- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488441029
作品紹介・あらすじ
人間に巣喰う狂気と業が織り成す、妖艶な背徳の世界。初文庫化に3篇の単行本未収録作を附した、魔と奇想に彩られた16編の傑作を収めたミステリ短篇集。
感想・レビュー・書評
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70年代から90年代に書かれた短編集。
皆川ワールド炸裂で、
全然時代を感じさせない。
心地良い余韻の残る作品たち。 -
本作は、確かに幻想と言えば幻想なんだけど
ミステリ調のものから、ホラー調のものまであって
幻想との境があやふやな感じがたまらない。
もちろん、それを感じるのは、ラスト。
今までのは何だったの?ってなくらいに
いきなり引っくり返される。
あぁ~これがたまらない。
来るぞ来るぞって感じが全くしない。
本当にいきなり引っくり返される。
本作では女の物語が印象深い感じがしました。
やっぱり女の執念というか情念って怖いなぁ~と思ってみたり・・・
今回も楽しませていただきましたぁ~♪ -
短編集。皆川さんの書く女性・少女の話は、どれも後ろ向きになる。今回は女性の鬱屈した心理描写が多く、なかでも『魔女』『泣く椅子』は痛かった…。最後の『沼』は少女の話で、全体の調子がカッサンドラやお七の短編に通じていて、とても好みでした。
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1作をのぞいて70年代&80年代に書かれた短編集。ジャンルはさまざまなのだけれど、どれもゾクっとする面白さがありました。
精神病院を舞台にした書簡小説の「火焔樹の下で」は、夢野久作風というかドグラマグラ的なモチーフで、おどろおどろしい怖さ。隣室をのぞくことにはまってしまった女性の「密室遊戯」は、乱歩ぽかったりして、古き良き昭和の怪奇ミステリぽいところがこの2作はお気に入り。
「卵」と「黒蝶」は、この作者お得意の役者ものですが、「卵」のほうはいささかラストは難解ながら、「黒蝶」はわかりやすく同性愛のにおいがします。
「魔女」「滝姫」「坩堝」はどれも年上女性の、年下の男性に対する執念が怖い。「魔女」は構成も凝っているし、なんてことない普通の女性が皆魔女のような一面を持っていることにぞっとさせられ、逆に「滝姫」のほうは不幸な死を遂げた女性の呪いを感じさせられる伝奇的な怖さ。「泣く椅子」は、妹夫婦に寄生する姉視点の話ですが、自分が正義だと信じてる人の盲目的な狂気のタチの悪さがたまらない。
表題作はタイトル同様内容にも奇妙なインパクトがあり、怖いというよりはじわじわと悪寒がしてくる感じ。「バックミラー」は「火種をコルタサール及びバルガス・リョサより得ている」と作者コメントがあり、元ネタ気になりました。
個人的に一番お気に入りだったのは唯一90年代作品の「ゆびきり」。泉鏡花っぽいノスタルジックな幻想性と女性の侠気(狂気ではなく)が描かれていて、掌編ながらあざやかでした。
※収録作品
「卵」「血浴み」「指」「黒蝶」「密室遊戯」「坩堝」「サイレント・ナイト」「魔女」「緑金譜」「滝姫」「ゆびきり」「鳥少年」「泣く椅子」「バック・ミラー」「沼」 -
人生経験が少ないせいか、十分に理解出来なかったです・・・。
しかし、『火焔樹の下で』や『血浴み』、『密室遊戯』など印象に残る作品ばかりでした。
ただ、解説に「簡単に読み捨てられる物を書いてくれ」と出版社に言われていたとのことで、私にはあまり世界に入り込むことが出来ませんでした。 -
70年代・80年代に書かれ、90年代の終わりまで短篇集に収録されていなかった幻想ミステリ作品群…とのこと。
私はここ数冊、皆川作品を休憩本にしてしまい美しい世界に浸りきれないという大失態を犯していたので、今回は念入りに準備したつもり。
作品の世界を存分に味わうためには、読者の姿勢も絶対大事なんだなぁ。
すごくすごく良かった。本当に素敵だった!!
息苦しいくらい溺れた。
(今回の準備は。どうしたって気分を練り上げてから読む夢野久作→谷崎潤一郎の怪奇幻想系作品集で気分を高めて、読む時も部屋の明かりを白熱色に変えて…といったところ。)
狂気と血と痛みに彩られた妖艶で美しい世界が16篇。
その中でも「密室遊戯」の最後の1行の素晴らしさ!
ページをめくったその瞬間に、漂っていた謎や不穏な空気の全てが収束して思わず息を呑んだ。
他には「火焔樹の下で」「血浴み」「魔女」「緑金譜」「滝姫」「沼」が特に好きだった。
2013年の文庫化再編集にあたって書かれた解説(日下三蔵氏)の通りに、『開かせていただき光栄です』で皆川さんの世界を知り『死の泉』で夢中になり『倒立する塔の殺人』で溺れたパターンの“一流の物語作者を発見した新しい読者”(p.330)のうちの一人である私には、本当に夢のように幸せな1冊だった。 -
揮発するほどの色香が目に沁みる。皆川沼に貴女も溺れましょう。