六の宮の姫君 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (1999年6月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (284ページ) / ISBN・EAN: 9784488413040

作品紹介・あらすじ

最終学年を迎えた〈私〉は、卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、円紫師匠の教えを乞いつつ、浩瀚な書物を旅する〈私〉なりの探偵行が始まった。

みんなの感想まとめ

文学を巡る探求が描かれたこの作品は、主人公が卒業論文のテーマとして芥川龍之介を選び、彼の短編「六の宮の姫君」を深く掘り下げる過程を描いています。著者の独自の視点を通じて、文壇の歴史や文学の魅力が生き生...

感想・レビュー・書評

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  • 芥川龍之介や菊池寛らの作品をそこそこ読んでいたりして知識があればもっと楽しめたのだろうな。
    残念ながら芥川氏の作品をいくつか読んだことがある程度なので、話についていけなかった。

    著者の卒業論文がネタになっているというのもありながら、話自体が芥川龍之介を題材として卒業論文を書く過程であり、文学部の卒業論文はこんな風に書いてるのかという追体験ができて新鮮だった。

    自分が生まれる前の、大分昔の本を読んでも通じるところがあったり共感できたりして、人の命は無くならない、という話があって、読書の素晴らしさを改めて感じた。


    米澤穂信さんのエッセイ『米澤屋書店』にておすすめ本のひとつだったので手に取ってみた。

  • この一冊で10冊の本を読み終えたような気分になります。
    芥川の短編から端を発し、その当時の文壇をたっぷりと案内してくれます。
    著作と著作で会話する芥川と菊池寛の友情とその終わりに思いを馳せているうちに
    スッとこの小説は終わります。
    ジョンとポールもこんな感じだったのかな?とか
    ジミー・ロジャースとオスカーハマースタインの関係は…とか
    海の向こうの名コンビのことも考えてしまいました。

  • 「私」は卒論の準備に入る。芥川が「往生絵巻」「六の宮の姫君」を書いた背景が面白い。書く側と読む側の距離はどこまでも埋まらないものだろう。作者の孤独がそのまま深い苦しみにもなっていることが感じ取られる
    この「私」シリーズでは推理作家協会賞を受けた「夜の蝉」の評判がいい。姉妹の心のふれあいが感動的だし《私》の周りの人たちも生き生きと魅力的だ。

    それでもこの「六の宮の姫君」が私の中では一押しだと感じた。多分四作目になって、読み方の姿勢がちょっと変わってきたからだろう。

    《私》は出版社でアルバイトを始めていている、4年生になって「芥川」についての卒論に本腰を入れ始めた。

    切掛けは、芥川が「あれは玉突きだね。……いや、キャッチボールだ」と言ったということを知る。
    素材になった「今昔物語」を読んで今風のその言葉は謎だった。この部分はたとえが浮いた感じだけに、経緯や結びに興味を持った。

    《私》はそれが気になった。その疑問を解くため円紫師匠に相談し、全集を出すことになった縁で現在の文壇の長老と知り合い話を聞く。そして古書店で、評論や芥川の周辺にいた人物の生活を知り、芥川の日常を推理する。芥川が特に「六の宮の姫君」を書いた切っ掛けを探す。

    《私》のこのあたりの話は、実際に北村さんが書こうとした卒論の体験だそうだ。だから当時のそうそうたる文豪の作品や交流について詳しい。関係のある作品についても語っている。

    中でも「往生絵巻」は凄味がある、悪事を尽くした五位の入道が、阿弥陀様を慕って「阿弥陀仏 おおい、おおい」と叫びながら西に進み、ついに松の枯れ枝の上で死ぬ」それを芥川が書き、死人の口に白蓮華が咲いたとした、それを正宗白鳥はありえないという感想を書いた。それに芥川は手紙を書いたが、白鳥は譲らなかった。

