朝霧 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.60
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本棚登録 : 1628
レビュー : 167
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413057

作品紹介・あらすじ

前作『六の宮の姫君』で着手した卒業論文を書き上げ、巣立ちの時を迎えたヒロインは、出版社の編集者として社会人生活のスタートを切る。新たな抒情詩を奏でていく中で、巡りあわせの妙に打たれ暫し呆然とする「私」。その様子に読み手は、従前の物語に織り込まれてきた糸の緊密さに陶然とする自分自身を見る想いがするだろう。幕切れの寥亮たる余韻は次作への橋を懸けずにはいない。

感想・レビュー・書評

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  • 円紫さんシリーズ、気になっていたのでたまたま図書館にあった最終巻を読んでしまったのですが少し後悔。
    最初から読んでいた方が、「私」が大学生から社会人へと成長していく姿、少しずつ変化していく友人や家族、円紫さんとの関係性がより深く感じられたなと思いました。ラストの少し寂寥感の残る余韻も素敵なお話だったので最初からぜひ読みたいです。

  • 面白かったです。
    主人公の「私」が働き始めたのですが、出版社のお仕事模様は興味深く読みました。本が出来るまでや、作家さんとのやりとり…面白いです。
    私や友人たち、円紫さんにも時は流れていて、1作目から随分経ったんだな、とつくづく感じました。
    私は恋の第一歩を踏み出すのかな。続きも楽しみです。

  • 「いいかい、君、好きになるなら、一流の人物を好きになりなさい」
    「本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ」

    ”私”がかなり年上の作家から言われるこのセリフの温かさにしびれた。これは、北村薫からの若い読者へのメッセージではないのか。

  • 文学に詳しくない私が読んでも面白かった。
    老匠田崎先生の<暗く悲観的生き方に感傷的な目を向けることはいかにも若い。本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ>という言葉にぐっときた。
    『走り来るもの』は愛する人の裏切りに、違う意味でぐっときたが、最後に明るさが添えられ<太陽を向く>。
    『朝霧』は亡き祖父の日記からの謎解き。美しく、ステキな読了感。
    シリーズで1番好きかもしれない。

  • 『私と円紫さんシリーズ』の最終篇『朝霧』。大学2年生に始まった物語の主人公《私》は本作で社会人3年目の冬を迎える。《私》の延べ6年に及ぶビルドゥングスロマンは、「自分は『レクイエム』を隣り合って聴いたあの人のことを、尋ねずにはいられないだろう」という健気な独白で物語に幕を下ろす。このエンディングは、作中でも題材とされるリドルストーリー(起承転結の《結》を示さず、読者にゆだねる)の手法に他ならず、もう続編がないことを読者に暗示している。万葉集に収められた恋の歌「朝霧のおほに相見し人故に、命死ぬべく恋ひ渡るかも」に揺さぶられた、初デートの相手「お隣りの坊や」に似ているその人への気持ちを、《私》は成就されることができたのだろうか。

    好きになるなら一流の人物を好きになりなさい。本当にいいものはね、やはり太陽の方を向いているんだと思うよ

    音楽プレーヤーから流れてきた山下達郎の新曲「街物語」(「新参者」主題歌)が「朝霧」の世界とあまりにも調和したため読了までイヤホンでリピートし続けた。「物語は続いていく」のリフレイン、レトロな質感の街並みを想起させるメロディーも。

    注釈
    『空飛ぶ馬』《私》大学2年の5月から12月
    『夜の蝉』《私》大学2年の3月から3年生の8月頃
    『秋の花』《私》大学3年の10~11月
    『六の宮の姫君』《私》大学4年の5~9月末頃
    『朝霧』:《私》大学4年の12月~社会人3年目の12月

  • 2004-00-00

  • 引き続き円紫さんシリーズ。3編の短編。私も働くようになってすっかり大人。正ちゃんを登場させてくれるのがうれしい。ちらりとだけど江美ちゃんも。しかし、『私』にとっちゃ恵まれた職場だよな。最初の「山眠る」は何となく覚えてた。ほんと、親子って切ない。娘には娘の言い分があるんだろう。次巻はいよいよ私にも恋愛話が起こるようで楽しみなような、ついに…というような。

  • この北村薫氏の円紫シリーズは「物語」と「推理小説」が重なり、1冊で2冊分楽しめる。
    「空飛ぶ馬」ではひよっこ大学生だった「私」も「朝霧」では4年生になった。「六の君の姫君」で卒論を書き終えた「私」は大学入学以来の友人である正子ちゃんや江美ちゃんと卒論を提出するところから「物語」が始まる。
    『山眠る』では、「私」の身近な人々が時間とともに年をとっていく。年を経ることで、「私」の姉が結婚する華やかさもあるが、恩師加茂先生は退官される寂しさもある。「老い」によって「矜持」が崩れる哀しさもある。これらの微妙なやりとりが「俳句」によって語られる。「私」と本郷先生の対話で、年をとって何かが欠けていったとしても、これまで積み上げてきた実績や経験は誰にも崩せるものではないと思えた。

  • オール讀物1995年4月号:山眠る、1996年7月号:走り来るもの、1997年11月号:朝霧の3篇に加筆修正を加え1998年4月 東京創元社から刊行。2004年4月創元推理文庫化。円紫さんと私シリーズ5作目。このシリーズでは、謎の属する世界に興味が持てるか?というところに難しさがあると思うのだが、今回は登場人物の私情の比重が高く、全編付いていけませんでした。

  • 図書館で。
    大学を卒業した途端、時の進みがえらい早くなったなぁ~という感じ。積極的に彼女が色々なことに首を突っ込めなくなったからか。まあ社会人、仕事がメインになるものねぇ。

    小説のオチを2行で考えさせるのはうぅ~ん、という感じ。そんな私小説、人に読ませるかなぁ?だって考えてもらったら後で種明かしをしなくてはならないじゃないですか。
    後、妊娠のお知らせってそんな早くに、友人にするものだろうか…しかも態々電話かけてまで。なんか、うん、ちょっとところどころ感性が違うなぁ、と思います。優しい日常話かと思ったら同級生が成人向け雑誌に掲載されている、とかところどころトゲがあって心に刺さる気がします。綺麗なまま、優しいままでは無い現実というか厭世観みたいなものがじわっと来るのがあまり好きではないかなぁ。

    コンサートの隣に座っていらした方ってのが実は伏線だったとは。次でシリーズ完結…というか終わりなのかな?

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。高校教師を務めるかたわら、89年『空飛ぶ馬』で作家デビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞、09年『鷺と雪』で第141回直木賞、15年には第19回日本ミステリー文学大賞を受賞した。エッセイや評論、編集の分野でも活躍している。近著に『八月の六日間』『太宰治の辞書』『中野のお父さん』など。

「2019年 『覆面作家の夢の家 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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