)
本棚登録 : 841
感想 : 84
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488402129

作品紹介・あらすじ

玩具会社の部長馬割朋浩は降ってきた隕石に当たり命を落としてしまう。その葬儀も終わらぬうちに彼の幼児が誤って睡眠薬を飲んで死亡する。さらに死に神に魅入られたように馬割家の人々に連続する不可解な死。一族の秘められた謎と、ねじ屋敷と呼ばれる同家の庭に造られた巨大迷路に隠された秘密を巡って、男まさりの女流探偵と新米助手の捜査が始まる。日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 泡坂作品は『しあわせの書』『生者と死者』などの変わった仕掛けがある本ぐらいしか読んでいなかったが、本書は予想に反して意外と正統派な本格。

    からくり三昧といったところではあるが、殺害トリックに関してはなかなか現実味があるトリックを使っており、読者が理解できないような仕掛けはほとんど使っていないのは好印象。
    透一に睡眠薬を飲ませるトリック、鉄馬の毒殺のトリックなどは非常に面白い。
    "カレイド"もそうだが、特に"電池がない"のダブルミーニングにはやられた。
    だが少し犯人を朋治に断定する根拠は弱いように感じる。

    からくり人形の歴史、仕掛けなどが長々と説明されるところはややうんざりしたが、ハマれる人はハマれるだろう。
    不満点はあるが、なかなか面白い作品。

  • 主人公は、交通違反を取り締まっていた最中の出来事がきっかけで、収賄疑惑をかけられ、首にされた警察官です。その濡れ衣を晴らす為、原因となった交通違反者を執念で探し出すが、その追跡中に隕石が落下してきて目の前でその人物が死んでしまう…。身元を頼りにその人物の家に乗り込むと、そこで殺人事件が起きる、という前代未聞の始まりです。
    泡坂さんの作品は、とにかく文章が達人技で素晴らしいです。推理小説家として日本推理作家協会賞を、小説家として直木賞をとり、手品師としては自らの本名を冠した厚川昌男賞が存在し、紋章上絵師という江戸時代から続く職人でもあるという、多芸多才な方です。その多芸多才ぶりが、小説というエンターテイメントのなかに最も馴染んでいるのが『乱れからくり』という作品だと思います。
    知己溢れる仕掛けあり、江戸時代から延々と続く玩具屋という歴史も絡めてあり、時代的にも空間的にも広がりのある極めて贅沢なミステリーだと思います。この様なミステリーはなかなか無いと思います。

  • 久しぶりの連続殺人事件もの推理小説。米粒写経さんのYouTubeで紹介されたのがきっかけです。小説の中で古今東西のからくりにまつわる著者の知識を登場人物がうんちくで語るシーンが何とも言えない。謎解きは関係者の心情がトリックと緻密に相まっていて居島さんの推薦とおりでした。他の作品も非常に興味有ります。

  • 玩具の歴史や世界の建築物のうんちくネタ満載で連続殺人事件も興味津々。
    ミステリーとして有名な一冊ついに手に入りました。時代は昭和を感じさせるモノだけど、内容的には十二分に今の評価に耐えられる本です。
    ただ、真犯人の死因が「え!」で、これにはトリックも真相も無い点が唐突でした。

    • kwosaさん
      jyunko6822さん

      おひさしぶりです。
      『乱れからくり』面白いですよね。

      >真犯人の死因が「え!」で、

      わかります...
      jyunko6822さん

      おひさしぶりです。
      『乱れからくり』面白いですよね。

      >真犯人の死因が「え!」で、

      わかります。
      たしかに「え!」と感じますが、これに関しては有栖川有栖『月光ゲーム』の火山の噴火と同じく、これに関しては人為的作為的な介入の余地は全くないという作者の究極の表明である気がします。
      僕はそれを勝手に感じて「すげー」と思っていました。
      2015/10/15
    • jyunko6822さん
      お久しぶりでした。
      なぜ今まで読んでこなかったのか、「惜しい!」という気持ちでいっぱいです。
      「人為的作為的な介入の余地は全くないという...
      お久しぶりでした。
      なぜ今まで読んでこなかったのか、「惜しい!」という気持ちでいっぱいです。
      「人為的作為的な介入の余地は全くないという作者の究極の表明」というご説明、ありがとうございました。そう思えばまぁ、納得もできますよね。ありがとうございました。
      2015/10/16
    • kwosaさん
      jyunko6822さん

