六の宮の姫君 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 2130
レビュー : 239
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413040

作品紹介・あらすじ

最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」-王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

感想・レビュー・書評

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  • 現況;
    「六の宮の姫君」については、以前に山岸涼子さんの漫画で読んだことがありまして。最近平安朝の漢文をよく読んでいることもあり、こちらも読ませていただきました。

    気づき;
    ☆慶滋保胤
    については、漢文の世界ではとても冷静な賢い人のような印象だった。しかし、今回改めて今昔物語 巻第十九 第三話 「内記慶滋の保胤、出家せること」を読んでみますと、結構感情的でほろほろしていて、ああこんな面もあったのかと思いました。説話文学のことゆえ、どこまで本当かはわからないですが。

    ☆芥川龍之介と菊池寛
    私は菊池寛についてほとんど読んだことがないですが、自分の考えは、どちらかというと菊池寛氏に近いなと思いました。襖もよく左右が反対になってますし(笑)。

    そうだからといって、「往生絵巻」の主人公の口に白蓮華が咲くのはけしからんとも思いません。そういう考え方の人もいるのかなという目で見ると思います。

    芥川龍之介は、佐藤春夫に自分の葬式に弔辞を述べてほしいと言ったそうですが。本当に弔辞をのべてほしかったのは菊池寛ではないのかと思いました。
    彼の「六の宮の姫君」で、唐突に慶滋保胤がでてくるのは、自分が死ぬ前に、菊池寛(=慶滋保胤)に、理解はしてもらえなくても、ちょっとだけでも憐れんでもらいたい、という願望ではなかっただろうか、と私は考えます。

    芥川氏の辛くしんどい人生を、何十年も後からではありますが、心から悼みたいです。
    また、彼が羨ましく憧れていた菊池寛氏にも、心の中には壮絶な孤独があったことにも胸を打たれます。

    北村薫作の小説部分は、それなりに仕込みがあったりするんでしょうけど、まあこの両巨頭のリアルな人生の前では、かすみのようにしか見えません。
    本編主人公も我々も、六の宮の姫君のようにうかうかと人生を過ごさないように、気をひきしめてがんばっていこうということかと思います。

  • 円紫さんと私シリーズの4作目

    大学4年を迎え卒業論文を書くことになった「私」は、文豪・芥川龍之介をテーマに
    芥川作品の「六の宮の姫君」を掘り下げ、文学を巡る歴史の謎の探求に奔走する。

    "あれは玉突きだね。....いや、というよりはキャッチボールだ"

    メインとなる謎は芥川龍之介の謎めいたこの言辞。
    「六の宮の姫君」の作品誕生の秘話ともいえるこの言葉にはどんな意味あるのか....

    とっても難しかったです。
    芥川作品の中身をほとんど何も知らずにうん十年生きてきて...ほんと恥ずかしい...。

    それでもこの本を読むことで
    北村先生から芥川について少し学べた気がしています。
    何か一つでも読んでみなければ!と思えただけでも大きな収穫。

    今回「私」は大学4年生ということで
    新しい出会いありがあれば恩師との別れなどもあり、卒業
    そして就職と、大人になっていく成長の過程がぐぐっと大きく感じられました。

    なによりいちばんなのは「私」と正ちゃんとの友人関係。
    同じ価値観であれだけ議論しあえるっていいなぁ.....羨ましい。とても好きな場面です。
    そして加えてもう一つ、「円紫」さんと「私」の関係もすごく好き。
    自分より頭のいい人(年上で男性で! ^^)と、やっぱり同じ価値観を共にできる
    時間が過ごせるというのはもうね、羨ましいにほかなりません。

  • 主人公の卒論執筆過程を追体験すると同時にミステリーにもなっているというおそろしい書。ご一読あれ。

  • 趣向を凝らした格調高い文芸ミステリーです。

    芥川のある謎のことばにひっかかり、その真意を残された文献や書簡などから迫るという趣向は、松本清張の「ある小倉日記伝」を彷彿とさせます。

    実はこの本も、小谷野敦氏が推薦していた本ですが、そういえば彼の著書「芥川賞の偏差値」で「ある小倉日記伝」も64と高評価だったことを考えればこうした地道で正統派の労作が好きなのでしょうね。

    確かに、試行錯誤しながらも徐々に真相に迫っていく過程は、推理小説のようなスリリングさとさらに知的興奮も加味されており、より味わい深い作品となっています。

  • 私が芥川作品であまり苦痛なく読むことができた作品を題名に据えていたから、なんとなく親近感を持って読んでいました。
    文学者たちの考えはやっぱりいまの私にはわからないけれど、それがすごく貴重なことだけはひしひしと感じますし、それってそそられる人にとってはとっても興味をそそられるなものなのだろうとも。ぶわっといろんなことが思い浮かんで、色々と考えさせられる作品でしたし、私の肌には合ったのかな、と思います。
    他人にお勧めするには少しテーマの入りが難解かな、とも思いました。

