さよなら妖精 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 4159
レビュー : 468
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451035

感想・レビュー・書評

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  • 自分の原点を探る旅にて久々に再読。

    当時スッキリの加藤浩次の強力なオススメで(笑)
    米澤穂信を初めて知った作品です。



    政治家になるため
    遥かユーゴスラヴィアから日本にやって来た少女マーヤと
    日本の高校生たちとの
    たった二ヶ月の触れ合い。

    そしてユーゴスラヴィアでの武力衝突に巻き込まれていくマーヤ。

    かくして物語は
    彼らがともに過ごした日々と、
    その中に散りばめられた
    日常の謎を追いかけてゆく…。


    ミステリーの枠で語られる作品ですが、
    そんなジャンル分けはどうでもいいくらい、
    切なく胸に深く突き刺さる、
    強烈な読後感を残す作品です。



    人を惹き付ける容姿と、
    その凛とした姿勢が魅力的なマーヤのキャラによって
    物語にどんどん引き込まれていきます。



    マーヤと出会うことで
    少しずつ変わっていく
    何をやっても熱くなれない主人公・守屋。


    守屋にとってマーヤは
    堅い殻で包まれた心を破ってくれる
    唯一のミューズであり、

    外の世界を見せてくれる救世主であり、

    異国から来た妖精以外の何者でもなかったんだろう。



    圧倒的な文化の違いによる
    越えられない壁が
    本当に切なくて無力感を感じて
    やりきれない(>_<)


    そしてマーヤと学生たちが
    町を探索するシーンが
    フラッシュバックのように
    今でもふと蘇ってきます。



    自分たち読者一人一人が
    マーヤの積み上げた強さを
    少しずつでも見習うことができれば、

    いずれ何かが見えるかもしれない。


    この争いの絶えない世界を
    少しずつでも変える
    きっかけになるかもしれない。


    そう思わせてくれただけでも
    (普段考えることもない戦地の現状を考えるきっかけになっただけでも)


    この小説を読んで
    本当に良かったと思います。



    染みに汚れた紫陽花のバレッタ。

    そこに込められた一筋の希望と
    マーヤの切実な願いを
    日本という豊かな国に暮らす自分たちは
    決して忘れてはならない。



    古典部シリーズの原点とも言えるし
    ミステリーファンだけでなく
    本当に多くの読書家の皆さんに読んでほしい
    ほろ苦い傑作です。

    • アセロラさん
      こういう異文化を知ることが出来る本って、好きです。ものすごく切なそう…。
      本当に、今こうやって豊かな生活を享受できている事を感謝したいです...
      こういう異文化を知ることが出来る本って、好きです。ものすごく切なそう…。
      本当に、今こうやって豊かな生活を享受できている事を感謝したいですね。当たり前とは思わないように。

      それにしても、加藤浩次って、読書する人だったんですね…(失礼)
      もともと好きでしたが、好感度(勝手に)アップしました(笑)
      2013/02/23
    • 円軌道の外さん

      1ヶ月仕事が休みナシだったんで
      遅くなりました(汗)

      コメントありがとうございます!

      スッキリの加藤は
      元々米澤さんがブ...

      1ヶ月仕事が休みナシだったんで
      遅くなりました(汗)

      コメントありがとうございます!

      スッキリの加藤は
      元々米澤さんがブレイクする前から
      彼の作品のファンだったらしく、
      確か文庫本の解説も書いてたんじゃなかったかな?

      あの傍若無人なキャラで
      読書家という
      ギャップに萌えますよね(笑)



      この小説は本当に切なさいっぱいだけど、
      自分たちが暮らす
      日本という国が
      どれだけ恵まれていて
      今の生活が
      決して当たり前ではないということを気づかせてくれます。

      また機会があれば
      触れてみてくださいね(^_^)v


      2013/04/08
  • 君と一緒ならどこまでも生きていける気がした。頭の中では何でも出来る気がした。何かを成し遂げられる気がした。でも現実はそんなものじゃなかった。何かって?何かってなに?何にも答えられない。残るは思い通りにはならなかったほろ苦さ。そして自分の無知さに恥ずかしくなる。高校生の守屋くんには世界は広すぎて。少し触れた世界は彼に手をさしのべることはなかった。
    日常の謎解きミステリなんだけど、それだけでは
    終わらせない読後感。

  • 紛争地帯を扱った小説はあまたあるが、ほとんどは紛争地に侵入してスパイ活動やテロをする冒険物が多い中、こんなに身につまされて切ない小説には初めて出会った。世界は歪んでいる。今の幸せに浸り切っていいのか?でも、日々の生活に流されていく日本に住む私達。
    歴史好きな観点からもユーゴの分裂の背景を知れて勉強になった。印象深い良い本だった。

