犬はどこだ (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.72
  • (257)
  • (670)
  • (541)
  • (64)
  • (8)
本棚登録 : 4567
感想 : 462
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451042

作品紹介・あらすじ

開業にあたり調査事務所"紺屋S&R"が想定した業務内容は、ただ一種類。犬だ。犬捜しをするのだ。-それなのに舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、このふたつはなぜか微妙にクロスして…いったいこの事件の全体像とは?犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵、最初の事件。新世代ミステリの旗手が新境地に挑み喝采を浴びた私立探偵小説の傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『氷菓』に始まる古典部シリーズは大好きなのだけれど
    『儚い羊たちの祝宴』や『ボトルネック』などの作品では、滲み出る毒にあてられ
    何日も悪夢を見る破目になった、米澤穂信さん。
    今回は果たしてどっち?と読み始め、どうやら大丈夫そう♪ とほっとしたのですが。。。

    お好み焼き屋をやりたかったけど、ちょっと支障があったので
    犬捜し専門の調査事務所を開いた、やる気のない私立探偵、紺屋。
    トレンチコートとドライマティーニ、リボルバーという三点セットに憧れて
    探偵見習いに立候補し、紺屋S&Rに転がり込むお調子者のハンペー。

    ふたりの掛け合いもゆるゆると楽しく、犬捜し専門のはずが別件ばかり持ち込まれ
    紺屋担当の失踪人捜しと、ハンペー担当の古文書解読が
    いつしか絡み合って、絶妙な展開を見せるのですが。

    宮部みゆきさんの名作『火車』では、失踪した女性が許しがたい大罪を犯していても
    あまりに痛ましくて、なんだか感情移入せずにいられなかったのに、
    この物語の失踪人の桐子には、気の毒といえば気の毒なのに
    あんまり共感できないのはなぜ?と思っていたら、こう来るか!
    米澤さんらしい猛毒が、底にしっかり溜まっていました。
    これだから、油断ならない米澤穂信!(涙目だけど、誉めているのです、一応。)

    やる気なさげなわりにお茶目な一面も見せる紺屋や
    チャラチャラしてるのに、仕事はきっちり仕上げるハンペー、
    ネットを通じて紺屋に的確なアドバイスをくれるGENなど
    魅力的なキャラクターが揃っているので、
    今度はぜひ救いのある事件で再会したいところです。

    とりあえず、紺屋さん!
    成功報酬で可及的速やかに、強そうな番犬を買ってくるのよ!
    。。。と、言わずにいられません。

    • 円軌道の外さん

      まろんさん、こんばんは!
      いつもあったかいコメント
      ありがとうございます(^O^)

      スッキリの加藤浩次が絶賛していたのを聞いて...

      まろんさん、こんばんは!
      いつもあったかいコメント
      ありがとうございます(^O^)

      スッキリの加藤浩次が絶賛していたのを聞いて(笑)
      コレずっと読んでみたくて
      『必ず近々読むリスト』に
      長年眠っていた作品です(^_^;)


      勝手なイメージでは
      米澤版『まほろ』かなって
      想像してたんやけど、
      まろんさんのレビュー読ませてもらった感じでは
      読後感は
      もっとほろ苦いようですね(笑)


      どちらにしても探偵ものは
      昔から大好物だし
      近々トライしてみるつもりです♪


      余談ですが
      宮部みゆきの『火車』は
      レビューは書いてないけど、
      マイベストミステリー小説の
      堂々の首位を
      長くキープしている思い出深い作品です(笑)
      (ちなみに2位は東野圭吾の『白夜行』)

      あと東野圭吾の『秘密』なんかも
      かなり衝撃を受けたなぁ(>_<)


      2013/04/22
    • まろんさん
      円軌道の外さん☆

      こちらこそ、いつも素敵なコメントをたくさん、ありがとうございます♪

      おお、スッキリでおすすめされていたとは知りませんで...
      円軌道の外さん☆

      こちらこそ、いつも素敵なコメントをたくさん、ありがとうございます♪

      おお、スッキリでおすすめされていたとは知りませんでした!
      そうそう、ちょっとまほろっぽい雰囲気ありますよ♪
      私としては、チャラチャラした外見にそぐわず
      仕事となるときっちり仕上げるハンペーがお気に入りなので
      終盤、彼の活躍シーンがなかったのが残念で残念で(笑)

