真実の10メートル手前 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 1986
感想 : 161
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451097

作品紹介・あらすじ

高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。

感想・レビュー・書評

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  • 「さよなら妖精」の太刀洗万智が社会人になって事件を取材するミステリー。ミステリーと通りいっぺんのカテゴリーで括ったが、登場人物が謎解きのためのピースとして扱われる多くのパッとしない作品とは違い、悩み苦しむ生きている人間たちが登場する。その取材対象を万智がどう向かい合っていくのかがこの本の本質と感じた。

  • 太刀洗万智シリーズの短編集。
    報道が巡る6つの物語が展開されるが、人間の持つ闇や嫌なところが存分に出てくる所がとても面白かったです。
    その中でも一番面白かったのは「名を刻む死」で嫌われ者の被害者のことを見捨ててしまった少年を太刀洗万智が一喝する場面である。普通であれば、人の尊厳を否定する言葉が京介自身の罪悪感を少しでも軽くするものになる所がストーリーとしてとても上手いと思いました。
    また表題作である「真実の10メートル手前」も、最後の結末が追っている人物が亡くなっているため、自分たちの追っていることがその手前で分からなくなってしまうという意味でタイトルを再び読んでゾッとしました。
    他にも面白い話が入っていますので読んでみてください。

    この作品をアニメ化した際の声優陣を自分なりのキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください(敬称略)。
    太刀洗万智:茅野愛衣
    藤沢吉成:前野智昭
    早坂真理:金元寿子
    早坂弓美:Lynn
    フェルナンド・バシリオ:山下大輝
    都留正毅:斉藤壮馬
    下滝誠人:チョー
    春橋真:梅原裕一郎
    檜原京介:榎木淳弥
    田上宇助:安元洋貴
    ヨヴァノヴィチ:三宅健太
    大庭:鈴村健一
    戸波夫:山路和弘
    戸波妻:井上喜久子

  • 女性ジャーナリストが自らの正義を貫く姿が目に焼き付く名作、太刀洗万智シリーズの短編集。

    主人公であるジャーナリストが様々な事件事故の取材の中、独自の直観力と推理力で真相を見抜いていく。報道の意義や効果が何たるかを考えさせる傑作です。

    全6編からなる短編集ですが、どれも読みごたえのある秀作。自分はタイトル名と同じく真実の10メートル手前が一番好きでした。少しずつ事実が垣間見えてくるとともに、ラスト10メートルの恐怖がリアルに伝わってきます。

    ただ「王とサーカス」と比較してしまうと、テーマの1つであるジャーナリズムに対する主張というかイズム的なものがどうしても軽く感じられてしまいました。
    また主人公のキャラクターは強烈ですが、他のキャラクターが今一つ生きていません。思想や経験に対するぶつかり合いなどをいれると、もっと血の通った深みのある物語になるかと思いました。

    それでもいつもの米澤穂信作品のとおり、ミステリーとしては安心して読められる傑作でした!本シリーズの長編を期待します。

  • なんか読んだ気がする物語があったけど、初読なはず。
    そんな思いを抱えながら読了。
    大刀洗万智シリーズの短編集。

    ・真実の10メートル手前:詐欺ビジネス(本当は違うんだけど)と叩かれた若い女性経営者の行方を追う話し。
    ・正義感:電車の人身事故、実は事件で犯人をあぶりだす。
    ・恋塁心中:高校生の心中事件の裏にあるもの。
    ・名を刻む死:無職で死ぬのは嫌だという老人の死。
    ・ナイフを失われた思い出の中で:殺人事件と図書館の火事
    ・綱渡りの成功例:氾濫して残された老夫婦の救出と亡くなった隣家

    正直あまりワクワク出来なかった。
    でもこういう物語ほど後々まで心に残る気がする。
    思ったのは:
    ・苦しくても生きてナンボ
    ・思い込みが強いと余計な苦労するよ
    ・くよくよすんなよドンマイ

    そんな感じ。
    米澤穂信の割にイマイチ感が有ったかなあ。

    Amazonより********
    高校生の心中事件。
    二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。
    週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの大刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。
    大刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、大刀洗万智の活動記録。
    「綱渡りの成功例」など粒揃いの六編、第155回直木賞候補作。

  • 「真実の10メートル手前」☆☆☆☆
    情報を人に伝えるとき、スクープと分かった時点で世に出すべきなのか、精査するべきなのか。
    立ち止まることのできる能力を持たなければならないが、立ち止まることが正解とも限らない。
    ジャーナリストに限らず、何かを人に伝えることがあるすべての人は自分に問い続けなければならない。

    「正義漢」☆☆
    「恋累心中」☆☆☆
    「名を刻む死」☆☆
    やっぱり人が死ぬだけの読み味が悪いだけの作品は好きじゃないなあ。

    「ナイフを失われた思い出の中に」☆☆☆
    『さよなら妖精』に登場したマーヤの姉がジャーナリストとなった大刀洗万智を訪問し、「あなたはどのようにして、ご自分の仕事を正当とされるのですか?」と尋ねる。
    『さよなら妖精』と関連性が強い作品だし、評判も悪くないので期待していたのだが、著者が他の作品でもたまに見せる回りくどさが強く出ていて好きになれなかった。
    たとえ恥ずかしさみたいなものがあっても、大切な友人の姉にくらい真摯に向き合ってはっきりと自分の考えを伝えた方がいいのではないか。
    あと、被害者が死の間際に複雑なダイイングメッセージを残すとか、犯人がわざわざ自分に不利なヒントを残すとか、逃亡しながらクイズを作るとか、そういうのが嫌い。

