亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.65
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本棚登録 : 875
レビュー : 115
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488402143

作品紹介・あらすじ

『11枚のとらんぷ』を筆頭に、『乱れからくり』等数々の名作でわが国推理文壇に不動の地位を築いた泡坂妻夫が、この一作をもってデビューを飾った記念すべき作品-それが本書冒頭に収めた「DL2号機事件」である。ユニークなキャラクターの探偵、亜愛一郎とともにその飄々とした姿を現わした著者の、会心の笑みが聞こえてきそうな、秀作揃いの作品集。亜愛一郎三部作の開幕。

感想・レビュー・書評

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  • とぼけた味わいと軽みが身上の、コミカル・ミステリー・ツアーへようこそ。

    「笑い」とは「緊張と緩和」だと言ったのはたしか、哲学者カントだったろうか? イケメンなのに不器用で運動神経ゼロというこの小説の主人公にして探偵役「亜愛一郎」の存在は、まさにこの小説では破壊力抜群な「緩和」そのものとして機能している。だから、陰惨な殺人事件が起こるにもかかわらず、読者はたびたび読みながら吹き出さずにはいられない。巧妙なトリックに裏打ちされたミステリと脱力系ユーモアとが奇跡的なバランスで両立しているのだ。

    地味な飛行機爆破予告を発端に、残忍な殺人事件の背後に潜む思わぬ動機が明かされる第一話「DL2号機事件」などは、いきなり意表をつくようなタネ明かしにキツネにつままれたような気分にさえなるが、それが日頃「雲」や「虫」など多くのひとがあまり気にもとめない自然観察にばかり熱中しているカメラマンによる推理と聞けば、なるほどその推理力というよりも並外れた観察眼に脱帽してしまう。ここには8つのストーリーが収められているが、全編そんな常識や先入観の裏をかくようなトリックが目白押しで飽きさせない。

    ただ、毎回登場する「三角形の顔をした老婦人」はともかくとして、第一話に登場する柔道家の女の子とはいったい何者なのか? あまりに意味ありげに登場するわりにトリックにはまったく関わってこないという……不思議。

    *北村薫が選ぶミステリー通になるための文庫本100冊

  • <希硫酸の亜です―間違えました.>

    少し抜けているところがあるけれど,見事な観察眼と発想で事件を解決.
    トンデモな理論も,なるほ..ど(?)と,おもしろいな,と思ってしまう.
    岡田将生で実写を見たい.

  • 「DL2号機事件」略
    「右腕山上空」:菓子メーカーの宣伝企画として飛び発った気球の中で漫才師の死体が発見される。気球に乗ったのは被害者ただ一人のはずだがーー。事件発生までの流れと提示される謎が魅力的。短編なのでアッサリした真相看破だが視点人物である塩田の秘書への感情描写が良い味してました。
    「曲がった部屋」:お化け団地などと呼ばれる団地で発見された腐敗した他殺死体の謎を亜愛一郎が解き明かす一編。伏線がやさしめでしたがやはり亜愛一郎のあの一言の破壊力はバツグン。
    「掌上の黄金仮面」:巨大な弥勒菩薩像の掌に突如現れ紙幣をバラ撒いていた黄金仮面が射殺された事件と強盗事件とが絡み合う異様な状況を亜愛一郎が解き明かす一編。短編ながらも奥行きのある舞台構築の手際が良い。そしてまた華麗なひっくり返しにやられてしまったな。
    「G線上の鼬」:タクシー運転手の浜岡は客を送る途中で強盗に襲われたという同僚と遭遇する。彼と現場に向かうとそこには同僚のタクシーと強盗の死体があり、しかもそこから逃れる足跡は一つしかなくーー。真相を浮き上がらせる物証の提示の見せ方が上手いよなぁ。
    「掘出された童話」:冒頭の不思議な童話に潜む謎がとあるヒントで解き明かされるクライマックスが見事。童話として成立させつつこの形に落とし込む手際と各シーンに配された伏線に気付かされた時のゾッとする感じが良いのだ。
    「ホロボの神」:戦死者の遺骨収集団としてホロボ島に赴く中神は、道中出逢った学術隊に島の原住民が自殺した事件を語る。屍体を忌避するとされる未開民族の習慣と反する事件の真相とはーー。ホロボの神が何のシンボルかは予想がついたがそれをあの形に収束させるとは。
    「黒い霧」:明け方の商店街で突然発生した黒い霧の謎、霧を発端とした商店街の店主たちによるドタバタバトルでお腹を抱えて笑わされ、その後の謎解きにこれまたニヤリとさせられるバランスが凄い。
    どの短編も泡坂妻夫の奇術師らしい手際で多幸感に包まれる読書体験でした。

