ななつのこ (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 3092
感想 : 438
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488426019

作品紹介・あらすじ

表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック「スイカジュース事件」をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作家本人から返事が。しかも、例の事件に客観的な光を当て、ものの見事に実像を浮かび上がらせる内容だった-。こうして始まった手紙の往復が、駒子の賑わしい毎日に新たな彩りを添えていく。第3回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ○ 動かしたいのになぜか身体が動かせない恐怖。
    ○ 声を出したいのになぜか声が出せない恐怖。
    ○ 誰かが自分の上に乗っているような恐怖。

    さて、あなたは、このような体験をしたことはないでしょうか?“金縛り”。そう、そんな恐怖な体験を”金縛り”と呼びます。私はかつてこの体験に悩まされていた時代がありました。当時住んでいたマンション。その隣が墓地だったこともあり、きっとこれは何かある、何かが影響している、まあそれだけの理由ではないですが、家庭環境に変化があったこともあって、そんな何かがあると思ったマンションから引っ越したところ、それまでが嘘のように、そんな”金縛り”がピタリと止まりました。やっぱり…と思い、幸いにもそれ以降一度も体験することなく生きてきた私。そんな中、”金縛り”は、”長時間の昼寝が影響している”、”上向きで寝る人に起きやすい”という”金縛り”の原因を取り上げたテレビ番組を見る機会がありました。その瞬間私の脳裏に蘇った”金縛り”に悩まされた当時の記憶。思い返せば、その症状があったのは土曜か日曜の夜、そして当時の私は週末の昼寝が日課だったという事実。また、現在まで上向きでしか寝付けない私というこれまた見事な一致。えっ、それが理由だったの?、と唖然とした私。詳細な解説を聞いてなるほどと納得した私。てっきり、霊の悪戯と長年思い続けていた私にとって、まさかの種明かしの機会となりました。

    『身近で起こるミステリーなんて、およそこのような代物である』

    そう、テレビをつけずとも、小説を読まずとも、私たちの周りには思った以上に、”なぜだろう”、”どうしてだろう”と思うことが溢れているように思います。血を見たり、人が殺されたりということでもなければ、そんな疑問をことさら意識することはないのかもしれません。しかし一方で、”なぜだろう”、”どうしてだろう”という思いは心のどこかにいつまでもモヤモヤとした感情を残します。もし、そんなモヤモヤをスッキリさせることができたなら…。この作品は、そんなモヤモヤをスッキリさせてくれる物語。『手を伸ばせば触れることのできるミステリー』をスッキリ、サッパリあなたの前で解決してくれる物語です。

