名探偵に薔薇を (創元推理文庫) (創元推理文庫 M し 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488423018

作品紹介・あらすじ

創作童話『メルヘン小人地獄』をなぞるように発生した事件を名探偵が推理。

感想・レビュー・書評

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  •  以前から気になっていた本。2部構成になっていて、第一部メルヘン小人地獄は、謎の毒薬「小人地獄」(スゴイ名前だ)をめぐる殺人事件。第二部毒杯パズルは、それから2年後の「小人地獄」が使われた殺人事件。登場人物は重複しており、探偵役も同一人物である。

     第二部こそがメインであり、第一部はプロローグにすぎないと思った。ラストは、何ともやるせない。メルヘンで始まり、メルヘンで終わるミステリ。第8回鮎川哲也賞最終候補作だが、受賞してもおかしくない作品だと感じた

  • 虚構推理で有名な著者の長編デビュー作。
    本作は二部構成となっていて、第一部は完璧な毒薬「小人地獄」と童話を用いた見立て殺人、そして話の後半に現れる名探偵の活躍といった、THE本格ミステリといった様相で面白かったです。

    一転して第二部は名探偵、瀬川みゆきが語り手を務め、一部の名探偵の活躍とついになるような、名探偵の苦悩が話しの焦点となっています。

    そして、最後に判明するタイトルの意味を知った時、切なく、やりきれない気持ちになりました...

    "探偵"を描いた小説として、傑作です。

  •  『虚構推理』の城平京さんの長編デビュー作とのこと。そうと知って読んでいたので、その原型っぽさを噛み締めながら楽しんだ。第一部では、三橋の、一見不甲斐なさそうに見えて意外と冷静で頼れるところや、瀬川の、一見冷徹そうに見えて実は壊れやすい繊細さと優しさを抱えていそうなところなど、キャラクター造形にそれを感じた。
     そして第二部、次から次へと新たな〝真相〟が現れる、『ギリシャ棺の秘密』もびっくりの多段推理。解説では、この作品の生まれた経緯の一幕として、作者がどのようにして古今東西の名作ミステリーを吸収していったかも紹介されていたが(必ずしも、昔から好きでたくさん読んでいた、というわけではなかった)、数々の過去作品を踏まえて本作が生まれ、そして『虚構推理』に至るのかと、その道のりも興味深かった。
     タイトルは、『エミリーに薔薇を』のオマージュだろうか。本作で「自分はこれまで名探偵をやってきたが」と職業のように「名探偵」という言葉が使われるのは、考えようによっては笑止なのだが、第二部のメインテーマは、推理機械などではない人間としての名探偵の苦悩である。私は名探偵がヒーロー的に大活躍する様を楽しみたくてミステリーを読んでいるタイプのミステリー好きだが、だからこそというか、「責任を感じる」とまでは言わないけれど、こういうテーマの追究には非常に興味がある。『虚構推理』、はじめの二作しかまだ読んでいないので、また続きも追いかけてみようかな。
     グロテスク描写もありその内容的にはまあまあショッキングなので、苦手な方は要注意。ただ、私も苦手だけど、グロさで気を引いて面白がらせようという感じがしなかったので、意外と大丈夫だった。

  • ミステリとしても小説としても面白い。

    一部二部構成になっていて、この二部のために一部があったのかと。

    一部の展開から二部は全く想像できませんでしたし、二部の展開もよきです。


    お気に入りの一冊になりました。

  • グロテスクな描写があるので、
    耐性がない方は気を付けてください。
    私は想像力が豊かゆえに
    少し気持ち悪くなりました。

    瀬川みゆきのキャラが好きです。
    あんまり思い詰めないで幸せになってほしい。

    二転三転した第二部には
    ハラハラさせられました。

    第一部よりも第二部のほうが
    スピード感があり、あっという間でした。
    一気読みしたほうが楽しめると思います。

    フィクションで良かった。
    こんな恐ろしくて悲しい話、現実にはしたくない。

    第二部のための第一部。
    布石にしていまうあたり、さすがです。

    読み終わって分かるタイトルの素晴らしさ。
    『名探偵に薔薇を』以外考えられません。

  • 虚構推理を読んでからたどり着いた作品である。
    内容的には少しファンタジー的な要素もあり、2部構成となっている。

    この作品は推理小説と言うよりは、名探偵の孤独感なるものに重きをおいた作品と感じた。
    世に名探偵は沢山いるが、あまりこのように孤独さを感じさせることはない。
    実は名探偵は辛く悲しいのだと感じた。

    その上で、帯にあった
    「タイトルはこれ以外ありえない」
    そう、この作品は
    名探偵に薔薇を
    である。
    読後に意味がわかり、納得のいく帯である。


    説明
    怪文書『メルヘン小人地獄』がマスコミ各社に届いた。その創作童話ではハンナ、ニコラス、フローラが順々に殺される。やがて、メルヘンをなぞったように血祭りにあげられた死体が発見され、現場には「ハンナはつるそう」の文字が……。不敵な犯人に立ち向かう、名探偵の推理は如何に? 第八回鮎川哲也賞最終候補作、文庫オリジナル刊行。

  • のっけから「どういうこと?」となり、引き込まれる。
    一部はグロいというか感じたことのない気持ち悪さを感じるのは確か。二部に漂うドロっとした空気感はなんとも…
    良くも悪くも心に残ってしまう。

  • 童話『メルヘン小人地獄』をなぞるように発生した連続殺人を名探偵が推理する第一部。第一部は第二部のための大きな伏線であり、名探偵が見せた解決は第二部の悲劇のためのお膳立てである。この結末は予想できない。誰も救われない、名探偵に薔薇を贈りたいと思うのも当然である。また、この作品の結末は、『虚構推理』にも通じるものがあった。

  • 事前に何の情報もなく読んだのでびっくりしました。
    なんとなくタイトルからは、ポップなライトノベルのようなイメージだったのです。
    ところが。

    すごくグロテスクな話なんですよ。
    苦手な方はこの先ご遠慮ください。
    私は終始脳内で『こびとづかん』の小人たちが蠢いていて、閉口しました。

    「小人地獄」という究極の毒薬を巡る話です。
    小人(実際は胎児や赤ん坊)の脳髄をどうにかして作る秘薬で、無味無臭、少量で人を死に至らしめ、その痕跡を残すことがないという究極の毒薬。
    その毒薬造りを告発するのが、童話のかたちを借りた『メルヘン小人地獄』。

    江戸川乱歩もびっくりなグロテスクな惨殺死体が出てきます。
    これ系が苦手な私は、『第一部 メルヘン小人地獄』が本当につらかった。
    けれど、『第二部 毒杯パズル』は二転三転する情報に名探偵が翻弄され、面白かったです。
    最後まで頑張って読んでよかったな。
    でも、再読はできないな。
    グロいの苦手。

  • 一気読み確実。心が震える傑作。多くの人に読んでもらいたい。

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著者プロフィール

【城平京(しろだいら・きょう)】
奈良県出身。代表作に漫画原作『絶園のテンペスト』『スパイラル~推理の絆~』、小説『虚構推理 』『名探偵に薔薇を』『雨の日も神様と相撲を』など。

「2021年 『虚構推理(15)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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