叫びと祈り (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.67
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本棚登録 : 524
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488432119

作品紹介・あらすじ

ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据えた驚異の連作推理。激賞を浴びた大型新人のデビュー作!

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、しかし
    これまたとんでもない新人が現れたもんですね(笑)

    ブクログで仲良くさせてもらってる我がミステリー小説の師・kwosaさんのオススメで読んでみたけど、
    いや、ホンマ、ワクワクドキドキするような
    至福の読書時間を堪能させてもらいましたよ(^^)
    (そしてそれを僕より先に読んでいた我がパートナーにも感謝!)


    物語は死んだと言われるこの時代に
    ミステリーという謎解きの魅力と
    共に、
    詩情溢れる美しい言葉で
    語るべき『新しい物語』を紡いでくれる
    文句ナシの傑作。
    (自分が言うまでもなく、2010年~2011年の各種ミステリ・ランキングで軒並み上位入選しています)


    海外の動向を分析する雑誌を発行する会社のジャーナリストであり、
    7ヶ国語を操る主人公の青年、斉木。

    この斉木がどの物語にも登場し、
    世界中を飛び回る中遭遇する事件の顛末を描いた連作短篇集となってます。


    サハラ砂漠に残る「塩の道」で起こる殺人。
    限られた人数の中行われる殺人に疑心暗鬼になる人間心理の妙と
    意外な結末にニヤリとした
    『砂漠を走る船の道』、

    スペインを舞台に
    風車から忽然と姿を消した兵士の謎に挑む
    斉木とその仲間たちの推理合戦が楽しい
    『白い巨人』、

    南ロシアの修道院に眠る
    死してなお、腐敗しない遺体(不朽体)の謎を巡るホラーテイストなミステリーで
    ラストはタイトル通り凍えます!
    『凍れるルーシー』、

    アマゾン奥地の先住民が住む村でエボラ出血熱によく似た伝染病が猛威を奮う中起きる不可解な連続殺人。
    どんなに言葉を尽くしても届かない
    価値観や異文化の決定的な違いが胸を締め付ける
    『叫び』、

    そして、理解の届かない存在の前で絶望し、
    心を閉じた男の再生を描いた
    『祈り』

    の全5編。


    散りばめられた伏線とその見事な回収術。
    一話一話に周到に用意された衝撃的な展開と
    トリックの解明ではなく
    あくまで『物語性』に重点を置いた作者の視点。

    そしてなんと言っても
    豊富な語彙や独特な比喩を駆使した
    異国情緒に溢れ
    読む者を一瞬にして旅人にしてしまう
    引きのある美しくロマンチックな情景描写は
    まさに錬金術のごとき見事な腕前。


    それにしても
    読み終わった後に残るこの余韻の心地良さよ。

    物語は終わっても
    彼らは読み終わったそれぞれの読者の胸で、
    記憶の中で、
    いつまでも生き続ける。

    小説の中に血を通わせ
    人生に流れる時間を定着させる新人らしからぬ筆力に
    梓崎優の真髄を見た気がする。
    (それにしても価値観の違いからくる断絶や絶望という深く重いテーマを、デビュー作にして題材に選んだその気概に惚れた!日本という国の中でさえ、何度この価値観の違いからくる巨大な壁の前に無力感を感じたことか…)

    • 円軌道の外さん

      kwosaさん、ここにも
      コメントありがとうございます!

      あははは(笑)
      気付いてくれましたか~(^^)

      いやいや、ミス...

      kwosaさん、ここにも
      コメントありがとうございます!

      あははは(笑)
      気付いてくれましたか~(^^)

      いやいや、ミステリー初心者の俺にとっては
      kwosaさんは立派な師匠ですよ!
      だってkwosaさんにオススメしてもらったものは
      いまだにハズレないんスもん(笑)

      あっ、この人の感性は
      自分と似てるって
      ちょっと嬉しかったんです(笑)(^^;)

      kwosaさんがそこまで言うなら
      『放課後探偵団』買ってみます!

