少年検閲官 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.74
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本棚登録 : 329
レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488419141

作品紹介・あらすじ

旅を続ける英国人少年クリスは、ミステリを検閲するために育てられたエノと出会う。書物が駆逐されてゆく世界で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。気鋭の代表のひとつ。

感想・レビュー・書評

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  • 異常気象により海に飲み込まれ、終わりへと向かう世界が舞台。
    書物を禁じられた社会で、ミステリを求める少年とミステリを検閲する少年の交友を主軸に、この特殊な世界設定を使って「ミステリ」を表現し解き明かしていきます。

    冒頭の青年と女性の冒険や、少年と折りたたまれる少女の話などは童話みたいで暗く幻想的。
    これらの猟奇的で不可思議な事件が「書物が禁じられた世界」というキーひとつで様相を変えるのがおもしろいです。
    いたるところに真相を暗示する場面がありました。

    検閲官の少年と旅を続ける少年の行く先も興味を掻き立てられるところで、シリーズとしての続編が待ち遠しい。


    ネタバレ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













    「ミステリ」がなければ「犯罪」を知らない、「ガジェット」がなければ「トリック」を知らないというのが、アイテムを手に入れないと攻略できないゲームみたいでした。
    書物がないという事象をミステリや犯罪と絡めるのがおもしろいです。
    クリスの持つガジェットが「記述者」というのがまた意味深。

    人々の思考やラジオなどから「書物が禁じられた世界」を「情報が制限された世界」と連想してしまうのですが、それが「紙がない世界」であり動機につながっていくのが盲点でした。

    しかしあれだけ殺人を犯し、壁紙を手に入れたなら1冊くらい本が作れそうですが、どの程度用意したらみせるつもりだったんだろう。そしてどんな内容を書くつもりだったんでしょう。

  • 本が禁止され、世界の陸地が沈みつつあるパラレルワールド
    憎悪や殺人、果ては感情が動くことすらタブーとなりあらゆる物語が無くなった世界

    犯罪という概念すらないこの世界の片隅で起こる首無し連続殺人

    不可思議不条理な犯罪であっても、自然死扱いになるシチュエーションでミステリを成立させるのが凄い

    折れた竜骨のように、ファンタジー特殊世界でキチンとミステリという技が凄い

    個性ある少年たちが活躍するので、アニメとかビジュアル向きな面もありますが

  • 本書の舞台は書物の所持が禁じられた世界です。

    当然、「ミステリ小説」も存在しません。
    ですから、「密室」も「アリバイ」も存在しません。


    首を切断された死体があれば、被害者を誤認させるトリックを疑うのがミステリの定石ですが、登場人物の誰ひとりとして、そんなことには思い至りません。
    それどころか、首なし死体を自然死として扱おうとする始末。

    「ミステリのトリック」を集積させた「ガジェット」と呼ばれる石を持つ者だけが、ミステリのトリックを自在に操り、世界を翻弄することができるのです。

    物語は、「序奏 箱庭幻想」と「間奏 鞄の中の少女」を間に挟みつつ、失われた「ミステリ」を求めて旅をする英国人少年・クリスを主役として進行していきます。

    このクリス少年、父親からもらったという宝石の嵌まったチョーカーをしているのですが、この宝石が「ガジェット」であることは誰にでもわかります。
    それ自体は物語の小道具のひとつにすぎないので、まあ、わかってしまったところで別にかまわないのですが、それにしてもわかりやすすぎて面白味に欠けるように思えました。

    同じように、犯人の殺人の動機である「紙を得ること」が、ミツマタやコウゾを栽培しているというところで読者にすっかりわかってしまい、拍子抜けします。
    伏線と呼ぶには当たり前過ぎて、ちょっと勿体ないかなと感じました。

    ただ、この事件自体は「書物がない世界」でしか起こりえない犯罪であり、そういう意味では世界観とトリックが見事に調和していると言えるでしょう。

    「序奏 箱庭幻想」と「間奏 鞄の中の少女」という摩訶不思議なふたつのサブストーリーも、「書物が存在しない世界」ならではの謎が仕掛けられていて、その解決も腑に落ちます。

    言い換えれば、これは「世界」が「トリック」に奉仕することで成り立つミステリであり、わざわざ、こういう世界観を構築したことに意味があると言えます。

    作者は「トリック」を先に作り上げ、だからこそそれが成り立つ「世界」を作り上げたのでしょうか。

    それとも、こういう「世界」を構築し、そこで起こり得る「トリック」を考え出したのでしょうか。

    それがどちらであったとしても物語の魅力には関係ありませんが、知りたいような気がしてしまいます。

  • 書物が駆逐された世界のおはなし。
    ことばが、よく知った意味じゃない使われ方をしていて、なんとも不思議な感覚に陥りました。
    少年検閲官がなかなか出てこなくてめちゃくちゃ焦らされた…。