      『火車』が、円軌道の外さんのミステリーベスト1だとは知りませんでした。
      痛ましい物語だけれど、のめり込んで読んでしまった名作です。
      『秘密』にも泣きました!同じ作品に感動していて、いつもながらとてもうれしいです(*'-')フフ♪
      2013/04/24
  • いやぁ~
    ひさびさの米澤作品だけど、
    読了後三日たった今も
    余韻を引きずるほど
    心に深く刻まれたなぁ~(^^)


    見事な伏線回収の妙と
    異なった2つの物語がリンクし合い
    やがて一つに繋がる快感、
    最終章であるChapter6からの怒涛の畳み込みに酔いしれ
    物語は驚愕の反転へ!

    そして、やるせなさが残る
    なんともほろ苦いラストに撃沈…( >_<)


    後味爽やかとはいかなかったけど

    これぞ小説とも言うべき読み応えと
    追い詰められた人間の怖さや狂気を描いた文句ナシの傑作だと思います。
    (あまりにも衝撃的で後引く結末ゆえに読む人は選ぶだろうけど…)

    タイトルから
    犬の話を期待したアナタ、
    実はそこんとこはメインではないのです(笑)
    (しかしタイトルはラストの一言からちゃんと繋がってきます)


    紺屋S&R(こうやサーチアンドレスキュー)は
    四階建ての古い雑居ビルに
    いましがた開業したばかりの
    犬捜し専門の探偵事務所。

    所長はのっそりと背か高く
    訳あって半年も部屋にこもっていた
    25歳の私(紺屋長一郎)。

    しかし初仕事は犬ではなく
    失踪した24歳の孫娘、桐子(とうこ)を捜して欲しいという老人から依頼。

    ほどなくして別件で
    古文書の解読の依頼も舞い込み
    長一郎は押しかけ助手である
    高校時代の後輩、
    ハンペー(半田平吉)と共に
    手分けして調査を進めるが…。


    反権力の象徴である
    イメージとしての探偵に憧れを持つタフさが売りのハンペーと
    何のこだわりも持たず病み上がりの新米探偵の長一郎との
    温度差のある会話がいい味出していて
    ニンマリできます(笑)

    そして、長一郎は『私』、
    ハンペーは『俺』と、
    それぞれの章を
    私と俺で交互に一人称で語る構成のおかげで
    失踪事件と古文書の解読という二つの物語は
    読者はかなり早い段階から
    密接してリンクしていることが分かるのだけど、
    二人は別々に捜査していて
    そのことにまったく気づいていないので(笑)
    ヤキモキ感を抱かせながら
    読ませる構成が上手いし、
    コレが読者を惹きつけるいい効果を生んでます。


    新米探偵を助けるキャラたちも秀逸で、
    傷ついて東京から出戻ってきた長一郎のために
    次から次へと依頼人を見つけてきてくれる(笑)
    おせっかいな友達の大南や、
    体は小さいが態度はデカい(笑)
    喫茶店を経営する主人公の妹の河村梓(かわむら・あずさ)や
    主人公長一郎のパソコンでのチャット仲間で謎の人物のGENなど
    シリーズ化を考えてか
    かなりキャラ設定にも力入ってます(笑)

    けれどなんと言っても
    長一郎の剣道部時代の後輩で
    愛車ドゥカティM400を乗りこなす
    ハンペーのキャラが颯爽として
    いいのですよ(笑)

    いまいちやる気のない長一郎と違い、
    お調子者の見た目とは裏腹に
    行動派で頭もキレる彼の活躍のおかげで
    物語にいいリズムが生まれ
    いかにもな(笑)ハードボイルドな触感を味わうことができます。


    米澤作品と言えば、受動的な生き方をしてきた主人公が
    事件を通じて変容を余儀なくされるパターンが王道だけど、
    この作品も社会からドロップアウトした長一郎の再生が一つのテーマ。

    そして、一人の女性の失踪の謎を探るうちに
    女性の生き様や苦悩が浮き彫りになり
    物語にはなかなか登場しない
    『彼女』の姿が
    読む者にありありと浮かび上がる構成は
    あの宮部みゆきの傑作『火車』を彷彿とさせて
    なんとも切ないし、

    物語の真相に近づくにつれて
    せっかく築き上げたモノを手放して逃げ続けるしかなかった桐子にシンパシーを感じ
    自分と桐子は同類だと気付く長一郎のシーンから
    俄然物語に惹きつけられ
    衝撃の結末を迎えるのです。


    英語のタイトルになった
    『THE CITADEL OF THE WEAK (弱者の砦)』がまた深いし、
    この悲劇の物語を見事に言い表していて
    読後ジワジワ染みてきます…( >_<)


    シリーズ化を想定して書かれたとのことなので
    コレはまた今後追っかけていきたい作品!

