内部の真実 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 79
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488407025

作品紹介・あらすじ

戦中の台湾、本島人の邸の庭で起きた日本軍人の決闘騒ぎ。一方は銃殺され、一方は頭部を殴られ意識不明の状態で発見された。単純な事件と思われたが、現場に残された二挺の拳銃はどちらも指紋が拭われていた。現場の庭は三方を壁と扉に囲まれ、残る一方を闇の幕で隔てられた一種の密室であり、謎は次第に混迷の色を深くしてゆく……。推理と恋愛と幻想が混然一体となった、戦後を代表する本格推理の逸品を創元推理文庫に収録する。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリー小説には違いないが、日本統治下の台湾が舞台ということもあってか、非常に文学的な香りのする作品である。台湾語(中国語?)が随所に出てくるがゆえの読みにくさはあるが、情景描写などはとても緻密で、ときにミステリー小説を読んでいたことをわすれてしまいそうになる。
    一方、ミステリーとして用意された舞台は、きわめて骨太だ。日本人の軍人同士での決闘騒ぎ。片方が撃たれて死ぬが、撃ったとおぼしき銃には銃弾は装填されておらず、撃った形跡も認められない。あまつさえ、現場に残された二挺の銃は、いずれも指紋が拭きとられている。このシチュエーションから同じ隊の軍人が事件の検証をするが、真相にたどり着いたと思いきや、別の矛盾が生じる。正しいと思われた仮説が、新たな謎を生む。パズルのようなストーリーに、読み手もおぼつかない足場の上を歩かされるような、迷宮の中を彷徨うような感覚に捉われるだろう。
    日影丈吉の作品は初めて読んだが、単なる犯人当てや謎解きといった既定の枠にとどまらない、その意味で文学性の高い作品を書く作家であった。パズルのような物語は、完全に理解するためには再読が必要なのかもしれない。だが、それ以上にストーリーテラーとしての日影丈吉を楽しんだように思う。
    いずれ再読するかもしれないが、今は、良質な物語を読み終えたあとの余韻にしばし浸っていたいと思う。

  • 戦中台湾で起きた帝国軍人同士の決闘騒ぎ。一方は銃殺され、もう一方は、頭部損傷で意識不明で発見されたが、不可解な点が.....
    記録者である小高が真相を暴こうとするも、その実は.....
    読み進めても一体誰が真犯人かわからない

  • 他の出版社で出されたものを創元で復刊……とのこと。なので再刊となるようですね。
    第二次大戦中の台湾で起こる曹長殺人事件。謎が謎を呼ぶような展開、捜査をしてもなかなか決め手を欠く状況にやきもきしながら読みました。楽しかったです。

  • 随分、前に書かれたもので文章が現代文ではないから読みにくく、物語に入るまでも少し時間はかかったがそれでも面白かった。
    ミステリーなんだけれど、ちょっとした浮遊感?クラゲが浮いている様な、フワフワしたもの?そういうものが作品の中に存在して不思議な印象もした。

    終始、真犯人が誰か?!という括りで進んでいくが様々な人間の証言によって掻き回されて最後の最後で、こいつが真犯人か!?と思ったけれど、よく分からないまま終わってしまった。いつもならこの作品みたくあやふやな終わり方すると、モヤモヤだけが残って、えぇい!!ハッキリ解決しろ!と言いたくなるが何故かこの作品に限っては、そのあやふやな終わり方が良い。真昼の白昼夢みたいな。

  • 2018/02/09読了

  • 昭和20年、日本軍占領下の台北が舞台。ある街に駐在している分遣隊で曹長が射殺される事件が起こる。美しい地元の娘・恒子をめぐって下士官と決闘しようとした際の事件、しかし当の決闘相手は直前に殴られ意識を失っていた。はたして真犯人は・・・?

    基本的に事件はこの1件だけ、次々と死者が出たりはせず、ただひたすら、いったい誰が曹長を殺したのかで推理が二転三転する。語り手(記録者)は小高軍曹、推理役は本部から派遣されてきた勝永伍長だが、実はこの語り手が信用できないので読者は振り回されることになるのだけれどそれすらミスリードの罠だったり、とにかく最後まで飽きさせない。

    玉蘭の花の咲き乱れる庭、美しい姉妹、台湾の独特の地名や風習など、難読漢字も多いけれど異国情緒があってロマンチック。終盤ついに明らかにされる真相も、なんというかある意味ロマンチックだ。出てくるのは軍人ばかりだしタイトルは堅苦しい感じもするけれど、中身は異国情緒だけでいっそ耽美かも。

  • 河出文庫から短編集が出ていたが、長編小説が創元推理文庫で復刊。
    台湾を舞台にしたエキゾチックな長編ミステリで、幻想的でもある。ミステリとしても逸品なのだが、台湾の、蒸し暑い空気が紙の上に立ち上っているかのような風景描写も素晴らしい。

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著者プロフィール

日影 丈吉(ひかげ・じょうきち):1908年、東京都生まれ。小説家、翻訳家、料理研究家。アテネ・フランセ卒業。フランス語教師および料理研究・指導者等を経験したのち、49年『かむなぎうた』で作家デビュー。56年『狐の鶏』で日本探偵作家クラブ賞、90年『泥汽車』で泉鏡花文学賞を受賞。91年没。

「2024年 『ミステリー食事学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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