アリス殺し (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.61
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本棚登録 : 5407
感想 : 352
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488420147

作品紹介・あらすじ

大学院生・栗栖川亜理は、最近不思議の国に迷い込んだアリスの夢ばかり見ている。ある日ハンプティ・ダンプティが墜落死する夢を見た後大学に行ってみると、玉子という綽名の男が屋上から転げ落ちていた。次に見た夢の中でグリフォンが生牡蠣で窒息死すると、現実でも牡蠣を食べた教授が急死。そして不思議の国では、三月兎と頭のおかしい帽子屋が犯人捜しに乗り出していたが、なんとアリスが最重要容疑者に……。悪夢的メルヘンが彩る驚愕の本格ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 想像を越えないだろうと過小評価していたこちらの作品。結果から話すと物語は想像以上のスケールの大きさだった。控えめなもののグロ×ファンシーな一見ミスマッチの融合が見事な薄気味悪さを演じていた。しっかりダークファンタジーだった。

    牡蠣と海象が出てきた時には、幼き頃、ディズニー不思議の国のアリスを見て子供なりに残酷さを感じたシーンだったなと懐かしくなった。年月を経てまさかこんなグロ耐性のついた大人になろうとは、いやはや人の成長とは恐ろしい。

    蜥蜴のビルのおバカ具合に始まり、赤の女王の天然サイコパスによるコメディな締めくくりかと思いきや、重みが過ぎる世界の真相を知り呆然とした。
    続編はどう続いていくのか気になって仕方ないので、「殺しシリーズ」ゆっくりと追って行きたいと思います。

  • 悪魔的メルヘンの世界から抜け出せないっ 不思議の国の悪夢と殺戮、異世界設定ミステリー #アリス殺し

    私はいったい何を読まされているのか…

    最初はこんな感じで不安になりましたが、なかなかどうして、素晴らしいファンタジーミステリーでした。
    ほぼ全編、変なキャラクターや意味が分かるようで分からないような会話。そして『不思議の国』ながらもドス黒い描写が何ともイイ!

    本作一番の魅力はやっぱり悪魔的メルヘンな世界観。他のミステリーでは味わえない唯一無二です。
    殺人シーンも決してサラリとはさせず、いい意味で粘っこい描写をされており、幻想的な世界から突き放してきます。よくもこんな歪んだ物語を成立させました。

    またミステリーとしても、いい具合に読み手を唸らせます。
    幻想的な物語を読んでるな~と思って油断していると、突然ナイフを突きつけられます。しかも結構鋭利な刃物で襲ってくるので、正直ビビりました。

    特に後半は、えっそうなの? ええっそうなの? といった展開で楽しませていただきました。

    ■推しポイント
    まったくリアルでないのに怖いところがスゴイ。
    普通ミステリーは人が生死というヒリヒリした現実を伴います。最近の作品は特殊設定モノも多くありますが、本作は最高レベルに異世界設定ミステリーです。

    作品からは特段メッセージを感じないところも良いところで、完全に悪夢の世界に迷い込んだ物語を嚙みしめられました。

  • 本格・特殊設定ミステリーというジャンルらしい
    題材の「不思議の国のアリス」は読んだことないが、
    理不尽で意味不明な出来事が起こる話だったような‥

    夢を題材とし、理解しがたい理論で会話が進む
    他のレビューでこれに苛立つ記載があり、
    やはり私も少し苦痛を感じてしまった

    伏線回収はすっきり 現実と夢のアバター
    後付設定もあるので本格ミステリーとしてはフェアでない感想 
    グリム童話みたくのグロ残酷描写は嫌いではない
    metaの世界思想から実現するのでしょうか?

