とむらい機関車 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488437015

感想・レビュー・書評

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  • 2012年再版を購入。
    作者は『新青年』系の推理作家で、太平洋戦争中、戦地で病没した人。
    この本の中心は、
    犯罪者のトリックを暴く名人・青山喬介を探偵役とする短編。
    本当にトリックありきで、それだけで話が纏まっている感じがして、
    期待していたほど好みではなかった。
    基本的に乱歩とか横溝とか、ドロドロした、
    ちょっとネチっこいくらいのテイストが好きなので(笑)
    面白かったのは青山喬介が登場しない、
    元鉄道員が列車内で行きずりの若者に過去の事件を語る表題作。
    なかなか悲しくもグロテスクで読み応えがあった。
    それから、炭鉱で起きた事件を描いたサスペンスフルな「坑鬼」も面白かったし、
    探偵小説論を含むエッセイ群も興味深く。
    で、解説を読み始めたら「ここから先『銀座幽霊』をも含むネタバレあり」と
    断り書きがしてあったので、そこにポストイットを貼って終了。
    一緒に買った『銀座幽霊』を後日読んだらその箇所に戻ろうと思う。

    ※8/25『銀座幽霊』読了→該当の解説終盤も読了。

  • 戦前の作品で古風な探偵小説という雰囲気が楽しめます。挿絵がとても美しくて雰囲気を大きく盛り上げてくれました。
    どれも真っ直ぐな本格ミステリですが、「あやつり裁判」や「雪解」など、バラエティにも富んだ1冊だと思います。


    【とむらい機関車】機関車が豚を轢いてしまう事故が連続して発生。なぜ豚が続けて何度も同じ機関車に轢かれるのかという事件の発端はおもしろいです。旅の途中で聞いたちょっと奇妙な話、というような第三者への語り口も暗い雰囲気で良い。現場に残された品物からの推理、待ち伏せと調査は活動的で楽しく、理路整然と真相に繋がっていくのは気持ちいいのですが、轢死というグロテスクな事件、死人が出るたびに飾られる弔いの花輪など、これらが動機と繋がって暗く不気味な、哀しいラストとなりました。

    【デパートの絞刑使】デパートで発見された死体の異様な様から論理的な推理がなされる、まっすぐな本格ミステリーです。この真相はデパートという場所も活かされたおもしろいものでした。実際の当時を思うと挿絵の効果もあり不気味です。

    【カンカン虫殺人事件】これもまた発見された死体の異様な状況からの推理で、逆再生していくように真相に迫っていくのはおもしろい。ですが状況を想像すると気味悪いです。

    【白鮫号の殺人事件】白鮫号での殺人事件。船の様子から導き出した仮説、そしてその証明の仕方はおもしろかったです。

    【気狂い機関車】雪降る季節、人気のない無機質な駅、惨たらしい死体と雰囲気抜群。このトリックは凶器も怖くて面白い。そしてなにより青山が明らかにした事件の真相の不気味なこと。ひた走る機関車と犯人が重ねあうようで、「気狂い機関車」のタイトルにゾォっとします。

    【石塀幽霊】このトリックは単純ですが、もうひとつ怪奇さを加えているのがおもしろいです。登場する容疑者にもワクワク。、足跡からの追跡だとか目撃者の苦悩だとかも楽しかったですが、あの人はトリックを知ってる可能性が高いんじゃ。

    【あやつり裁判】この真相にはびっくりしました。なんて悪質。不可解な事柄に対してのなぜ?が楽しい一編です。

    【雪解】倒叙形式。これといったトリックはない殺人事件ですが、金鉱への情熱を抱く男が凄い。雪解によってぽろぽろと出てくる犯罪の痕跡、それが男の金への執着とも重なって、結末は狂気に満ちていました。

    【抗鬼】まず炭鉱での人々の様子が素晴らしいです。災害や事故と隣り合わせな仕事の過酷さと、そこで働く人々の生活は興味深く読みました。そこで起きる事件というのがまた怪奇でおもしろい。突然の火事にパニックになる採炭場。防火扉の向こうに閉じ込められた男。次々と起こる殺人。見つからない死体。火事と殺人事件で緊迫し、混乱した採炭場での本格ミステリ。物語性も謎解きも非常に良質な一編でした。

