朝霧 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413057

感想・レビュー・書評

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  • 春桜亭円紫もの。「私」の小中学校の知り合いの父親である校長の最後の俳句に込められた謎を解読する「山眠る」。女か虎かが引き合いに出され、独自のリドルストーリーの結末を当てる「走り来るもの」。そして、表題作の「朝霧」。正直、最初の作品空飛ぶ馬から比べると、ミステリ色は薄くなってる。ただ、それは「私」が成長したからなんだというのに気づいた。朝霧にて、円紫さんから自分で考えてみてください、と言われるシーンを見て、昔からこんなことはなかったな、と思った。そこで、「私」もついに社会人になり大人になった。だからこそ、「私」自身に回答を導かせようとしたんだな、という結論にたどり着いた。此処から先新作が出ないのを見ると、これが「私」の成長結果なんだなあ。面白い面白くないでいうと、やはり文学的な面が出てくる事から、わからない私にとってはちょっと難しかったかな。

  • このシリーズは、最初の頃の方が好みでした。でも、今回のおじいさんの話は結構好きです。

  • シリーズが進む度、『私』が成長する度切なさが増す。遭遇する出来事と、成長し変わっていく私とその周囲。私と正ちゃんの関係が少し変わって、現実なら普通のことが物語として改めて見つめなおす形をとると儚くて寂しい。でも二人の繋がりはきっと続くのだろうとも想像できる。……この先は出ないのかな

  • 円紫さんと私シリーズの第5作目。
    「山眠る」「走り来るもの」「朝霧」

    前巻の「六の宮の姫君」が卒論を扱った作品だったので、ある意味仕方ないかとは思っていたのですが。「山眠る」も、それを引きずっていますね。
    引用や薀蓄が多くて、興味のない人には、あまり楽しめない話ではないかと思います。
    実際、「六の宮の姫君」も、私の当時のバイト先(書店)の店長は、「知識をひけらかしているみたいで鼻につく」と言ってましたし。…私は、芥川竜之介が好きなので面白かったですけど。
    ただ、俳句にはほとんど興味がないので、「山眠る」のほうは、そういう問答のような部分は流し読みしてしまいました。
    今回の謎は、「わたし」の潔癖さを浮き彫りにした形ですね。しかも、それを自覚していて、うまく対応できない自分に、余裕がない、などと思ったりする。
    そう思えるようになっただけ、「わたし」も成長したのかもしれませんね。
    「走り来るもの」は、裏切りの話ですが、次作の「朝霧」の伏線のような話でもあります。
    色恋沙汰にはとんと縁のない「わたし」ではありましたが、ようやく興味を持てる人が現れたかな、というところです。
    相手も本好きというところが、さすがではありますが。まあ、そうじゃないとそもそも興味を持たないでしょうし。
    この先、どう関わっていくのかが楽しみです。

    …そういえば、シリーズ最初の頃、私は「わたし」が円紫さんのことを好きになるのかな、と思っていました。いや、だって、こういう役柄だとパターンじゃないですか?
    そうしたら、どの話でかは忘れましたが、円紫さんが家庭もちということが判明しまして。あ、じゃあ絶対にそれはないなと。
    ちょっと残念に思ったものです。

  • 大学生だった"私"も、いよいよ社会人となりました。そのせいか、これまでの物語と比べると、時の流れが速くなっている気がします。

  • とうとう大学を卒業し編集者になった「私」が、仕事や日常生活の中で出会う様々な謎。社会人になった故の環境の変化が影響し、円紫師匠の出番は少なめ。でも要所要所でヒントをくれる冴えた推理力は相変わらず。

    どんどん謎が文学的になっていくこのシリーズ。その分「日常の謎」カテゴリからは離れていってしまうのが少し残念でもある。
    でもこのシリーズの地の文を読んでいると、「私」の日常生活の捉え方が情感あふれてて憧れる。こんな風に豊かに日常を切り取ることができたら、実りある人生を送れるよなぁ。

  • オタク同期から借りてる「円紫さんと私」シリーズ。主人公がついに社会人になってしみじみ。落語に詳しかったらもっと面白いんだろうなぁ。

  • R眠る/走り来るもの/朝霧

  •  あいかわわず(こっちの読んだ順番の問題なんだけど)、日常のちょこっとした謎にだけ焦点を当てた「変な」ミステリ。「六の宮の姫君」の続きになる連作短編集だ。謎がどうかという話は別として、主人公の女性がとても魅力的である。肩肘を張らず、でも人の気持ちをとても大切にしている生き方が、すっと心に落ちてくる。
     ミステリとしては、一話目が知り合いの謎の行動の理由を探す話、二話目が結末のない小説に落ちをつける話、三話目がある種の暗号解読である。どれも、どうでもいいような謎である。それが短編ミステリを支えることができるのは、その謎が大切な何かであるって思う主人公がいるからだろう。第一話など、なにが謎であるかまで実は最後までわからなかったりした。が、そのことが主人公の心を悩ませる大きな問題だってことが、この主人公だから納得できる。
     あいもかわらず、語り口の見事さと、登場人物の魅力にやられているような気がする。

  • 2004年4月16日購入。
    2004年6月5日読了。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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