      本棚にコメントありがとうございます。

      菊人形見物&『犬神家の一族』読書会!!
      なんとも素晴らしい企画...
      jyunko6822さん

      本棚にコメントありがとうございます。

      菊人形見物&『犬神家の一族』読書会!!
      なんとも素晴らしい企画。
      福島読書会(でしたっけ?)とっても楽しそうでいいですね。

      『乱れからくり』勢いにまかせての深夜のコメント失礼しました。
      文章の重複や乱筆、本当にお恥ずかしい。
      jyunko6822さんが泡坂妻夫さんを面白いと言ってくださり、嬉しかったんでしょうね。
      最近の泡坂妻夫、連城三紀彦らの昭和のミステリ作家再評価は嬉しい限り。
      ついついテンションが揚がってしまいました。
      泡坂さんは「ヨギ・ガンジー」シリーズが復刊、再注目されていますが、『妖女のねむり』という傑作があるので次は是非それを読んでみてください。
      2015/10/16
  • 確かにからくりが乱れて乱舞するミステリー……
    最後の最後まで、たくらみというぜんまいを巻ききった感がある。

    これ、トリックを考えるの楽しかっただろうなあ〜と思いながら読了。
    著者の知識と嗜好が見事に融合していて、面白い。

    舞子がなかなかいないキャラクターでとてもいい。
    反して、若いとはいえ、薄幸な美貌の女性に特段の理由もなく惹かれて、結果一人でジタバタする敏夫のキャラクターにはうんざり。
    挫折したボクシング選手という経歴が絡むのかな、と思ったら、特にそういうこともなく。
    この点は残念。

  • からくり交響曲
    奇妙な屋敷、巨大迷路、個性豊かな玩具など、わくわくするガジェットが目白押しで読んでいて楽しいです。発生する事件に派手さはないですが、隠されているトリックは大仕掛けです。
    個人的に注目していた未亡人とのロマンスは、控えめに進行します。初期作品だからかなと思っていましたが、ほろ苦い幕切れが全てを物語っていました。

  • 隕石のトリックがメインミステリーかと思ったが・・・残念。

  • 名作と知りつつも読んでなかった。読んでよかった。損はない。

    最後の謎解きのときは
    「えー、そんなオチかよー。なにが名作だ!」
    と、いかにボロクソに書いてやろうかと思っていたのだけど、あれよあれよと話は違う方向で、大どんでん返し。
    なるほどねー。今ではちょっと古びた感は否めないけど、時代性を考えるとやはり名作認定して間違いない本。

  • うーん、って感じかな。オールタイムベストかね?って感じでもある。からくり人形に関しての薀蓄、ここまで盛り込む必要あるか?会話文をふんだんに盛り込んで、テンポよく進む展開は望むところだけど、その会話文がまた…。特に、ある意味苦痛にすら感じたのが、金沢に行って現地人と会う章。金沢人感ゼロでしょ、これ。ローカルじゃない人が無理して関西弁を使って、変に四国弁まで混ざっちゃいましたみたいな言葉、強烈に抵抗がありました。北陸、関係ないし。からくりを使ったトリックは、それなりに面白かったけど。

  • 「ミステリ界の魔術師」の異名を持つ泡坂妻夫の『乱れからくり』を読了。

    一言で言えばトリックのオンパレード。タイトルどおりのからくり乱れ打ち。古今東西のからくりが作中で紹介されていたのですが、全然知らないものが多く、とても楽しめた。

    最後の最後、犯人が明らかになるまで疑われている人物がいるのだが、そのまま終わりだとあまりに釈然としない。結局はどんでん返しがあるわけですが、驚きの結末を迎える。なかなか意外性のある犯人と言えた。

    残念な点を挙げるとするならば、登場人物に魅力がなかったということと、ありえない程の偶然の出来事が起きた上での事件だということ。
    とは言っても、偶然の出来事は他の作品にもあることだし、それがまた本作の魅力を引き出しているとも言える。

全84件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泡坂妻夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×