11文字の檻: 青崎有吾短編集成 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488443153

作品紹介・あらすじ

大事件に遭遇したカメラマンが感じた違和感を描く「加速していく」、全面ガラス張りの特異な屋敷での不可能殺人の顛末「噤ヶ森の硝子屋敷」、人気コミックのノベライズ「前髪は空を向いている」、どんでん返しの切れ味鋭い「your name」、百合小説として評判となった「恋澤姉妹」などに、力作書き下ろし「11文字の檻」を加えた全8編。『体育館の殺人』で衝撃のデビューから10年、著者の集大成ともいえるノンシリーズ短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 超絶可愛いキャラがいっぱい! 青崎有吾先生の魅力がたっぷり詰まったミステリー短編集 #11文字の檻

    平成のエラリークイーンと呼ばれるロジカルな本格ミステリーを提供してくれる青崎有吾先生の短編集です。

    論理的な解法も確かに魅力的なんですが、私としては超ドエンタメなキャラクターを作り上げる、先生の天才的発想力を推したい。本作も惹きつけられるキャラばかりで、しかも物語も気軽に読めるものが多く、熱中して読み切ってしまいました。

    そしていつもの田中寛崇さんの装画もキュート。思わず本棚に飾りたくなりますね。

    ■加速してゆく
    JR福知山線脱線事故をテーマにした、人情溢れるミステリー。
    メインである登場人物の二人の未来に幸あれ。

    ■噤ヶ森の硝子屋敷
    おかしな館で発生する密室殺人、単純ながらも強烈なトリック。
    木を隠すなら…

    ■前髪は空を向いている
    女子高生の交流関係を切り取った作品、これは純文ですね。
    周りとの価値観とのズレを不安に思う心情が、とても綺麗に描かれていました。

    ■your name
    あっという間に解決しちゃう掌編ミステリー。
    これ、自分でも失敗しそうですよね。怖い怖い…

    ■飽くまで
    捻りの効いた掌編ミステリー。
    新しく、そして変態的な発想力にビビりました。

    ■クレープまでは終わらせない
    背景設定と場面切り取りが素晴らしい。SF純文学といった感じ。
    キャラクターが可愛く、妙なエロさもあり、またセリフに不思議な品の良さがあって大好きな作品。

    ■恋澤姉妹
    「彼女。百合アンソロジー」で既読済の作品でしたが、再読してみても超面白いです。

    先生の得意分野が思い切り発揮されていて、キャラクターやセリフが鬼カッコいい。物語も破天荒な世界観が天才的発想。そしてなにより恋澤姉妹が抱く圧倒的にシンプルな感情が強烈で、やってることとのギャップが鬼カワ。

    正直、今年読んだ短編の中では一番好きな作品で、未読の方はこれだけでもぜひ読んでほしいです。

    ■11文字の檻
    11文字のキーワードを当てるまで檻から出られないという軟禁脱出モノ。
    水曜日のダウンタウン 〇〇するまで出られない、といった企画ネタを思い出してしまいました。

    まったくヒントがない中、ロジカルに解き明かしていく様はさすが。そして衝撃の急展開。先生らしい作品をめいっぱい楽しませていただきました。

    バラエティに富んだ短編集で先生の魅力や特徴がいっぱい詰まった作品です。読み物として楽しい一冊でした。

  • ミステリーカテゴリに入れたが、ミステリー以外もある短編集。
    まえがきで作家さんが書かれているように内容は様々。ページ数も様々。

    「加速してゆく」
    実際に起きた事故を取り上げるのは勇気の要ることだが、どのように扱うのかと思って読んでいた。
    読み終えてみれば、この作品が一番、私のイメージする青崎さんらしい話だった。

    「噤ヶ森の硝子屋敷」
    館シリーズに嵌まった人間としては堪らない設定。ただ短編だけにちょっと呆気ない。
    探偵役が個性的なので、シリーズ化して欲しい。

