生ける屍の死 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M や 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
3.60
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感想 : 161
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  • Amazon.co.jp ・本 (667ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488416010

作品紹介・あらすじ

ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った。この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。死んだ筈の人間が生き還ってくる状況下で展開される殺人劇の必然性とは何なのか。自らも死者となったことを隠しつつ事件を追うパンク探偵グリンは、肉体が崩壊するまでに真相を手に入れることができるか。

感想・レビュー・書評

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  • 「死」について、とことん考えるミステリーでした。
    死して甦り、生ける屍(リヴィング・デッド)となって事件を推理する。

    私の考えるゾンビは、甦ってからは自我がなく、生者を襲う怖い存在という認識でしたが、この話では身体は朽ちてゆくが、その人の意思や記憶がそのままに甦るというもの。

    新しい感覚でした。
    とても面白かったです!

    死人だからこそ思う「生」と「死」についての考え方は、想像した事がない感覚でした。
    深刻すぎずアメリカン・ジョークも交えてコミカルに描かれていて、でも「死」について色々な視点からの考えが込められていて。

    「生きることとは少しずつ死ぬことなのだな」
    「性愛(エロス)と死(デス)は兄弟」
    「スクリーン・メモリー」(死に近づくことはできるが、永遠に死ぬことはない)
    読むと納得するワードがたくさん出てきます。

    ラストも感動的で、すごくいい終わり方でした。

    今年読んだ本の中でお気に入りの本第3位に躍り出ました!

  • 死んだ人が蘇る。よくあるゾンビのようなパニック作品ではなく、知性を持ちながら復活をすることによりそれぞれの思いが錯綜し物語が進むごとに生と死について考えさせられていく。

    途中までは人物の多さ(馴染みのない海外の名前であったこともある)と複雑な内容に苦戦を強いられたが、ある程度掴めてくると物語の世界に一気に引き込まれて行く。

    生とはなにか、死とはなにかが非常に繊細な描写から考えさせられ読み応えのある作品だった。

  • 5/15 読了。
    死者が次々と甦り<生ける屍 リヴィング・デッド>と化す怪現象が各地で巻き起こる二十世紀末のアメリカ。その渦中、ニューイングランドの片田舎で霊園を経営するバーリイコーン家では、重病を患った家長のスマイリーが親類一同を集めて何度も臨終宣言を繰り返し、相続人たちを翻弄していた。スマイリーの孫であるパンク少年のフランシス、通称グリンは、同じように一家のはみだし者となったパンク少女チェシャと一緒に大人たちの思惑をすり抜け、暇を持て余していた。しかしある日、スマイリーが開いたお茶会の直後、突然グリンは死んでしまう。臨死体験ののち目覚めたグリンは、自分の心臓が止まっているのを発見して驚愕する。グリンは<生ける屍>になったのだった。ハース博士の協力で自分の死因が砒素であることを突き止めたグリンは、博士以外には死者であることを隠したまま犯人探しを始める。だがその後も殺人事件は相次ぎ、被害者が死んだと思えば甦り、容疑者も死んだかと思えば甦る。この世の法則を超えた<死者が甦る世界>で起こった殺人事件の真相とは?

