亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (1994年8月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (382ページ) / ISBN・EAN: 9784488402143

作品紹介・あらすじ

雲や虫など奇妙な写真を専門に撮影する青年カメラマン亜愛一郎は、長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。ところがいったん事件に遭遇すると、独特の論理を展開して並外れた推理力を発揮する。作家・泡坂妻夫のデビュー作「DL2号機事件」など全8話を収録した。解説=権田萬治

■目次
「DL2号機事件」
「右腕山上空」
「曲った部屋」
「掌上の黄金仮面」
「G線上の鼬」
「掘出された童話」
「ホロボの神」
「黒い霧」

感想・レビュー・書評

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  • 本名:厚川昌男(あつかわまさお)で、筆名:泡坂妻夫はアナグラムだった。
    どうやら「あ」にこだわったようで、デビュー作「DL2号機事件」の主人公の名前を「亜」にしたようだ。

    謎解きの語り口は理路整然としていて"刑事コロンボ"を思い出した。

    「亜」は自称カメラマンのようだが、なぜか事件現場に居合せ謎解きを語る役回り。
    人間の思考の癖とその思考に基ずく行動を推理したり、思考パターンを逆手に取った行動に注目したりして、真相解明するのは手品の仕掛けをばらすようで面白い。

    背が高くてハンサムで力持ちらしいのだが、カッコイイという感じはなく、少しすっとぼけている印象が強い。

    戦争にまつわる描写や、モールス信号、フィルムのカメラ、どこでも喫煙、ミルク配達人、など昭和の匂いもプンプンする作品だ。

    「亜」だけでなく登場人物の名前も変、「緋熊(ひぐま)五郎」「鳥尾杉亭(さんてい)」「二毛(ふたげ)敏胤(としたね)」「藻湖(もこ)刑事」「佐藤看七(かんしち)」などなど…
    藻湖刑事が再登場した時は、名前が奇抜だから覚えていたので、そういう狙いもあったのかと思った。

    謎解きのタネは奇抜で無理があるのだが、明かされてみるときわめて論理的なので妙に納得させられる。
    私は奇術も大好きなので、このような常識的な思考の隙を突かれる泡坂作品は好きだ。
    どの作品も全く想像が及ばないところに真相が隠れていた。
    マジシャンの頭の中にある騙しの技術を知るという目的でも楽しめそうだ。

    「亜」シリーズは3部作であと2冊あるのだが、字が小さく(42x18)読むのが辛かったので躊躇してしまう(´ω`)コマッタナァ...

  • 再読。デビュー作『DL2号機事件』から約一年半にわたり雑誌連載されたもの。こんなに論理的で粒揃いの作品と亜愛一郎という愛されキャラクターをデビュー直後に生み出したことは奇跡!『曲がった部屋』『堀出された童話』『ホロボの神』が好み。

    • たださん
      111108さん、こんばんは。

      再読されたのですね♪
      亜愛一郎という愛されキャラクター、同感の思いであります(^^ゞ

      私も、○ックオフで...
      111108さん、こんばんは。

      再読されたのですね♪
      亜愛一郎という愛されキャラクター、同感の思いであります(^^ゞ

      私も、○ックオフで購入したので、図書館本の隙を狙って、読めればと思っております。
      2022/09/10
    • 111108さん
      たださん、コメントありがとうございます。

      泡坂妻夫はキャラクター作り上手いですね〜亜愛一郎の端正な容貌とコミカルな動きのギャップ。昔読んだ...
      たださん、コメントありがとうございます。

      泡坂妻夫はキャラクター作り上手いですね〜亜愛一郎の端正な容貌とコミカルな動きのギャップ。昔読んだ時よりもっと素直にかわいらしく思えました。
      たださんのコメントも楽しみにしてます♪
      2022/09/10
    • たださん
      111108さん、お返事をありがとうございます♪

