- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488413019
作品紹介・あらすじ
●上橋菜穂子氏推薦――「日常が〈物語〉に変わる、その瞬間を鮮やかに浮かび上がらせた名品」
「私たちの日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることを教えてくれる」と宮部みゆきが絶賛する通り、これは本格推理の面白さと小説の醍醐味とがきわめて幸福な結婚をして生まれ出た作品である。異才・北村薫のデビュー作。
感想・レビュー・書評
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「円紫さんと私シリーズ」とゆう全6冊のリリースがあるようなんですが、先回何気に借りた本が「太宰治の辞書」でシリーズ最後の本だったようです。小学生の子供を持つ母親になってたのですが、1作目は17年まえの女子大2年生の「私」が主人公。「私」が日常で出会った謎を語り、円紫師匠が謎を解くとゆうミステリー。
文学部の学生の「私」は映画演劇文学に落語と相当詳しく感心するのですが私にはt対等に話ができる知識が不足しているので共感できずに面白くない。
日常の謎が解けたところでモヤモヤがスッキリするくらいで成程なあって思っても好きになれませんでした。繊細な表情を読み取って満足げなんでしょうが性に合わなくって途中で挫折しましたorz詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「おれもばかだが、おまえもばかだね。
そうやって浮世のつらさを笑い飛ばす。それが落語なんです」
これは大好きな落語家、立川談春さんの高座で聴いた言葉。
幼い頃たまに家族で連れ立っていく親戚の家が、まあ退屈で。
それで、年の離れたいとこの姉ちゃんの部屋にもぐり込んで、隠れて『少女フレンド』を読むのが唯一の楽しみ。
いまとなっては時代を感じさせる、白地にオレンジのトランプのスート柄の壁紙。そしてたくさんのぬいぐるみやファンシーグッズの数々。くまさんやうさぎちゃんに埋もれながら『はいからさんが通る』や『生徒諸君!』を読み耽る幸せ。
まあ、表面上は「しょうがなく読んでやってる」ポーズを取っていたけど。
北村薫さんの連作短編ミステリ『空飛ぶ馬』を読み始めた時、そんな懐かしさや若干のこそばゆさが蘇ってきた。
主人公の女子大生「私」(あっ、この印象的な女の子の表紙イラストは高野文子さんなんだ!)と探偵役の噺家春桜亭円紫師匠との洒落たやり取りと謎解きが面白い、いわゆる「日常の謎」系ミステリ。
しかし「日常の謎」系、などと簡単に言ってしまったが、北村薫さんの『空飛ぶ馬』こそ日本におけるこのジャンルのエポックメイキングな存在なのだろう。
「日常の謎」というと、人が死なないミステリ=ライトで軽いミステリを想像してしまいがちだが、殺人事件がないからといって明るく楽しいばかりでもない。いや、むしろ人が生きているからこその仄暗さというものもある。
『織部の霊』で薄ら感じた蔵の雰囲気。
『砂糖合戦』で象徴的に引用されるマクベス。
のどかで能天気な日常にときおり影が差す。
『胡桃の中の鳥』では、あっと言わされた。
それにしても円紫師匠、いや北村薫先生のやさしさ。
つらい浮世を噛みしめながらも、それをまるごと包み込むような温かさ。
キラキラしたお仕着せのハッピーエンドではない、不安な夜道を照らす蕎麦屋の提灯のような丸く柔らかいともしび。
そしてそんな蕎麦屋にやられたのが『赤頭巾』。秀逸。
学食でカレーライスを食べていたら、ふっと左の下の歯が浮くような感じになった。
こんな「まくら」から、歯医者の待合での世間話へ。
蕎麦屋の明るい提灯に誘われ、ふらふらと屋台へと吸い込まれる。
コミカルな『時そば』を注文して「いま何刻だい?」なんて言おうと思ったら、店の親爺がつるりと顔をなでて「おまえさんが見たのはこれかい?」とのっぺらぼうの顔をだす。
背筋がひんやりする転調。
人物造形が素晴らしく、ビジュアルイメージも鮮烈で切れ味鋭い「落ち」は見事。
表題作『空飛ぶ馬』はラストに相応しい。美しい締めくくり。
短編どれもが粒ぞろいの逸品だが、通して読んでいっそうふくらむ豊かな作品世界。
架空の存在であるはずの円紫師匠の襲名の縁起や芸談がとても興味深く、話(噺)をもっと聴きたくなる。
それから今作を含め五作ある、シリーズでの「私」の成長をもっと見守りたくなる(表紙イラストの変化も気になるところ)。
いちばんの謎はやっぱり人間。
織部嫌いも砂糖の大量摂取もあれが無くなるのも赤頭巾の出現も。
そして空飛ぶ馬も。
えっ、そんな理由でわざわざ? いや、そんな理由だからこそ。
「おれもばかだが、おまえもばかだね。
だから浮世は面白いし、人間ってぇのは愛おしいもんだね」-
お疲れ様です!
