湖底のまつり (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.22
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本棚登録 : 612
レビュー : 71
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488402136

感想・レビュー・書評

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  • 『妖女のねむり』と同じく、幻想的な雰囲気たっぷりのミステリです。
    一晩を共にした人が、実は1カ月前に死んでいたという魅力的な謎とともに、自身の記憶と一致する部分もあれば、齟齬を感じるといった主人公の不安もこちらに伝わってくるようでした。
    途中、明らかに意図的なデジャヴを誘う記述も、読者の目を廻す役割を担っています。
    物語も後半に差し掛かると、怪しげな女性の目撃などで、より妖しい雰囲気が漂い始めます。
    そして明かされる真相は、やっぱり妖しいものでした。トリックというよりは、イリュージョンを見せられた気分。右手に注目を集めておいて、左手で小細工をするような、まさにマジシャン泡坂妻夫らしい仕掛けです。
    『妖女のねむり』に勝るとも劣らぬ傑作です。

  • 『乱れからくり』と並んで初期の泡坂の代表作と評される本書は、やはり時代の流れか、当時の読者諸氏を唸らせた衝撃はもはや薄れてしまっていた。価値の多様化が顕著になった昨今では、同性愛が真相のファクターであることが特に奇抜さを齎さなくなってしまった。

    しかし、それでも尚、作者は手練手管を使って読者を煙に巻く。
    女が男に化けて女をイカせる。この謎の解明は素晴らしい。

    しかし本作を読んで痛感したのは、時代がオープンになればなるほど、我々の常識が崩され、謎という暗闇が小さくなってしまう事だった。


  • これは面白いミステリーでした。
    ミステリーらしいミステリー。古典。
    幻影小説なのかと思いきや…
    時系列トリックかと思いきや…
    紀子、晃二、粧子、緋紗子そして終章
    各所に散りばめられた付箋はちゃんと掬い上げられて一つの線になっていく。しかもちっとも無理がない。
    過疎化の進む村…怪しくも哀しい風習を受け継がれた祭り。
    人は一瞬で恋に落ちる。
    人は何度でも恋をする。
    という大前提のもとがあってこそのヒューマンミステリー
    2019.1.9
    今年の2冊目

  • 幻想的で甘美な世界へ。死んだはずの人間に命を救われたという女性。導入部から心を掴んで離さない卓越した筆致に酔いしれる。紀子とは違い、あえて川の流れに身を任せて読んでいった。

  • まんまと騙された!

    新造のダムによって、湖に沈みゆく村を舞台にした本格ミステリ。
    この村の景色や川や滝の描写が素晴らしい。
    本当に有りそうにも思えるし、どこか幽玄な雰囲気も併せ持って、まるで旅しているような気にさせられた。

    ダム誘致派の優良議員や反対派の運動とそこに飛び交う金。そんな政治的なかけひきを背景に、男と女の妖しくも濃密な情念が、この作品を立体的なものにしている。
    そして、まさにその男女の交わりのシーンが、官能小説さながら!
    エロい!!

    そして、その目眩でくらくらする物語にはまっていると、作者の思う壺だ。
    まんまとひっかかってしまうのだった。

    日本にはこんなにも優れたミステリがあるんですね。
    これがしばらく絶版だったとは。

  • 失恋を機にある山奥の村を一人訪れた紀子は、川で溺れそうになった所を一人の若者に助けられ、彼の持ち家である空き家で一夜を共にする。
    翌朝姿を消したその人・晃二を探すが、彼は一月前に毒殺されていた。
    紀子が出会ったのは誰なのか。晃二は何故死んだのか。恋い慕う人を求めて突き進んだ先に何があるのか。
    全般に散りばめられた官能的な描写が、眩暈と共に作者が描く騙し絵の中へと誘ってくれる。

    今読むとどうしても時代の差を感じるけれど、お陰で閉鎖的な雰囲気と狂気の香りが増している。
    章が変わる毎に驚き慌てて前章を読み返すのを繰り返し、まさかないだろうと早々に否定した予測をまさかの力技で実現されてしまった…。
    古典の再販とは言え、結末に本気で驚くミステリーに出会ったのは久しぶり。

  • ストーリー展開は面白い。
    時や人物がシンクロして不思議な感覚になる。
    また登場人物が話の中で繋がっていくのも上手く練ってあると思う。
    ただ男女の絡みの描き方が官能小説じみていて読み心地がよくない。
    その時代的な物なのか、作家の年齢的な物なのか分からない。
    以前に「乱れからくり」を読んで面白かった印象があったのでいつか読み直してみたい。

  • 最後まで読みきったものの、なんだか好きではない作品。
    性描写が気持ち悪過ぎて笑えました。
    作者は気に入っているようで、何度も何度も登場させていましたが。
    風景の表現は見事でした。
    壮大な自然に触れたくなります。
    ただ、祭の説明は知らない単語ばかりが並んでいて、流し読みしてしまいました。
    オチも想像がつくレベル。
    フィクションとはいえ違和感は拭えません。

  • ストーリーは面白いけど、晃二の正体がう~ん。
    同じ系の叙述トリックは読んだことあったから3章くらいからなんとなく読めてたし、伏線は張ってるんだけど、ずるい感じがする。

  • ずっと気になっていた作品。ようやく読みました。
    読み終えてまず思ったのは、なるほど~、でした。
    どうして多くのミステリ作家がこの本の名を挙げるのか。
    読んで納得です。

    なんといいますか、よく騙し絵にたとえられているようですが、そうではなくて。
    終章の前に4章あるのですが、それぞれ視点が違います。
    その4章がそれぞれの絵を描いていて、その4枚を重ねて透かして見ると初めて本物の絵が浮かび上がってくるような。
    だから章を重ねるごとになんとなく真相の予想がついてきてしまったのはしょうがないのでしょう。

    それでもその仕事は職人の技としかいいようのない巧みさ。
    まさに溜息のでる美しさでした。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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