朝霧 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.60
  • (132)
  • (207)
  • (358)
  • (24)
  • (5)
本棚登録 : 1628
レビュー : 167
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413057

作品紹介・あらすじ

前作『六の宮の姫君』で着手した卒業論文を書き上げ、巣立ちの時を迎えたヒロインは、出版社の編集者として社会人生活のスタートを切る。新たな抒情詩を奏でていく中で、巡りあわせの妙に打たれ暫し呆然とする「私」。その様子に読み手は、従前の物語に織り込まれてきた糸の緊密さに陶然とする自分自身を見る想いがするだろう。幕切れの寥亮たる余韻は次作への橋を懸けずにはいない。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 文学に詳しくない私が読んでも面白かった。
    老匠田崎先生の<暗く悲観的生き方に感傷的な目を向けることはいかにも若い。本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ>という言葉にぐっときた。
    『走り来るもの』は愛する人の裏切りに、違う意味でぐっときたが、最後に明るさが添えられ<太陽を向く>。
    『朝霧』は亡き祖父の日記からの謎解き。美しく、ステキな読了感。
    シリーズで1番好きかもしれない。

  • 『私と円紫さんシリーズ』の最終篇『朝霧』。大学2年生に始まった物語の主人公《私》は本作で社会人3年目の冬を迎える。《私》の延べ6年に及ぶビルドゥングスロマンは、「自分は『レクイエム』を隣り合って聴いたあの人のことを、尋ねずにはいられないだろう」という健気な独白で物語に幕を下ろす。このエンディングは、作中でも題材とされるリドルストーリー(起承転結の《結》を示さず、読者にゆだねる)の手法に他ならず、もう続編がないことを読者に暗示している。万葉集に収められた恋の歌「朝霧のおほに相見し人故に、命死ぬべく恋ひ渡るかも」に揺さぶられた、初デートの相手「お隣りの坊や」に似ているその人への気持ちを、《私》は成就されることができたのだろうか。

    好きになるなら一流の人物を好きになりなさい。本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ

    音楽プレーヤーから流れてきた山下達郎の新曲「街物語」(「新参者」主題歌)が「朝霧」の世界とあまりにも調和したため読了までイヤホンでリピートし続けた。「物語は続いていく」のリフレイン、レトロな質感の街並みを想起させるメロディーも。

    注釈
    『空飛ぶ馬』《私》大学2年の5月から12月
    『夜の蝉』《私》大学2年の3月から3年生の8月頃
    『秋の花』《私》大学3年の10~11月
    『六の宮の姫君』《私》大学4年の5~9月末頃
    『朝霧』:《私》大学4年の12月~社会人3年目の12月

  • 円紫さんと私シリーズも5作目にきました。

    久しぶりに戻ってきました短編集。そして落語満載なのも久しぶり。
    前回と前々回は落語が少なめで、寂しく思ってましたから嬉しかった♪
    いくつかYouTubeで聴いて楽しみました。

    「私」も無事に就職していっぱしの社会人。文学好き落語好き
    そしてちょっとした謎がどうにも気になってしょうがないのは相変わらずだけれど
    なんだか恋する予感で終わっていましたよ。
    素敵な出会いがあるといいですね...。

    リドル・ストーリー
    「女か虎か」

    これは難しい...しばらく真剣に考え込んでしまいました。

    "朝霧のおほに相見し人故に
    命死ぬべく恋ひ渡るかも"

    「私」の亡き祖父と鈴ちゃんの恋は
    キュンとしてせつない。

  • 円紫さんシリーズのラストかな?
    テーマは「縁」です。

    1巻では女子大生だった主人公が20代半ば。
    巻が進むに連れて彼女が成長していく、このシリーズは主人公の「私」の成長のストーリーでもある。
    前巻での伏線が最終巻で繋がり、「なるほど!」と納得してしまう展開。
    恋愛に関しては現代と比べるとちょっと古いと言うか、奥ゆかしい感じがあるが、このシリーズにはスパイス的要素で出てくる感じが丁度いい。
    円紫さんはいつも主人公の成長に手を貸してくれているようで、最初は全部教えてくれたのが、後半は自分で調べなさいと少しずつ手を離し、背中を押している。
    個人的にはレクイエムの君が、円紫さんのような人だといいなと思う。

    ラストがない作品のラストを考える、推理するというのが、性格が出てて面白かった。
    円紫さんはいつも正解を出してしまうけど、正解ではなく、彼の性格で考えたらどんなものが出るのか気になる。

  • 日常の謎の開祖である氏の、円紫さんと『私』シリーズの現在における最終章です。

    ミステリー界の記念すべき氏のデビュー作『空飛ぶ馬』を読んだのは10年ほど前だったと思います、それ以来シリーズを読んできましたが間が空き空きで、前作『六の宮の姫君』でちょっと疲れました。