      いわゆる、ギャップ萌えに近い感じですね。分かる気がします(^_^)
      111108さん、お返事をありがとうございます♪

      いわゆる、ギャップ萌えに近い感じですね。分かる気がします(^_^)
      2022/09/11
  • 読友さんの感想を読んで興味を持つ。亜愛一郎(あ・あいいちろう)は探偵で、キャラが薄いが推理力抜群。登場人物の名前が変だった。愛一郎だけではなく全体的に変。その理由なのか、昭和ノスタルジーに浸れるキャラ設定。全8話からなり、最初に事件が起き、そこに愛一郎がいる。いつの間にか愛一郎が事件を解決する糸口を見つけ、推理を披露する。お菓子会社の宣伝目的のために気球を飛ばす話は面白かった。UFO愛好家とのリンクが何とも言えない。一方、何故だろう?読みにくさも抜群でページを捲るスピードが既読本でもNo.1だったかな。④

    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん
      こんばんは。ご機嫌はまあまあいいですよ!
      最近、研究論文が採択されて、新聞にでるかどうか?って感じです。
      ちょうど一...
      アールグレイさん
      こんばんは。ご機嫌はまあまあいいですよ!
      最近、研究論文が採択されて、新聞にでるかどうか?って感じです。
      ちょうど一年前には新聞社数社、国のHP、大学のHP、取材もあり楽しかったです。今回は地味かも。。。

      さて、長編大好きなんですが、読友さんお薦め本だったので読みました。面白かったですよ。でも読みにくかった。ちょっと文章が高級すぎたかな?

      さて、2冊UPですね。あとで見に行きま~す。コメントもしますね。

      「た」!楽しんでくださいね。エネルギーをもらえると思いますよ~


      2022/10/28
    • アールグレイさん
      ポプラさん★~こんばんは
      このコメントに気付いているでしょうか?
      「た」今、手元にあります!
      ダイナミック!なるほどです!
      レビュー、いろい...
      ポプラさん★~こんばんは
      このコメントに気付いているでしょうか?
      「た」今、手元にあります!
      ダイナミック!なるほどです!
      レビュー、いろいろな文章が浮かびそうで・・・・タ・ノ・シ・ミ♪☆
      2022/10/29
    • ポプラ並木さん
      アールグレイさん、
      おはよう!!
      「た」入手完了ですね。
      素晴らしい~
      まだ感想UPしていないようですね。
      色んな感情が出て来て、...
      アールグレイさん、
      おはよう!!
      「た」入手完了ですね。
      素晴らしい~
      まだ感想UPしていないようですね。
      色んな感情が出て来て、感想も面白くなりそうですね。
      楽しみにしています(^^♪
      2022/10/30
  • 本書は、1978年発表の、『亜愛一郎』三部作の第一弾で、若い頃に読んだときは、もう少しライトで、コミカルな印象だったのが、今読んでみると、真っ向勝負の本格ものに感じられて(泡坂妻夫流のということで、もちろんストレートだけではありません)、読む年代により、印象が大きく変わるのだなと、実感いたしました。

    デビュー作の、「DL2号機事件」にしても、ほとんど内容を覚えていなかったため、後半の狂気的な展開に、心底驚いたと思ったら、それに対して、なるほどと肯ける論理的根拠があって、奇術さながらの、あっと言わせるトリッキーさと、泡坂さん自身の博識ぶりが同居した様は、既にデビュー作で健在だったことに、また驚きました。

    真っ向勝負といえば、「掘出された童話」の暗号の謎もそうで、私は解答を見ても分からなかっただろうなと思いましたが、そこには知識量の凄さだけではなく、泡坂さんの、古くから伝わる文字や言葉に対する敬意も感じられて、しかも物語において、暗号にした目的が、また、何とも言えないものがあり、人間の愚かさや憐れさを、しっかり書いているところも印象深かったです。

    そして、悲劇の被害者が多いのも、また印象深く・・・「掘出された童話」や「ホロボの神」、「掌上の黄金仮面」がそうで、特に後者は、今で言うところの、ブラック企業の存在を暗示しているようにも思われて、より、やるせないものを感じました。

