さよなら妖精 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 4671
レビュー : 495
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451035

感想・レビュー・書評

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  • 自分の原点を探る旅にて久々に再読。

    当時スッキリの加藤浩次の強力なオススメで(笑)
    米澤穂信を初めて知った作品です。



    政治家になるため
    遥かユーゴスラヴィアから日本にやって来た少女マーヤと
    日本の高校生たちとの
    たった二ヶ月の触れ合い。

    そしてユーゴスラヴィアでの武力衝突に巻き込まれていくマーヤ。

    かくして物語は
    彼らがともに過ごした日々と、
    その中に散りばめられた
    日常の謎を追いかけてゆく…。


    ミステリーの枠で語られる作品ですが、
    そんなジャンル分けはどうでもいいくらい、
    切なく胸に深く突き刺さる、
    強烈な読後感を残す作品です。



    人を惹き付ける容姿と、
    その凛とした姿勢が魅力的なマーヤのキャラによって
    物語にどんどん引き込まれていきます。



    マーヤと出会うことで
    少しずつ変わっていく
    何をやっても熱くなれない主人公・守屋。


    守屋にとってマーヤは
    堅い殻で包まれた心を破ってくれる
    唯一のミューズであり、

    外の世界を見せてくれる救世主であり、

    異国から来た妖精以外の何者でもなかったんだろう。



    圧倒的な文化の違いによる
    越えられない壁が
    本当に切なくて無力感を感じて
    やりきれない(>_<)


    そしてマーヤと学生たちが
    町を探索するシーンが
    フラッシュバックのように
    今でもふと蘇ってきます。



    自分たち読者一人一人が
    マーヤの積み上げた強さを
    少しずつでも見習うことができれば、

    いずれ何かが見えるかもしれない。


    この争いの絶えない世界を
    少しずつでも変える
    きっかけになるかもしれない。


    そう思わせてくれただけでも
    (普段考えることもない戦地の現状を考えるきっかけになっただけでも)


    この小説を読んで
    本当に良かったと思います。



    染みに汚れた紫陽花のバレッタ。

    そこに込められた一筋の希望と
    マーヤの切実な願いを
    日本という豊かな国に暮らす自分たちは
    決して忘れてはならない。



    古典部シリーズの原点とも言えるし
    ミステリーファンだけでなく
    本当に多くの読書家の皆さんに読んでほしい
    ほろ苦い傑作です。

    • アセロラさん
      こういう異文化を知ることが出来る本って、好きです。ものすごく切なそう…。
      本当に、今こうやって豊かな生活を享受できている事を感謝したいです...
      こういう異文化を知ることが出来る本って、好きです。ものすごく切なそう…。
      本当に、今こうやって豊かな生活を享受できている事を感謝したいですね。当たり前とは思わないように。

      それにしても、加藤浩次って、読書する人だったんですね…(失礼)
      もともと好きでしたが、好感度(勝手に)アップしました(笑)
      2013/02/23
    • 円軌道の外さん

      1ヶ月仕事が休みナシだったんで
      遅くなりました(汗)

      コメントありがとうございます!

      スッキリの加藤は
      元々米澤さんがブ...

      1ヶ月仕事が休みナシだったんで
      遅くなりました(汗)

      コメントありがとうございます!

      スッキリの加藤は
      元々米澤さんがブレイクする前から
      彼の作品のファンだったらしく、
      確か文庫本の解説も書いてたんじゃなかったかな?

      あの傍若無人なキャラで
      読書家という
      ギャップに萌えますよね(笑)



      この小説は本当に切なさいっぱいだけど、
      自分たちが暮らす
      日本という国が
      どれだけ恵まれていて
      今の生活が
      決して当たり前ではないということを気づかせてくれます。

      また機会があれば
      触れてみてくださいね(^_^)v


      2013/04/08
  • 読んでるうちにどうにも「氷菓」を思い出してしまった。

    人が殺されることのない「日常の謎」
    うーん、米澤さんの作品いつも静かなのよね。いいのか悪いのか、盛り上がりみたいなものがないまま終わってしまった。

    タイトルからして、切なくなるんだろうなって結末はわかっていて
    静かなまま進んで、静かなまま終わってしまった。

    推理の展開の仕方の部分と、米澤さんが研究してたユーゴスラビアの要素
    を混ぜ込んだ…そこから
    「一歩踏み込む勇気」みたいな学生の無力感のモヤモヤも出でくる。
    この思春期のモヤモヤ感が私の中には未だにあってモヤモヤがムズムズで…

    一連の話が入ってこないまま
    私も傍観者に…なってしまった…

    ひとまず「王とサーカス」に進みます。

  • 紛争地帯を扱った小説はあまたあるが、ほとんどは紛争地に侵入してスパイ活動やテロをする冒険物が多い中、こんなに身につまされて切ない小説には初めて出会った。世界は歪んでいる。今の幸せに浸り切っていいのか?でも、日々の生活に流されていく日本に住む私達。
    歴史好きな観点からもユーゴの分裂の背景を知れて勉強になった。印象深い良い本だった。

  • 君と一緒ならどこまでも生きていける気がした。頭の中では何でも出来る気がした。何かを成し遂げられる気がした。でも現実はそんなものじゃなかった。何かって?何かってなに?何にも答えられない。残るは思い通りにはならなかったほろ苦さ。そして自分の無知さに恥ずかしくなる。高校生の守屋くんには世界は広すぎて。少し触れた世界は彼に手をさしのべることはなかった。
    日常の謎解きミステリなんだけど、それだけでは
    終わらせない読後感。