    『しばらく前に、スイカジュースなる飲料がはやったことがある』というその飲み物。『スイカジュースと銘打っておきながら無果汁と小さく印刷されていた事実』に違和感を感じるその飲み物。『どこかの大会社の社長令嬢』という友人がいることで『自分でお金を払ったわけでもない』のに、その飲み物を味わい『旨いだのまずいだのと偉そうに論評している、ふとどきな人間』という主人公の入江駒子。そんな駒子は、『生まれて初めて〈ファンレター〉なるものを書』きます。その経緯を振り返る駒子。『書店の新刊本コーナーで』偶然手にした一冊の本。『「ななつのこ」というタイトルの、短編集』というその本の『表紙に惹かれた』駒子。『薄汚れたランニングシャツは少年の痩せた肩からずり落ちかけ、裾も半ズボンにきちんと納っていない』という『麦藁帽子をかぶった少年』の表紙を見て『不思議な絵だった』と感じる駒子。『〈既視感〉という、使い慣れない言葉を舌の上で転がしながら、私は表紙をめく』ると、『「ななつのこ」というタイトルにふさわしく、全部で七つの短編が入っていた』というその本。『舞台はどこかの田舎で』あり『主人公は〈はやて〉という名の少年』。『ところがはやて君は、その名のように勇ましくもなければ、力強くもない』というその少年が『すいか畑の番を命ぜられたところから、話ははじま』ります。『その日のうちに、彼は夜の見張りに立った』ものの『ごろりごろりと転がるすいかのひとつひとつが、人間の生首に見えて』恐怖する少年。そして夜が明け、昼寝をしていると『仕様のない子…やっぱり眠ってしまったん…』 、『一晩中起きていろというのも……子供のことだから』という声が聞こえてきました。少年が番をしていたはずなのに『すいかはやっぱり盗まれていた』という事実。『とにかくこのことは、はやてには内緒だぞ』という父の声を聞いて、無我夢中で山の中に走った少年はそこで『一人の女の人に出会』います。『あやめさん』というその女性。そんな女性は『はやてちゃんは眠ったりはしなかったわ。すいか泥棒は来なかったのよ』と告げます。そして…と展開する「ななつのこ」というその本の内容。そんな本を気に入って衝動買いをした駒子は、作者に『ファンレターを書こう』と思い至ります。『この物語を書いた〈佐伯綾乃〉という人に、直接語りかけてみたい、という強い欲求に駆られ』た駒子。そんな駒子は、自身の身近で起こった出来事について、佐伯綾乃への手紙で触れるようになっていきます。そして、そんな佐伯から届いた返信には…というこの短編。基本的に同じ構造を取る各短編に先駆けるこの短編は、身近に起こるミステリーの謎解きをとてもわかりやすく見せていただいた好編でした。

    七つの短編から構成されるこの作品は、一方で主人公の入江駒子が『書店の新刊本コーナーで』偶然に見つけた「ななつのこ」という短編集の内容がまさに入れ子になる形で構成されています。小説内小説が登場する作品は他にもありますが、この作品が凄いのは、両方の小説がそれぞれ七つの短編で構成されていて、かつ、その両方のストーリーがそれぞれの短編の中で同時に展開するという、非常に凝った作りがなされていることです。まずは、この作品の各短編のタイトル、および小説内小説の方のタイトルを一覧にまとめてみました。

    本作タイトル - 小説内小説タイトル
    1編目〈スイカジュースの涙〉- 〈すいかお化け〉
    2編目〈モヤイの鼠〉-〈金色の鼠〉
    3編目〈一枚の写真〉-〈空の青〉
    4編目〈バス・ストップで〉- 〈水色の蝶〉
    5編目〈一万二千年後のヴェガ〉- 〈竹やぶやけた〉
    6編目〈白いたんぽぽ〉- 〈ななつのこ〉
    7編目〈ななつのこ〉-〈明日咲く花〉

    というような組み合わせになります。一編目の『すいか』、二編目の『鼠』以外は少なくともタイトルだけではその繋がりを感じることはできません。しかし、実際にはそのそれぞれが絶妙に絡み合い、雰囲気感を共有しながら物語は進んでいきます。どの作品も甲乙付け難いですが、特に上手いなあと感じたのは六編目の〈白いたんぽぽ〉でした。物語では小学校のキャンプのボランティアに駆り出された駒子の体験が描かれていきます。そこで出会った『いかにも儚げな少女』、それが真雪(まゆき)でした。『生命感の希薄な、線の細い子供』という真雪は、花が印刷された教材に色を塗るという課題で、チューリップや水仙だけでなく『タンポポまで、真っ白にしてしま』います。その行為を『あの子、情緒が欠落してる』と困惑する担任教師。一方で小説内小説の短編〈ななつのこ〉では、『その村の紫陽花はほとんどがピンクなのだが、はやての家の花だけはきれいな青』であるという不思議が語られます。そのそれぞれに、真雪がたんぽぽを白くした理由が『佐伯綾乃』からの手紙によって解き明かされ、はやての家の紫陽花が青である理由が『あやめさん』によって解き明かされるという展開を辿ります。ネタバレになるのでその理由は書けませんが、両者とも”科学的知識”によって、読者もなるほど!と納得の種明かしがなされる二つの物語。豆知識をもらった上で、スッキリ解決されるミステリーという形で展開していく七つの短編と小説内小説。入れ子という凝った構成がなされているにも関わらず、とても読みやすい作品だと思いました。