    また、本書における、泡坂さんの遊び心も健在で、

    『「消えるドクロ」 by T.Awasaka』や、

    更に、各話で必ず一度登場する、三角形の顔をした老婦人(プラス、タケル君)の存在も、本編とともに気になってしまい、今後も目が離せません。


    あ、そうそう、肝心な探偵役の紹介を忘れてました。

    年齢は35歳くらい。背が高く、整った端麗な顔だちは、どう見ても写真に撮られる方だが、彼は撮る側で、報道カメラマンの派手な仕事ではなく、雲やゾウリムシなどを面白がって撮っていて、いつでもきちんとした身なりをしているのは、なぜか質問すると、

    「汚い格好で撮影したのでは、自然に対して失礼に当るでしょ」

    と答える真摯さをもっているが、やや挙動不審プラス不器用で、運動神経は無さそうでいながら、腕っぷしは強く、白目をむいた後の頭のきれの良さは、紛れもなく、探偵『亜愛一郎(あ あいいちろう)』であり、ちなみに本書だけで、驚いたときに「きゃっ!」と叫ぶ場面が二回あります(可愛い)。

    また、強面の高波刑事が、ああさん(私はこう呼ぼうかな)のために、捜査費から宿泊費を出してくれたり、ああさんの、おろおろした感じを気に入っている、一荷聡司であったりと、彼自身の人間としての魅力も見逃せないところであり、櫻田智也さんの、探偵『魞沢泉(えりさわ せん)』との類似性も分かった気がしましたが、現代人の多様な価値観の内面に立ち向かう魞沢クンは、まさに、令和の探偵だなといったところも、再実感いたしました。


    ちなみに、akikobbさんの「生者と死者」のレビューにあった、ヨギガンジーシリーズの、「生者と死者」の本編に、本書に登場した方の、名前だけ登場した人物(ややこしい)、私も見付けましたよ!

    これ、気付くと、とても嬉しいですね。
    「生者と死者」は1994年の作品で、本書は1978年。
    彼が16年前の若い頃で・・・あれっ、これってもしかすると、序盤に登場する、玩具屋の口髭を生やした若い店員って、まさか・・・なんて。

    • akikobbさん
      たださん、お返事ありがとうございます。
      111108さん、こんばんは。

      ヨギガンジーと亜愛一郎の世界が繋がっている発見、泡坂妻夫ファンの間...
      たださん、お返事ありがとうございます。
      111108さん、こんばんは。

      ヨギガンジーと亜愛一郎の世界が繋がっている発見、泡坂妻夫ファンの間ではもしかしたら常識なのかもしれないが…と思いながらも、私も嬉しくて感動したのでレビューに書きましたが、そんなふうに共感していただけてたいへん嬉しいです♪
      にわかファンなので立て続けに読んでいることが幸いしました笑

      三角顔の老婦人の生活も気になりますよね。彼女の日記風ストーリーも読んでみたいかも…。

      たださんはもう、あいさん像定まってるんですね!(呼び名まで、私のレビュー引っ張ってくださってありがとうございます照)私はまだうすぼんやりしてるんです〜。みなさんのアイディアお聞きしたいです。なおなおさんの閃きにも期待大!いつかそんな日が来ることを楽しみにしています♪
      2022/10/06
    • なおなおさん
      皆さん、こんばんは。

      「生者と死者」未読、亜愛一郎シリーズ未読なのですが、堂々とおしゃべりに参加しております。お許しください^^;

      皆さ...
      皆さん、こんばんは。

      「生者と死者」未読、亜愛一郎シリーズ未読なのですが、堂々とおしゃべりに参加しております。お許しください^^;

      皆さんとまた、妄想キャスティングしたくなりました。
      そのためには、物語のリンクも考えて、「生者と死者」→亜愛一郎さんと読んだ方が良さそうですね。
      お待ちください(-_-;)
      それか皆さんでキャスティングしていてくださいな(^^)

      話変わるのですが、気になっていた泡坂さんのある本を最近ゲットしたのです。
      本屋にも楽○中古にもなく、ブッ○オフ在庫1冊になった時に慌ててポチッとして、手に入れました( ´ー`)フゥー...危なかったです。
      先輩の皆さんでも未読の本と思われ、先取りしちゃおうっと、なんて意気込んでいたのですが(生意気〜)、登場人物が多くてちらっと読んだだけ(-_-;)
      積読本が増えつつあります。

