ななつのこ (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 2715
レビュー : 406
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488426019

作品紹介・あらすじ

表紙に惹かれて手にした『ななつのこ』にぞっこん惚れ込んだ駒子は、ファンレターを書こうと思い立つ。わが町のトピック「スイカジュース事件」をそこはかとなく綴ったところ、意外にも作家本人から返事が。しかも、例の事件に客観的な光を当て、ものの見事に実像を浮かび上がらせる内容だった-。こうして始まった手紙の往復が、駒子の賑わしい毎日に新たな彩りを添えていく。第3回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとトボけた女子大生、駒子さん。
    本屋で一目惚れした童話集「ななつのこ」の作者、佐伯綾乃さんにファンレターを出したことから、文通が始まる。
    駒子さんの周囲に起きた、日常の小さなミステリが佐伯綾乃さんの返信で鮮やかに解かれる。

    読み始めは、はやてくんのお話と駒子さんの日常とが微妙に被っているものの、なんでこんな、別々のお話でどっちもゆっくり読みたいわーって気分だった。
    それが読み進めるうちに、はやてくんの日常と駒子さんの日常が違和感なくつながっていく。

    自分と共通点が多く、他人と思えない駒子さんの日常に、時間を無駄遣いした贅沢な学生時代を思い出す。
    未来を思って不安だったこと、友達の逞しさが羨ましかったこと。
    はやてくんの怒り、切なさ、喜び。
    駒子さんが白いたんぽぽを描いた真雪ちゃんにそっと寄り添って心を通わせたように、駒子さんとはやてくんに何時の間にか心を添わせている。
    いろいろなことが最後にピタリとはまって、あったかくてニヤニヤするラスト。

    「いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?」
    いつもの穏やかな生活にもこんなにミステリが潜んでいるのにね。
    なんだか今までがもったいなくなってきちゃった。

    「結局、世の中なんて、うまくいくか、いかないかのどっちかよ。まあ統計学的にみて、五十パーセントはうまくいくわけですよね。四捨五入しちゃえば、十割だわ」

  • 何年も前に読んだことがあったけれど、ちょこちょこと内容を忘れていた。
    非常に読みやすく、物語が二重構造になっているところが面白い。
    駒子のキャラクターがいい。力が抜けていて。

  • 女性作者に多いリリカルな作品を苦手としている男性読者も多いだろう。

    本作はそういう方にこそお薦めしたい、リリカルでありながらちゃんととした構造をもった作品だ。

    マンガに例えるなら『 動物のお医者さん 』や『 のだめカンタービレ 』のようなものといえばわかりやすいか。


    あらすじはこうだ。

    短大生の入江駒子が『ななつのこ』という本と出逢い、人生初のファンレターを書こうと思い立つ。

    身の周りで起きた些細でありながらちょっと興味を引く事件を交えて長い手紙を送ったところ、作者から返事が届く。

    その返事にかかれていたのは事件の解決編とも言うべき内容だった。


    つまり、主人公駒子の体験談とそのファンレターの内容がリリカルな部分で、そこに解決編がつくことでミステリーの体裁をなしているというわけだ。

    で、この構造が後々もうひとつ大きな謎を構成していて……というのは読んでのお楽しみ。

    身近に起きるちょっと不思議な謎についてのリリカルなタッチの小説というのはジャンルとしてあって、普通そういう作品は謎を解決しないまま、そこから受ける情感を重視する内容になっているのだが、本作はそこに解決編がつく。

    そういう解決編は得てして理に落ちがちだが、本作が良いのは、論理的な内容を語りながらもそこから浮き上がる人物の繊細な情感を大切にしている点だ。

    短編集だが、同じ主人公による連作になっているので、人物設定を新たに頭に入れる必要がないのも助かる。

    他の読者とどの話が好きか話したりしたら面白いだろう。

    ちなみに僕は白いたんぽぽの話が好きだ。

  • ≪『世の中って,いろんなことが起きるものだね』≫

    なぜ今まで読んでなかったのか….
    もう、すばらららららしい.
    どのお話しも好きだし,タイトルも素敵.
    日常に埋もれる不思議,美しい日本語,澄んだ語り口.
    ほろりと泣かせ負けるものかと奮い立たせる物語たち.
    「ななつのこ」の絵本も出ているらしく,こちらも読みたい.