      梓崎さんの学園モノってだけで
      ワクワクしますよね(笑)

      それにしても若くて新しい感性で小説を書く作家が
      最近増えていて
      ホンマ嬉しいし
      楽しみですよね♪

      僕からはレビューもアップするけど、
      これまたまだ若いミステリー作家の深緑野分さんをプッシュしたいです。

      まだデビュー作の「オーブランの少女」一作きりだけど、
      とにかく新人離れした文章力と巧みな語り、
      そして梓崎さん同様に
      ミステリーの枠に収まらないストーリーテラーなんですよ!

      デビュー作は時代も国もバラバラな短篇集だけど、
      コレがマジでデビュー作?
      ホンマに新人なん?ってくらい
      引き込まれました。

      もしかして kwosaさんなら
      もうご存知かもやけど(汗)(^^;)
      もし未読ならチェックしてみてくださいね~♪


      2014/11/02
    • 円軌道の外さん

      azu-azumyさん、大変遅くなりましたが
      沢山の花丸ポチと嬉しいコメントありがとうございます!

      梓崎さんは僕も初めて読む作家...

      azu-azumyさん、大変遅くなりましたが
      沢山の花丸ポチと嬉しいコメントありがとうございます!

      梓崎さんは僕も初めて読む作家だったけど、
      とにかく情景描写が上手くて
      オチも抜群のキレ味やし、驚愕の結末が多くて
      一気にファンになりました(笑)(^o^)

      次作の長編も傑作とのことで
      自分自身若手イチ押しのミステリー作家です。

      また読んだら感想聞かせてくださいね~(笑)



      2014/11/02
    • kwosaさん
      円軌道の外さん

      今度は夜にこんばんは。

      >『放課後探偵団』買ってみます!

      この言葉にいまからわくわくしています。

      『...
      円軌道の外さん

      今度は夜にこんばんは。

      >『放課後探偵団』買ってみます!

      この言葉にいまからわくわくしています。

      『放課後探偵団』は東京創元社デビューの若手、新人だけで、書き下ろしの「学園ミステリ」のアンソロジーを編むという企画(出版時点ではデビュー前の人もいたはず)。
      なので好き嫌いや当たり外れもあるかとは思いますが、梓崎優の『スプリング・ハズ・カム』だけでも読む価値はあります。
      このマイナーなアンソロジーにしか収録されていないのに、優れた短篇ミステリを選ぶ読者投票に『砂漠を走る船の道』『凍れるルーシー』と共に常に上位にランクインしていることからも、そのクオリティは推して知るべしです。

      『オーブランの少女』楽しみです。
      深緑野分さんはtwitterを拝見する限り、古い海外ミステリがお好きなようで、コメントも面白く読書欲をそそられます(『アデスタを吹く冷たい風』や『ママは何でも知っている』は最高に良かったです)。
      2014/11/13
  • ミステリ新時代の到来、と言ってしまうと多少オーバーな表現になるでしょうか。なるか←
    ですが、私は日本の推理作家が、推理小説飽和状態(飽くまで私見ですが)の昨今にあって、この作品を書いてくれた点だけを取っても評価したいのです←謎の上から目線( ^ω^ )←←
    日本のミステリ界の未来は明るいぜ\(^o^)/ひゃっほー
    ワイダニット〜?イマイチ!ハウでなんぼよ〜!な、ミステリスキーを自認する方にこそ読んでほしい作品です。

    とにかく、この動機は、新しい!

    一言で言うと、それに尽きます。
    個人的怨恨ではなく、その土地土地の文化や慣習に根差した、非常にシンプルな価値観によって引き起こされた事件が、端正な筆致で描かれています。

    「何故、殺さなくてもよい人間を殺したのか?」ーー平和な日本に安穏と暮らす私達からすれば想像だにできない驚愕の犯行動機が、日本人青年の目を通して明らかになります。
    それと同時に、作者が巧妙に張り巡らせた第二・第三のミスリードに気付いた時の快感といったら、もう…至福〜!(笑)
    読んだ人と意見交換したくなるミステリですね( ^ω^ )

    そんな風にミステリスキーを喜ばせながらも、「叫びと祈り」というタイトルに込められた意味が明らかになる最終章では切ない余韻も残す読み応えです。前の話までエキサイトしていた私は激しすぎる温度差にほんの少し戸惑ってしまいましたが、それも込みで普通のミステリではなかなか得られない読後感を味わえました。
    続編も書けそうなのに、ここで潔く完結させたのも素敵。しかしシリーズ化は希望←←



    ◉砂漠を走る船の道…砂漠を行く行程の中でキャラバンのメンバーの1人が殺害される。キャラバン以外に犯人の存在し得ない中、犯人は何故、自らの命を危険に晒してまで殺人を冒したのか?