    《私》は書いた当時芥川は遊び心だったかもしれないが白蓮華が咲くと信じたい人だったと思う、がその小説についての吉田精一、宮本顕治の意見を紹介している部分は読みごたえがある。
    芥川が「私の英雄」と慕っていた菊池寛が「首縊り上人」を書いた。菊池は手を切られても足を切られても生に固執する三浦右衛門の最後をかいた。それが人というものだと。

    芥川は自分が創造した五位の入道の最後を、菊池は心のうちの美しいものを足蹴にしたと思った。そして「六の宮の姫君」を書いた。狂った姫は死にぎわに仏の名を呼ぶことさえ出来なかったという話だった。「上人」の話は芥川の表の顔「姫君」は裏の顔だった。
    そして菊池と芥川は次第に疎遠になっていった。

    菊池寛についても、文藝春秋創設当時から直木三十五とのつながりで、芥川賞、直木賞を作ろうと菊池寛が言うところもある。
    今、文豪と呼ばれる 谷崎、川端、佐藤春夫、萩原朔太郎、山本有三、志賀直哉などなど。多くの人たちが芥川とかかわり、死後も当時の様子を書き残している。《私》の調べる道筋に同行して推理するのは面白かった。

    小説や評伝など参考資料にしたとある書名だけでも気合を入れて読みたい、昔タダ読んだというだけで通過した「今昔物語」を買って積んだ。いつか落ち着いたらゆるゆると読んでみよう。

  • 円紫さんと私シリーズ4作目。
    これまでとうって変わって、大きな謎や事件はなく、「私」が卒論のテーマである芥川龍之介のあるエピソードを調べるお話。
    特に後半は、「私」の目を通した芥川と菊池寛が描かれ、ほぼ名前だけしか知らない巨匠に興味がわきました。

    読むのは3回目。
    初読時は、日常の謎系とはいえ、「芥川龍之介の『六の宮の姫君』はキャッチボール」という、何が謎なのかもわからない展開に、正直ポカーンとなりました。円紫師匠の出番も少ないし。

    ただ、齢を経たせいか今回は「私」の成長譚としても、面白く読めました。

  • 円紫さんと私シリーズの4作目

    大学4年を迎え卒業論文を書くことになった「私」は、文豪・芥川龍之介をテーマに
    芥川作品の「六の宮の姫君」を掘り下げ、文学を巡る歴史の謎の探求に奔走する。

    "あれは玉突きだね。....いや、というよりはキャッチボールだ"

    メインとなる謎は芥川龍之介の謎めいたこの言辞。
    「六の宮の姫君」の作品誕生の秘話ともいえるこの言葉にはどんな意味あるのか....

    とっても難しかったです。
    芥川作品の中身をほとんど何も知らずにうん十年生きてきて...ほんと恥ずかしい...。

    それでもこの本を読むことで
    北村先生から芥川について少し学べた気がしています。
    何か一つでも読んでみなければ!と思えただけでも大きな収穫。

    今回「私」は大学4年生ということで
    新しい出会いありがあれば恩師との別れなどもあり、卒業
    そして就職と、大人になっていく成長の過程がぐぐっと大きく感じられました。

    なによりいちばんなのは「私」と正ちゃんとの友人関係。
    同じ価値観であれだけ議論しあえるっていいなぁ.....羨ましい。とても好きな場面です。
    そして加えてもう一つ、「円紫」さんと「私」の関係もすごく好き。
    自分より頭のいい人(年上で男性で! ^^)と、やっぱり同じ価値観を共にできる
    時間が過ごせるというのはもうね、羨ましいにほかなりません。

  • なんとも言えない読後感だった。
    いつも通りおもしろいんだけど、読み切るまでにはやや体力のいる作品だったなーというのが正直な印象。

    今回の『六の宮の姫君』は、小説という形態をとった、レポート、あるいは研究論文のようなものかもしれない。

    奇妙な縁が巡り巡って繋がり、友となった2人、芥川龍之介と菊池寛
    その2人の作品をつなぐ600年前に書かれた一つの話

    これらの話が繋がった時、そこに見えてくる『六の宮の姫君』の真実とは何か…。
    あまり馴染みのない、すでに存在する文学作品の成立と解釈についての謎を追った今作