      今、別の作家さんの読書強化シーズンをやっておりますが^^;、落ち着いたらアワツマ強化シーズンもやらないと!と思いました!
      皆さんのレビューを楽しみにしています(^^)/~~~
      2022/10/06
    • たださん
      みなさん、こんばんは。

      それぞれの熱いコメント、読んでいるだけで楽しくなってきます。ありがとうございます(^_^)

      妄想キャスト大会も、...
      みなさん、こんばんは。

      それぞれの熱いコメント、読んでいるだけで楽しくなってきます。ありがとうございます(^_^)

      妄想キャスト大会も、なおなおさんの手に入れた本も気になりますが、おそらく、泡坂さんの作品のレビューで、また皆さんとお会いできると思いますし、妄想キャスティングの真打ちをさし置いて、やるのもどうかと・・・ね(^^;)
      2022/10/07
  • 並外れた推理力を持つが、ドジで運動神経皆無なカメラマン亜愛一郎を主人公とした連作短編周。
    全ての短編で殺人事件が起こるものの、登場人物たちのクセが強いのもあって、終始コミカルでゆる〜い雰囲気が漂っていて、スラスラ読めました。
    それでいて、全ての短編に伏線が綿密に仕組まれており、後半の推理パートでその伏線が一気に回収される様が圧巻。
    シリーズ物なので次回作も読んでいきます。

  •  古今東西のかっこいい名探偵にときめきたい、という不純な動機で始まった私の「ミステリー名作を読もう」キャンペーン。「泡坂妻夫の小説に登場する亜愛一郎という探偵は美男」との情報を聞きつけ、さっそく彼の登場する三つの短編集のうちの第一巻にあたる本作を図書館で借りてきた。
     亜愛一郎は、長身で容姿端麗でどことなく優雅で貴族的な雰囲気さえ備えた青年で、女性だけでなく男性の目も惹きつけてしまうような第一印象の持ち主なのだが、運動神経はまるでなく、不器用で、会話をしてもおどおどしたりぼんやりしたりと、言ってみれば「男らしくない」男性だ。それなのに、並み居る刑事達が頭を抱える難事件をするっと解決してしまう観察眼と冴えた頭脳を持っている。つまり、「ギャップ萌え」が二乗になっているうえに「ただしイケメンに限る」を軽々とクリアしているという反則的なキャラクター造形であり、そんなの魅力的でないわけがない。「男らしくない」という点が、発表当時は今よりもずっと「変わり者」度を上げていたかもしれない。
     亜愛一郎シリーズとしての主人公はもちろんこのあいさん(作中でひとりだけ、彼を勘違いから「あいさん」と呼ぶ人がいるのだが、可愛いし呼びやすいので私はここで愛称として勝手に採用する)なのだけど、各短編ごとに事件の語り手というか主人公というべき人物が存在する。どの話もその人からの目線で描かれるので、あいさんが脇役として登場するたびに、お決まりのギャップ萌え二段攻撃を改めて楽しむことができるというお得な仕掛けになっている。また、あいさんの独白などはなく、彼が何を考えているのか、どういう来歴でどういう暮らしをしているのか等については彼の言動から推しはかるより他はなく、この余白豊かな描き方がまた「この人いったいどういう人なのかしら…」とゆかしい気持ちにさせてくる。何でもかんでも書けばいいというわけでない、筆加減の絶妙さ!
     各話の感想は割愛するが、最後の短編の匡子さんだけは、彼の推理に驚くだけでなくちょっと乗っかってくる感じがあったので、もしかしてまた登場してバディものっぽくなったりしないかな〜と期待。そんなこんなで、残りの短編集も人生でいつか読みたい。

    • akikobbさん
      111108さん、コメントありがとうございます。

      私のほうは、昨日から『ヨガガンジーの妖術』を読み始めましたよ!
      短編一作目から満足度高く...
      111108さん、コメントありがとうございます。

