秋の花 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.70
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本棚登録 : 2004
レビュー : 208
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413033

作品紹介・あらすじ

絵に描いたような幼なじみの真理子と利恵を苛酷な運命が待ち受けていた。ひとりが召され、ひとりは抜け殻と化したように憔悴の度を加えていく。文化祭準備中の事故と処理された女子高生の墜落死-親友を喪った傷心の利恵を案じ、ふたりの先輩である『私』は事件の核心に迫ろうとするが、疑心暗鬼を生ずるばかり。考えあぐねて円紫さんに打ち明けた日、利恵がいなくなった…。

感想・レビュー・書評

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  • 読了日 2019/08/06

    円紫さんと私シリーズ第三作目。
    シリーズ初の長編か。

    いっぱい、はっとさせられるような言葉があって、
    何度でも読みたいと思う。

    『私』の後輩が亡くなった。その謎を解く話。

  • 円紫さんと私シリーズ第3弾はちょっと異色の長編。

    「私」のご近所さんで、高校の後輩である女子高生が学校の屋上から転落して亡くなった。親友を喪い抜け殻のようになった彼女の幼馴染のため、「私」は事故と処理されたその死の謎に迫ろうとするが・・・

    これまでの短編集と違い、女子高生の死をめぐる物語はどこまでも重苦しい。いつもならふんだんに盛り込まれる大学の友人の登場場面も少なく、円紫さんも最後になってやっと登場する。
    事件の謎に巻き込まれた「私」が、悩みながら真相に近づいていく過程で目にする、幼馴染の憔悴した姿に胸が締め付けられる。

    亡くなった女子高生の圧倒的な存在感。真相がわかった時の背筋が寒くなるような感覚。命のもろさを思い知り、だからこそ今「生きること」の重さを感じるラスト。
    「親としては許せないけど、救うことは出来る。救わなければならない」この円紫さんの言葉がとても重い。

  • 今回は長編。で、謎はとても重い。こんなにつらい話をあくまでも静かに綴るのが流石。

  • いつも一緒に過ごす幼なじみの真理子と利恵。
    高校の文化祭準備中に、真理子は学校の屋上から墜落死してしまう。親友を失った利恵は魂を抜かれたかのような日々を送っていた。ふたりの先輩である«私»は事件の核心に迫ろうとする。悩んだ«私»は、相談した円紫さんと共に真理子の母親と利恵に会いに行く……
    どうしても考えてしまうのは、利恵が真理子の死に何らかの関係があって、彼女はそれに押し潰されそうになっているんじゃないか、ということ。こうじゃなきゃいいのにという思いに引っ張られながら読み進める。

    運命の悪戯かのような事件の真相がわかったときのやりきれなさ。でも、それよりも大きく深く心に刻まれたのは最後にかけてのシーンだった。謎解きよりも、もっと大切なことが描かれていたと思う。
    円紫さんは言う。
    «許す»ことは出来ない。でも救うことは出来る。

    母だからこそ「許せない」
    だからこそ、母としてあなたを「救いたい」
    生きなさい。生きなさい。
    そう言われているようだった。

      ……………………………………………

    東京創元社文庫60周年、おめでとうございます。
    文庫創刊60周年フェアとして、人気漫画家による期間限定ブックカバー、作家推薦の「私が影響を受けた一冊」、読者そして社員が選ぶ文庫第一位などが紹介されています。
    わたしは、「読者が選ぶ第一位」から何冊か続けて読んでみたところ、どれもこの作品を知ることが出来てよかったぁと思えるものばかりでした。と、天野先生オススメ作品もね。
    しばらくは、このフェアのラインナップから抜けだせそうにありません。
    ぜひ、気になる方はチェックしてみてください。
    もちろん長年の東京創元社文庫ファンの方にも、あ、これこれ!入って当然だよね~なんて満足してもらえると思います。

    その中の一冊がこの「秋の花」でした。「泣ける」国内部門第一位です。因みに海外部門第一位が「少女はクリスマスに還る」、他の意見として
    「慟哭」「渚にて」が紹介されています。どれもおすすめです。

    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは♪
      円紫さんのシリーズはどれも良いお話ですよね。
      懐かしく思い出しながら読ませていただきました。
      泣ける部門だ...
      地球っこさん、こんにちは♪
      円紫さんのシリーズはどれも良いお話ですよね。
      懐かしく思い出しながら読ませていただきました。
      泣ける部門だったのですか?あれれ、泣いたのかな、ワタクシは・笑
      しんみり・・・として胸に染みたのは覚えていますけどね。
      創元社文庫60周年なんて、知りませんでした。こちらもラインナップを見てみますね。
      いつも心温まるレビュー、ありがとうございます。
      2019/04/07
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんにちは♪
      先週だったか雪が降ってびっくりしまし
      たが、だいぶん暖かくなってきました。
      いかがお過ごしですか?
      ...
      nejidonさん、こんにちは♪
      先週だったか雪が降ってびっくりしまし
      たが、だいぶん暖かくなってきました。
      いかがお過ごしですか?