  • 不思議な主人公に不思議な事件の数々。
    さらっと読める短編集でした。

    市川猿之助丈が、推薦していた理由が思い出せない…
    主人公に感心があったように記憶しているんだけど、私には人物像がよくわからない主人公でした。

  • マジシャンでもある泡坂氏のデビュー作『DL2号機事件』を含む、亜愛一郎が活躍する短編集です。

    泡坂氏が産んだこの名探偵どんな人物かと言えば…

    長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。ところがいったん事件に遭遇すると、独特の論理を展開して並外れた推理力を発揮する…(本文の紹介より抜粋)

    と、愛すべきキャラでした。どの作品も独特の謎があり、以前に多少聞きかじった江戸川乱歩の分類に当てはめれば「奇妙な味」に近いなぁ~と思いました。

    ミスディレクションによる心理的トラップがいたるところに仕掛けられていて、高名なマジシャンでもあった著者のミステリの特徴がよくわかる作品郡でした。暗号を扱った「掘出された童話」がとくによかったと思います。

    コミュニティの投稿で教えていただいた情報によれば、シリーズを通して大きな仕掛けが施されてるとのこと。読んでいくのがすごく楽しみです。

  • 主人公の「亜」をはじめ、登場人物達がとても魅力的です。

    逆説や意表を突くロジックと真相ばかりの質の高い短編集で、とても楽しいです。

  • 奇術師でもある著者ならでは
    遊び心を感じるネタ満載

  •  とても楽しい短編ミステリ集であった。名探偵亜くんの(本当にアという名字である)ひょうひょうとしたキャラクターもとても魅力的である。が、なんといってもちょっと意表をつくようなトリックが並んでいて、それがすばらしい。
     「ホロボの神」という短編がある。これは戦時中の南国の島が舞台なのだけれど、死んだばかりの妻の死体のそばで未開部族の酋長が銃で頭を撃ち抜かれて死んでいる。二人の死体があった場所は一種のテントなんだけど、儀式のものなのでまわり中を部落の者達が目を離さず囲んでいるので、絶対に人が出入りすることはできない。それなのに、自殺ではなくて他殺なのである。さすがにそれは無理だろうって思いながら読んだが、できてしまう。しかも、なんというか機械的なものではなくて、見事に盲点をつかれたって思ってしまった。
     そのほかにも魅力的な話がたくさんあり、ちょっとほのぼのとしていていい感じだ。

  • おっちょこちょいな美形探偵ってむっちゃ萌えキャラだと思うんだけど。
    ピンクパンサーのクルーゾー警部の、なんだかドジな行動してるうちに
    事件が解決しちゃった的な。
    ちょっとトリックに昭和風味入ってるとこがまたイイ。
    三角形の顔の老女は、私てきには牧美也子先生「悪女バイブル」の
    変装顔のイメージ。(松本零士先生の奥様でしたっけ)

  • とにかくユニークな探偵、亜愛一郎。切れるのかボケてるのか、運動神経良いのか悪いのかもまったく不明、つかみ所なし。外見と中身のギャップも甚だしい。でもけっこう好感が持てるなあ。
    第一話「DL2号機事件」からしてやられた! この発想はとんでもない! 一瞬「んなアホな」と思いそうになるのだけれど、よく考えてみると、こういう思考ってたしかにある。ここまで極端ではないけれど、こういうこと考えたりするもの。それがこういう形になるとは、してやられた。読み終わってみると、違和感もまったくなし。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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