    これまでの『円紫さんと私』シリーズは、日常の中で行き交うミステリを題材に、主人公の『私』の目を通して語り、探偵役の『円紫さん』がそれを鮮やかに解き明かすという形だったのが、今回は『私』の卒業試験のような形で、ほぼ全編を通して、『私』自身が『タンテイ』調査を行っていく。

    もちろん『私』は『円紫さん』のような快刀乱麻の推理力は持ち合わせてはいないので、一つ一つ地道に調べ、文献をあたり、読み込んで証言をつなぎ合わせていくうちに、やがて真相が現れてくる、という筋道は、これまでのような鮮やかな切り口ではないものの、しっかり読ませる北村薫さんの筆力もあって、最後までしっかりと味わい深い物語だった。
    なんというか、文学の歴史を旅してきたかのような読後感で、なんとも壮大な物語を読み切ったような気持ちになる。

    ただいかんせん、私自身が芥川龍之介と菊池寛、その他の大正の文学がわからないため、読み進めるのにはやや苦労したが、断片的に散っていた物語が次第に収束していく様子にはわくわくさせられた。
    もしこれらの作品がわかっていたなら、もっと楽しめただろうとは思うが、私のように知らなくても十分読んで楽しめる内容だとは思う。

  • 現況;
    「六の宮の姫君」については、以前に山岸涼子さんの漫画で読んだことがありまして。最近平安朝の漢文をよく読んでいることもあり、こちらも読ませていただきました。

    気づき;
    ☆慶滋保胤
    については、漢文の世界ではとても冷静な賢い人のような印象だった。しかし、今回改めて今昔物語 巻第十九 第三話 「内記慶滋の保胤、出家せること」を読んでみますと、結構感情的でほろほろしていて、ああこんな面もあったのかと思いました。説話文学のことゆえ、どこまで本当かはわからないですが。

    ☆芥川龍之介と菊池寛
    私は菊池寛についてほとんど読んだことがないですが、自分の考えは、どちらかというと菊池寛氏に近いなと思いました。襖もよく左右が反対になってますし(笑)。

    そうだからといって、「往生絵巻」の主人公の口に白蓮華が咲くのはけしからんとも思いません。そういう考え方の人もいるのかなという目で見ると思います。

    芥川龍之介は、佐藤春夫に自分の葬式に弔辞を述べてほしいと言ったそうですが。本当に弔辞をのべてほしかったのは菊池寛ではないのかと思いました。
    彼の「六の宮の姫君」で、唐突に慶滋保胤がでてくるのは、自分が死ぬ前に、菊池寛(=慶滋保胤)に、理解はしてもらえなくても、ちょっとだけでも憐れんでもらいたい、という願望ではなかっただろうか、と私は考えます。

    芥川氏の辛くしんどい人生を、何十年も後からではありますが、心から悼みたいです。
    また、彼が羨ましく憧れていた菊池寛氏にも、心の中には壮絶な孤独があったことにも胸を打たれます。

    北村薫作の小説部分は、それなりに仕込みがあったりするんでしょうけど、まあこの両巨頭のリアルな人生の前では、かすみのようにしか見えません。
    本編主人公も我々も、六の宮の姫君のようにうかうかと人生を過ごさないように、気をひきしめてがんばっていこうということかと思います。

  • 3回目くらいでしょうか。いまだなかなか難しいのですが、謎の解をちゃんと理解したくて、また、文章が美しくて、何回も読んでしまいます。

  • こちらは、北村薫さんに詳しい人ならご存知、
    いわゆる「円紫さんとわたし」シリーズの4作目です。
    1作目の「空飛ぶ馬」も、
    名作と名高い「秋の花」も、
    もちろん大好きなんですが、
    この作品で北村薫さんにハマり、
    ミステリの沼に片足を突っ込んでしまったと言っても過言ではありません。
    
