黒いハンカチ (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 401
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488444013

感想・レビュー・書評

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  • 昭和32年4月から33年3月まで、雑誌「新婦人」に読み切り連載という形で発表された作品です。

    主人公はA女学院のニシ・アズマ先生。女学院が舞台になったり、登場人物たちがカタカナ表記の名前で紹介されていたりして、昭和の日本というよりは、ちょっぴりモダンな異国の雰囲気を醸し出しているようでした。
    女性が主人公の探偵ものって、この時代あまりなかったんじゃないかなって思ったんですけど、どうなのでしょうか。仕事を持つ女性が増えてきたとはいえ、まだまだ女性は家を守るのが一番の仕事であり、賢明なる家庭婦人になることを求められていたのではないのかと。
    そんな中にひょっこり現れたニシ・アズマ。鋭い観察眼と明晰な頭脳であれよあれよという間に、謎を解いてしまいます。
    尖ったところもなく、毒を吐くこともなく、人間嫌いというわけでもなく……現代では、お目にかかることがなくなったと言ってもいいほどの、癖のない身近な存在の女性です。そんな彼女はとても好印象。万人に好かれるタイプだと思います。ニシ・アズマの謎解きを興味津々で聞くお友達の姿が「新婦人」の読者である女性たちに重なりました。とても人気がある連載作品だったんじゃないでしょうか。
    謎も日常的なものから、殺人事件まで季節をぐるりと巡りながら起こります。殺人事件もグロテスクな表現などはなく、ご婦人方が読まれても後味の悪さが残らなかったのではと思います。スマートでそして分かりやすい。スピード感のある謎解きは、今読んでも全然古臭さを感じません。特に「日常の謎」が好きな方にはおすすめしたい作品です。

  • 昔、北村薫さんのアンソロジーでこの「ニシ・アズマシリーズ」を知った。はていつ頃だったか? と調べるともう十年近く前らしい。「これもっと読みたいなあ」と思って、当時いろいろ小沼丹の本を調べてみたのだけれど、見つけられなかった。まあでも文芸文庫ぐらいしか小沼丹はないかなあ、という大雑把な探し方だったけれども。その後、ふとしたことからちょっと前に創元推理文庫に入っていることに気がついた(おそい)。「おお、ニシ・アズマではないか…」 嬉しかった、でももうちょっと早く気づいていれば… とも思った。ちなみに北村薫さんの件のアンソロジーは今はちくまに入っている。時が経ったのを感じる。

    A女学院のニシ・アズマ女史が日常のちょっとした謎を解いていく小品である。軽妙ながら品があってよい。

    実は足が速いニシ・アズマ。学校でひそかに午睡をする。眼鏡をかけたり外したりすることもある。なかなかのかわいらしいキャラである。

    いやはや、読めてよかった。

  • 小柄で感じの良い女性。美人とは言えぬが愛嬌のある可愛い顔。でもなぜか太い赤い縁のロイド眼鏡をかけて台無しにしている。
    そんなニシ・アズマが観察眼を生かして数々の謎を解く。
    女学校時代の女子のワイワイした様子が楽しい。
    でも風景も日本のようでいて、クリスティの本の舞台のような気持ちにもなる。なんだか不思議。
    日常のちょっとした事件から殺人事件までニヤリとしたりヒヤリとしたり。
    殺人事件のお話はけっこう人の汚なさがガッツリ出ていてギョッとするくらい。
    独断で犯人を逃がしてしまうお話があり、これはスッキリしないなあ。

    ニシ・アズマがビブリアの彼女たちに重なって、これを読んでからもう一度あのシーンを読まないとと思う。

  • 愛すべきキャラです、ニシ アズマ。
    小さな引っかかりから推理する、短編ミステリーです。旧仮名づかいと、テンポよい文章に、心がほっこりします。好き✨

  • ビブリアの栞子さんが好きな本だと作中で知り、書店で取り寄せてもらった。受け取りに行った日に偶然、同じ作家の随筆集「珈琲挽き」を書棚で見つけた。今度もう一度あの店で探して、また見つけたら今度は買って読もうと思う。

    硝子の向こうにある、絶妙にレトロな空気。「真逆」「茲」といった、今はもう使わない漢字が心地良く響く。登場人物名のカタカナ表記も。

    これは大正の懐かしさではなく、現代に微妙に接する昭和初期の空気だと感じた。豊かさの中にいると信じた善良でおっとりした人たちが、やがて来る戦争の破滅を知ることもなく生きている日々。何も知らないままに、気高く無垢に生きる女性たちが愛おしい。

    事件や事件とも呼べないささやかな謎を解いてゆく主人公のニシ。彼女は基本的に犯人たちを許す。時に許さないこともあるが、それは法に照らした罪の軽重ではなく、彼女の中に醸成された価値観によるのだろう。さらっと上品に、許されてもよい人たちを見逃してくれる。ほんのわずかな時間で軽やかな謎解きを見せられて、とても心地良い。文体は古風なのに古びてもいない。ユーモアすらカビ臭くなっていない。

    こんな作家、知らなかった。井伏鱒二のお弟子さんだというが、彼のような深刻さもない。この人の作品は何冊も手元に置いておきたい。

    ふわふわした読後感。いい本に出会ったなあ。

  • A女子学院の小柄な愛嬌のあるニシ・アズマ女史は鋭い観察眼と頭脳の持ち主。日常のなにげない「おや?」という気づきから、ニシ・アズマ女史は事件をかぎつけ、またたくまに解決してしまう名探偵。

    可愛いです。ニシ・アズマ女史、名探偵に変身するときは必ずロイド眼鏡かけて、眼鏡っ娘になるところも良い。
    飄々とした文章とさらっとした事件の後味。こういうの大好き。

  • 3-

  • 期待にあふれる感じで読み始めたのだけれど、
    ちょっと物足りなかった。

    こう言うなんでもない事件を解決する人の話って、
    誰に向けて書かれているんだろう?
    (失礼な言い方!)

    とりあえず、私に向けてでは無いことは理解した。

    小沼さんのエッセイも読んでみたけれど、
    「男より女のほうが割合馬鹿」と
    言われている様なところがたまにあって、
    そこはなんとなく面白く無い。

    ま、そんな時代だったのですかね。

  • やさしいミステリ短編集。
    人が死んだりはしますが、
    小沼氏の優しい文体により、ハラハラしたりヒヤヒヤしたりのサスペンス・ミステリを期待している人には
    全く向かない一冊(笑)
    ニシ・アズマが可愛いです。
    ロイドメガネをかけると名探偵に…という
    解説を先に読んでいたけれど、
    著者のあとがきに「照れ隠しでしょうね」って云う件があって、微笑ましかったです。

  • 素晴らしい!
    女学院の若い女先生が、眼鏡をかけると謎が解かれて、、、。
    平易な表現かつ品位のある文体。日常の謎派に類するような軽妙なあの感じ。何故もっと早くに読まなかったのかしらん。

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著者プロフィール

東京生まれ。1942年、早稲田大学を繰り上げ卒業。井伏鱒二に師事。高校教員を経て、1958年より早稲田大学英文科教授。1970年、『懐中時計』で読売文学賞、1975年、『椋鳥日記』で平林たい子文学賞を受賞。1989年、日本芸術院会員。

「2018年 『ゴンゾオ叔父』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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