  • 芥川の『六の宮の姫君』を巡るミステリー。主人公の「私」とともに近代文学の資料を読み解いていくような感じ。
    近代文学が好きじゃないと辛いかも。学生時代に円紫さんと私シリーズを読んではいたものの、これだけ途中で挫折。○年たった今、再び手に取りようやく読了しました。

    芥川は「六の宮の姫君」という作品を指して、「あれは玉突きだね。……いや、キャッチボールだ」と表現したという。「六の宮~」は今昔物語の同タイトルの話を芥川が新たに書きなおした王朝もの。この作品からなぜそんな言葉が出てきたのか。芥川は何を思い「六の宮~」を書いたのか、それが「私」と円紫さんや周りの人たちにより少しずつ明らかになっていく。

    芥川が自殺した後、葬儀の際に総代を努めたのが菊池寛。
    芥川と菊池は対照的な作家と言われ、小説で芸術を突き詰めたのが芥川なら、菊池は大衆小説の大御所になる。
    芥川と菊池は昔からの友人だったが、芥川が菊池の作品について肯定的に言及していることは少ない。
    芥川が、中学(旧制中学)の時に書いたのが『義仲論』という文章。この文章の中で語られた義仲像こそ、芥川のなりたい人物そのものであった。
    その他、各作品において、芥川は「自分のなりたい人物」を登場させている。
    芥川は仏教の往生という概念をよりどころとしている節が見受けられる。
    仏教の教えのごとく死を受け入れることをよしとしているような。「義仲」のような人になりたいという気持ちを貫いている。

    一方菊地。
    菊地は各作品において、仏教の往生という概念を壊し、生に縋る人こそ人間そのものだ、という。
    その概念を、菊地は芥川同様自作の中に籠める。

    ……こんな感じのことがだんだんと明らかになっていく。
    そして『六の宮の姫君』は、生死の概念において、芥川が菊池と完全に袂を分かつ意思を告げるために描いた作品であることが判明する。
    つまり『六の宮の姫君』は、小説という芸術の分野においての、芥川からの決定的な別れの手紙だった。

    「六の宮の姫君」が書かれたのは、芥川が自殺する何年か前。そのとき二人の芸術的な道は分かれていた。それでも、葬儀の総代を菊地が務めたという点に、二人の絆を感じる。
    二人の天才が歩んだ道を、「私」と一緒に眺めることができて本当に良かった。

    芥川の研究書のような様相だけど、物語なので、ところどころで
    「私」がいろんなことを想ったり主張したりしている。
    「私」は余り強く物を言う方じゃないけど、序盤(p91)の、文章の評論家に関する批判めいた主張はニヤっとしつつ同意した。

    一度は挫折して、もう読めないだろうと思った本だけど、年を重ねると読めるし、面白いと思うことがあるんだなとしみじみ感じた本です。

  • 「太宰~」から遡る旅を続けている。前回紐解いた時に印象に残ったまさしく旅にでる(正ちゃんとドライブ)のみならず、芥川、菊池らを巡る過去への推理の旅も初読より十年以上もの年を経た今、理解を深めることができる。とはいえ、拙い私(コレは登場人物ではなく、コノ自分のこと)にとってはややこしく、レベルの違い過ぎる頭脳の自分の限界をまざまざと見せられるということに他ならないのだ。トホホである。

  •  ケメルマン『9マイルは遠すぎる』のキーワードに相当するのが、「あれは玉突きだね。……いや、というよりはキャッチボールだ」
     しかし、芥川発言をヒロインに伝える田崎信は架空の小説家なのだ。このキーワードに確固たる典拠があるのだろうか。寡聞にして知らない。
     驚いたのが、
    ヒロイン「『真珠夫人』は読みました」
    その上司「今時、千人に聞いても読んでないわよ。あなたって面白い子ね」
    (中略)「テレビの原作にぴったりの本だと思いました」
     このやり取り。
     フジテレビによるドラマ化が2002年。「六の宮〜」の初出は1992年。本好きのテレビマンがここを読んだのか?

  • 大学に行こう、とも、行きたい、とも思ったことはないが、芥川をテーマに卒論を書くという”私”のことを読んでいると、なんと豊かな時間を過ごしているのだろうと羨ましくなる。

  • ちょっと時間はかかりましたが、読み終わりました。
    今回は主人公の「私」が卒論に挑みながらたどる芥川龍之介と菊池寛の話。
    色々な逸話、興味のある短編などが随所に出てくる。
    気になって青空文庫で探しながら読みました。
    これだけのめり込めたら楽しいだろうなと、うらやましくなります。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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