    内容は、主人公「わたし」が卒論テーマとして選んだ「芥川龍之介」について調べていくうちに知ったとあるエピソードから「菊池寛」との謎のやりとりについて探偵していくというもの。
    北村薫さんが実際に卒論テーマとして書いていたものを下敷きにしているらしく、
    初読の時は
    「こんなミステリがあったのか!」
    と驚きました。

    あらすじだけ書いていたらめちゃくちゃ不思議なんですが、私、何度読んでももれなく号泣します。

  • 難しかった・・・作中に出てくる古典や芥川、菊池作品をほぼ未読ということもあり、ページを行きつ戻りつしっぱなし。今は誰のどの作品について話していて、それはどんな話だったか逐一戻って確認するという・・・。もっとも、自分が卒論を書いた時もこれぐらい熱中していればいくらか面白さも増したかもしれないなー。大学生だった過去の自分をふと省みて恥じ入りもした。
    互いに意識せずにはいられない相手がいるというのは、当人たちにとっては時に苦しいばかりな面もあろうが、第三者から見れば羨ましいものだなと思う。

  • 芥川龍之介にまつわる書誌学的ミステリー。
    文学部の学生でない私には難しくて、「私」が正ちゃんにドライブ中に熱く語る内容が頭に入ってこず、お恥ずかしい限り…
    でも結局このシリーズに共通の日常の謎、というか人生のあれこれが鮮やかに描かれる。
    今回も見方によっては、円紫さんの掌の上という感じがしてしまうけれど、あくまでも「私」が自分で試行錯誤し、卒論執筆や謎解きを通して、成長していく。将来への期待と不安に満ちたエンディングだと思った。

  • 《私》の関わる教授が芥川龍之介とすれ違っていたり、全集作りに携わることになった文壇の大御所の先生の口から菊池寛との思い出が語られる…!!なんだこの近代文学と地続きなかんじは!!

    《龍田の川の錦なりけり》百人一首
    《芥の川の知識なりけり》

    《あれは玉突きだね。⋯⋯いや、というよりはキャッチボールだ》
    から始まる書誌学ミステリー

    第三章
    『六の宮の姫君』のお話を一席、と《私》が正ちゃんにドライブがてら

    “どう考えたって自分のことをいってるんだものね”
    とか
    “『今昔』の巻十九を原作とした芥川の頭には、《慶滋の保胤(よししげのやすたね)》イコール《迷いなく己の道を突き進む人物》という確固たるイメージがあったのよ”
    とか

    この東北道を行くドライブでの調査報告が面白すぎる

    この言葉はいつからあったのか?を当たっていく高揚感。大好きです。“原典を当たる”という作業は文学部の嗜み。。、

    80-84正宗白鳥
    書誌学ミステリーと言わせる肩慣らしがここにある
    この数ページからしばらく抜け出せなかった




    そして『羅生門』の制作動機に触れている
    《(芥川は)「自分は半年ばかり前から悪くこだわった恋愛問題の影響で独りになると気が沈んだから、その反対になる可く現代と懸け離れた、なる可く愉快な小説を書きたかった」と語っている。》

    『羅生門』の最後の一文の話、知ってて良かったとこのときものすごく思った
    このあたりまた読みたい


    そして避けては通れない菊池寛の話。

    『無名作家の日記』について
    ここでも《私》が正ちゃんに解説してる体ですすんでく。周知の事実としてさくっと読めて嬉しい

    第五章
    円紫さんとの菊池寛と芥川の話いろいろ
    胸アツすぎる
    章のラスト素敵すぎた
    《私の英雄(ヒーロー)》
    泣いたよ;;;;



    谷崎潤一郎との『文芸的なあまりに文芸的な』からの論争
    7月24日河童忌が谷崎の誕生日
    “神様が悪戯をしたかのような”
    この後に続くシェークスピアとセルバンデスが同年同月同日に没した例から、私は昨年の大河ドラマ「光る君へ」で見た藤原道長と行成の二人を思い出したよ