  • 2回目。最初に読んだのは、14年ほど前、
    この文庫が出てすぐだったのかもしれません。
    図書館でたまたま見かけて、表紙に惹かれ、
    加納朋子作品デビューしました。

    主人公の駒子が、絵本「ななつのこ」の作者、佐伯綾乃さんに
    手紙を書いたことで始まる文通(懐かしい表現ですねぇ)。
    駒子が日常に会った謎を手紙に書き、返事として謎の答えが戻ってくると、
    言う形式のお話です。

    表紙と同じような、絵本のように
    ほんわかした柔らかい雰囲気で物語が進んでいきます。

    最後の「追伸」が一番好きかな。駒子から綾乃さんに送った後日談のようなお話。
    駒子の文章を通して、綾乃さんや麻生さん(表紙作者)の性格が見えて面白かったです。
    あと「白いたんぽぽ」も好き。

    駒子のように女の子らしく、ふみさんのように美しく強く生きられたら
    理想の女性だなーと思いながら読んでいました。

    さぁ、復習も終わったし、続編も読むぞー^^

  • 第3回鮎川哲也賞受賞作であり、加納先生のデビュー作。

    短期大学文学在籍中の19歳・入江駒子はある日、本屋で劇的な出会いをする。年頃の女性らしく素敵な男性に…ではなく「ななつのこ」という1冊の本に。
    駒子が一目ぼれしたその本は、はやてという少年が主人公で、どこか不思議な雰囲気をもった《あやめさん》に悩みや不思議な体験を話すとそれを優しく見事に解いてくれるという短編集だ。ファンタジーのような童話のようなミステリー小説のような…そんな不思議なこの本を大好きになった駒子は、読み終えた直後にファンレターを書いたのだが、その時はまったくの自己満足で返事などは期待していなかったのだ。しかし驚いたことに件の作者「佐伯綾乃さん」本人からの手紙が、しかもつい書いてしまった身近の疑問に対して「解決」付きで送られてきたのだった。
    かくして、駒子と綾乃さんの、ちょっと不思議な文通が始まったのだ。
    「スイカジュースの謎」「モヤイの鼠」「一枚の写真」「バス・ストップで」「一万二千年後のヴェガ」「白いタンポポ」「ななつのこ」 7編からなる連作短編集です。

    本当にこれがデビュー作?読み終わった直後、そう思わずにはいられませんでしたよ。
    駒子の日常の描写がすごく平和で自然、そして温かさに満ちている。彼女自身は卒業後の将来や20歳になってからの自分に不安を抱いてるのですが、その時期を通り過ぎた私の眼にはその不安がとても懐かしくて愛おしく感じられます。もしも駒子よりも年下の時にこの本を読めたなら、私はどう感じたのでしょうね…。
    基本的には駒子の日常、その中で出会った小さな謎、それに対しての綾乃さんの解決編、といった構成ですが、ここに作中の本「ななつのこ」の話が加わってきます。つまり駒子→綾乃さん、はやて→あやめさん、という2重構造なんですね。一粒で2度おいしいってことかしら(笑)。

    いつもなら短編集の場合、どの話が好きかも書くのですが。…うーん、この作品の場合ひとつに絞り込めません…!あえていうなら「どれも好き」なのです。
    同じようにこの作品を読んだ方が同じように「どれもこれも、好き」と、そう思ってくれると嬉しいな。

  • 『モノレールねこ』がおもしろかったと書いたところ、
    加納朋子さんなら、初期作品の『ななつのこ』が
    特に好きだというコメントをもらった。

    「ななつのこ」???

