六の宮の姫君 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 2134
レビュー : 240
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413040

作品紹介・あらすじ

最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」-王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

感想・レビュー・書評

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  • 「円紫さんと私シリーズ」の第4弾。

    大学4年になった「私」は芥川をテーマとする卒論の準備の傍ら、縁あって出版社でアルバイトを始める。そこで文壇の長老から、芥川の「六の宮の姫君」にかかわる謎の言葉を聞かされる。
    今回の謎はこの芥川の言葉。円紫さんのアドバイスを得ながら、文豪たちの作品を紐解き芥川の言葉の真意を探る「私」の物語。

    日常の謎を鋭い推理で解いていくこのシリーズ、今回は難解。「私」が読み解き引用される文学作品は読んだことがないものばかりだし、挟まれる解釈もなんだかよくわからない・・・。だけど、そこを過ぎるといつもの「私」と正ちゃんの微笑ましいやり取りや、円紫さんとの静かな問答でほっとひと息。
    どうにかこうにかしがみついてついて行くうちに、謎が少しずつ解明され、終盤で描かれる芥川と菊池寛の友情と反発のくだりはぐっときて、彼らの行く末を知りながら読む、若き菊池から芥川への結婚を祝う手紙の文言には胸が熱くなった。

    「私」も年相応に成長し、就職も内定、良き人を求める気持ちも出て来て、次はそろそろロマンスもあるか・・・?とシリーズへの期待はまだまだ続くのでした。

  • 現況;
    「六の宮の姫君」については、以前に山岸涼子さんの漫画で読んだことがありまして。最近平安朝の漢文をよく読んでいることもあり、こちらも読ませていただきました。

    気づき;
    ☆慶滋保胤
    については、漢文の世界ではとても冷静な賢い人のような印象だった。しかし、今回改めて今昔物語 巻第十九 第三話 「内記慶滋の保胤、出家せること」を読んでみますと、結構感情的でほろほろしていて、ああこんな面もあったのかと思いました。説話文学のことゆえ、どこまで本当かはわからないですが。

    ☆芥川龍之介と菊池寛
    私は菊池寛についてほとんど読んだことがないですが、自分の考えは、どちらかというと菊池寛氏に近いなと思いました。襖もよく左右が反対になってますし(笑)。

    そうだからといって、「往生絵巻」の主人公の口に白蓮華が咲くのはけしからんとも思いません。そういう考え方の人もいるのかなという目で見ると思います。

    芥川龍之介は、佐藤春夫に自分の葬式に弔辞を述べてほしいと言ったそうですが。本当に弔辞をのべてほしかったのは菊池寛ではないのかと思いました。
    彼の「六の宮の姫君」で、唐突に慶滋保胤がでてくるのは、自分が死ぬ前に、菊池寛(=慶滋保胤)に、理解はしてもらえなくても、ちょっとだけでも憐れんでもらいたい、という願望ではなかっただろうか、と私は考えます。

    芥川氏の辛くしんどい人生を、何十年も後からではありますが、心から悼みたいです。
    また、彼が羨ましく憧れていた菊池寛氏にも、心の中には壮絶な孤独があったことにも胸を打たれます。

    北村薫作の小説部分は、それなりに仕込みがあったりするんでしょうけど、まあこの両巨頭のリアルな人生の前では、かすみのようにしか見えません。
    本編主人公も我々も、六の宮の姫君のようにうかうかと人生を過ごさないように、気をひきしめてがんばっていこうということかと思います。

  •  ケメルマン『9マイルは遠すぎる』のキーワードに相当するのが、「あれは玉突きだね。……いや、というよりはキャッチボールだ」
     しかし、芥川発言をヒロインに伝える田崎信は架空の小説家なのだ。このキーワードに確固たる典拠があるのだろうか。寡聞にして知らない。
     驚いたのが、
    ヒロイン「『真珠夫人』は読みました」
    その上司「今時、千人に聞いても読んでないわよ。あなたって面白い子ね」
    (中略)「テレビの原作にぴったりの本だと思いました」
     このやり取り。
     フジテレビによるドラマ化が2002年。「六の宮〜」の初出は1992年。本好きのテレビマンがここを読んだのか?