      コメントありがとうございます!
      円紫さんシリーズ、本棚を見てみると
      「夜の蝉」から「太宰治の辞書」に飛ん
      でました。何でだろ?
      ということで、久しぶりに«私»の世界に
      戻ってきました。
      そうなんです。「泣ける」国内部門第一
      位でした。最後にね、ぐっときました。
      真理子のお母さんの視点に立ったからか
      もしれません。
      お母さんには、本当は分かっていたの
      じゃないのでしょうか。
      利恵に着替えをさせる場面、準備された
      洋服。そして最後のひとこと。
      円紫さんの言う「許せない」気持ちと
      「救いたい」気持ちが忍ばされているよ
      うで、胸が痛くなりました。

      死ぬまでにあと何冊本が読めるんだろう。

      読み終えたあとに余韻が残る。
      いろんな想いに熱くなったり、心許なく
      なったり。
      そんな感情が揺さぶられる物語に、どれ
      だけ出会えるのでしょうか。
      何だか壮大なことになってしまいまし
      た(^-^;)
      2019/04/07
  • シリーズ3作目も面白かったです。
    今回は長編で、とても辛い事件だったのですが、円紫さんの静かな優しさにわたしも救われました。
    主人公の「私」と、友人の正ちゃんや江美ちゃんの会話はやっぱりちょっと変わってて面白いです。だんだん成長しているなぁ。
    でも私のお母さんの話し方が苦手です…娘にその言い方は無いなぁと思ってしまって。

    本編には直接関係はありませんが、今回、すごく残ったのが「耳食」という言葉です。
    「本でも絵でも音楽でも、他人に、これはいい、といわれて、それにとらわれてはいけない。それは評判を聞いて料理を食べ、闇雲においしいというようなもの。つまりは耳で食べているようなものだ。」という説明でした。
    耳食は頭でっかちということなのだろうか…聞くだけじゃなく、色々やってみようと思いました。

  •  北村薫の『私と円紫さんシリーズ』の一作目『空飛ぶ馬』(《私》19才、大学2年の5月から12月まで)、二作目『夜の蝉』(《私》大学2年生の3月から3年生の8月頃まで)につづく第三作目『秋の花』。
     過去二作が短編集であったのに対して、本作品は女子高校生の死の謎を解き明かす長編ミステリーとなっている。大学3年生の10~11月の《私》が描かれ、江戸川とその支流が流れる千葉県市川市と埼玉県春日部市が主な舞台となっており、国府台~真間の手児奈霊堂~里見公園~矢切の渡しを親友二人と散策した時の装い(プリントのTシャツに、小麦色のキュロットとベスト)が高野文子氏の描く表紙イラストに採用されている。
    「ついこの間入学したような気がする。二年と半分、一体何をしてきたのだろう」と過ぎ去った日々を反省しつつも、卒論のテーマはいち早く芥川龍之介に照準が絞れており、冷静に卒業というゴールを見据える、堅実に歩む学生としての面も映し出されている。

    読書の極意がさりげなく次のように綴られている。

     雑念のない子供の頃の読書には、没我の楽しみがあった。年齢を重ねると、そういう楽しみがいささか失われるかわりに、昔読めなかったところまで読めて来る。
     作家論というのは誰を論ずるにしたところで、しょせんは自分を語ること。

    亡くなった女子高校生―津田真理子は、《私》とも面識ある母校の後輩であり、「大人になった未来から子供である自分をしっかりと見詰めることが普通の子に出来るだろうか」と先輩の《私》をも感心させるほど意志が強く、早世しており、確かな明るい未来が待ち受けていたにもかかわらず“事故”でこの世を去ってしまう。こうした限りある生を描きつつも、この悲劇のヒロインが実は前作『夜の蝉』で祭の夜に《私》と擦れ違っていたり、そしてまた、『私と円紫さんシリーズ』に勝るとも劣らない北村氏の人気シリーズ『時と人シリーズ』の「スキップ」という作品で、時を旅する一之瀬真理子というヒロインとして甦っていることもまた、北村マジックのひとつとして語り草となっている。

    もう何年かすると、あなたもきっと誰かをここに連れて来るのでしょうね。そして自分の歩いた道を教えてあげる。その時、誰かは《この道はどこの道より素敵だ》と思うでしょう。

  • 円紫さんの超人っぷりは今回もかわらず!
    心が優しく包まれるような言葉の数々。季節が秋ってこともあるしテーマも関係してるのかどこか物悲しいトーンが作品全体に漂ってる。そんな中でも三人娘の掛け合いがクスッと笑わしてくれるタイミングが好き。

    旅行記のテイストも感じられる風景描写。その場で肌で感じているような感覚が文章から湧き上がってきて、技量の高さはあっぱれです。文学作品に絡めた話題の時は自分の無教養を呪うよね。でもなんとか噛り付いて読み進めていくのがまた快感だったりする。「私」が一歩ずつ成長するにつれて複雑な感情を胸に刻んでいる。円紫さんの温かさが無性に恋い焦がれる思いを呼びよこす。

  • 長編。
    探偵が出てくるとあっという間に解決してしまうので、円紫さんは最後の最後まで出てこない。円紫さんのファンにはちょっと残念かもしれない。
    物語の雰囲気はだいたいいつもの感じなのだけど、今回は人が死んでしまっているので、これまでの、「ちょっとした謎」とはやっぱり大きく違いますね。

  • 円紫さんシリーズ初の長編。せめて彼女の未来に救いがあらんことを。

  • 今回は長編。円紫さん出てくるまでが長くて少しつらかったが、終わりが深い!!
    謎が解明されてからさらにドラマが始まるような想像をかきたてる最後に、大満足の読了感
    もう一度読みたくなる。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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