    自分は言葉が入ると
    自動的に脳内検索をはじめるようにできているらしい。

    悲しいことに童謡の歌詞とそのイメージ、
    そしてあろうことか替え歌しか出てこない。

    はい、書名で検索ね・・・。

    ハードカバーは1992年9月出版で、文庫は1999年8月出版、
    『ななつのこものがたり』というのもあるのね?

    おんなじ表紙で、似たタイトルの本がなぜあるのかな?

    そうか、作中作があって、それが絵本になっているのね。

    「駒子シリーズ」?

    シリーズだったのか・・・。

    さて、何冊あって、どの順番なの?

    あんまり、多いと全部追っかけるにはパワーがいるけど・・・。

    ・・・

    ・・・

    よかった、3冊だった。

    『魔法飛行』、『スペース』と続くのね。

    どちらも文庫まで出ている。

    今から追いかけても追いつけそうだ。

    でも、いきなり3冊全部は買わない。

    まずは、最初の1冊で気が合うかどうか、なのである。

    と思っていたのも最初だけで、読了した瞬間に、
    なぜ3冊1度に買っておかなかったかを激しく後悔したのだった。

    そして、ここにやたらと饒舌に本書と出会った経過を書きつけているのは、
    悔しかったからに他ならない。

    今はたくさんの読書時間を確保することができる環境にあるので、
    まるで過去の空白を埋めるかのように本を読み、
    ここにその記録を書きつけている。

    だが、いくら今たくさん本を読んでも、本を読むのは今の私である。

    時間を巻き戻して、子どもの頃や若い頃の私が読書をするわけではない。

    本書については、もっと早く出会いたかった。

    そして、今日までに何度も何度も何度も読み返してみたかった。

    時代設定的に90年代に大学生というところが自分の時間と重なっており、
    また住んでいる地域も私が高校まで過ごしていた地域に近いというのもある。

    なんとなくまとっている雰囲気が似ているところが
    たくさんあって、妙な親近感を覚えたからかもしれない。

    この本が出たときに出会って、駒子が読んだ『ななつのこ』を
    私も読んでみたいと思いながら時を過ごしてみたかった。

    インターネットの時代になる前に、
    誰かに本気でファンレターを書いてみたかった。

    そうやって時を過ごしたなら、『ななつのこものがたり』は、
    心待ちの書になったに違いない。

    なぜなら、私は、作中作の『ななつのこ』にも
    ほどなく惹かれたからである。

    本書が生まれる前に作中作の『ななつのこ』は
    もう存在したのではないかと思ったくらいだ。

    そして、駒子の「ファンレター」は、
    同時に、明らかに読者書評だと思ったのである。

    駒子が読んだ『ななつのこ』を、私どのように読むのだろうか。

    もう、第1章を読み終わる前から、それが頭を占めていた。

    どこか天然ボケキャラの駒子だが、
    ファンレターには、こんな鋭いことを書いている。

      一見童話のような要素を多く含みながらも、
      子どもには理解できないような(むしろ理解を拒むような)
      箇所が随所に見られるからです。

      そして物語が途中、いかにファンタジックになろうとも、
      最後にはときとして残酷なほどに
      現実を見据えて幕を閉じます。

      読んでいてふと、ファンタジーとは残酷な現実を
      飴でくるんだものではないかと考えたりもしました。

      幻想が内包するものを、垣間見た気もします。

      そんな厳しい現実の中で、
      主人公の少年は確実に成長していきます。

      その成長の過程が、はやて少年を
      生き生きと魅力的にしています。

    年齢が若い人の手による、私なんかよりも
    ずーっとずっと練られた表現を見ると、
    心底悔しい気持ちになるのだが、
    それと同じ感情を作中人物に対して持つ
    という変な状態になってしまった。