  • 表題作『とむらい機関車』をはじめとする短篇9篇と、探偵小説誌に掲載されたエッセイ10篇。

    とんでもない動機に驚愕する『とむらい機関車』もすごいが、一番の傑作は『坑鬼』。これに関しては★★★★★。

    『坑鬼』
    中越炭礦会社の滝口坑で火災が発生。他への引火を防ぐため、一つの採炭坑の防火扉が閉じられようとしている。中にはまだ峯吉が残っているはずである。しかし多大な社の損失を防ぐため、峯吉の存在は黙殺された。
    その後、扉の封鎖に関わった社員達が一人二人と殺されていくのである。事故処理のため防火扉を開けた時、そこに峯吉の姿も死体もなかった。坑内では、焼けた峯吉が甦って人を殺しているという噂が立ち始める。
    オリジナリティあふれる舞台設定に、本格ミステリのギミックがうまく絡み合っていた。

    他にも、造船所のドッグでの殺人や、砂金採掘の鉱脈を舞台にした倒叙ものなど、昭和初期の労働の現場にこだわった著者独特の世界観が面白かった。

    初出時の探偵雑誌の挿絵が、より雰囲気を盛り上げていて良い。

  • 戦前の推理小説の名作、という評判で手にした。
    機関車の構造や炭鉱の様子等、知識が無さ過ぎてまったくイメージできない。WhyでなくHowが謎解きのメインなので、なかなかついていくのは難しかった。「とむらい機関車」「あやつり裁判」の動機は、いくらか現代にも通じるところはありそう。

  • 「とむらい機関車」
    哀しいお話でした。十方舎の娘を「片輪者」だろうと噂する隣人たちの冷たさ。花輪を買うきっかけになった、「気狂いの四十女」というのが最後に浮上するのが印象的だった。轢死体の描写がスプラッターで、少々吐気を催した。

  • ミステリ短編集。探偵小説、というほうがふさわしいのかも。戦前の作品なので文体や雰囲気が古めかしいのは当然ですが。古くさいという気はしません。今読んでも充分に面白く。そして巻末に収録されたエッセイを読むにつけても、現代の人の心理と変わらない部分が結構あるなあ、と思いました。ミステリ好きなら読むべし。
    お気に入りは「坑鬼」。サスペンス溢れる展開と、ミステリとしての意外性が見事な作品。少し前に炭坑を舞台にしたミステリを読んだところなので、余計に興味がわいた一作でした。
    表題作「とむらい機関車」もいいなあ。連続轢殺事件、ってのでわくわくしたけど。なんだ人間じゃないのか! ……って思ってたらこの結末はなんとも。
    「気狂い機関車」も印象的。ラストシーンの絵がなんとも凄まじくって。しかしこの真相はなかなか推理できませんよ。

  • エッセイ付。
    やっぱり登場人物、名探偵も被害者も加害者も
    キャラクターがあっさりしすぎで、
    くりかえしになるが、
    もう少し長いのを読んでみたかった。
    もしかして、むやみやたらに盛り上げたり
    刺激的な現代に慣れてしまったからなのか?
    話の中に垣間見える現代と同じ、異なる
    戦前、昭和初期の人々の暮らしが興味深く、良い。

  • 「とむらい機関車」・「カンカン虫殺人事件」・「あやつり裁判」が個人的ベストです。

  • 炭鉱事故を利用した殺人「坑鬼」が傑作。鉄道や炭鉱などの作者の豊富な知識に感服する。

  • 推理小説です。たぶん、あまり馴染みのない作家さんだと思います。
    昭和20年7月2日 戦地フィリピンにて病没(33歳)していますから、作家活動もそんなに長くなくて発表されている作品も少ないようですね。
    作品は短編が多くシャーロック・ホームズ風の青山喬介という探偵を多用しているようです。
    掲載作品は以下の通りです。
    ・とむらい機関車
    ・デパートの絞刑史
    ・カンカン虫殺人事件
    ・気狂い機関車
    ・石塀幽霊
    ・あやつり裁判
    ・坑鬼
    どの作品も秀作だと思いますが、僕としては『あやつり裁判』が奇怪で面白い作品でした。
    ただ、時代を感じさせる作品なので、取っ付きぬくい作品群かもしれませんね。

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