六の宮の姫君 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M き 3-4)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 2802
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413040

作品紹介・あらすじ

最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」-王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

感想・レビュー・書評

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  • こちらは、北村薫さんに詳しい人ならご存知、
    いわゆる「円紫さんとわたし」シリーズの4作目です。
    1作目の「空飛ぶ馬」も、
    名作と名高い「秋の花」も、
    もちろん大好きなんですが、
    この作品で北村薫さんにハマり、
    ミステリの沼に片足を突っ込んでしまったと言っても過言ではありません。
    
    内容は、主人公「わたし」が卒論テーマとして選んだ「芥川龍之介」について調べていくうちに知ったとあるエピソードから「菊池寛」との謎のやりとりについて探偵していくというもの。
    北村薫さんが実際に卒論テーマとして書いていたものを下敷きにしているらしく、
    初読の時は
    「こんなミステリがあったのか!」
    と驚きました。

    あらすじだけ書いていたらめちゃくちゃ不思議なんですが、私、何度読んでももれなく号泣します。

  • 『六の宮の姫君』
    2024年2月29日読了

    米澤穂信氏が推薦していた一冊。
    「日常の中でおこるミステリーを書いてもいいんだ!」と目から鱗がこぼれたとか。
    気になって即読み始めてしまった。

    本書の謎は非常に濃い。
    一本の論文にもなろうテーマが小説という形をとって、私たちに示されている。論文ならば一部の研究者にしか読まれないだろうが、小説とすることでこのように多くの人の目に触れている。なるほど、こういうやり方もあるのかと思うわけだが、卒業論文を執筆したことのある身とすれば、論文という形で理路整然とした無味無臭の文章で結論を導くのだって苦労するのだ。物語の中でなど、言わずもがなである。
    しかし作者の北村薫は、それを華麗にやってのける。一般の読者を相手に、飽きさせず、置いてけぼりせず、だ。作者の文章力にあっぱれと言わざるを得ない。すごい、すごすぎる。

    恥ずかしながら、わたし自身、小説は一冊で完結するものと思っていた。
    でも、ほんとうは作家だって、生きていた社会情勢、交友関係の中で小説を書いている。それを考えれば、本書のように互いに作用しあう作品だってあるはずなのだ。自分にその視点が抜け落ちていたと反省した。

    メタ的な視点で作品同士の関係性を読み解く。
    「そんな読み方があったのか!」とまさに目から鱗だった。
    新しい小説の読み方を教えてもらった一冊。
    今度、芥川龍之介の『六の宮の姫君』を読んでみようと思う。本書を読む前に読んでおくんだったが、もう遅い。二度楽しめたはずだったのに…(笑)

  • 文学の研究者なら日々行なっているであろう、文献の収集や比較検討といった営みを、リアルな空気感で追体験できる素晴らしい一冊だった。活字に残された断片から過去の文人の心の動きをありありと浮かび上がらせる根気と洞察の描写に痺れた。

  • 私には、芥川と菊池寛などとのやり取りは、この本の一番のポイントにも関わらず、あまり理解出来ませんでした。

  • 2023年10月20日購入。

  • 米澤穂信が影響を受けた?ミステリーとのことで気になって読んでみました。
    これシリーズ四作目なんですね、、、なんか円紫師匠落語家なのにめっちゃ文学しってる人じゃんってなったらこれ円紫師匠と私シリーズなんですね。円紫師匠メインキャラだったのか…!
    芥川龍之介は好きですが文庫本何冊か読んだ程度、表題の六の宮の姫君は読んでないし菊池寛も読んだことない中での本作だったので話にあまりついていけず、、、
    心理描写とかは素敵で、主人公が作中で色々気づいたときの気持ちはこちらにも伝わるようであった(が、その気付きの凄さにこちらがついていけなかった)

  • 遠い昔、北村薫を初めて知った作品。久しぶりに読んだが情報量に圧倒されながらも、言葉が綺麗で心地良く、磨き込まれた多面体の様にあらゆる角度から様々な色に心地良さを感じる。

  • “私”は卒論のテーマである「芥川龍之介」を掘り下げる中、彼の発言に謎を見出だした。
    その真意を探るべくひたすら書物を読み解くうちに、ある作家との結び付きに気づく。
    実在の人物の過去を解き明かすという趣向が面白い。
    知らない作品が出てくるので読んでみたい気になる。
    また、大人になっていく“私”と正ちゃんとの会話が印象に残る一冊でもある。

  • 「あのね、話はちょっと変わるけど、評論や解説なんかだと、前の人の考えを引いてそれに対する自分の意見を述べるということは、どうしてもあるよね。吉田精一の今の例もそうで、この程度なら一向に構わない。だけど、そのタッチによっては、読んでてとっても嫌な気持ちになることがあるの。《誰々の考えは浅い。お粗末だ。私の優れた意見はこうだ》という調子の書き方に出くわした時、そうなるの。書いている当人は高揚しているんだろうけど、ただひたすら、その人が卑しく思える。本当に才能のある人が書いたんだったら、多分それでも、読んでてねじ伏せられちゃうと思うのね。天才だったらいわんやよ。だけど反対の時には救われない。ちゃんと自分の世界を持っている人の文章を、ただ裏返しただけのような薄っぺらな文章が攻撃していたりすることがある。結局はおぶさっているのに平気でしょってくれてる人の髪の毛を引っ張っているような文章。本自体はよくても、そんな解説がついてるおかげで嫌になった全集もあるわ。」

    正直、勉強不足で作中での引用や考察の面白さを理解しきれない部分もあったが、この台詞が象徴するように主人公の文学に対する向き合い方がとても心に残った。文章を読んでいくと湧いてくる共感や悲しみ、それは本を読んでいる自分にも当てはまっていて、もっと本を読みたくなるような内容だった。

  • シリーズを高校生の時分に知って気に入って、本書まで読み進めた時には、悲しいかな挫折してしまったのだけれど、時が経って作中で言及される作家の半分くらいは名前がわかるようにようやくなって、しみじみと「作家のこだわり、書かねば気が済まないこの」などを読後に想えるようになったことが嬉しい。
    芥川の「往生絵巻」と「六の宮の姫君」は岩波文庫の「地獄変」などが入っているやつに共に収められているので手に入りやすい。この2篇、予習してから読むべきかと思います。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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