  • 大学に行こう、とも、行きたい、とも思ったことはないが、芥川をテーマに卒論を書くという”私”のことを読んでいると、なんと豊かな時間を過ごしているのだろうと羨ましくなる。

  • ちょっと時間はかかりましたが、読み終わりました。
    今回は主人公の「私」が卒論に挑みながらたどる芥川龍之介と菊池寛の話。
    色々な逸話、興味のある短編などが随所に出てくる。
    気になって青空文庫で探しながら読みました。
    これだけのめり込めたら楽しいだろうなと、うらやましくなります。

  • 円紫さんと私シリーズ4作目も面白かったです。
    今回は今までのような事件の謎解きではなく、芥川竜之介の「六の宮の姫君」に纏わるお話でした。
    芥川のお話を読んだのは随分前でほとんど覚えておらず、ふわふわと読んでしまいましたが、ピースがかちかちと嵌まっていく様が気持ちよかったです。
    主人公の私はこのまま卒業して就職するのかなぁ…なんだかトントン拍子に物事が進んでいきます。。
    続きも楽しみです。

  • 芥川と菊池の友情を描いた作品…?
    私のような人間には、文学研究とはこうやるんだよ、と教えていただいたような(^_^;)
    あと、今になって読むと、出版社でのバイトの時給が900円なのか!!と驚いた。て、今もそんなもん…?
    真珠夫人ドラマ化したらいいのに〜、てのは予見!?

  • まさに卒論。同じ文学部として恥ずかしくなる内容でございます。菊池寛と芥川龍之介の関係性とか全くの専門外だし、こういう話嫌いじゃないので普通に楽しめた。

    ただし、好き嫌いはあるだろうなぁ。

  • 北村薫の『私と円紫さんシリーズ』の第四作目『六の宮の姫君』。一作目『空飛ぶ馬』(《私》19才、大学2年の5月から12月まで)、二作目『夜の蝉』(《私》大学2年生の3月から3年生の8月頃まで)は短編集、三作目『秋の花』と本作は長編となっている。
     本作では大学4年生の5~9月末頃の《私》が描かれ、三年次から心に決めていた芥川龍之介の卒業論文作成に取り掛かる。題材としてどの作品を論ずるか当初は未定であったが、あるきっかけから「今昔物語」を素材にしたとされる「六の宮の姫君」が自著「往生絵巻」の裏返しとして書かれることとなった背景に隠された文学史の謎に挑むこととなる。その謎解きたるや、なんと大正文学を代表する名だたる実在の作家が容疑者となるから痛快だ。そして、謎解き自体がある種、作中作として論文の骨格を形作ることとなる仕掛けが施されている。まさに読みどころ満載なのである。

     「様々なことを、いろいろな人に教えられた。しかし何が身についたという実感もないうちに、はや大学四年である ~ 物心ついてからずっと《生徒》であったのが、もうすぐそうでなくなる ~ 自分も一年後には大学にいない、何らかの仕事に就いている筈だという現実の重みを感じた」

     《私》は、大学の恩師から卒論にも役立つであろうからと出版社のアルバイトを紹介され、そこでの熱心さが買われ渡りに船で就職先が決まることとなる。そして、出版社の社員から譲り受けたクラシックコンサートのチケットが運命的!な出会いへと繋がっていく。

    親友の正ちゃんの運転で福島県裏磐梯の曽原湖までドライブ旅行をする。そのときの装いが、本文中ではジーパンに、白に薄水色の太い横縞のシャツであるのに対し、高野文子氏の描く表紙イラストでは縦縞と食い違いが見られるのも一興である(たしかに横縞では絵にならない・・・)。

  • 凄い!こんなミステリーもあるんだ。
    文学の研究とか<太宰をやる>って意味がわからなかったけど、こんな感じなんだ。全く未知の世界を除いた気分。
    きっと半分も理解できていないと思う‥‥一気に通して再読したい。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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