いつも沢山のお気に入りポチやコメント感謝感激です(^O^)
他の人にも書いてるけど
原因不明の発熱が
ずっと...
お疲れ様です!
いつも沢山のお気に入りポチやコメント感謝感激です(^O^)
他の人にも書いてるけど
原因不明の発熱が
ずっと続いてて
ちょっと体調崩してました(汗)
お返事遅くなってすいません!
てかてか、80年代の香り漂う
いとこのお姉さんの部屋の描写に
あまちゃんの春子の部屋を
瞬時に思い出しましたよ(笑)
しかも男の部屋でなく
お姉ちゃんの部屋ってところに
なんとも言えないリアリティがあるし(笑)
小学生の低学年くらいまでの頃って
性の違いを意識しつつも
まだ女の子と変な下心なしで遊べた
今から思えば貴重な時期でしたよね(笑)
自分は施設で育ったので
普通にいろんな歳の女の子と話したり
ままごとやおはじきで遊んだり、
kwosaさんと同じく
少女漫画も分け隔てることなく
普通に読んでたし、
今の自分の雑多な趣味嗜好の方向性も
その頃の環境が影響していることは
間違いないと思います。
しかしkwosaさんの
その気にさせるレビューは
いつ読んでも素晴らしい。
粋で人情味に溢れた落語が聴きたくなったし、
無性に屋台の蕎麦が食べたくなってきましたよ(笑)(>_<)
(この小説は前々から気になってたのでリストに書いてたんやけど、この機会に探してみようかな)
2013/06/26 -
まろんさん!
>実際の私は、たぶん、「私」から文学的素養を9割引き、
浮世離れ度を5割増し、ミーハー度を3倍くらいにした感じですが
あは...まろんさん!
>実際の私は、たぶん、「私」から文学的素養を9割引き、
浮世離れ度を5割増し、ミーハー度を3倍くらいにした感じですが
あはは。
それはそれで充分魅力的でございます。
週末は岐阜ですか。
お気をつけて。天候に恵まれますように。2013/06/28 -
円軌道の外さん!
体調を崩されているなかコメントをありがとうございます。
あまりご無理なさいませんように。
『あまちゃん』の春子さんの部...円軌道の外さん!
体調を崩されているなかコメントをありがとうございます。
あまりご無理なさいませんように。
『あまちゃん』の春子さんの部屋もリアリティありますよね。
まあ『あまちゃん』はリアリティの塊みたいなところはありますが(笑)
『空飛ぶ馬』は、まろんさんに教えて頂きました。いいですよ。
このシリーズはこれからも追いかけていこうと思っています。
なんか最近、自分のなかでじわじわと少女漫画ブームが来ているのですが、実はあんまり読んだことないんですよね。
でも円軌道の外さんとお話ししていると、俄然読みたくなってきました。
そして僕も無性に蕎麦が食べたい!
