妖女のねむり (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 1-10)
- 東京創元社 (2010年6月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488402204
作品紹介・あらすじ
わたしたちは結ばれることなく死んでいった恋人たちの生まれかわりよ。十五世紀のフィレンツェで巡りあったジュリアーノとシモネッタは悲恋に終わり、西原牧湖だった二十二年前のわたしは、平吹貢一郎だったあなたを殺してしまったの。今度こそ幸せになりましょう…。初対面のはずが深いところで響き合う真一と麻芸。前世をたどる二人が解き明かしていく秘められた事実とは。
感想・レビュー・書評
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謎をてんこもりにして走る物語は夢中で読んだが、タネをロマンと見るか非現実と見るか……。渋く枯淡な雰囲気は、米澤穂信が影響を受けているのを感じる。
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夢見心地とはこのことだろう
輪廻転生によって、運命の再会を果たした真一と麻芸。前世から現世、そして来世へと時は巡っていきます。波乱の展開を経て、様相が大きく変わりますが、夢から醒めることはありません。再生の先に待つのは、奇跡か、それとも悲劇かーー
氏の才が集結した幻想ミステリの極致。 -
導入の樋口一葉の遺稿というフックにまずグッときた。転生についてのタネ明かし、そして思想にとり憑かれたあの登場人物周りの描写が最後カチカチとハマって一つの絵になるような謎解きにグワーってなりました。ラストも美しい……
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「生まれ変わり」をテーマに据えつつ展開される前半はとてもロマンチック。前世では不幸があり結ばれなかった二人が、前世の謎を探るうちに明らかになる事実。
ラストでの怒濤の解決編と、しっとりと締めるラスト1行。素敵でした。 -
最後の一行で、涙がこみあげてきた。
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技巧派ミステリの代表選手、泡坂妻夫の隠れた傑作ということで、期待が大きすぎたのか、完成度が少し足りない感。でも舞台設定は最高にロマン主義。ボッティチェリの人物画の生まれ変わりのような日本人女性マキコは、21歳で恋人と不審な死を遂げていた。人物画の主は15世紀のメディチ家ジュリアーノの愛人で、やはり21歳で殺害された美女シモネッタ・ヴェスプッチ!マキコのさらなる生まれ変わりと自身で気付いたマキはあと一週間で21歳を迎えるその日、マキコの恋人の生まれ変わりの貧乏学生シンイチ君と出会ってしまうのだった。」これだけでもおなかいっぱいなのに、他にもいろいろネタを盛り込み過ぎて、誰が誰やらついてくのがやっと。普段本を読まないおさーるはじめ一般ピープルはおいてきぼり確実。ありえない三世代の輪廻転生の謎も、最後にはつじつまがしっかり会うのは、さすがの名人技。見破られた犯人が泣き顔から突然鬼の形相になって爆走したり、タネ明かしはどこかマンガチック。人が目の前で死んでも、あわてず騒がず冷静に話が進んでいくのもパズル感覚。本格ミステリはこうでなくっちゃ。
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「生まれ変わり」という幻想的なテーマを使いながらも、奇術師らしい仕掛けに溢れた本格ミステリの傑作でした。主人公が随所で感じる既視感で、輪廻転生は事実ではないかと読者に思わせてしまうあたりも秀逸。
そして魅力的なヒロイン。ミステリでここまで可愛らしいヒロインがいたでしょうか?なんて現を抜かしていると、あんまりな展開に絶望。そこから物語は一気に結末を迎えます。
たくさんの人物の思惑が絡まって成された事件の構図は、トリックあり、作者らしい異形のロジックありと本格ミステリとしても申し分ないものです。
事件が収束して迎えるラストも美しく、幻想的な趣を深めています。