    読み進むごとに、天然ボケだけじゃない
    駒子の深い部分が少しずつ見えてきて、
    この手紙の駒子と普段の駒子が次第にかみ合うようになってくる。

    本書と駒子が読んだ『ななつのこ』は、7つの章ごとに呼応している。

    駒子の世界 ― 駒子が読んだ『ななつのこ』の世界

    1 スイカジュースの涙 ― すいかおばけ

    2 モヤイの鼠 ― 金色のねずみ

    3 一枚の写真 ― 空の青

    4 バス・ストップで ― 水色のチョウ

    5 一万二千年後のヴェガ ― 竹やぶ焼けた

    6 白いたんぽぽ ― ななつのこ

    7 ななつのこ ― あした咲く花

    そして、問いを発する者と問いに答える者が
    駒子の世界にも『ななつのこ』の世界にもいる
    という意味においても共鳴している。

    その意味では、駒子のファンレターは、
    駒子の読んだ『ななつのこ』の書評でもあり、
    本書の書評でもあるということにもなる。

    読んでいる間に、心が大いに動いた作品でもあった。

    確かに誰も死なないし、刑事事件は起きないけれど、
    どの事件もなんだか複雑な気持ちにもなった。

    残酷な現実が見え隠れするせいだろうか。

    お話であっても、確かに私達が生きていかなければならない
    世界の現実がまざまざとそこにある。

    これは、『モノレールねこ』を読んでいて感じた何かと同じ気がした。

    それは、初期から今までの彼女の作品の底に
    変わらずに流れる何かということになるのだろうか。

    その人がその行為を選択するのには、
    外から見てわからなくても、
    傍から見て理不尽であったとしても、すべてに理由がある。

    そして、皆見えないところで、
    様々な喪失―ときには大切な者の死のような大きな喪失―に耐えているのだ。

    その現実があった上で、悩んだ上で、
    それでもその中で最上の答えを出していこうとする姿勢が
    すべての謎解きの根底にあるのだと思う。

    タイトル付け、名付けが深いのも、
    初期作から今まで変わらないものである。

    本書も「ななつのこ」でなければならなかったのだ。

  • まるで童話かのようにパッケージされてるんだけど、描かれているものはシビア。
    入れ子構造で飽きない。
    人物も魅力的。
    さらりと読めて意外に残る。
    真雪ちゃんが好きだなー、名前も含めて。

  • 短編連作の日常ミステリ。
    日常の謎を解く「ななつのこ」というミステリ本のファンである主人公が、自身の日常で起きたちょっとした事件を取り上げてファンレターに書いたところ、ななつのこの作者から返事が来る。
    しかも、きちんとその謎の解決編を載せて。
    それ以来、手紙を通じて作者とファンの交流が始まるのだけど、ただの謎解きではないほんわかした話です。
    ある意味二人の成長のお話でもあります。

  • 主人公の駒子がとても魅力的だった。
    優しく、穏やかな中に愛嬌があり、芯がしっかりしていて。素敵な女性だと思う。
    「白いタンポポ」で幼少期の駒子が書かれて、よりいっそう駒子のことを愛おしく思った。
    真雪と心を通わせる場面は、思い出すだけでもついうるっときてしまう。
    瀬尾の存在は登場の時から気になっていたが、瀬尾のバイト先が両方とも素敵で、それだけで瀬尾がものすごくかっこよくてずっとドキドキしていた。
    最後まで読んでから出会いの場面を読み返すと、恥ずかしくてうわあってなってしまう。

    いい作家に出会えた。駒子のシリーズは全て手に取ってみようと思う。

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著者プロフィール

加納朋子(かのう ともこ)
推理作家。福岡県北九州市出身。夫は、同じく推理作家の貫井徳郎。1992年『ななつのこ』で、第3回鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。1995年には『ガラスの麒麟』で、第48回日本推理作家協会賞受賞。2008年、『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。自身の急性白血病闘病記録『無菌病棟より愛をこめて』も話題に。2019年6月26日、『いつかの岸辺に跳ねていく』を刊行。

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