とりあえず『マルちゃん 正麺 醤油味』で我慢します。
では、いざ台所へ!2013/06/28
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104冊目『空飛ぶ馬』(北村薫 著、1994年4月、東京創元社)
著者のデビュー作にして、代表作である「円紫さんと私」シリーズの第1作。
仄かな自己陶酔と茫とした不安を抱えたどこにでもいる(というには少々博覧強記にすぎる気もするが)19歳の女子大生”私”と、千里眼のような推理力を持つ真打の噺家”春桜亭円紫”が織りなす連作短編ミステリー。
殺人ではなく、日常に潜む些細な謎に挑むという牧歌的な推理小説である点がユニーク。
高野文子による表紙絵も◎。
〈ーーどうです、人間というのも捨てたものじゃないでしょう〉 -
北村薫のデビュー作にして、女子大生の"私"・噺家"円紫"コンビのシリーズ第一作。「織部の霊」、「砂糖合戦」、「胡桃の中の鳥」、「赤頭巾」、「空飛ぶ馬」の5篇収録。
文学&落語好きな女子大生の日常を描いた私小説であり、日常に起こる不思議の謎を解くミステリーでもある。謎解き役は、神のごとき洞察力を持つ円紫さん。
ミステリーとしては、「赤頭巾」と「空飛ぶ馬」はなるほどと納得。でも、全体的にどうもしっくりこない。座りが悪いというか強引というか。
女子大生の落ち着いた日常がとてもいい雰囲気で、それにまた落語ワールドがいい薬味になっている。久しぶりに落語を聴きたくなった。YouTubeで探してみるかな。 -
北村薫作品を読むのは『ニッポン硬貨の謎』に続いて二作目。すぐに気づいた『硬貨』との共通点は、探偵役が何らかの道のプロで(硬貨ではミステリー作家のエラリー・クイーン氏、本作では落語家の春桜亭円紫)、相棒役はその探偵役氏のファン、かつその道の教養レベルがめちゃめちゃ高く、かつ女子大生であるということ。これが北村さんの十八番スタイルだったのかと納得。
印象に残ったのは、女性の生きづらさというようなものが主題のひとつになっている点。私は本書の解説で知ったが、北村薫は年齢も性別も非公開の「覆面作家」としてデビューしたらしい(そのデビュー作が本作)。女子大生の《私》の一人称小説を“おじさん”が正体を隠して書いていたというわけで、なかなか繊細さを要する事業と思われるが、嫌悪感や違和感をさほど(違和感は、多少はある)覚えずに読めたのは、人間観察力や筆力はもちろんのことながら、「大人になっていく愛娘の幸せを切に祈りながらももう見守ることしかできないことがわかっているお父さん」のような視点がどこかに常にあったからかもしれない。
各短編では、女性云々に限らず人の心の機微が丁寧に描かれており、米澤穂信も櫻田智也もこういう系統の流れにあったのかと今更ながら思い知る。「覆面作家」というキーワードがクイーンを思わせるところも気になるし、著作を丹念に追っていきたい。-
akikobbさん、こんばんは♪
デビュー作から既に北村さん自身の内面が垣間見えそうな、単なる日常の謎解きだけがメインで無い辺りに、aki...akikobbさん、こんばんは♪
デビュー作から既に北村さん自身の内面が垣間見えそうな、単なる日常の謎解きだけがメインで無い辺りに、akikobbさんの挙げられていた他の二人にも通じるものがありそうで、これは読みたくなりますねー。
そういえば、作家名だけ見て私も昔は女性なのかと思っていましたよ(^_^;)2025/01/05 -
たださん、コメントありがとうございます。
そうなんです、あのお二人の作品を読む時に似た、心に沁みる感じのミステリーでした。
考えてみると...たださん、コメントありがとうございます。
そうなんです、あのお二人の作品を読む時に似た、心に沁みる感じのミステリーでした。
考えてみると私はなぜ北村薫が男性だと知っていた(たまたま当たりだっただけで、「思い込んでいた」に過ぎないのですが)のだろう?というのが謎です。俳優の小林薫さんあたりの影響かな…^^;
恥ずかしながら「髙村薫」(読んだことはない)と混同していた時もあるんですが、髙村薫さんのことも男性かと思っていたら、今調べたら髙村薫さんは女性!思い込み多いなあ。でも作家さんとしては、こういう揺るがしの可能性も考えながら、筆名も含めて「表現」されるのでしょうね。2025/01/05 -