    面白かったーーーーー!!!!!キッド・ピストルズを一気読みしてすっかり山口雅也ブーム。ミステリープロパーじゃないので新本格の歴史とかわかんないけど確かにこれは別格の面白さ。<世界の常識がひっくり返った世界でミステリーは成立するか>という実験的な試みが面白いのはもちろん、アメリカの霊園を舞台にした<死の百科事典>としても堂々たる風格を備えている(実際ちょっとしたポケット事典並みの分厚さ)。
    私の趣味はこの後者の<死の百科事典>の方に寄っているので、キリスト教のもとで育まれた土葬文化が火葬を忌避する論理や、そのせいで生まれたエンバーミング(死体防腐処理)という技術のちょっと滑稽にさえ思える高度な発展、それゆえ高度な技術職と認められている葬儀屋の社会的な地位の高さなど、アメリカの葬送文化に関するウンチクをまず楽しんだ。ハース博士とグリンの知に淫した会話は作中でもチェシャによって「死神博士[ドクター・タナトス]の楽しい死学[タナトロジー]講義」と揶揄されるが、古今東西の文学やロック・ミュージックの歌詞から引用してきた各章のエピグラフをはじめとして、本書自体が<楽しい死学講義>として機能するよう書かれているのは間違いない。
    殺害動機が狂気の論理というか論理的狂気によって鮮やかに解き明かされる点では、本書の直前に読んだ『キッド・ピストルズの妄想』と非常に近いテーマ性を感じた。生前から自分の死を"演出"する老人や、子孫(遺伝子)に財産を残すことへの異常な執着、"神"の存在証明のために殺しが行われるのも『〜妄想』と共通するテーマだろう。また、山口雅也作品に通底するものとして、全体を覆うナンセンスと物語空間の箱庭性があり、本書もトゥームズヴィルというひとつの村で始まり、トゥームズヴィルの内だけで終わる<小さな狂気の物語>ではある。
    キャラクターの魅力についても触れておかなければならない。なんと言ってもグリンとチェシャ!キッド・ピストルズとピンク・ベラドンナにそっくりな(というよりこの二人がグリンとチェシャの"生まれ変わり"なのかも)パンクカップルで、衒学趣味のグリンに対しひたすら行動派で失敗ばかりしているチェシャがかわいい。<生ける屍>になってから体温がなくなり、冷たい身体のせいで実は死んでいるとバレないように他人との接触を避けていたグリンが、交通事故のあと気を失っているチェシャの無事を確かめて抱きしめる切なさ。その後チェシャと一緒にベッドインするが勿論なにもできず、「死に取り憑かれている」と弁明するしかないグリンに、同情したチェシャが無限退行のパラドックスを語る健気さ。そしてラストシーンのグリンの言葉。本当に切なくてキュンとするカップル。その他にもグリンの協力者で時にとんでもないミスリードをやらかすハース博士や、自己顕示欲が強くて困ったおじいちゃんのスマイリー、エンバーミングに並々ならぬ誇りをかけているジェイムズ、チェシャの母で浮気者のイザベラに、甦る死者のせいで精神を蝕まれていく気の毒な刑事のトレイシーなどなど、個性豊かな生者と死者が入り混じり、ダンス・マカブルを踊るように大団円を迎える。
    たくさんの登場人物が舞台に現れては消える、カーニヴァレスクな狂乱の空気を漂わせる本書に真っ直ぐ通るたったひとつのテーマは、<生けるものは皆いずれ死ぬ>ということだろう。そんな厭世的にもなり得るテーマを、<皆いずれ死ぬのだから生きていること自体がナンセンス>へとひっくり返し、遊びの感覚で捉え直したうえでミステリーというエンターテイメントとして提示しているのだ。人は皆死ぬために生まれ、生きている間は自分のためのささやかな物語を生きる。作中ではシェイクスピアへの言及もある。そして、グリンの最後の独白によってなんにせよミステリーの探偵役とは<物語をコントロール出来る役>であることが語られる。勿論、死者になってから物語をコントロールすることへの皮肉もたっぷり込めて。

  • 我々は幸せだ、"生きてるうちに"読めるのだから
     約30年経った今も全く色褪せない名作。死者が甦る世紀末的世界で起こる霊園一族の怪死事件、というだけで舞台は十分に整っていますが、これでもかと盛り込まれたブラックジョークや死生観等々で、圧倒的な読み応えを誇っています。
     死してなお活発な灰色の脳細胞、安らかなる永遠の眠りを先延ばしにされ、ゾンビ探偵に任命された青年・グリン。読者が謎を解くには死と向き合うことが必要かもしれません。生者の論理と死者の論理が複雑に絡み合う驚愕の真相が待ち受けています。
     本作を今まで放ったらかしにしていた自分が恥ずかしい。比類なき傑作です。
     本格ミステリ・ベスト100(75-94年)/1位に選出。

