ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

著者 :
  • 東京創元社
3.20
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本棚登録 : 565
感想 : 55
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413064

作品紹介・あらすじ

ミステリ作家にして名探偵エラリー・クイーンが出版社の招きで来日、公式日程をこなすかたわら、東京に発生していた幼児連続殺害事件に関心を持つ。同じ頃アルバイト先の書店で五十円玉二十枚を千円札に両替する男に遭遇していた小町奈々子は、クイーン氏の観光ガイドを務めることに。出かけた動物園で幼児誘拐の現場に行き合わせるや、名探偵は先の事件との関連を指摘し…。

感想・レビュー・書評

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  • 作家デビュー30周年と東京創元社文庫創刊60周年の記念でクイーンパスティーシュという、派手ではないがとても上質な豪華さが溢れ出る文庫本。余談ですが、自分の中で創元の文庫といえば円紫師匠、北村薫といえば創元のベージュの背というイメージが強いので、久しぶりにワクワクする読書感覚。

    パスティーシュは本家の世界を広げてくれる楽しみもありつつ、下手に手を出すと自分のイメージを壊されてしまう怖さもあり、あまり手当たり次第には手を出さないので、今までそこまで残念な結果にはなったことはないのですが、今回についてはそんな心配に及ぶはずもなく、それ以上に趣向を幾重にも凝らした「こんな記念本にただのパスティーシュを書くとお思いか?」と言われるような鮮やかさ。
    浅学なので、どこまでが現実でどこまで架空なのかもわからなくなることは多々あるんですが、そういうときは開き直って、とりあえず1つの小説として全部丸呑みにしながらもガラスケースの外から見ているようなイメージで読んでいます(苦笑)。
    というわけで「これはこれを表していてここと関係しているのが面白い」みたいな感想は書けないのですが、とりあえず久しぶりにとても紳士的な少しの日常の中の王道ミステリを味わうことができただけで満足です。

    作者は「訳者」とされ、その視点で各章ごとに注釈が付けられるので、それだけで通常の3倍くらいの楽しみ方ができる。クイーンを登場させながら、作品についての考察談義が繰り広げられると同時に、その世界の日常では事件が起こり、それに絡ませながら、訳者の注釈が入るということを書く作家の作品を読む読者。透けそうなシルクを重ねに重ねたシンプルなドレスの美しさよ。

  • クイーン原稿の翻訳を装ったエラリー・クイーン論という特徴を持つミステリー。芸が細かい。エラリー・クイーンが来日し、彼の愛好家である女子学生を助手に、連続幼児殺害事件の謎を解き明かす。事前に「シャム双子の秘密」を読んでおくと、原作と本書の両方を楽しめる。逆だと、原作のきわどいネタバレで、両作品の楽しみが半減する恐れあり。エラリー・クイーンも北村薫も好きという方にぴったりの小説。

  • 稀代の名作家にして名探偵、エラリー・クイーン氏の未発表原稿がさる筋から発掘され、ミステリ作家北村薫氏がその翻訳に挑戦-という設定の、北村氏のオリジナル作品。いかにも翻訳文学調な固い言い回しや、日本文化に対する意図的な誤解などの仕掛けが随所にちりばめられ、思わずクスリとさせられます。

    幼児連続殺人、などという生々しいネタは普段の北村氏はあまり扱わないですから、これもクイーンの名を拝借した効用と言うべきなのでしょうか。とは言え、やたらと頭脳明晰な女子大生が登場して玄人顔負けのクイーン論を展開する辺り、やはり見紛う事なき北村作品です。

    「六の宮の姫君」が典型かと思いますが、北村氏は時々こうしたひどく手の込んだ力作(むしろ論文とさえ言って良い)を生み出しますね。クイーン未読のにわか読者たる当方は、ついていくだけで精一杯です(苦笑)。

  • エラリークイーンの遺稿の翻訳という形をとった、北村薫さんの力作です。

    全体を通して翻訳という形を盛り込みながらも読み進めて推理するならこの形は非常に面白いものとなります。

    北村薫さんの著作にはハズレはありませんねー。

  • 初めてのパスティーシュ作品!

  • 北村薫。エラリー・クイーンが日本で遭遇した連続幼児殺害事件を小説化したものを未発表の遺稿という体裁で書かれたもの。
    推理小説というよりエラリー・クイーンの作品の評伝がメインであとは日本の観光について書かれている。本作を読む前にクイーンのシャム双生児の謎を読んでおけばより楽しめると思う。

  • やっぱり北村薫は面白い。危うく騙されそうになったけどさすがです。
    それにしても知識の豊富なこと。あとがき・解説も面白い。

  • 手にかけた幼児をフリソデに包むジャパニーズシリアルキラーと名探偵エラリー・クイーンの対決、そして50円硬貨二十枚の謎。
    実在の作家と架空の作家探偵、2人のエラリーをフュージョンさせたり
    北村薫自身も訳者という形で舞台袖から何度も顔を出したりで虚実入り乱れる名調子の素晴らしいお祭りパスティーシュだった。

    エラリー・クイーンの未発表の原稿ですよーとしておきながら、途中でガッツリ国名シリーズの評論が入ってきて作者の企みを看破しちゃうあたり、現実の名探偵 北村薫の真骨頂!という感じでとても良かった。
    エラリーは国名シリーズと別名義のあの四部作しか読んでないので、後期クイーンとか文言でしか知らないにわかなんだけどもそれでも非常に心躍った。国名シリーズ特にシャム双子を手に取りたくなり、本棚整理で手放したのが今さら悔やまれる。

  • ミステリーもたまには読んでいるのだが、残念ながらこの作品についていけるほどの蓄積が私にはなかった…。なんだか作者に申し訳ないっす。

  • 4

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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