りら荘事件 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488403140

感想・レビュー・書評

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  • 皆さんが書いているように、本当に古典と言えるくらい古い印象。
    そのせいでなかなか没頭できず、ラストも足踏みしながら読むほど。

    殺人が多い方が好きな私としてはワクワクもあったし、どんでん返しがあるという事だったのでその期待もあったけど、不完全燃焼状態。
    えー!それあり?的なラストでドッと疲れた。

    ただ、名探偵星影さんがさらりと謎解きして去って行く昔ながらのヒーローっぽいところは嫌いじゃないので★2。

    遍菜的キャスト
    (役の年齢に合わせた姿でイメージ)
    行武…中川大志さん
    尼…早見あかりさん
    牧…ソンフン(ENHYPEN)
    橘…賀来賢人さん
    紗絽女…宮崎あおいさん
    安孫子…濱田岳さん
    星影…松田龍平さん

  • 王道のシチュエーションにワクワク。
    こういう展開がたまらなく好き。
    犠牲者の多さに驚いたが、容疑者が減っても結局真相見抜けず…。
    時代が古いせいもあると思うが、推理に必要な予備知識に一つ明らかに特殊なものがあったのがややアンフェアに感じた。

  • 〇 総合評価  ★★★☆☆
    〇 サプライズ ★★★☆☆
    〇 熱中度   ★★☆☆☆
    〇 インパクト ★★★☆☆
    〇 キャラクター★★★☆☆
    〇 読後感   ★★☆☆☆
    〇 希少価値  ★☆☆☆☆

     1958年(昭和35年)に書かれた作品。そのため,文章や時代設定はやや古臭い。しかし,事故死と2人の犯人による殺人事件を数字が連続するトランプを残すことで,一人の犯人の犯行と誤信させようとしたプロットそのものにはそれほど古さを感じさせなかった。このメインのプロットを支えるために細かいトリックが色々と仕込まれている。犯人の1人である尼リリスが砒素耐性がある体質だったことも使われている。これは捨てトリックではあったが「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた 」でも使われているトリック。この作品でもサブトリックという位置付けとなっている。ほかにも買った魚を釣ったと思わせることで死亡時間をごまかすトリックや探偵が最後に仕掛ける罠まである。そもそも,第1の犯人である尼リリスは松平紗絽女と橘秋夫という二人の人物を殺害することが目的だったにもかかわらず,犯行がバレそうだと思ってあと3人の人物を殺害してしまう。まるで「金田一探偵の事件簿」を思わせるような現実離れした展開。そもそもの犯行が杜撰だし,いくらなんでも気軽に人を殺し過ぎである。この作品にあまり古くささを感じなかったのは「金田一少年の事件簿」シリーズでこういった展開に慣れているからかもしれない。
     犯人捜しという観点から見ると,第1の犯人である尼リリスについては意外性がある。しかし,しっかりとした伏線がちりばめられた意外性で「やられた」と感じるといったほどではない。作品全体としての意外性が落ちてしまうのは,登場人物全体の割に殺人が多すぎるということも関係している。犯人になり得る主要な登場人物は10人。そのうち6人が死亡。リレー的に殺人事件が起こることで,既に死亡した6人の中に1人犯人がいるが,生き残った4人の中で全員を殺害できる可能性があったのは1人しかいない。そのため「これって犯人が複数いるんじゃない?」と予想できてしまう。この点がサプライズ感を損ねている。熱中度もそこそこ。これは古い作品であることが原因だと思う。時代設定や風習が違い過ぎているため,それほど感情移入ができず,一歩引いた目線で見てしまう。
     1958年当時としては,斬新なミステリだったのだと思う。今となっては「金田一少年の事件簿」シリーズのような荒唐無稽なミステリ。バカミス的とも思えてしまう。しかし,面白くないわけではない。飽くまでリアリティのない殺人のゲーム小説として読めばそれなりに楽しめる。今から60年以上も前に書かれた作品であることを踏まえると,今後も古典として生き残っていく可能性があるミステリだと思う。評価としては★3で。
     