  • 『死』をテーマに描く本格ミステリー。ミステリーなんだから死を描くのは当たり前と思いきや、これは『死』とはなんなのか?について、様々な登場人物の死生観、死の文化、宗教、オカルト、葬儀の文化…などなど、これでもかという方面から語る、うえでの本格ミステリ。この前置きの部分が面白くて面白くて。そして死者が甦る世界での殺人。よく練られた舞台設定における、ちょっと他では見たことのないミステリーでした。

  • 相対的には語れない絶対性の強い傑作。死体が蘇る現象が起き始めている世界における殺人と探偵行為の意義とは何か。死者と生者の思惑が複雑に交差し、導かれる真相には唯一無二の衝撃と美しい本格ミステリの構成美が備わっている。全編に渡る「死」の講義、「死」についての物語、そして死者が考え動くことによるユーモア、それらが無駄なく精緻に紡がれ至る謎解きは見事、エピローグは秀麗である。グリンやチェシャ、トレイシー警部などキャラクターの魅力も読ませる。異常な世界の中の独自のルールとリアルを描き切った技量に感嘆する。

  • 蘊蓄が長すぎ、登場人物多すぎで、前半で息切れしてしまい、面白さが分からず只疲れました。このミステリーがすごい!ベストオブベスト国内編第二位ということですから、プロ評論家には受ける内容なのでしょうけど、私には合わなかった。

  • 長い。長すぎる。

    もう少しくらいコンパクトにして欲しかった…

    アメリカが舞台で、

    登場人物も横文字、しかも人数がえらく多い、

    とくれば、

    名前覚えられない病が久しぶりに再発かと思われましたが、

    意外と大丈夫だった。

    多分、海外翻訳ミステリ風とはいえ、

    結局は日本人の文章だから、

    それほど読みにくくなかったからだと思う。

    伏線も多いし、情報量が多いので、

    ちゃんと読んでちゃんと推理しようとすると、

    すごく時間かかりそうです。

    ラストに辿り着くまでに疲れてしまって、

    イマイチ驚けなかった。

    また、「死んだ人が蘇る」

    という基本設定をどれだけ受け入れられるかで、

    物語に入り込めるかが決まってきそうです。

    グロい描写はそれほど多くなく、

    なんとか最後まで読めました(最後かなり端折りましたが)。











    ---------------ここからネタバレ------------------











    誰が、いつから死んでいたのか。

    なぜ、どうやって死んだのか。

    自殺なのか、他殺なのか、事故なのか。

    遺産なのか、遺恨なのか。

    もう謎が多過ぎて、

    解決部分を読むにも、前に戻って戻って、一苦労。

    要素が多すぎ、絡み合いすぎなので、

    途中図解とか入れて欲しい。

    長編だし読み応えは抜群だけど、

    とにかく、疲れました。

    グリンとチェシャの関係が良かっただけに、

    グリンが結局死んじゃうのは残念。

    スマイリーとモニカの最期は物語的だけど、

    これもまた一つの夫婦愛の形なのかな。

  • 長い!でも楽しかったです♪ドタバタ騒ぎに終始する、なんと死者が甦る世界のお話。死んでも生き返って生きてるように生活するって…こわっ。書いてる人は日本人だけど、本当に外国の本を読んでるよう。 探偵というわりになかなか動き出さないし、大体こんなもんかなーと思ってたら当たってた。中弛み間があってちょっと残念。でもアメリカの葬儀社の内部のお話がおもしろかったです☆

  • 見事な本格ミステリー。
    メガネだったりストライキだったり、指紋だったり、という伏線も見事だが、やはりモニカの動機やジョンの"自殺"の理由には目を見はるものがある。
    まさか死についての談義までもが伏線だとは思わなかった。

    最初登場人物表を見たときは外国人の名がズラーっと並んでおり、少し読むのに気が引けたが、実際に読んでみると、ユーモアのある文章や魅力的なキャラクターに引き込まれ、とても読みやすかった。
    終わり方もとても良かった。

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