    佐藤春夫
    『芥川龍之介を憶ふ』
    座布団と時計が被った偶然の暗合
    文豪たちの書簡、本当に面白い

    そして
    “《凝り性の芥川が、心血を注いで編輯した》五冊、百四十八編からなる副読本用文芸作品アンソロジイ、『近代日本文芸読本』”
    “どういうものを選ぶかという《選択そのもの》も立派に一つの作品”

    菊池寛が《最も、遺憾に思ふこと》は、死ぬ直前の芥川と話ができなかったこと⋯

    菊池の『文壇交友録』泣ける⋯

    それにしても芥川から菊池宛の書簡が全く残ってないというのは本当なのかな?それを菊池が徹底して残さなかったというのは事実?
    なにやらの異様な愛を感じるよ

    芥川の最期、、、何回読んでも、、、


    少年、菊池寛
    高松図書館の開館に歓喜
    菊池寛の話がどんどん膨らんだきたと思ったタイミングでの『頸縊り上人』との邂逅に“いささか興奮した”


    山本有三が菊池寛に『沙石集』を教えてる大正十一年夏のこと
    『沙石集』内『入水の上人の事』
    『身投げ救出業』を書いた菊池寛が
    『沙石集』内『頸縊り上人の事』を読んで、
    菊池寛が書く『頸縊り上人』大正十一年七月『改造』

    『往生絵巻』を書いた芥川龍之介が菊池の『頸縊り上人』を読んだ
    『六の宮の姫君』大正十一年八月『表現』
    《六の宮の姫君の父は、古い宮腹の生れだった》




  • 文庫化まで待とうと思っていたのだけれど、誘惑に負けて買ってしまった。『朝霧』の横に平積みになっているんだもんなあ。まあ、ハードカヴァーで買っても後悔はしない作品だと思いますよ。
    卒論に取り組むことになった《私》はテーマに「芥川龍之介」を選ぶ。ふとしたことでアルバイトすることになった出版社で芥川についての謎めいた逸話を聞かされるという筋。今回の謎は、その逸話の真実ということなのだが、そこに至るまでの当時の文壇についての調査、作家間の交流といった事柄がとても面白く読める。つまりは芥川についての作家論といった感じで文章が展開していくのだ。この「円紫さんと私」のシリーズでは異色の作品となっているような気がしますね。

  • 『六の宮の姫君』
    2024年2月29日読了

    米澤穂信氏が推薦していた一冊。
    「日常の中でおこるミステリーを書いてもいいんだ!」と目から鱗がこぼれたとか。
    気になって即読み始めてしまった。

    本書の謎は非常に濃い。
    一本の論文にもなろうテーマが小説という形をとって、私たちに示されている。論文ならば一部の研究者にしか読まれないだろうが、小説とすることでこのように多くの人の目に触れている。なるほど、こういうやり方もあるのかと思うわけだが、卒業論文を執筆したことのある身とすれば、論文という形で理路整然とした無味無臭の文章で結論を導くのだって苦労するのだ。物語の中でなど、言わずもがなである。
    しかし作者の北村薫は、それを華麗にやってのける。一般の読者を相手に、飽きさせず、置いてけぼりせず、だ。作者の文章力にあっぱれと言わざるを得ない。すごい、すごすぎる。

    恥ずかしながら、わたし自身、小説は一冊で完結するものと思っていた。
    でも、ほんとうは作家だって、生きていた社会情勢、交友関係の中で小説を書いている。それを考えれば、本書のように互いに作用しあう作品だってあるはずなのだ。自分にその視点が抜け落ちていたと反省した。

    メタ的な視点で作品同士の関係性を読み解く。
    「そんな読み方があったのか!」とまさに目から鱗だった。
    新しい小説の読み方を教えてもらった一冊。
    今度、芥川龍之介の『六の宮の姫君』を読んでみようと思う。本書を読む前に読んでおくんだったが、もう遅い。二度楽しめたはずだったのに…(笑)