    ◉白い巨人…風車の内部に入って行った恋人の姿が消えたーー中世時代 に同じ状況下で消失した兵士の謎に迫る中、思わぬ真相が明らかになる。

    ◉凍れるルーシー…修道院を訪れた斎木が目にしたのは、死してなお朽ちることない聖人の遺骸。ところが、聖人に祈りを捧げたいという司祭の一言から、状況は一変する。

    ◉叫び…アマゾンの奥地で、致死率の高い役病が発生する。ところが死を待つしかない人々が殺害されるという奇妙な事件が発生する。

    ◉祈り…「密林の奥地にある洞窟に掘られた寺院は、なぜ作られたと思う?」ーー患者を訪ねてきた友人が出す謎掛けの意図、そして驚愕のラスト。

  • 今作が梓崎優氏のデビュー作である、これには驚く!凄まじいまでの完成度、Twitter上にて行われた短編ミステリ・オールタイムベスト50に、このデビュー作の中からなんと2作品が入選している。(さらにもう1作が入選しており作家としては3作品)「砂漠を渡る船の道」は、なんと3位である。並み居る大家の煌く傑作たちとすでに肩を並べているのだ。

    日本人の若者斉木が、さまざまな国々で遭遇する事件を描いている。ほとんどに殺人が絡み、謎解きの主眼を「why」においているのが共通項である。舞台が海外であるがゆえ、日本人の我々にはおよびもつかない「why」があり異文化の衝突と相互理解も、作品の骨組みとして重要項となっているようだ。

    個人的にお気に入りは「白い巨人」であった。白い巨人(ヒガンテ・ブランコ)と聞けば判る人は判る挑戦的タイトルである。日本が世界に誇る劇画「ゴルゴ13」に同じタイトルがあり、しかもミステリ色の強い、それでいて叙情に富む佳作なのである。

    果たして梓崎作品の「白い巨人」も負けるとも劣らぬ良作であった。人体消失を描いており、歴史ミステリにも波及する。さらに若い二人の男女が思いを寄せながらも離れざるをえなかった「why」が見事な筆致で綴られ、そこに作品共通項の「異文化との衝突」があり、希望に溢れた未来を予感させるハッピィエンドがあった。

    今後が非常に注目される作家さんとの出会いとなった今作に感謝したい。

  • はぁ〜
    すごいなぁ〜

    何が凄いってその文章力が凄い。
    新人とは思えないよ。
    読みやすいのに叙情的な文章で、異国の荘厳で牧歌的な雰囲気がひしひしと伝わってくる。
    深水黎一郎の短編『北欧二題』や『蜜月旅行』なんかを彷彿とさせる。

    肝心のミステリについてなんだけど…
    これまた凄い。

    まず『砂漠を走る船の道』
    砂漠という言ってみれば広大な密室の中で起こる連続殺人。
    一見無意味に思える殺人の動機が凄まじく、読者を圧倒する。とある仕掛けも寂寥感溢れる幕引きにすることに一役買っている。

    『白い巨人』はミステリとしては小粒だが爽やかな結末で魅せてくれる。

    『凍れるルーシー』だが、こういった味のものも書けるのかと驚いた。
    ミステリとしてもかなりのでき。

    『叫び』は冒頭の『砂漠を走る船の道』で見せてくれた驚きを違った世界で再現している。
    エボラ出血熱という今現在タイムリーな題材で、ほうほう、空気感染はしないのか。と少し勉強にもなったり。

    そしてラストを飾る『祈り』
    ミステリとしてより斉木青年の物語を締めくくる為の作品といったイメージ。
    今までの物語を振り返り、新たな門出を祝福するかのような幕引きには感慨深い思いさえ湧きます。

    あぁ…
    こんなにも長文の感想を書いたのは久しぶりだよ…
    それだけ衝撃的な作品だったってことかな。
    間違いなく傑作!