    そして、そんな各短編では、上記した六編目同様に、『身近で起こるミステリー』を題材に、駒子が遭遇する身近で起こった謎がそれぞれ解き明かされていきます。私たちはミステリーというと、つい殺人事件が起こる血生臭い世界を想像しがちです。もちろん小説はフィクションですから、色んな場面を舞台に、色んな物語をそこに見ることができるのが魅力です。しかし、私個人としては、あまり血生臭い物語は苦手です。その一方で、なぜだろう、という謎解きを楽しむミステリーというものにはとても興味をそそられます。『なぜ、一美ちゃんは私のアルバムから写真を盗んだのだろう?そしてなぜ、今になって彼女はその写真を返してよこしたのだろう?』、『Tデパートの屋上にあった高さ約三メートル、体長約五メートルの怪獣のおもちゃが、約三十キロメートル離れたM市の保育園園庭に一夜にして移動したのは?』、そして上記したように少年が『すいか畑の番』をしたにもかかわらずスイカが盗まれた、その真犯人と手口とは?など、血生臭い殺人事件とは全く縁遠い、でもそれでいて主人公たちにとってはとても気になる疑問の数々、そういったものを本作品と小説内小説をパラレルに入り組ませながら見事に解き明かしていくこの作品。主人公・駒子が『いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです』と気づかされるそんな身近なミステリーが描かれる物語は、血生臭くないミステリーを探している、そんな読者にピッタリな物語だと思いました。

    『きっと必要なパーツはすべて揃っているのです。揃い過ぎていると言ってもよいくらいに。いくつもの些細な”なぜ?”があります』というように、私たちの周りは、思った以上に”なぜ?”に満ち溢れています。一方で、日々忙しい私たちは、そんな”なぜ?”を十分に解決せぬままに時を過ごしてしまい”なぜ?”が”なぜ?”のままに終わってしまっていることも多々あると思います。そんな身近な”なぜ?”に正面から向き合ったこの作品。

    なるほど、そういうことか!そうだったんだ!と解き明かされていくそれぞれの結末に、気分スッキリ!後味スッキリ!な気持ちにさせてくれた、優しさに満ち溢れた作品でした。

    • さてさてさん
      ポプラ並木さん、この作品は非常に凝った作りだと読んでいて感心しきりでした。小説内小説が同時に展開し、それが上手く絡み合うという仕掛け。まるで...
      ポプラ並木さん、この作品は非常に凝った作りだと読んでいて感心しきりでした。小説内小説が同時に展開し、それが上手く絡み合うという仕掛け。まるで二冊分読んだような読後感。素晴らしい作品との出会いでした。
      2021/04/23
    • ポプラ並木さん
      さてさてさん、今日、ささらさやを買ってきました。今からいつ読むか楽しみです。
      さてさてさん、今日、ささらさやを買ってきました。今からいつ読むか楽しみです。
      2021/04/24
    • さてさてさん
      ポプラ並木さん
      はい、ささらさやもとても優しい世界観の作品でした。私も”ささら”シリーズを読んでいきたいと思います。
      ポプラ並木さん
      はい、ささらさやもとても優しい世界観の作品でした。私も”ささら”シリーズを読んでいきたいと思います。
      2021/04/24
  • 「”日常の謎”を楽しむミステリー!」という、読友さんのブックリストから、初めての作家さん。
    「手を伸ばせば触れることのできるミステリー」のレビューに心惹かれ読んでみました。
    ありがとうございます!
    構成がすごく凝っていて、主人公の女子大生の日常に起こる謎、彼女が愛読する本の中の謎、本の作者との文通によって明かされる謎解き…それらがぐるっと廻っていて、それ自体がまた謎のような不思議な感じ。本の中で大いに楽しませてもらいました!