    最後のほう読んでて、これ本好きの下克上では?!となってしまった笑笑。紙、ほしいよね……

  • 2019年1月2日読了。
    2019年2冊目。

  • 設定の妙。
    犯人像は拍子抜け、という感じだが、この状況だからこその犯罪。文章も上手くなってる。続編に期待。

  • 本が失われた世界。
    「探偵」がどのようなものか知っている私たちにとっては想像もつかないが、主人公が訪れた街の人々は「探偵」とは「人を殺すもの」と認識し、また「探偵が人を殺すこと」を雨が降るのと同じような「自然現象」だと考えている。この様な世界で主人公はどうやって犯人を突き止めるのか。
    設定に入り込むまでが少し大変でしたが、入り込むと一気に読めるとても面白い一冊だと感じた。

  • タイトルにもなってる検閲官がなかなか出てこなくてちょっとビックリ( ・ᴗ・ )笑 焦らなくてもちゃあんと出てきてカッコいい活躍してくれます✨

  • 書物というものが全て駆逐され、教育から報道まですべてのことが検閲されたラジオでしか情報を得ることが出来なくなってしまった世界の物語。

    <あらすじ>
    旅を続ける英国人少年クリスは、家の扉や室内の壁に赤い十字架が描かれた古い小さな町を訪れる。
    その町では『探偵』といわれる覆面の男が恐れられていた。
    家々の赤い十字架も探偵によってペンキで描かれたらしく、目的は不明とのこと。
    それと町の近くの森に入った人は『探偵』によって殺されて首ナシ死体になってしまうそうで、実際に森に入った人たちはみんな首ナシ死体になって殺され犠牲者は30人以上いるとのこと。

    そんな話を色々聞いていたクリスは、町の近くの湖で、ボートに乗る探偵を発見!町のみんなで湖畔を取り囲んだ。
    ボートの上で探偵が斧を振り下ろす光景を目撃するクリスと町民たち。
    その後、探偵はふっと消え、そのボートが湖畔に流れ着くと、探偵は乗っておらず、首ナシ遺体だけが残されていた。
    一体探偵はどこへ行ったのか。。。

    その翌日、ついに情報統制のために検閲官たちが町を訪れる。
    その中心人物が少年・エノ。

    エノはクリスから町で起きた事件を聞き、問題とされる森へ侵入する。
    すると探偵がいると予想される小屋を発見。
    中に入るとそこには、人間がバラバラにされて、巨大な鍋に入れられ、はがされた人皮が棒にかけられた、無数の死体があった。。。

    少年検閲官・エノの推理により事件の謎が明かされる。


    <オチ>
    犯人は町人の1人で、目的は犯人の息子が望んだ『本』を作るためだった。
    本が存在しない世界で必要なのが『紙』。
    本が駆逐される以前に建てられた家の壁にペンキで十字架を描くことで、十字架が簡単に消えないからとその壁の『壁紙』を取り替えるときに、その『壁紙』を回収することで『紙』をゲットしていた。
    でもそれだけじゃ足りないから、人の皮で本を作ろうとしていた。
    そして、紙にインクを安定させるサイズ液を作成するため、遺体をバラバラにして鍋で煮てニカワ液を作っていた。
    首ナシなのは『本』を作る材料として不要だから。
    ボートの探偵消失は、探偵を紙で作りボートにいるように見せたトリックだった。


    ※解説:法月綸太郎

  • ≪僕はミステリを探している.この,ミステリが禁止された世界で≫

    「少年検閲官シリーズ」第一作.
    ン―,感想が難しい.
    というのも,いわゆる『特殊設定ミステリ』に分類されるようなので,その設定を活かしたトリックやら動機やら真実やらなので,ネタバレになっちゃいそうなんだよな.
    そんななか,やはり(?),法月さんが分かるようでわからないようでうんうんとつい頷いちゃう解説を書いてくださっている.
    すごいなぁ.そんな意味をも見出しちゃうなんて….
    ぼくはミステリを,何のために読むのだろう.
    どうして好きなのだろう.
    何をくみ取っているのだろう.
    ただただ消費するだけ.
    消化できてない.昇華なんてもってのほか.
    ン―,でも,いいよね,本とミステリ(笑)

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著者プロフィール

2002年、『『クロック城』殺人事件』(講談社ノベルス)で第24回メフィスト賞を受賞しデビューする。代表作として、デビュー作に端を発する『『瑠璃城』殺人事件』(講談社ノベルス)などの一連の<城シリーズ>などがある。

「2020年 『ステイホームの密室殺人 1 コロナ時代のミステリー小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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