  • 主人公「私」に身を借りた著者、北村薫さんの芥川龍之介、菊池寛に関する研究といったところなのでしょうか。
    非常に理解が難しく面倒だった。読み流して楽しむ種類の小説ではなかった。
    途中棄権しようかとも思ったけれど、何かしら得られる予感がして頑張った。
    芥川龍之介と菊池寛、その周囲の作家が何を思いどう生きたのか、その作品を読んだだけでは分からない事が深く調査されている。
    特に芥川と菊池寛の関係においては作家としての2人、人間としての2人が興味深かった。

    と同時に作品を読むという作業がコレほどまでにして作家自身を知らなければ、そしてその作品が書かれた経緯と意味をしらなければ完成しないのかと思うと弱音が出る。

  • 円紫さんシリーズ。これまでのミステリらしいミステリというより文学史、芥川と菊池寛の交友関係というか…。読後感は文学を読んだような読みたくなるような不思議な感覚。

    • moboyokohamaさん
      今読んでいる最中ですが、作家、作品、批評の事が山盛りで「玉突き」の謎解きはなかなか動き出しそうにない様で疲れました。
      チョット離れて他の物を...
      今読んでいる最中ですが、作家、作品、批評の事が山盛りで「玉突き」の謎解きはなかなか動き出しそうにない様で疲れました。
      チョット離れて他の物を読みます。
      2022/08/25
  • とても面白いのだろうと思うが、教養のない私には難しかった。

  • 大学4年文学部に在籍する《私》の卒論のテーマは「芥川龍之介」でした。 神田のアルバイト先<みさき書房>で、芥川の『六の宮の姫君』のことを《あれは玉突きだね。・・・いや、というよりはキャッチボールだ》という謎めいた言葉を芥川自身が語っていたことを知った《私》は、真理の探究に乗り出します。 本作は、早稲田大学文学部にいた著者の幻の卒論だったという「文学論」が披露されているようです。 無二の親友「菊池寛」との交流のなかで生れた『六の宮— 』誕生秘話が語られる異色篇です。

  • ようやく読み終わった。
    なかなか読み進めず、4日もかかった。
    私と正ちゃんのドライブしながら延々と続く芥川に関する会話が、授業でしか芥川龍之介を読んだことがない私には全く意味がわからず、その部分を読み終わるのに3日程かかった気がする。
    そのあとは、円紫さんも出てきたりで、なるほど!なるほど!と一気に読めてしまえた。
    行き着くところがわかれば、とても面白く、もう一度最初から私と正ちゃんの会話の部分も読みたいなと思えるけれど、先に次の『朝霧』を読みたい。

  • 「円紫さんと私シリーズ」の第4弾。

    大学4年になった「私」は芥川をテーマとする卒論の準備の傍ら、縁あって出版社でアルバイトを始める。そこで文壇の長老から、芥川の「六の宮の姫君」にかかわる謎の言葉を聞かされる。
    今回の謎はこの芥川の言葉。円紫さんのアドバイスを得ながら、文豪たちの作品を紐解き芥川の言葉の真意を探る「私」の物語。

    日常の謎を鋭い推理で解いていくこのシリーズ、今回は難解。「私」が読み解き引用される文学作品は読んだことがないものばかりだし、挟まれる解釈もなんだかよくわからない・・・。だけど、そこを過ぎるといつもの「私」と正ちゃんの微笑ましいやり取りや、円紫さんとの静かな問答でほっとひと息。
    どうにかこうにかしがみついてついて行くうちに、謎が少しずつ解明され、終盤で描かれる芥川と菊池寛の友情と反発のくだりはぐっときて、彼らの行く末を知りながら読む、若き菊池から芥川への結婚を祝う手紙の文言には胸が熱くなった。

    「私」も年相応に成長し、就職も内定、良き人を求める気持ちも出て来て、次はそろそろロマンスもあるか・・・?とシリーズへの期待はまだまだ続くのでした。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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