      私のほうは、昨日から『ヨガガンジーの妖術』を読み始めましたよ!
      短編一作目から満足度高く、「やっぱりアワツマいいなあ!」と私もちょうど思っていたところです♪
      2022/07/31
    • akikobbさん
      ヨガガンジーじゃないや、ヨギガンジー笑
      ヨガガンジーじゃないや、ヨギガンジー笑
      2022/07/31
    • 111108さん
      akikobbさん、タイミング合いますね〜‼︎
      『ヨガガンジー』気がつかなかった!違和感なし(^^)
      akikobbさん、タイミング合いますね〜‼︎
      『ヨガガンジー』気がつかなかった!違和感なし(^^)
      2022/07/31
  • 亜愛一郎の「ドジだけど鋭い」という愛され特性のおかげでシリアスになりすぎないのが良い。舞台もセオリーを無視した意外な場所が多く、足並みを揃えるようにトリックも意外なもの。さらにそれに対向するかのごとく探偵が奇妙なロジックによって推理を行うもんだから読み心地も奇妙。かつ軽妙。愉しい。キャラの元ネタである『ブラウン神父の童心』も読みたくなった。

  • 美青年なのだがどこか抜けている亜。彼が解決する事件も、一見事件に見えなかったり、事件が起こる前に解決してしまったり、やはりどこか変わっている。
    全編ともかなりレベルが高く、国産短編集の中でもトップクラスではないだろうか。
    個人的ベストは『DL2号機事件』『G線上の鼬』、次いで『黒い霧』。

    『DL2号機事件』
    数々の奇妙な謎が、たった一つの考え方によって一つに繋がれる。
    そしてそれを補強する伏線は質も数も凄まじく、前半はもはや伏線の塊。

    『G線上の鼬』
    これも同じく、伏線の塊。この発想を雪密室として使うのも巧い。

    『黒い霧』
    カーボンを町に撒く、という謎も魅力的だし、その真相も素晴らしい。序盤で犯人を提示しているところも憎い。

  • とぼけた味わいと軽みが身上の、コミカル・ミステリー・ツアーへようこそ。

    「笑い」とは「緊張と緩和」だと言ったのはたしか、哲学者カントだったろうか? イケメンなのに不器用で運動神経ゼロというこの小説の主人公にして探偵役「亜愛一郎」の存在は、まさにこの小説では破壊力抜群な「緩和」そのものとして機能している。だから、陰惨な殺人事件が起こるにもかかわらず、読者はたびたび読みながら吹き出さずにはいられない。巧妙なトリックに裏打ちされたミステリと脱力系ユーモアとが奇跡的なバランスで両立しているのだ。

    地味な飛行機爆破予告を発端に、残忍な殺人事件の背後に潜む思わぬ動機が明かされる第一話「DL2号機事件」などは、いきなり意表をつくようなタネ明かしにキツネにつままれたような気分にさえなるが、それが日頃「雲」や「虫」など多くのひとがあまり気にもとめない自然観察にばかり熱中しているカメラマンによる推理と聞けば、なるほどその推理力というよりも並外れた観察眼に脱帽してしまう。ここには8つのストーリーが収められているが、全編そんな常識や先入観の裏をかくようなトリックが目白押しで飽きさせない。

    ただ、毎回登場する「三角形の顔をした老婦人」はともかくとして、第一話に登場する柔道家の女の子とはいったい何者なのか? あまりに意味ありげに登場するわりにトリックにはまったく関わってこないという……不思議。

    *北村薫が選ぶミステリー通になるための文庫本100冊

  • <希硫酸の亜です―間違えました.>

    少し抜けているところがあるけれど,見事な観察眼と発想で事件を解決.
    トンデモな理論も,なるほ..ど(?)と,おもしろいな,と思ってしまう.
    岡田将生で実写を見たい.