    「前髪は空を向いている」
    遠い昔過ぎて、こういう話は子どもたちの日常を覗き見しているようで気恥ずかしいような。
    ただ温かい気持ちで見守った。

    「your name」
    禿頭の探偵・水雲雲水が気になって、オチを読み流してしまった。

    「飽くまで」
    阿刀田高さんのようなテイストで面白い。

    「クレープまでは終わらせない」
    世紀末的な世界で、女の子二人の日常会話が刹那的に映る。可愛らしさと諦めとが印象的。

    「恋澤姉妹」
    また強烈なキャラクター。近寄る者どころか、彼女たちを知ろうとする者すら葬る最強コンビ。
    何故彼女たちは自分たちを知ろうとするものを殺すのか。そこも気になるが、こんな恐ろしい恋澤姉妹を商売にするワラビのような人間にも感心する。
    こういう話、若い頃なら嵌まっただろうな。今の年齢だとしんどい。

    「11文字の檻」
    これまた架空の国、架空の設定。政治犯として捕らえられた主人公が、唯一の解放手段である11文字のパスワード当てに挑む。
    表題作だけに一番力が入っていて面白かったが、何より主人公のメンタルに感心した。私ならとっくに折れているだろう。

  • 今さらながら青崎有吾に注目。こんな多彩な作品書いてたのか。歴史改変物の表題作『11文字の檻』はパズルミステリー的に一番好み。他、実際の事故の物語からの着地に誠実さ感じる『加速してゆく』猟奇的だけど目が離せない『恋澤姉妹』が印象的。

  • 全8編の短編集。

    表題作は評判の通り面白かった。
    読みやすく、よく考えられているな〜というのが正直な感想。

    短編集でジャンルはかなりバラバラな印象。

    your name の短さは一番驚いた。

  • 青崎有吾先生の短編集。
    それぞれに登場人物は異なり、背景も違う。あるときは実際の事件を元にしたミステリー、あるときはSF、あるときは公式二次創作と幅広いジャンルがこの中に展開されており、飽きせずに読むことができた。
    特に面白かったのが最初の『加速してゆく』という作品である。福知山線脱線事故という実際に起きた事故を元にミステリーを展開させていくという所が面白く、さらには主人公の植戸という名字とその当時に放送されていたドラマとを上手く絡ませて少年の秘密を暗にほのめかしている所も上手いなぁと思いました。
    青崎さんの作品はまだ読めていない作品も多いのでこれからも読んでいきたいです。

  • 著者のノンシリーズ短編を集めた「デビュー10周年記念作品集」。巻末に著者による各話解説がついているのが嬉しい。

    ■加速していく
    今年も間もなく4月25日が来る。
    解説に、令和改元前夜を振り返って『平成に起きた不都合な事柄の数々を忘れ去ろうとするような、なんともいえない空気を感じていた。そこで忘却をテーマに何か書こうと思った。福知山線脱線事故を選んだ理由は(中略)自身がこの事故のことを忘れかけていたからである』と書いてあったが、忘れない、という意味では、発表当時よりさらに時間が経った今だからこそ、詳細に記載された事故の様子がとても貴重に思えた。
    謎解きも当時流行りのTV番組とリンクしていていたが、その頃特異に思われたあの役柄に重なる多鹿くんの秘密といい、ここでもまた時間が経った今のほうがより意味を持つ作品になったように思った。

    ■噤ヶ森の硝子屋敷/いまだ着手できていないという、探偵・薄気味良悪を主人公にした、残り5つの屋敷をめぐる話もぜひ読んでみたい。

    ■前髪は空を向いている/人気コミックのノベライズ。その世界の雰囲気は十分楽しめた。

    ■your name/いつかほかの話にも出したいという、探偵・水雲雲水の続きもこれまた読んでみたい。九州を中心に活動しているというから、そこも楽しみ。

    ■飽くまで/なかなかダークでした。

    ■クレープまでは終わらせない/巨大ロボットを清掃するという設定が面白い。田中さんの画集も見てみたい。

    ■恋澤姉妹/世界最強の姉妹を追って世界中を巡るプロセスとそこで飛び出す話の数々がキュート。

    ■11文字の檻/文庫のための書き下ろし。戦時下の更生施設での2297の11乗分の一のパスワード当てミステリー。閉塞感とやるせなさが迫る中での亀の歩みの解読作業に息が詰まった。みんな、あの暗号で答が分かるの、凄いなあ。