    タイトルで敬遠してる人、
    先入観で見過ごすには
    勿体ない作品ですよ~(笑)

    • 円軌道の外さん

      あははは(笑)
      kwosaさん、連コメありがとー(笑)(^o^)

      都筑道夫さんの『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』
      むちゃくちゃ面白...

      あははは(笑)
      kwosaさん、連コメありがとー(笑)(^o^)

      都筑道夫さんの『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』
      むちゃくちゃ面白そうやないですか~っ!

      タイトルからしてそそるし、
      カウボーイビバップや寺沢武一のスペースオペラの世界観のミステリってだけで
      もう無条件に涎タラタラやし!(笑)

      絶対手に入れて読みます!

      その旧版の大友克洋のイラストバージョンは
      まだ手に入るんですかね?

      つかそれ、kwosaさんのレビューも
      読んでみたいなぁ~(笑)

      2014/11/01
    • kwosaさん
      円軌道の外さん

      またまたお邪魔します。

      米澤穂信『満願』は凄いですよ。
      『追憶五断章』あたりから「あれ、なんか雰囲気というか筆...
      円軌道の外さん

      またまたお邪魔します。

      米澤穂信『満願』は凄いですよ。
      『追憶五断章』あたりから「あれ、なんか雰囲気というか筆致がかわってきたな」と思っていたんです。
      もちろん学園物や他の作品でいろいろ書き分けているんでしょうが、成熟してきたというか大人の作家になってきたというか(プロにこういうこというのは失礼ですよね)。

      『夜よ鼠たちのために』を読んでくださった円軌道の外さんが、いまのタイミングで『満願』読むと、さらに面白いと思いますよ。
      表題作をはじめ短編すべて素晴らしい出来でしたが、僕は特に『夜警』という交番勤務の警察官を描いた話が好きでした。
      2014/11/13
    • kwosaさん
      そして連城三紀彦がお気に召したのであれば、次は『夜よ鼠たちのために』と双璧をなす短篇集『戻り川心中』をおすすめします。
      『夜よ〜』の現代劇...
      そして連城三紀彦がお気に召したのであれば、次は『夜よ鼠たちのために』と双璧をなす短篇集『戻り川心中』をおすすめします。
      『夜よ〜』の現代劇とは違い、明治大正昭和初期あたりのやや時代がかった趣きの作品が集まっています。
      花にまつわるエピソードが多く、ファンの間では「花葬シリーズ」呼ばれているようです。
      やっぱり全作品が収録されたハルキ文庫版がベストですが、現在入手しやすいのは五篇(六篇?)収録の光文社文庫版。
      でも未収録の「菊の塵」も捨て難いので、同文庫の『夕萩心中』もいずれは是非。
      「伊豆の踊り子」のような文芸作品に超絶技巧が加わったといえば伝わるでしょうか。
      とにかく贅沢な短篇集。

      都筑道夫『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』
      大友克洋表紙の講談社文庫版はAmazonでいまなら1円からあったと思います。
      送料込みで300円いかないのはお買い得。
      書影はないですが奇想天外社というところからでていた単行本は、同じ大友表紙で裏表紙まで繋がって絵が描かれていたはずです。
      それも、いまなら送料込みで500円くらいで買えたと思います。
      表紙にこだわらなければ東京創元社から新刊が出ているから書店で買えるし、絶対に読んでほしい!!
      僕は読了後、絶句&放心状態という幸せな読書体験でした。
      2014/11/13
  • 不穏な空気を残しながら最初の事件は幕を下ろします。紺屋部長、後戻り出来ない世界へ足を踏み入れちゃったんじゃないでしょうか。勤めていた会社を辞め腑抜けになっていた彼を調査を進めていく上で出会った人物たちが生き返らせていきます。自分がこうしたいから行動するのだと探偵は山道を進みます。その先にあるものは、ある意味彼がこの世界から抜け出ることを許さない枷となったんじゃないでしょうか。得てして他人の業を背負ってしまう探偵物語ってやっぱりハードボイルドなんだと思うんです。