私も北村さんが男性だということを、いつ知ったのかというのは、はっきり覚えていなくて、おそらく何かの記事ではないかと思っているのですが、覆面作...私も北村さんが男性だということを、いつ知ったのかというのは、はっきり覚えていなくて、おそらく何かの記事ではないかと思っているのですが、覆面作家として書かれる方の思いとしては、性別によって作品を判断されるような先入観を無くしたかった気持ちもあったのかもしれませんよね。作家のことよりも作品に注目してほしいといいますか、設定にしても、玄人好みの雰囲気を感じます。2025/01/06
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日常系ミステリー短編集。
主人公の女子大生と探偵役の落語家さんも自己主張せず控えめで、派手さは無いが奥ゆかしさや上品さを感じた。
古典的名作文学や落語など知的で美しさをを感じる作品だった。
心温まる作品が多い中、少し毒気のある「胡桃の中の鳥」、「赤頭巾」が短編集を引き締めるのに効果的だなと思った。 -
不思議なタイトルと、高野文子先生のイラストに引かれ、初めて本書を手にしてから二十数年。何度目かの再読を終えた。読むたびに、ふぅと息をつきたくなるような充足感を覚える。
主人公の《私》は、これを書いている私よりもやや上の世代。当時大学生だった私は、《私》にシンパシーを覚えながら読み、新刊が出るのを首を長くして待ち続けた。青春時代に共にあった作品なのだ。だからこそ後日、北村薫先生に本書にサインをして貰えたとき、飛び上がるように嬉しかった。
円紫さんと私シリーズは、いわゆる日常の謎の嚆矢とされる。殺人事件や派手なアクションはない。むしろ、日常の中にこそ謎が満ちているという気づきは、人生を豊かなものにしてくれた。
本シリーズの探偵役は、噺家の春桜亭円紫。今回、再読をするにあたり、作中に登場する落語の演目を聴きながら読むということをやってみた。初読時には考えられなかったことだが、ネットに動画が氾濫している昨今、そんなことも可能になった。これが意外に面白い。お時間があればお試しあれ。
やはり今の北村先生の筆致よりはどこか「若い」感じがするデビュー作。本書の作品で私が一番印象に残っているのは「砂糖合戦」だ。舞台設定や小道具が今となっては古いので、あまりピンとこない読者もいそうだが、喫茶店好きの私はお店に入るたびにこの話を思い出していた。今でも何かの折にふと思い出す。日常の謎はホンワカしたものばかりではない。さっきまで笑っていた普通の人が突然、悪魔の表情を見せることがある。その冷たい悪意に、ぞっとさせられるものも少なくない。これはそういうお話だ。
もちろん、そこは北村薫。最終話の「空飛ぶ馬」は、人間の温かい一面を見せて、幕を下ろす。本書は短編集だが、一冊を読み終えたときに、さらに大きな満足感が得られるようになっている。それは保証できる。 -
後半より前半が面白く、すっかり円紫さんのファンなった。円紫さんに解けない謎はない。印象に残ったのは「砂糖合戦」女の嫌な部分というか、これは女性ならよく分かるんじゃないかという、このいやらしい感覚を男性が書いているということに驚いた。そして文体というか日本語が美しかった。
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女子大生と落語家が日常に潜む謎を解く。落語や文学、演劇など多岐にわたる話題が興味深い。初々しい女子大生の心理描写もいい。心が温かくなる。
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女子大生の「私 」と落語家円紫の5編の日常生活ミステリー。
各作品とも終盤近くになって登場する円紫によっていともあっさりと謎解きがされてしまう。
これらの作品はミステリーとその謎解きがメインではなく女子大生「私」のごく普通の日常を描くことが主眼であるように感じられる。
「胡桃の中の鳥」にいたっては女子大生の3人旅日記で終えるのではないかと思ったほどだった。
主人公「私」は国文科の学生ということもあり、とても文学、文芸、芸術に詳しい。
円紫さんとのその種の深い話もスムーズにこなす。
では実際の大学生で自分の専攻にキチンと詳しい学生はどれほどいるだろう?
大学に入る事で目的を果たしたつもりになって、その後に意欲をなくし、大学生という存在である事だけを拠り所に日々を漫然と面白おかしく過ごしてしまう人々が多いのではないだろうか。
作品の感想とはかけ離れてしまったけれど、自分のモラトリアム学生時代を振り返り今更ながらの反省。
著者プロフィール
北村薫の作品