  • 加納さん2冊目。相当凄い本だと思うが、完全には理解できておらず、少しモヤモヤ感が残りました。この物語は2つが並行している。それがいつの間にかミックスされる。①で今の「私」と手紙の相手「佐伯綾乃」とのやり取りで解決していく話しと、②では「ななつのこ」の童話の「はやて」と「あやめ」。②のノスタルジックな雰囲気がなんとも古風で純朴な2人だった。最後に①との共通の登場人物となるが、そこにも仕掛け。この高級感は凄まじいい!①で起きるミステリーの解決が鮮やかで、ステレオタイプだけでは語れない優雅さと気品を感じた。⑤↑

  • 第三回(1992年)鮎川哲也賞受賞作を1992年9月東京創元社から刊行。1999年8月創元推理文庫化。駒子シリーズ1作目。スイカジュースの涙、モヤイの鼠、一枚の写真、バス・ストップで、一万二千年後のベェガ、白いタンポポ、ななつのこ、の7つの連作短編。女子大生の駒子がお気に入りの本「ななつのこ」の作者にファンレターと称して身の回りの謎を書いて送ると返信で謎解きが返ってくるという展開が面白い。駒子の同級生をはじめとした他の人々との関係も楽しく、物語世界に惹き込まれます。アンソロジーで見つけた加納さんの大当り日常ミステリです。次巻が楽しみ。

  • 予想を超えた結末でした。
    殺しであれば上質なミステリーと言えるのですが、殺しは出てきません。
    ミステリーといってもほのぼのとした、どうして??? なので
    とても不思議な世界に入っていけます。

    論理的に設計されたストーリーです。
    (仕事柄、設計ということばをつかってみたかっただけ)

  • 人が死なないミステリーもあっていいじゃないか。

    この作品のような小説に出会う度、思う。

    しかもこの小説は二段構え。

    この小説の中にはさらに『ななつのこ』という別ストーリーがパラレルに展開していて、これがまた懐かしさを誘う。

    以下、駒子の日常の方の「ななつのこ」各短編の概要で、特に僕が気に入っているのは⑥。そして、③、④も好み。②は衝動的に目の前の女の子の三つ編みを引っ張ってしまった40年以上前の苦い記憶を思い出させてくれるなぁ。ああ、胸が痛い。

    小説として、全体の構成が素晴らしい。

    ①スイカジュースの涙
    ベビーカーとすれ違ったあとに気づいた、道路に点々と続く乾き切らない血痕。
    ②モヤイの鼠
    個展会場で絵画『悠久の時間』の出っ張りに触れたとたん、ポロリ。・・ああ、痛い。
    ③一枚の写真
    6年の時のクラスメイト一美が8年近く経って、私のアルバムから取った一枚の写真を返してきた。
    ④バス・ストップで
    ささやかなロマンスの香りを孕みつつ、おばあさんとお孫さんの心温まるレジスタンス。
    ⑤一万二千年後のヴェガ
    デパート屋上の巨大なブロントサウルス、一夜明けたら30km離れた保育園にいて・・・。
    ⑥白いタンポポ
    低学年のサマーキャンプで真雪の担当となった駒子。人見知りの真雪が不愉快でなかったのは。
    ⑦ななつのこ
    再会した真雪がプラネタリウムが終わると消えていて・・・。
    ○追伸
    駒子のファンレターの相手、〈佐伯綾乃〉の秘密が分かってからの後日談。

    またも、フォロワーさんの本棚・感想にあった一冊にこの一週間、堪能させられた感じ。

    次は何とか、自力で一冊、面白い作品を嗅ぎ当てたいもの。

    兎にも角にも、ありがとうございました。

  • デビュー作だったのか。加納さんはとても好きで、あれば(古本オンリーだけど)買います。人をいやな気持ちにさせない素敵な作品ばかり。
    駒子さんがいい。「いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです」という言葉がいい。
    三部作、一気に読みます。