  • 目次より
    ・砂漠を走る船の道
    ・白い巨人(ギガンテ・ブランコ)
    ・凍れるルーシー
    ・叫び
    ・祈り

    ミステリなのであまり内容に触れられないけれど、これだけは伝えたい。
    日本人の常識に捕らわれている限りは、決して解けない謎がこの本には溢れている。

    『砂漠を走る船の道』では広大な砂漠で、『凍れるルーシー』ではロシアの人里離れた教会で、『叫び』では文明社会から隔たったアマゾンのジャングルで事件は起こる。
    「なぜ?」
    犯人が明らかになったとしても、「そんなことで?」

    異文化の、大きな大きな壁。
    理解できない。納得できない。
    犯人がわかったって、事件が解決したとは言えない。

    “「どんなに理不尽でも現実は残酷で、どんなに祈っても思いは届かない。常識はたやすく砕け散る。永遠に分かり合えないで殺しあう人間もいるし、分かり合った人間を殺すやつもいる。それが現実だ」”
    その現実に押しつぶされそうになったとき、人は叫ぶ。
    そして、祈る。
    心を折られても、現実に立ち向かわなければならないから。

    普通に殺人事件を解決するだけのミステリとしては、文章が甘い。
    叙述トリックを仕掛けようとしているところがはっきり見えるし、「いやいや、そりゃ無理だろう」と、ミステリのお約束をもってしてもそんな突込みをしたくなる部分もある。

    けれどもこの作品はそういうことを書いているんじゃないんだな。
    自分の常識(日本人の常識)がひっくり返されたとき、どれだけそれを受け入れられるのか。
    世界の広さと多様性を見せつけられて、叫びだしたくなったり、祈ったり。
    地に足の着いた落ち着いた文章と、圧倒的に説得力のある世界観にくらくら。
    すごい経験をさせてもらいました。

  • 読み終わって、思わず溜息をついた。それは話がつまらないだとか、とんでもないトリックにどっきりした、とかではない。純真たるミステリー小説において、ここまで文章を美しく書けるのかと驚く、感嘆の意である。
    こういうとなんだか語弊があるような気もするので大前提としていうと、もちろんストーリーそのものも面白かった。後付のようで申し訳ないが、ミステリーはミステリーとして面白くなければ文章がいくら美しかろうとよい作品とはいい難い。なのでストーリーが面白いのはあくまで前提。そのストーリーを彩るスパイスとして、文章の美しさがある。それにしてもこの作品にはそのスパイスがとびっきり効いていた。
    主人公は海外に関する雑誌を発行する出版社に勤めいている斉木。その彼が取材として訪れる国の先々において巡り会う謎が物語を形成する。
    中でも砂漠のキャラバンに襲いかかる連続殺人の謎を描いた『砂漠を走る船の道』、死後250年経っても死体の腐らぬ修道女リザヴェータのいる修道院で起きた悲劇にまつわる『凍れるルーシー』。この2つは是非とも読んで欲しい。読み終わったらつい溜息が出てしまうだろうから。ただ読まなきゃわからない作品価値が魅力のほとんどを占めているので、ストーリー紹介はこんなとこにしておこう。
    この作品の何が凄いって、作者の文章力が織り成す色彩の豊かさだ。計5つの話が入っているのだが、これら全部の色が違う。色々な国々での、という設定がこれほど生きた作品はない。登場人物たちと共に思わず色々な国を探検した気分になるのは、脳内にその豊かな色彩のおかげで無意識にでも情景描写が思い浮かぶからだろう。
    さらに肝心のミステリーのテイストも全然違う。古典派謎解きものから叙述トリック、人間の精神からなるちょっとしたホラーテイストまで上手い案配で配置されているからズルい。これがデビュー作品だというのだから梓崎優、恐るべし。
    残念ながら、2016年現時点において、梓崎さんの作品はこの『叫びと祈り』と『リバーサイド·チルドレン』の2つしかない。しかしこれだけの文章力を持つ作家だ。いつかミステリー界を唸らせる大作を引っ提げて来るに違いない。それまでに、是非ともこの作品を一読してみては如何だろうか。