    琴線メモ

    ■「オッカムの剃刀って知ってるかい?」
    「不必要な仮定は立てるべきではないという原理さ。つまり、物事を説明できる最も単純な理論を採用すべき」

    ■不思議の国はまともな世界じゃない。

    ■「世界は終わらないよ。ただ、夢が一つ終わるだけさ」

    ■それはもう理屈ではない。真実だから、どうしようもないのだ。






  • 小林泰三さん初読みの『アリス殺し』の概要と感想になります。

    概要です。
    栗栖川有栖は不思議の国の夢を見る。それは妙にリアルだが苛立つ展開に目覚めはいつも最悪な気分であった。しかし、ある日に起きた事件を機に不思議の国の夢と現実がリンクしていると分かり、連続殺人の真犯人探しに奔走する。

    感想です。
    本作の著者である小林泰三さんは『玩具修理者』でデビューされたそうで、その作品はグロテスクさが凄いという評判はYoutube動画で知っていましたが『アリス殺し』の著者でもあることは解説を読んで初めて知りました。
    本作の印象ですが独特な表現と奇抜な特殊設定ミステリであるため、ついて行けない読者も多いのかなと思いましたが読後感は爽快な気分になってしまう中毒性がありますね。
    とは言え、続編の『クララ殺し』を読むのは少し気が引けます(^_^;)

  • 小林泰三さん初読み。少し前追悼文で知り興味を持った。グロテスクな描写が多いのはつらかったが、『不思議の国』の雰囲気を保ちつつロジカルなミステリを成立させてるのがとても面白かった。舞台のように台詞で展開してるのも良い。続編も期待大。

  • ほとんどがカギカッコで登場人物の会話だけで話が進む感じ。揚げ足の取り合いみたいな会話のやり取りに少しキィーーーってなりながら読んだ。
    ストーリーは面白くてスラスラ読めた。殺し方とかは結構グロかったなー。あとチェシャ猫は地球では誰だったんだろう?

  • 「スナークは」「ブージャムだった」は只の合言葉ではなく,白兎の不可解な消失の原因。夢と現実がシンクロする殺人,堂々巡りの会話に梃ずり頭の中も迷宮入。アバタールが誰か解明難航。

  • やられたー!笑

    読んでる途中で、
    ん?本のタイトル、「アリス殺し」だよなぁ?
    ってなって、え?殺すの?殺されるの?と
    思わされる。

    終わってみれば、なるほどなぁ。と
    騙される!

    著者はとても賢い。
    読んでて不毛な会話も全て筋が通っているし、
    そこに伏線があったり、
    誰が誰みたいな予想も外され、
    全て著者の思うままでした。笑

    面白かった!

  • 会話がトントンと進みテンポが良い。ほとんど会話がメインで進行。会話内容がまどろっこしくもあるが、全く嫌な感じではない。
    現実の世界とアリスの国がリンクしている全体像は、設定として面白いし、二つの世界での登場人物が一対一に、なかなか明確にならないのがミソ。

  • めちゃくちゃ面白かった!

    正直、ファンタジー要素の入ったミステリって、どうしても不可解なところが多くご都合主義な感じなのであんまり好きでは無いんですけど、こんなにゴリゴリファンタジーで面白いミステリがあるとは!!
    新ジャンルを開拓してしまった...

    不思議の国での会話が、ほぼ描写無しで会話文だけで進んでいくのですが、登場人物が大体頭可笑しくてなかなか会話が進みません。
    なにこれ?と最初は思ったんですけど、こういう描写のおかげで不思議の国の可笑しな世界観をありありと感じられるようになりました。
    なかなか奇妙な文章ですが、案外スラスラ読めました。

    ファンタジーも楽しめるし、ミステリとしてもかなり面白かったです。
    最後まで驚かされっぱなし。
    うわー!これ当てられたなーー!って感じで悔しかった(笑)

    すごく楽しかったです。かなり好き。
    メルヘン殺しシリーズ全部読みたい!

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2014年『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他、『大きな森の小さな密室』『密室・殺人』『肉食屋敷』『ウルトラマンF』『失われた過去と未来の犯罪』『人外サーカス』など著書多数。

「2023年 『人獣細工』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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