    これでシリーズめでたく読破!となりました。三つの短編からなっていますが、それぞれの完成度は過去と比べても非常に高い!と感じました。

    謎解きというテーマに照らし合わせれば三つの短編ですが、過去から連綿と続く『私』一人の女性の成長ストーリーとしてみるならば一大長編であり、やや疲れた六の宮~で示された伏線が効いてきたりしてました。

    空飛ぶ~では女子大生だった『私』が卒業し、社会人となり出版社で働き始め、円紫さんが解き明かす謎も、『私』にとってより身近な人の男女関係の機微であったり、己のルーツを辿る過去との邂逅であり、それがもたらす現在の運命の偶然と必然が、その先を感じさせる書き方で、よりリアルに『私』を生身の女として感じることができました。

    それにしても作者の書物のみならず落語、歌舞伎、俳諧、短歌と古典芸能全般における知識の半端なさには、驚くというか、ついていけない…というか、まぁ凄いです。

    国語の教員をされていたそうですが、国内外を含めてエライ大学の教授レベルではないかと思います。『私』も女子大生というか助教授くらいじゃない?とは感じてました。主人公が現実的に感じられなかったのはその点です。

    まぁ『私』が本を読むこと読むこと!果たしてリアルの女子大生がこんなに読むもんかな?とは思うものの、作者の書物に対する愛情所以だろうと理解はできます。またサブキャラの、正ちゃん、江美ちゃん、『私』の友人の描き方がごく自然に感じられたところが、『私』を普通っぽく感じさせるスパイスになっていたと思います。

    しかし、今作ではやっと というか、『私』に恋の訪れらしき著述があるものの、匂わせたところで了の文字…以来このシリーズ描かれてないのです…

    シリーズを通して、ホントゆっくりゆっくり大人っぽくなっていく『私』を、作者は円紫さんの目で静観することのみで喜びとしていたのでしょうか?自ら手をかけることなく自然のままに、理想的な変貌を遂げていく女を、読者に提示しておいて先は語らず というのが現時点ではとても残念に思います。

    それはそれで、かわいいなぁ~で嫌いではないのですが、社会に出て男と付き合ったこともない、もちろん処女です!そんな『私』の純潔が散らされ、傷ついて、さらに一つ女の磨きがかかって…という物語を期待してしまうのです。

    おじさん的エロ思考で恥ずかしい限りですが、滞った物語の続きを待っているファンは多いと思います。

    最後に長年の謎が解決されないままに終わってしまったことがすっごく気になります。主人公『私』の名前が最後まで明かされませんでした!

    これは作者の意図があるのか?シリーズの中に手掛かりがあるのか?わからないままになってます、これは現代ミステリー界の七不思議に数えられます!個人的にですが…

    どなたかこの答知りませんか?

  • 北村薫さんの『朝霧』を読みました。

    これは私が大好きな【円紫さんと私】シリーズの一冊。
    本編の謎解きを楽しみながら、主人公の成長も感じられます。

    ただ今回は謎解き部分が非常に少なく、文学考察的な要素が多く、正直重たかったです。

    たぶん私が円紫さん好きだから、出番が少なかったのも残念な点のひとつなんでしょうね。

    北村薫さんは優しい文体の人が死なないミステリーをたくさん書いてるんですが、個人的な意見として、作品によって当たり外れが多い気がしますね。

    次に期待します。

  • 円紫さんシリーズ、気になっていたのでたまたま図書館にあった最終巻を読んでしまったのですが少し後悔。
    最初から読んでいた方が、「私」が大学生から社会人へと成長していく姿、少しずつ変化していく友人や家族、円紫さんとの関係性がより深く感じられたなと思いました。ラストの少し寂寥感の残る余韻も素敵なお話だったので最初からぜひ読みたいです。

  • 面白かったです。
    主人公の「私」が働き始めたのですが、出版社のお仕事模様は興味深く読みました。本が出来るまでや、作家さんとのやりとり…面白いです。
    私や友人たち、円紫さんにも時は流れていて、1作目から随分経ったんだな、とつくづく感じました。
    私は恋の第一歩を踏み出すのかな。続きも楽しみです。

  • 「いいかい、君、好きになるなら、一流の人物を好きになりなさい」
    「本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ」

    ”私”がかなり年上の作家から言われるこのセリフの温かさにしびれた。これは、北村薫からの若い読者へのメッセージではないのか。

  • 2004-00-00

全167件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝霧 (創元推理文庫)のその他の作品

北村薫の作品

朝霧 (創元推理文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする