空白の殺意 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488449032

感想・レビュー・書評

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  • 「〜の殺意」シリーズ、なんで「空白?」と思いつつ…
    高校野球にまつわる不祥事絡みの殺人事件。なんとなーくで犯人を想像できてしまう感はあるのだけど、すごく読みやすい!
    でもこういう理由の殺人って、なかなか実際には起こしづらいよなぁと思ったり…

  • 良いじゃないか、中町 信!
    作者がイチ押しの自信作だけあって、うん、たしかに満足できた。甲子園を目指す学校同士の醜い思惑をバックボーンに、女子生徒の死、女教師の自殺、野球部監督の毒殺と立て続けに事件が起きる。
    様々なエピソードを枝葉にして物語は進むが、なかなか容疑者が特定されず、容疑者らしき人物が浮かんでもアリバイの壁が立ちはだかり・・・。

    まさに、正統派推理小説というべき作品だな。
    推理小説の中には、クローズドサークル物、叙述トリック等々、いろいろ有るけれど、この作品は強いて挙げればアリバイ崩し?
    でも、それだけじゃないんだよな。単なるアリバイ崩しだけだと、単調で面白くもない物語になりがちだけど、読者を欺くための?エピソードなんかが良い味を出してる。

    容疑者と目されていた人物が、第四の死を遂げるに至って、いよいよ物語は「?」のオンパレード。
    これまでの四つの死の犯人は誰なんだ?
    動機は?
    容疑者は2~3人居るけど、アリバイあるし・・・。

    このあたりまで来ると、ページをめくる手が速くなった。名探偵が登場するわけでもなく、ラストで「全員を集めて犯人を名指し」なんて場面もないけど、うん、やっぱりこれは正統派推理小説だよなぁ・・・。

    読み終わった後で、プロローグを読み返すと、ジワ~ッと湧き上がる衝撃。プロローグとエピローグを比較するだけでも一読の価値はあるなぁ。
    一瞬で世界がひっくり返るようなパンチ力のある衝撃じゃなくて、こちらは、そうだなぁ、ジワジワと効いてくるボディブローのような衝撃だな。
    いやぁ、最近、瞬殺の衝撃物ばかり読んでたので、この種類の衝撃は久々だった。

    「し、死んでる・・・・・・」

    プロローグとエピローグに書かれたこの一行の使い方、上手い!

    作中、挿入されてるエピソードについての結末も書かれてると良かったんだけど、そのあたりが書かれてないのが若干の不満点かな。

    ☆4個

    背表紙~

    大仰ではなく、小粒ながら、心理的なだましのトリックをメインに据え、読者を最後の一ページまで引っぱって行く「皇帝のかぎ煙草入れ」のような作品を、私はおこがましくも、無性に書いてみたくなったのである。たまに読者から「自作の中で出来が良く、気に入っている作品は?」と問われることがあるが、私はためらわずに本作を筆頭に挙げている。中町 信

    密室物やら叙述トリックにはない、まさに王道の推理小説。堪能しました。

  • サスペンスは都合が良い場面が出てくるのはしかたないんだけど、その流れの雰囲気があからさま過ぎると少しチープになってしまうので、難しいですよね。作家さんは大変だなぁ。

  •  女子生徒の死、女性教諭の自殺、野球部監督の失踪、全ては甲子園を望む何者かの陰謀なのか。 ディクスン・カーの「皇帝のかぎ煙草入れ」に挑戦した読者を欺くミステリ長編。 

    高校野球は作品にほとんど絡んでこない、というか高校生自体ほとんど出てこない。 出てくるのは甲子園の利権を気にする大人たちばかりである。 中町氏得意の叙述ものでおそらく最後まで気付かれることはないが読後の騙された感もあまりない。 良くも悪くも非常にスマートな作品になっている。

     中町氏の得意とする叙述トリックものであり、プロローグ(25日の出来事)の段階で死んでいるのは絵里子ではなく猫のリーコの方である。 この叙述をもって死体に驚いている恵子は容疑者から外されるという造りなのだが、あまりにも作品の露出が少なかったり、甲子園を目指す息子がいたりとむしろ怪しさ満点であり恵子が犯人であることにあまり驚きがない。

  • 最大の仕掛け(トリックとも違うのよ)がラストに来るので、そこまでは、端正なフーダニットなんて、少しらしくないかなと思いながら読んでいた。普通のミステリ読者なら、ここに絶対何かあるぞと考えるだろうディテールが、最後できれいに回収されるのが快感。作者さんのお気に入りだけのことはあります。

  • 高校野球殺人事件

  • 収録内容は以下の通り。

    本編
    あとがき
    折原一: 曲者作家の異色作

    登場人物たちの心理が巧みに描かれていて、その方向性に騙されてしまう。

    カバーデザインは岩郷重力+WONDER WORKZ。、カバー写真はLOS 164。

  • 3+

  • 作者の「~の殺意」4部作の3冊目ですが、非常に読みやすいミステリーシリーズなので一気に読了しました!
    本作は高校野球と不祥事問題を絡めた連続殺人事件の謎を解明する内容になっており、ポイントはミステリー作品では良く登場するアリバイトリックものですね!さすがに叙述トリックの名手だと思います!
    中町信の作品は、最初のプロローグが鍵になっている作品が多いような気がします!

  • 作者あとがきで、「『皇帝のかぎ煙草入れ』のような作品」と書かれていたので、共通項を探しながら読んだが、心理的なトリックが用いられていることを指しているのだろうか。「皇帝のかぎ煙草入れ」で使われている、あのトリックが形を変えて使われているのかと思ったが、そうでもなく、騙し方としては叙述系と感じた。トリックよりも、第9章で百世が気付いたことの方が類似性があるように思った。
    推理の鍵となる重要な事実が後の方で明らかとなるため、読者が推理する余地は少ないが、犯人のアリバイトリックの手法、冒頭部分の記述における錯誤、絵里子の遺書と日記帳に関する真相、伏線の忍ばせ方など、数々のアイデアが盛り込まれていて、ミステリーとして、充実した内容を持っていると感じた。ただし、真相の衝撃度は少なく、あっさりとしているので、あまり騙された感じはしない。
    選手や監督の不祥事ならいざ知らず、後援会の会長の不祥事ぐらいで謹慎処分になったりするだろうかと疑問に思った。

    (ネタバレ)
    「皇帝のかぎ煙草入れ」との類似点として、犯人が本来知らないはずのこと(日記帳の赤いカバーのこと)を証言し、発覚したことが挙げられると思う。

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著者プロフィール

1935年群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒業。 66年に「闇の顔」で第1回双葉推理賞候補になる。『新人賞殺人事件』(後に『模倣の殺意』に改題)で単行本デビュー。叙述トリックを得意とし、『空白の殺意』『三幕の殺意』『天啓の殺意』などの著作がある。2009年逝去。

「2022年 『死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#2 告発(accusation) 十和田湖・夏の日の悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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