  • 高校三年の時に体験した、たった2ヶ月の出来事が青年の心を深く揺さぶる。

    ユーゴスラビアからやって来たマーヤ。
    初めは単なる異文化交流だったが……。

    青年の狭い世界に風穴を開け、熱情をもたらすが、現実はそんなに甘いものではない。
    「観光に命を賭けるのはよくない」と冷静に言うマーヤの言葉が的を得ていたように思う。

    ラストは想像通りの結果で残念。
    2ヶ月の間、いつも興味津々に「哲学的意味がありますか?」と質問し、熱心にメモを取っていたマーヤを愛しく思う。

  • 主観的に感じる物語の切実さ。
    客観的に分析できるミステリとしての完成度。

    主客どちらの観点でも評価できる小説はなかなかないなと思ってたので、本作に出会えて良かったです。

    自分は何者にもなれない、なれると揺れ動く心の葛藤も思い出させてくれました。

  • 初めての作家さん。

    ギャップのある作品。
    日本という日常を基軸に描いているのだけど、そこにマーヤという異邦人が訪れ、やがてユーゴスラヴィアという非日常を「思う」展開になっていく。

    マーヤが何者であるか分からないまま帰ってゆくところからが、ミステリー要素の楽しみどころ。
    あ、そこまでに幾つかちょいミステリーはあるんだけど、私的にはよく分からなかったのでスルー(笑)
    高校生らしからぬ語り口の主人公と、主人公を凌駕するしっかりさんマーヤのバランスが不思議。

    ともあれ、読み始めた空気感と、読み終えた空気感のあまりの濃さの違いが魅力だろう。
    社会小説というよりは、青春小説として読んだ方がいい。

    読後ほう、と息をついた。面白かった。

  • あの高校生時代の、自分をちっぽけで無力ででもなんかできるはずっていうあのムズムズした気持ちめちゃわかるーってなった。

  • マーヤと巡った日常に潜む謎と発見。そして残された手がかりが導く真実と虚ろ。

    弓道、祭、墓、名前、悪意…「自分は何者か?」自国文化・歴史の不勉強に反省。一方自国の歴史を作るため他国を学ぶ、素直で崇高な姿勢に心打たれました!

  • 1991年4月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。
    遠い国からはるばるおれたちの街にやって来た少女、マーヤ。彼女と過ごす、謎に満ちた日常。
    そして彼女が帰国した後、おれたちの最大の謎解きが始まる。
    彼女はどこに帰ったのか。
    謎を解く鍵は記憶のなかに――。
    忘れ難い余韻をもたらす、出会いと祈りの物語。



    何となく高校生活を過ごしていただけの、どこにでもいる平凡な日本の高校生、守屋。
    美人だが険のある太刀洗、のんびり屋でマイペースな白河、そして、守屋と同じ弓道部に所属する文原の四人は、マーヤを歓待しながらともに楽しい日々を過ごす。

    マーヤに対する四人の立ち位置は彼らそれぞれの性格に拠るもので、それぞれに違う。

    その微妙な距離感が見事に表現されていて面白い。
    そして、それでいながらそれぞれが、彼らなりにマーヤのことを想っているのがわかってとても微笑ましく感じる。

    マーヤと過ごす二ヶ月の間で、好奇心旺盛な彼女はそこで起こったいくつかの出来事に対して可愛らしい疑問を持つ。
    それらがいわゆる「日常の謎」として提示されており、探偵役となる太刀洗のヒントで守屋がそれらに対する解答を見つけていく。
    推理小説として見たら、決して出来の良い「謎」だとは思わないが、物語の彩りにはなっている。
    マーヤの疑問に対する答えは決して気持ちの良いものばかりではなかったけれど(賽銭泥棒だとか)、彼女はそれをあるがまま、飾らない日常の一コマが見れてよかったと言う。

    そんなマーヤと接するうちに、守屋はマーヤの日常であるユーゴを見てみたいと思うようになる。
    何にも入れ込むことなく、ただ何となく生きてきた守屋が、はじめて自分の意思で扉を開こうと思ったのだ。
    しかし、マーヤはそんな守屋を受け入れず、帰国。
    彼女が帰国してから、守屋はマーヤが帰った国がどこなのか、記憶を頼りに探ろうとする。

    六つの国に分かれている旧ユーゴスラヴィアのうち、どこにマーヤは帰ったのか。
    これがこの物語の、最後の、そして最大の「謎」だ。

    そして、守屋がたどり着いた結論は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、首都サラエヴォ。
    戦火の真っ只中にある国だ。

    自分の日記やかき集めた資料から、守屋はその答えにたどり着くわけだが、そんな論理を無視しても僕は答えは明らかだったろうと思う。

    マーヤが守屋を拒んだ理由、それこそがその答えなのではないだろうか。
    もしも身の安全が確保できるような国であるならば、マーヤはもしかしたら守屋を自分の国に招いたかもしれない。

    物語は守屋がその後、ユーゴに渡ったかどうかまでは描かれていない。
    マーヤと会うことはもう二度と叶わない。
    でも、それでも守屋はユーゴに渡ったような気が僕はしている。
    そして、できればそのときは太刀洗も傍にいてあげて欲しいと思う。

    こんなに爽やかで軽やかで素敵な文章が連なっているのに、これほど読後感が重く、いや、切なくなるとは。

    さよなら。妖精。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞、14年『満願』で山本周五郎賞を受賞。『満願』は同年の年間ミステリランキングで三冠をとるなど、話題を呼んだ。近著に『王とサーカス』『真実の10メートル手前』『本と鍵の季節』などがある。

「2019年 『いまさら翼といわれても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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