  • 独特、ですね。文体も、取り上げている題材も。

    世界各国を旅する斉木が、訪れた先で出会う事件。どれも、「極限状態で」「その場所でしか起こりえない」物語ばかりの短編連作。

    衝撃的だったのは、1作目。なるほど、国によって、民族によって、環境によって、そしてそこではぐくまれた人とその文化によって、「常識(価値観)」というのはここまでも違うのか、と。日本人の生きている世界はなんて狭くて平和なんだろう。

    そう思い知らされたのに、2作目以降でも同じように引っかけられる。

    ただ、最後の1篇がどうもすっきりしない。それまで描かれてきた様々な物語を、斉木個人の背負う「彼の生」へ収斂していく作りなのでしょうが、今一つわかりにくいというか、まわりくどいというか、謎めいたやりとりに終始してしまった印象。

    いずれにしても、どれも異世界のような不思議な余韻が残ります。描かれている舞台とそれを描写する文章の相乗効果なのだと思います。

  • 描写、構成、文章が緻密で濃厚。短編の一編一編がエスプレッソコーヒーの味わいのような。
    短編で描かれるシーン以外の部分を想像させる奥行きもいい。
    文章は抑えめで理性的。それでいて詩的でもある。

    ミステリの連作短編というと、一話完結のTVドラマのような物足りなさを感じがちだが、これは世界観を楽しめた。
    基本的には密室のような限定条件下の殺人ということになる。不可能な密室殺人ではなく、条件的に限られた場所で、複数人が介在し「この中に犯人がいる!」というもの。
    その「密室」の作り方が良い。

    広大な砂漠、どこかに誰かが潜むはずのないあからさまな場所。少人数の隊商内で起こる殺人。
    霧に包まれたロシアの正教修道院、または町から数時間かかる熱帯雨林の少数民族の集落。

    「こういう理由と条件があるから、ここには誰もいないはずだ」という無粋な説明はない。
    ただ、他に人はいないんだということを感覚的に知らせてくれる。
    「こういうやりとりがあったから、あの人があやしい」という余計な情報もない。
    ただ、そこにあった感情の動きが後で知れる。
    短編だから、何もかもは説明しない。けれど、そこに余白の美を感じた。

    作風が好みだったので★5。

  • 世界を又にかけるジャーナリストの斉木が各国で遭遇する事件の連作短編集です。
    その場所でないと成り立たない舞台で、その場所故の価値観により起こる事件の数々。納得するには場所の描写が欠かせません。色や空気感の表現にかなり力を入れているのは分かるのですが、抽象的なイメージで止まってしまって、そこから想像ができませんでした。動機についても、その場所特有の考え方により起こしたというよりは、大した理由なく被害者が増えていくミステリに慣れてしまっている読み手からすると「こんな理由でも殺せるよね」と作られたもののように感じられます。砂漠の事件では本筋と関係ないところで疑問が残り、スペインの事件ではトラップをあちこちに仕掛けすぎているのが目につき、さらには文章や言葉の使い方などに違和感を覚え、これは外したかなぁ?と思ったのですが。
    偉そうな言い方をさせてもらうと、後半の「叫び」と「祈り」で一気に化けました。著者が言いたいのはこれだったのかと。よくぞこの流れを作った。自分が自分である以上、どうやっても求めずにいられない理想や希望を追っていこうとする、まるで著者の決意表明のような二章でした。

  • 5つの短編から成る物語である。最初の1編はよかったが、残りはオチが微妙だったり、トリックがやや難解だったりして、微妙でした。ただ、解説で瀧井さんがおっしゃっているように、「文章の美しさ、豊かさ」が感じられます。読者を酔わすような表現が随所にあるのです。5つの短編はそれぞれ毛色が違うので、ミステリーをベースにした、ファンタジーや青春ものの話を書くことも今後おそらく試みてくるのではないかと個人的に推測しています。

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