煙の殺意 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 322
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488402174

感想・レビュー・書評

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  • ノンシリーズの短編集。
    どれもこれもおもしろい、ハイクオリティな1冊でした。

    【赤の追想】女の様子から推理された一人の男の真実。そしてそれと重なり明らかになる女の真実。
    1ページの物語と思っていたものが、実は同じような内容のページが2枚重なっていてひとつの物語を作り上げていたというような結末。巧い。

    【椛山訪雪図】一枚の掛け軸が事件を解決というわけではなく、あくまでも掛け軸に主眼を置き、事件が掛け軸の謎を明かしたというのが新鮮。
    1枚の絵が見る人に何重もの意味を表し、それが持ち主の断腸の生き様とも重なってなんとも「粋」な1編でした。

    【紳士の園】出所したばかりの二人の男が、公園の池で優雅に泳ぐ白鳥を捕まえてこっそり食べ始めるといういきなりの暴挙に驚き。
    「スワン鍋」とか、何の冗談かと思ったら本当に公園の白鳥食べちゃうんだもんなぁ。こういうブラックでとぼけた会話など、著者の独特のテンポがとても楽しいです。
    昨夜発見した死体が翌日なくなっているという謎をきっかけに、人間の自然な振る舞いについての捻くれた考察が思わぬ結末に。
    他殺体を発見しときながら、追求するのはそこじゃないというのがおもしろい。
    死体や、白鳥を食べた残骸などの非日常が人間の不自然さに覆い隠され、結末といい不気味さが漂います。

    【閏の花嫁】女二人の往復書簡によって展開する物語。一人の男を巡る女同士のちょっとした嫌味の応酬とかが楽しい。
    何となく胡散臭い結婚の話がどこに向かうのかわからずハラハラするのですが、からかいのネタだった大食いや太っていることがあんな結末の伏線になるなんて。

    【煙の殺意】デパートの火災が気になり、殺人事件の現場でテレビを見だして片手間に捜査する刑事がおもしろい。
    アリバイトリックが成された殺人ですが、じゃあ、そのトリックが何の為にという展開からの動機が凄い。話の持っていき方が楽しいです。
    確かに犯人の思考と行動は合理的な気がする。恐ろしい考えではありますが。

    【狐の面】マジシャンの著者らしく、山伏たちの奇怪な興行の種明かしが興味深く楽しかったです。
    解決の仕方が洒落っ気と人情味があって良かった。

    【歯と胴】女と愛人の男が夫を亡き者にしようと企むサスペンス。ところが、いざ決行!という時に思わぬ展開になりました。
    「そっとされるのが好き」という女の本意がこんなところにあったとは!

    【開橋式次第】大家族のどたばたがとっても楽しい。名前を覚えられず適当になったりとかが笑えました。
    迷宮入りになった事件と同じ事件が発生するという魅力的な展開ですが、そんな理由で犯人と決め付けていいのか?

  • つまらない本は途中でまだ終わらないのかなとつい思ってしまいますが、面白い作品は永遠に続いてほしいと思わせる力があります。

    もちろん、本書は面白さ抜群です。

    文章も格調高いものからユーモラスなものまで様々なバリエーションで読んでいて作者の芸の深さを堪能できますが、私は特に「狐の面」が昔の興行師のだましテクニックと童話のような雰囲気を持った作品として印象深かったのでおすすめです。

    文庫本解説の澤木喬氏の文章もよかった、これだから文庫本はお得ですよね。

  • やっぱ上手いんです。たわいない、けどどんどん読まさせられる。
    椛山訪雪図 紳士の園 閏の花嫁 煙の殺意がいいかな。

  • 泡坂妻夫の妙技を凝らした品々を堪能する、傑作短編を八編収録。

    つくづく「泡坂さんはホワイダニットの作家さんなんだなぁ」と思った短編集であった。
    なぜ、犯人はそのような犯行をしたのか? なぜ、そういう行動を取るに至ったのか?
    ここらへんの心理的ロジックを描かせると、泡坂さんの筆は冴えに冴える。一見突飛過ぎるロジックも、不思議と動機としてしっくり来るのだ。まさに、「こんなの現実にはありえない」とわかりつつ、その「騙し」を堪能するトリックアートのような、めくるめく騙し絵の世界である。