    ● メモ
    ● スペード1の事件
     炭焼きの須田佐吉が崖から落ちて死亡。尼リリスのレインコートとスペードの1のトランプが側にある。真相は事故死。真犯人の尼リリスがアリバイを作るためにトランプとレインコートを置いた。
    ● 尼リリスのトランプからスペード全部とハートの3クラブのジャックが盗まれる。
     スペード全部を抜いたのは尼リリス本人。ハートの3とクラブのジャックを盗んだのは日高鉄子。日高鉄子は尼リリスのトランプを汚してしまい,同じトランプを買ってこようとして盗んだ。
    ● スペード2の事件
     松平紗絽女が毒殺される。犯人は尼リリス。尼が砒素に耐性がある体質だったことを利用した毒殺トリック
    ● スペード3の事件
     川で橘秋夫の死体が発見。犯人は尼リリス。凶器はナイフ。実は松平紗絽女より先に殺害されていたが,「トランプのカードの数字を入れ替える」,「ビクに買った鮎をたくさん入れて置き,釣りをしていた時間をごまかす」,「凶器のナイフが松平紗絽女の事件のときは松平紗絽女が持っていたと,行武栄一の赤緑色盲を利用して誤信させる」というアリバイトリックを使った。
    ● スペード4の事件
     園田花が殺害される。犯人は尼リリス。園田花は,尼がスペード1の事件でレインコートに入れていた万年筆を使っていることを目撃していた。その時間に尼が万年筆を持っていたとすると,須田佐吉がレインコートを盗むことができない。尼は犯行がバレないように園田花を殺害する。
    ● スペード5の事件
     行武栄一が殺害される。犯人は尼リリス。行武栄一の赤緑色盲が2番目の3番目の殺人の順番を誤信させるというアリバイトリックに使われている。このことがバレそうになったので殺害された。
    ● スペード6の事件
     探偵役として推理を進めていた二条義房が殺害される。犯人は尼リリス。動機は,二条が真相を知りつつあったため
    ● スペード7の事件
     尼リリスが殺害される。犯人は日高鉄子。動機は,日高鉄子が思いを寄せる安孫子宏が逮捕されている状態で殺人をすれば,安孫子宏の容疑が晴れると思ったため
    ● トランプの仕掛け
     最初に死んだ男は事故。尼リリスはこのときにアリバイがあることを踏まえ,連続殺人に偽装することで容疑から外れようとする。そのため,自分のトランプが盗まれたことにして,スペードの1から順番に死体の側に残すことで連続殺人のように見せかける。
     日高鉄子は,尼のトランプを汚してしまい,見つからないようにするため,東京に戻って同じトランプを用意していた。尼を殺害し,そのトランプを残すことで連続殺人に見せかけた。
    ● 星影龍三の罠
     日高に,尼リリスのトランプが見つかったと思わせるという罠を仕掛ける。これで日高が犯人であることを暴く。
    ● 学生達が持ってきた洋酒が減っていたという謎
     学生達が持ってきた洋酒をこっそり飲んでいたのは万平だった。

  • 二条くんの末路は、すべての名探偵たちが肝に銘じておくべき

  • まあありがちな別荘密室殺人ものでした。殺害順に関するトリックというのも既視感があったためうーんという感じ。

  • りら荘で起こる連続殺人を扱った本格ミステリーです。読む前から面白いという声を聞いていたので楽しみにしていました。
    細かいところも伏線になっていて終盤の探偵の推理は特に楽しく読めました。
    ひとつ気になるのは警察が無能過ぎるのではないかと感じてしまいました。事件を解くことは出来なくても一人一人の行動を聞いて裏を取ったりアリバイがあるのかをきちんと確認出来ないものなのかという疑問が残りました。
    あくまで、この小説の良さとして、りら荘で巻き起こる連続殺人、謎のトランプ、そして学生たちの人間関係や軋轢が魅力です。この大きな事件を解く名探偵を引き立たせるためには警察は多少、実力不足にするのは納得ですが少し気になってしまいました。
    それでも、非常に面白いと感じたので★4に近い★3にさせて頂きます。
    鮎川哲也さんの著書を今回初めて読んだので他にも読んでみたいですね。