  • 「DL2号機事件」略
    「右腕山上空」:菓子メーカーの宣伝企画として飛び発った気球の中で漫才師の死体が発見される。気球に乗ったのは被害者ただ一人のはずだがーー。事件発生までの流れと提示される謎が魅力的。短編なのでアッサリした真相看破だが視点人物である塩田の秘書への感情描写が良い味してました。
    「曲がった部屋」:お化け団地などと呼ばれる団地で発見された腐敗した他殺死体の謎を亜愛一郎が解き明かす一編。伏線がやさしめでしたがやはり亜愛一郎のあの一言の破壊力はバツグン。
    「掌上の黄金仮面」:巨大な弥勒菩薩像の掌に突如現れ紙幣をバラ撒いていた黄金仮面が射殺された事件と強盗事件とが絡み合う異様な状況を亜愛一郎が解き明かす一編。短編ながらも奥行きのある舞台構築の手際が良い。そしてまた華麗なひっくり返しにやられてしまったな。
    「G線上の鼬」:タクシー運転手の浜岡は客を送る途中で強盗に襲われたという同僚と遭遇する。彼と現場に向かうとそこには同僚のタクシーと強盗の死体があり、しかもそこから逃れる足跡は一つしかなくーー。真相を浮き上がらせる物証の提示の見せ方が上手いよなぁ。
    「掘出された童話」:冒頭の不思議な童話に潜む謎がとあるヒントで解き明かされるクライマックスが見事。童話として成立させつつこの形に落とし込む手際と各シーンに配された伏線に気付かされた時のゾッとする感じが良いのだ。
    「ホロボの神」:戦死者の遺骨収集団としてホロボ島に赴く中神は、道中出逢った学術隊に島の原住民が自殺した事件を語る。屍体を忌避するとされる未開民族の習慣と反する事件の真相とはーー。ホロボの神が何のシンボルかは予想がついたがそれをあの形に収束させるとは。
    「黒い霧」:明け方の商店街で突然発生した黒い霧の謎、霧を発端とした商店街の店主たちによるドタバタバトルでお腹を抱えて笑わされ、その後の謎解きにこれまたニヤリとさせられるバランスが凄い。
    どの短編も泡坂妻夫の奇術師らしい手際で多幸感に包まれる読書体験でした。

  • マジシャンでもある泡坂氏のデビュー作『DL2号機事件』を含む、亜愛一郎が活躍する短編集です。

    泡坂氏が産んだこの名探偵どんな人物かと言えば…

    長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。ところがいったん事件に遭遇すると、独特の論理を展開して並外れた推理力を発揮する…(本文の紹介より抜粋)

    と、愛すべきキャラでした。どの作品も独特の謎があり、以前に多少聞きかじった江戸川乱歩の分類に当てはめれば「奇妙な味」に近いなぁ~と思いました。

    ミスディレクションによる心理的トラップがいたるところに仕掛けられていて、高名なマジシャンでもあった著者のミステリの特徴がよくわかる作品郡でした。暗号を扱った「掘出された童話」がとくによかったと思います。

    コミュニティの投稿で教えていただいた情報によれば、シリーズを通して大きな仕掛けが施されてるとのこと。読んでいくのがすごく楽しみです。

  • 主人公の「亜」をはじめ、登場人物達がとても魅力的です。

    逆説や意表を突くロジックと真相ばかりの質の高い短編集で、とても楽しいです。

  • 奇術師でもある著者ならでは
    遊び心を感じるネタ満載

  •  とても楽しい短編ミステリ集であった。名探偵亜くんの(本当にアという名字である)ひょうひょうとしたキャラクターもとても魅力的である。が、なんといってもちょっと意表をつくようなトリックが並んでいて、それがすばらしい。
     「ホロボの神」という短編がある。これは戦時中の南国の島が舞台なのだけれど、死んだばかりの妻の死体のそばで未開部族の酋長が銃で頭を撃ち抜かれて死んでいる。二人の死体があった場所は一種のテントなんだけど、儀式のものなのでまわり中を部落の者達が目を離さず囲んでいるので、絶対に人が出入りすることはできない。それなのに、自殺ではなくて他殺なのである。さすがにそれは無理だろうって思いながら読んだが、できてしまう。しかも、なんというか機械的なものではなくて、見事に盲点をつかれたって思ってしまった。
     そのほかにも魅力的な話がたくさんあり、ちょっとほのぼのとしていていい感じだ。

  • おっちょこちょいな美形探偵ってむっちゃ萌えキャラだと思うんだけど。
    ピンクパンサーのクルーゾー警部の、なんだかドジな行動してるうちに
    事件が解決しちゃった的な。
    ちょっとトリックに昭和風味入ってるとこがまたイイ。
    三角形の顔の老女は、私てきには牧美也子先生「悪女バイブル」の
    変装顔のイメージ。(松本零士先生の奥様でしたっけ)