    この短編集のうち、ホワイダニット作品の白眉はやはり「紳士の園」と「煙の殺意」だろうか。読んでいて、泡坂さんのデビュー作「DL2号機殺人事件」を読んだときに抱いた、ロジックの鮮やかさが蘇ってきました。

    しかし、やや難点も。
    とてもバラエティーに富んだ作品であるし、ミステリーとしてロジックはどれも読み応えがあるのだが、いかんせん文章に膨らみがあまり感じられないため、読んでいて少々飽きてくる。
    少なくとも、一気読みはおすすめできない。また、主人公達に感情移入できる、というわけでもない。

    手品はただやってもらうだけでは、物足らない。いわくありげに、余裕を持って、たっぷり演出を利かせて、十二分に堪能したい、というのがわがままな観客の要望。
    そして、それに応えてこそ、マジシャンは本当に「マジック」を使う人になるのだと思う。
    そういう意味で、もうちょっと文章にも気を使って、お話にも膨らみを持たせてもらうと、ありがたかったのにな・・・というのが、わがままな客の、ショーのあとの寸評である。

  • ミステリのトリックはマジックの種に通じるものがありますね。ミステリ作家兼マジシャンの泡坂先生の作品です。一通り読んでみて、それぞれの短編の個性豊かさに感動します。ホームズを彷彿とさせるもの、絵画に隠された秘密、んなバカなと思ってしまうオチ。しかもどれもただのミステリじゃなく、読み物として楽しめる伏線が張られていたり笑えるやり取りがあったり。ただ機械的に謎を解くだけじゃない、そういった遊び心が読み手には嬉しいです。表題作の「煙の殺意」、「歯と胴」がお気に入り。

  • 短編集。どれも泡坂作品らしいテイストに満ちている。仕掛けのインパクトは長編には及ばないが、中でも恋愛ものには味わいがある。マイベストは最初の「赤の追想」。

  • 肩の凝らない多種トリックの妙技は、マジックの華麗な舞台を見るように目の前でくるくると景色を変え、こちらも目を白黒させながら読む。

  • 《傑作。大傑作短編集。》
    兎に角読んでほしい。
    どの話も意外性あり、怖さあり、豊かさがあり。
    どれもこれも面白くておすすめの一編を決められない。

  • 以下ネタバレ。



    「紳士の園」の、スワン鍋を巡る不思議なやり取りから、この人らしい面白さが味わえるようになってきた気がする。
    ラストシーンの飛躍が、個人的には好き。
    あ、そう締めますか!みたいな。

    「閏の花嫁」シボニスータ。気になる。シボニスータ。

    「煙の殺意」も、犯行動機の奇妙さ、でも不意に犯したことによる死者の数に耐えられなくなる人間心理というのも、あながちあるように思えて、面白く読めた。

    「歯と胴」は、二度面白い。
    一度目は、死体を無茶苦茶にしたわりに歯を含んだ石鯛を彼が食べられなくなるというシーン。
    二度目は、妻が殺されたことを知らず、教授が浸る幸せさえも滲んでゆくシーン。
    こういう視点で描かれた話はまだ読んだことがなくて、なるほどと思わされた。

    米澤穂信のお薦めらしい、と聞いて読んでみたものの、自分が生まれる前に書かれた作品とは思えないくらい、なんか発想や書き口が若い!
    ちょっと驚いてしまう。

    一人が殺されることのストーリーが組み立てられていくのに、その一人が突然パーツになるというか、俯瞰される構造が楽しかった。

  • 短編集ですが、おもしろいですよ。表題作の犯行理由にはうならされました。

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著者プロフィール

泡坂妻夫(あわさか つまお)
1933~2009年。小説家・奇術師。代表作に「亜愛一郎シリーズ」など。『乱れからくり』で第31回日本推理作家協会賞。『折鶴』で第16回泉鏡花文学賞。『蔭桔梗』で第103回直木賞。

「2020年 『秘文字』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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