    • shukawabestさん
      shukawabestです。ありがとうございます。本棚と感想で前から目をつけていたのですが、この一週間でゆっくり読みました。まだ理解し切った...
      shukawabestです。ありがとうございます。本棚と感想で前から目をつけていたのですが、この一週間でゆっくり読みました。まだ理解し切ったわけではありませんがとても優しく懐かしい連作ですね。
      今後も本棚、感想、参考にさせていただきます。夜分に失礼しました。
      2021/12/22
  • ちょっとトボけた女子大生、駒子さん。
    本屋で一目惚れした童話集「ななつのこ」の作者、佐伯綾乃さんにファンレターを出したことから、文通が始まる。
    駒子さんの周囲に起きた、日常の小さなミステリが佐伯綾乃さんの返信で鮮やかに解かれる。

    読み始めは、はやてくんのお話と駒子さんの日常とが微妙に被っているものの、なんでこんな、別々のお話でどっちもゆっくり読みたいわーって気分だった。
    それが読み進めるうちに、はやてくんの日常と駒子さんの日常が違和感なくつながっていく。

    自分と共通点が多く、他人と思えない駒子さんの日常に、時間を無駄遣いした贅沢な学生時代を思い出す。
    未来を思って不安だったこと、友達の逞しさが羨ましかったこと。
    はやてくんの怒り、切なさ、喜び。
    駒子さんが白いたんぽぽを描いた真雪ちゃんにそっと寄り添って心を通わせたように、駒子さんとはやてくんに何時の間にか心を添わせている。
    いろいろなことが最後にピタリとはまって、あったかくてニヤニヤするラスト。

    「いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?」
    いつもの穏やかな生活にもこんなにミステリが潜んでいるのにね。
    なんだか今までがもったいなくなってきちゃった。

    「結局、世の中なんて、うまくいくか、いかないかのどっちかよ。まあ統計学的にみて、五十パーセントはうまくいくわけですよね。四捨五入しちゃえば、十割だわ」

  • 以前読んでたもの思い出しました。
    日常のミステリーにほっこりさせられます。

    ブクログの本棚見てると本当に本屋さんをみてるみたいになります。感想評価、面白いです。

  • 女性作者に多いリリカルな作品を苦手としている男性読者も多いだろう。

    本作はそういう方にこそお薦めしたい、リリカルでありながらちゃんととした構造をもった作品だ。

    マンガに例えるなら『 動物のお医者さん 』や『 のだめカンタービレ 』のようなものといえばわかりやすいか。


    あらすじはこうだ。

    短大生の入江駒子が『ななつのこ』という本と出逢い、人生初のファンレターを書こうと思い立つ。

    身の周りで起きた些細でありながらちょっと興味を引く事件を交えて長い手紙を送ったところ、作者から返事が届く。

    その返事にかかれていたのは事件の解決編とも言うべき内容だった。


    つまり、主人公駒子の体験談とそのファンレターの内容がリリカルな部分で、そこに解決編がつくことでミステリーの体裁をなしているというわけだ。

    で、この構造が後々もうひとつ大きな謎を構成していて……というのは読んでのお楽しみ。

    身近に起きるちょっと不思議な謎についてのリリカルなタッチの小説というのはジャンルとしてあって、普通そういう作品は謎を解決しないまま、そこから受ける情感を重視する内容になっているのだが、本作はそこに解決編がつく。

    そういう解決編は得てして理に落ちがちだが、本作が良いのは、論理的な内容を語りながらもそこから浮き上がる人物の繊細な情感を大切にしている点だ。

    短編集だが、同じ主人公による連作になっているので、人物設定を新たに頭に入れる必要がないのも助かる。

    他の読者とどの話が好きか話したりしたら面白いだろう。

    ちなみに僕は白いたんぽぽの話が好きだ。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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