  • 主観的に感じる物語の切実さ。
    客観的に分析できるミステリとしての完成度。

    主客どちらの観点でも評価できる小説はなかなかないなと思ってたので、本作に出会えて良かったです。

    自分は何者にもなれない、なれると揺れ動く心の葛藤も思い出させてくれました。

  • 初めての作家さん。

    ギャップのある作品。
    日本という日常を基軸に描いているのだけど、そこにマーヤという異邦人が訪れ、やがてユーゴスラヴィアという非日常を「思う」展開になっていく。

    マーヤが何者であるか分からないまま帰ってゆくところからが、ミステリー要素の楽しみどころ。
    あ、そこまでに幾つかちょいミステリーはあるんだけど、私的にはよく分からなかったのでスルー(笑)
    高校生らしからぬ語り口の主人公と、主人公を凌駕するしっかりさんマーヤのバランスが不思議。

    ともあれ、読み始めた空気感と、読み終えた空気感のあまりの濃さの違いが魅力だろう。
    社会小説というよりは、青春小説として読んだ方がいい。

    読後ほう、と息をついた。面白かった。

  • ユーゴスラヴィアについて、国名以外に何も知らなかったことに気付かされた。スラブの民族自決の話がでてきて、そういえばミュシャのスラブ叙事詩の中の一枚のタイトルが民族自決だったと思い出したくらい。日常の謎のスタイルを取っているのだが、ユーゴスラヴィアの歴史の壮絶さの印象が強くて、圧倒されてしまった。

  • 「さよなら妖精」
     短編集「真実の10メートル手前」では主人公だった太刀洗万智。ジャーナリストとしての執念や狡猾さと同時に、清廉な矜持を併せ持つ魅力的なキャラクターだ。そしてとにかく頭が切れる。「真実の10メートル手前」で出会った彼女に惹かれ、本書を手に取った。
     「さよなら妖精」は太刀洗が高校生の時の物語。太刀洗は主要キャラクターではあるが、主人公ではない。本書は、ユーゴスラヴィヤからやってきたマーヤという少女との出会いから別れまでを、主人公・守屋の語りをベースに綴られている。
     読み進めていくと、まず守屋の語りの冗長さに飽きそうになる。日々を受け身で過ごし、恵まれた環境に疑問も反骨心も持たない守屋は、思春期らしくどうでもいいことにだらだらと思慮をめぐらせる。日本の文化や言語に不慣れなマーヤからの唐突な問いに、あれやこれやと考え込んでから答える。場合によっては、自分がマーヤに答えるべきかどうかすら考え込む。そしてようやっと発言する。ある意味、とても丁寧に生きているとも言えるだろう。1990年代の高校生は、こんなに丁寧に生きていたのだろうか。
     守屋のこのだらだらした思春期らしい思考と語りだけならば、本書を最後まで読めなかっただろう。そこにマーヤの唐突な日本文化への問いかけや、同級生の太刀洗、白河、文原とのやり取りが加わり、些細な日常の一コマがちょっとした謎解きゲームのように感じられるようになる。
     物語の後半からは、ユーゴスラヴィヤという国に育ったマーヤが背負っている事情が、徐々に明らかになっていく。遠く離れた国で起きている凄惨な出来事。けれど、その国からやってきたマーヤは今目の前にいる。何かしたいけれど何もできない無力さ。何かしようとすることすらできない無力さ。それらを経験し、与えられた日常をただ享受して過ごしていた守屋が、主体的な個人として成長していく。
     個人的に、青春物語はあまり好まない。そもそも米澤穂信作品を読むようになったのは、「儚い羊たちの祝宴」や「追想五断章」のようなダークミステリがきっかけだ。最後まで読み切れるかなぁと心配しながら、本書を読み始めた。しかし、守屋の語りの冗長さにさえ慣れてしまえば、青春謎解きグラフティとして楽しむことができる。

  • 青春ミステリ、と言えば良いかな。1990年代初頭、ユーゴスラビアから日本に来た女の子マーヤと、日本の高校生達が親交を深めながら、日常の小さな謎解きに取り組む。
    小気味良い文体や言葉遊びが読んでいて心地良い。主人公達の高校生らしい葛藤も良い。中高校生の時に読んでおけば良かった。

  • 太刀洗万智のデビュー作ですが、主人公は、その恋人?の守屋という人物です。その守屋と太刀洗と友人男女2名の計4人が高校3年生時代に経験した同年代のユーゴスラビア人女性との2ヶ月間の交流を経て、それぞれが人間として成長していく過程と、ユーゴスラビア人女性の人間としてのたくましさと哀しい自国の運命と立ち向かう姿というのが切なかったです。
    そんな中、太刀洗の冷静沈着な考え方や守屋の洞察力というのは良く描かれていました!

  • 大刀洗シリーズ第1段というところでしょうか。逆に新しいものから読み進めてしまいましたが。
    ミステリの要素が入りつつも、切ない青春小説でした。

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著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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