キッド・ピストルズの妄想: パンク=マザーグースの事件簿 (創元推理文庫 M や 1-3)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 175
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488416034

感想・レビュー・書評

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  • いわゆる狂人の論理ばかりを集めた中編3作品。最もそれらしいと思ったのが「ノアの最後の航海」。死に際の人間だけが辿り着けるロジックは、その人の本質を映し出す鏡でもあったのだ。

  • 再読。『神なき塔』『ノアの最後の航海』。やはりこの二作は凄い好き。本来、犯人を特定するために証拠や論理を用いるのだが、キッドの推理方法は先ず『特定の人物の妄想』を特定し、そこからそれに沿うように論理が展開していく。更に「妄想」ではブル博士やピンクの間違った推理を展開させて飽きさせない。その推理がキッドの推理を補強する形になるのも面白い。非常に濃密な短篇。短篇本格ミステリにしては珍しく、事件がなかなか起きない。本来、これでは飽きてしまうのだが、そこはそれ。流石の山口氏である。キャラクターをユーモラスに描くので飽きない。登場人物の妄想が主眼になるためキャラクター達を動かして後半の推理に用いるので巧いなぁと。
    『神なき塔』
    ヘルメットから、高所恐怖症を割り出すキッドのロジックと、博士の取り違え。そして最後に、「奇妙な薄笑い」という言葉の意味の反転による殺意の立証が美しい。中途だれそうなところで、現場を録画した映像が出てきたりとあの手この手で飽きさせない。
    『ノアの最後の航海』
    箱船とジーン。この妄想はなかなかたどり着けないだろう。それを真犯人がキッドを手助けする形で論理へと導いていく。ブル博士による間違った推理で一度窮地に立ちながらも、瓦解すると共に安全圏に入る犯人。その過程で『雨に濡れている』ことを巧く理由付けし、盲点に入ってしまう。最後には雨と凶器というシンプルな論理が犯人を特定するという趣向が面白い。
    『永劫の庭』
    読み終わってみると、全てが収まるところに収まった良短篇だと思う。髪を切られそうになったキッドから、別の目的を見せつつさりげなく理髪師という情報を提示する。人工廃墟での自殺騒動。首を斬らなければならなくなった理由を提示するさりげなさが巧い。さりげなく意味を込める。そしてみえてくる情景が美しい。ただ、どうしてもこうなんじゃ無いだろうか、という懸念が消えないままそのまま提示されてしまった感じがある。お宝探しにかこつけて繰り広げられる衒学と妄想が共鳴していく様を楽しむのがもしかしたら良いのかも。

  • 5/11 読了。

  • 5 

    とても面白い。狂人の論理も常人の論理も筋が通れば説得力を持つ。しかし突き詰めると、その論理に入る前の前提条件を受け入れさせることが出来るかどうかに、後の論理展開が左右される。この著者はその前提条件の置き方が上手い。これだけでも非常に価値のあること。のみならず、筋立て、蘊蓄、キャラ造形、ユーモアといずれも高水準で密度が高く充実している。
    文庫版カバーのタイトルの上に配置された、帽子を被った男のマークが妙に誇らしい。

  • 推薦文は笠井潔。「神なき塔」「ノアの最後の航海」「永劫の庭」の三編を収録。同シリーズ中の最高傑作。

  • 小説は重力。だんだんと地球を離れ、もしくはだんだんと引き寄せられて逃げられない。毒と表現してもいい。窒息死と毒死とどちらがいいか、選ぶ重力だ(?)。

  • 相変わらずのペダンティズム。「神なき塔」がベスト。伏線の張り巡らしかたはやはり凄い。「狂人の論理」を突き詰めたのは凄いが、あまり説得力はなかったか。

  •  本の読み方が、とても現実逃避をしているような気がする。やらねばならないことをやらないために、本に逃げているような気がする。参考資料を見ている、と居直るにも限界があるような気がする。
     昨日は日曜日には浅草に出かけて、それなりにリフレッシュをしたのだけれどね。今日は一日自分を家に缶詰にしてみるつもり。が、インターネットで外に出られるのだから仕方がない。

     で、キッド・ピストルズ。どんどんつまらなくなっているような気がする。パラレルワールドで、パンクの警察官であるってことの衝撃があんまり無くなってしまったのは仕方がない。だいたい、パンクというのがもう、今の日本では死語に近く、反社会とか価値観の反逆とか、そういうことのメタファーにならない。
     だから(だと思うけど)、この短編集ではかなり雄弁に、価値観の倒錯というか、妄想の論理のようなものが前面に出されている。それはなかなか興味深いし、このシリーズの根源に迫っているとは思うのだが、素朴にミステリを読む楽しさのようなものが失われてしまったような…
     読後感がいまいちしっくり来ない作品だった。
    2006/7/31

  • この推理小説は、うわ~って感じた推理小説の一つ。
    何がすごいと思ったかっていうと、キッドが狂気について述べた一説。ゆがんだ時空を進む光と狂気についての考察。推理小説っていうのは、人が殺された論理を解いていくものですが、キッドは狂気についてもそういう風に解くのか・・・って思ったので。他に2冊、出てますけど、この「妄想」が一番と思います。

  • パラレルワールドの英国。

    蔑みの視線を受けるパンク族の刑事・キッド・ピストルズが説き明かすマザーグース・ミステリ。


    犯罪の狂気は妄想により覆される・・・・・・。

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