  • 平成のエラリークイーンと呼ばれている、著者の
    大きな挑戦が垣間見れた短編集でした。
    館モノ、社会問題、コミックの小説化、百合系、本格脱出ミステリなど、様々なジャンルの作品が並ばれいます。特に表題作の「11文字の檻」は、某有名バラエティの検証企画に類似したテーマだったので、謎解き感覚で吸い込まれるような感覚で読み進めていきました。「加速してゆく」は、JR福知山線脱線事故をテーマにしていて、当時の状況が沸々と思い出してきました。社会問題というのか、過去の出来事がどんどんと忘れていくなかで、記憶を風化させないことが大事なのかと、あらためて実感しました。

    • マメムさん
      初コメです。
      表題作の「11文字の檻」はハリウッド映画でも観ているような気分でした。
      「加速してゆく」は青崎有吾さん独自の解説まで読んで、事...
      初コメです。
      表題作の「11文字の檻」はハリウッド映画でも観ているような気分でした。
      「加速してゆく」は青崎有吾さん独自の解説まで読んで、事実に基づいた話だったのかと知りました。
      当時(2005年)の凄惨な出来事を、どこか他人事のように思いながら過ごしている自分であったと少し恥ずかしくなります。
      とは言え、今の私に何ができるわけでもないですが、このように記憶を風化させないよう語り継いでいくことは、やはり大事なんだと気付かされますね。
      2023/01/03
    • 和坂林太郎さん
      コメントありがとうございます。
      記憶を風化させずに、次の世代に語り継ぐ
      そういったことが大事です。
      青崎さんの作品らしくないといったら失礼だ...
      コメントありがとうございます。
      記憶を風化させずに、次の世代に語り継ぐ
      そういったことが大事です。
      青崎さんの作品らしくないといったら失礼だけど、新しい境地を感じれたような気がします。
      2023/01/03
  • 裏染天馬シリーズにどハマリしてしまった流れで、青崎有吾さんの新刊が出ていたので購入。

    開いてから(苦手な)短編集だったのかと思いつつ最後まで読み終えた今時点の感想としては、7編目の『恋澤姉妹』は是非とも恋澤姉妹を主人公としたシリーズ化を強く希望したいです!!
    カリスマ性の高い魅力的な姉妹、世界観や設定も私好みでした。後半の姉妹のやり取りのギャップ萌えの余韻が凄い。

    そして最後の書き下ろし『11文字の檻』は途方もない話で、面白さはあったものの、ちょっとしっくりこない答えでした。私の知識不足かもしれませんが……。

    『まえがき』で青崎有吾さんは、「洗練された短編集を求めているなら、この本はおすすめしない。」と読者への思い遣りとも汲み取れる言い方をされていますが、『恋澤姉妹』はオススメします!!

  • 幅広いジャンルの短編小説群。

    わたし好みは

    巻頭の「加速してゆく」。
    福知山脱線事故を題材としたフィクションノンフィクションを織りまぜた作品。

    表題作「11文字の檻」。
    独裁政府に反抗し投獄された『犯罪者』たちが「11字のワード」を解き明かし出所を目指す謎解き?小説。

    の、2作でした。

    短編なので好きなのから読めるのが良かったです。

  • 多彩な品揃。表題作が秀逸。
    11文字の檻:監獄脱出のパスワードを当てる。正解同居人の裏切り?で混乱。監禁生活の果て,胸のすく開放感。
    噤ケ森硝子屋敷:ミステリー
    クレープまでは:地球裏側滅亡

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著者プロフィール

★小説家/推理作家。“平成のエラリー・クイーン”の異名をとる、本格ミステリ界の若きエース! 代表作に『体育館の殺人』『図書館の殺人』『ノッキンオン・ロックドドア』など。

「2018年 『ネメシス ♯40』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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