  • 2019/8/29読了

    カードでナンバーの振られた連続殺人。どこかで順番をひっくり返したトリックが入っているに違いないと踏んだが、結局最後まで騙された。

  • 「鮎川哲也」の長篇ミステリ小説『りら荘事件(英題:Villa Lilac Case)』を読みました。
    「有栖川有栖」、「中町信」の作品に続き、国内のミステリ作品です。

    -----story-------------
    スペードのAと共に発見された男の屍体。
    芸術家の卵たちが夏季休暇を過ごす〈りら荘〉に「由木刑事」がもたらした変事の報は、続発する殺人事件の先触れだった――。
    捜査当局が袋小路に迷い込んだ後、颯爽と現れるや美事な幕切れを演出する「星影龍三」の推理とは。
    再読三読によって妙味が増す端麗巧緻なギミック、限定状況における犯人捜しの悦楽。
    超絶技巧の筆さばきをとくとご覧あれ。
    「鬼貫警部」登場の『黒いトランク』と双璧を成す、巨匠「鮎川哲也」の代表作。
    解説=「佳多山大地」
    -----------------------

    1953年(昭和28年)に刊行された中篇『呪縛再現』を、リライト・長篇化して1958年(昭和33年)に発表された作品、、、

    『東西ミステリーベスト100』で、日本編で第33位ランクインしている作品です。

     ■一 霧雨の死
     ■二 ハートの3とクラブのジャック
     ■三 第二の殺人
     ■四 砒素
     ■五 赤いペンナイフ
     ■六 スペードの4
     ■七 謎の数字
     ■八 暑い街で
     ■九 スペードの5
     ■十 二条の自信
     ■十一 解決近し
     ■十二 屋根裏にひそむもの
     ■十三 トリカブト
     ■十四 薔薇の寝床
     ■十五 星影竜三
     ■十六 青い夕焼け
     ■十七 カードの秘密

     ■創作ノート
     ■解説 驍将が遺した「新本格」ミステリ 佳多山大地

    残り少ない暑中休暇を過ごすべく、秩父山中にある大学の寮・りら荘に集まった日本芸術大学の七人の学生たち… 画家や音楽家を志す芸術家の卵で、一癖も二癖もある個性派揃いである上に各様の愛憎が渦巻き、どことなく波瀾含みの空気が流れていた、、、

    一夜明けて、りら荘を訪れた「由木刑事」がある男の死を告げる… 屍体の傍らにはスペードのA。

    対岸の火事と思えたのも束の間、火の粉はりら荘の滞在客に飛んで燃えさかり、第2の犠牲者は学生の一人だった… 当然の如くスペードの2が、、、

    災厄は次々と学生たちに… カードの数字が大きくなるにつれ犠牲者は増えていく。

    進退窮まった当局の要請に応じた名探偵「星影龍三」が奇怪な連続殺人に挑む……。


    偶然死んだ人、狙われて殺された人、真相を知りそうになり殺された人… 複数の動機が入り混じった連続殺人なので、なかなか犯人が特定できませんでしたね、、、

    でも、一つひとつの殺人に動機があり、凝ったトリックがあり、そして探偵が見事に事件を解決 と、本格ミステリとして愉しめました… トランプのカードもちゃんと意味がありましたしね。

    「鮎川哲也」の作品は初めて読みましたが、好みの作風です… 他の作品も読んでみたいですね。

  • 面白かった!!
    ミステリを読んだ!!!って感じがする(語彙力)

    上手く表現出来ないけど最近の事件事件事件!!!みたいなミステリじゃなくて余白?余剰?があってもちろんそれもミステリの一部で後々事件解決のヒントだったりするんだけどそういう描写があるミステリ好き。
    もちろん前者のミステリも好き。

    一度読み始めると最後まで勢いで読めた。

    強いて言えば最初の探偵役?があとから出てきてあっさり殺されちゃうのびっくりして笑ってしまった。
    警察が少しのんきすぎないかともおもった。

    地元の医者ドン引きするだろうな。
    死体の数。

  • 警察側の人間があまりにものんびりと構えているので犯人かと疑ってしまった。
    色々な種類の伏線回収が楽しかった。

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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