  • とにかくユニークな探偵、亜愛一郎。切れるのかボケてるのか、運動神経良いのか悪いのかもまったく不明、つかみ所なし。外見と中身のギャップも甚だしい。でもけっこう好感が持てるなあ。
    第一話「DL2号機事件」からしてやられた! この発想はとんでもない! 一瞬「んなアホな」と思いそうになるのだけれど、よく考えてみると、こういう思考ってたしかにある。ここまで極端ではないけれど、こういうこと考えたりするもの。それがこういう形になるとは、してやられた。読み終わってみると、違和感もまったくなし。

  •  ルックスが良いけどどこか抜けた部分があり、だけど推理はピカイチであるカメラマンの亜愛一郎が行く先々で事件と遭遇し解決していく短編集で、ユーモアと謎解きがしっかり絡み合っていて面白かった。特に『掘出された童話』が一番お気に入りだった。

  • 米澤穂信がおすすめしていた作家であり作品だったので読んでみた。

    三角形の顔をした老婦人がたびたび出てくるのはモブの使いまわし的な、ただの遊び心の表れだろうか。

    「DL2号機事件」
    大きな地震があったら近いうちにはまた起きないだろうと考える心理に初めて触れて面白かった。それで殺人まで起こそうとするのは異常だけど、異常だから殺人まで犯すのはわかってしまう。
    これをデビュー作にするの、犯人の心理に興味がありますって感じで面白い。トリックじゃないんだな。ハウダニットよりホワイダニット派ってことかな。

    「右腕山上空」
    そう思ったらちゃんとトリックの話だった。
    塩田がたくさんの女性と結婚し離婚しながらも、10年間も秘書が好き、というのがさらりと描写されてるのがすごい。でも深くは書かない。面白い。
    殺人トリックは言われて見れば、なあんだ、だけど、この時代だったら完全犯罪になりそうで面白かった。

    「曲った部屋」
    違う部屋で殺して家具の入れ替えというトリック。それを示唆する描写が面白い。
    最後、小網と亜が鏡の前にいるけど、酔っぱらって泊まったのか、なんなのか。ちょっと気になった。

    「掌上の黄金仮面」
    銀行強盗と殺人が絡み合う。これも、被害者の挙動を観察してたらわかるやつ。面白い。

    「G線上の鼬」
    タクシー強盗の話が絡んでて面白かった。飲酒運転やば。おおらかすぎる。
    右腕山上空の気球の時と似てる。一人だと思ったら二人いたやつ。

    「掘出された童話」
    この童話絶対暗号!とわかるが、解くのがだるい。モールス信号出た~の気持ち。書体にこだわったのがポイントだったんだな。
    最後ちょっとオカルトめいてたのが面白い。
    一荷と亜のやりとりがちょっとほもほもしい感じ。時代なのか?そういうものなのか?
    手錠まで付けるの面白い。

    「ホロボの神」
    戦後の生々しい感じが良い。この時代、遺骨を取りに行くことしてたんだなとわかって面白い。最近、海の底の遺骨も回収しようっていうのは聞いてたけど、それまでどんな活動していたかよく知らなかった。

    「黒い霧」
    犯人像が安易すぎるけど、それがやりたかったんだろうなって感じ。商店街の人達のケーキや豆腐の投げ合いが牧歌的。

    どれも面白かった。

    解説で、『幻影城』を作った島崎博がさらりと消息不明となっていたのが気になった。それで良いのか???大量の本のコレクション置き去りにしちゃうのも、謎の失踪じみてる。今だったらニュースだと思うが、流されてるのが面白い。関係者はあまり面白くなかったと思う。

  • 亜 愛一郎の区切りなのね。手品、奇術、メンタルマジックを最大限に用いたトリック。殺人が起きてるのになぜかコミカル。楽しく読めます。DL2号機事件、ホロボの神、曲がった部屋が特に好きかなあ。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

泡坂妻夫の作品

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