  •  「黒牢城」に続き、ついこの間「可燃物」を読み、「犬はどこだ」にも期待しながら読んだのですが、私にとってはあまり物語にのめりこめませんでした。
     探偵モノは嫌いではないですが、展開が都合良すぎた?のと、結末もしっくりこなかったように感じました。
     この本がどうやら今年の読み納めになりそうです。読書グラフを見たら2023年はちょうど70冊でした。2022年が34冊だったので、今年は頑張った方かな?これも作家さんとブクログスタッフのおかげです。ありがとうございました。
     皆様、良いお年を!

  • 今時、探偵事務所もの?うーん、こりゃつまらんかもと思ったが、古文書の解読という紹介文の言葉につい惹かれて、図書館で借りてみた。この作者の「折れた竜骨」はとてもよかったが、「満願」にはいまいち感があった。さてこれは?面白かった、ぐいぐい惹かれて読んでしまった。失踪者に一体どんな謎があるのかと探っていく過程がよかった。古文書の存在と失踪者の結びつきは、ちょっとわざらしさがあるかなと思ったが、なるほど最後のどんでん返しにこうつながるわけねと納得した。

  • 犬捜し専門の探偵事務所「紺屋サーチ&レスキュー」を開所した主人公、紺屋長一郎。しかし舞い込んだ依頼は、失踪人捜しと古文書の解読。行きがかり上、雇うことになったハンペーと調査を進めるうちにこの2つの案件が徐々にリンクしていく、というストーリー。
    終わり方も個人的に好みですし、紺屋とハンペーのコンビも良かったので、シリーズ化されたら続編も是非読んでみたいと思える一冊でした。

  • 歴史を中心に現代の20代が動いていくところが個人的に新鮮でした。過去の人々の考え方に影響を受ける様子に共感できる部分も。
    最後は突然終わったような印象でした。こんなに用意周到で行動力のある人に「リスク」だと思われるのは結構こわいけれど、主人公はどうなってしまうのか...。

  • 最初は主人公の変化メインの話なのかなと思ったけど、読んでると想像よりミステリ感が強くて最後はちゃんとミステリーの読後感だった。
    意外と重い面もあって、犯罪の緊迫感もあって、ちょっとブラックなところもあって、面白かった。
    はんぺーの抜けた感じが面白かったし、全体的に軽い雰囲気だったからこそ最後で少しびっくりしたかも。紺屋の折木感がよくて、やっぱり心の声が好き。
    米澤さんはやっぱりミステリの中でも人間を描くのが上手いと思うから登場人物を好きになったし続編を読みたい。

  • 正確に書くと星3.6。
    私は米澤さんの文章が好きなので+0.1。
    話の内容で言えば、二つの事件(依頼)がところどころ混じり合ってるかと思えば実は重要だったりして、そこが魅力だったかなと思う。
    ただ、最後の重要な部分とかが種明かしの前に分かっちゃったりして、残念だな。
    でもChapter6の最後とか、Chapter7の最後とか新鮮で面白かった。米澤さんらしい。

    私は、ずっとミステリーの種を分からない読者だったので、ミステリーを読むと大体トリックなどで驚かされて、それを面白がって好んでいた。
    ただ、ここ数年でミステリーをかなり読んだことにより、だんだんと種が分かってきてしまった。同じ作者さんの話なら特に。
    もちろん全てではないが、これだとミステリーを面白がれなくなってしまう。それは嫌だ。
    種が分かっていてもきっと他の楽しみ方があると信じてこれからはそれも探していこうと思う。

  • 米澤さんの比較的初期作品でしたが、遅ればせながら読了。短編も多く書かれてますが、個人的にはこう言った長編物の方が好きだな。

    無関係に見える二つの探偵依頼が、本当に少しづつ繋がってくる感じがソワソワ、ワクワク。なかなか進まないあたりにモヤモヤ。
    途中色々推理しながら読んでましたが、だーいぶ違いました。。。(入れ替わりとか、人物誤認系かなーと)
    最後のクライマックスは色々心配でドキドキでした。

    シリーズものの予定なのに、まだ一作品なんですね。続きに期待。

全462件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

米澤穂信の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
米澤 穂信
米澤 穂信
有川 浩
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×