    「綱渡りの成功例」☆☆
    仕方なかった、で済むと思うけどな。緊急避難もあるし。
    あと私は牛乳アレルギーなのでコーンフレークには何もかけずに食べます。

  • 太刀洗万智の性格、生き様が短編集の中から滲み出てくる1作。

  • '21年4月28日、読了。

    見事な短編集、でした。記者、大刀洗の、記者としての矜持、覚悟、優しさ等…読んでいて苦しいほど、でした。

    以下、ちょいネタバレかも…未読の方、ご注意ください。

    みな良かったけど…最後に収録の「綱渡りの成功例」が、一番好きです。災害にあった老夫婦の、重たい「憑物」を、たった一つの問で剥がしてみせる大刀洗さん、そしてその後の判断の、なんという優しさ…。自らは針の筵に座り、血を流しながらも、重たい何かを背負っていく、その覚悟。感動しました!

    この作家さんの小説は、ハズレが無い。特にこの「大刀洗シリーズ」は、3冊みな素晴らしかったです。もっと、読みたいな、と思いました。

  • さよなら妖精で太刀洗真知の高校生の頃を知っているからこそ、また太刀洗さんの人となりがわかり読み応えがある。責任を背負いながら真相を追究していく太刀洗さんと、なんともやり切れない事件ばかり。
    さよなら妖精の最後では、守屋と縁が切れていてもおかしくないと思っていたけど思わぬ登場はやはり嬉しいもの。

  • 短編だと、米澤作品の味が分かりやすい。薄暗い雰囲気、直感と観察とロジカルな推理、伏線の回収、苦い読後感、、やっぱり米澤作品は好きです。久しぶりに睡眠時間を削って読んだ。太刀洗本人視点の話から始まり、他者の視点で描く短編が続く構成が良かった。ただの優秀な人というだけでなく、彼女の人間味が伝わってきた。「王とサーカス」も楽しみ。「さよなら妖精」も読み返したい。

  • ミステリとしての技巧だけでは終わらない。事件の真相を追う探偵の、矜持や正義心も同時に描かれ、そして考えさせられる作品です。

    『さよなら妖精』に登場した女子高生の太刀洗万智。同作では、主人公のクラスメートとして印象的な姿を見せた彼女が大人になり、新聞記者、その後フリーのライターとして巡り合った六つの事件を描いた短編集が、この『真実の10メートル手前』

    ミステリとしての完成度の高さには、どの短編もうならされる。例えば表題作「真実の10メートル手前」は、行方をくらました女性を追う話ですが、一本の電話から女性の行く先や、通話時の状況を絞り込んでいく思考の過程は見事の一言に尽きます。

    「名を刻む死」での一枚のアンケートはがきから、孤独死した老人の死の真相を看過する推理も素晴らしい。二年連続で「このミス」をはじめとした年間ミステリランキング三冠に輝いた実力が、こうした短編でも十二分に発揮されていると感じます。

    そうした推理もさることながら、人間の心理をえぐりつつ、どこか冷ややかな雰囲気が作品全体に漂っていて、それも印象的。

    「真実の10メートル手前」のどこか無情感の残る結末。「名を刻む死」で、太刀洗万智と行動する少年の心理。
    「恋累心中」では、高校生の心中事件を調べる彼女と、週刊誌記者の様子が描かれますが、こちらもミステリとしての展開や、二つの事件の絡ませ方など、とにかく素晴らしい。そしてとある真相が分かった時の、なんとも言いようもない、苦い感情がなおのこと忘れがたい印象を残します。あまりにも利己的な動機と、それに利用され裏切られた人の感情と最期を、自然と思ってしまう。

    そして、物語は節々で記者である太刀洗の覚悟をつく問いが投げかけられます。なぜ他人の悲劇を探り、そして大衆にさらすのか。それに何か意味があるのか。報道という使命があり、事件に心を悼めていても、一方で記者の性としてどこかで事件を喜んでいるところはないか。

    「真実の10メートル手前」「正義感」などで他人から、そして自分自身からも問いかけられる命題。作品集の後半に収録されている「うしなわれたナイフの中で」「綱渡りの成功例」で、その命題は彼女のより身近な人物たちから再び問いかけられます。

    「うしなわれたナイフの中で」は姪を殺した17歳の少年の手記。「綱渡りの成功例」では、台風の浸水被害から救われた老夫婦。それぞれの隠された真相を解き明かし、それによって彼女の人間としての惑いと、記者としての使命と矜持。そして彼女の正義が見えてくる。

    読んでいて思うのは、消えそうな、か細い小さな声も掬い取ろうとする太刀洗の姿勢。それは単に優しさだけでなく、そうした声も聞いて届けなければならない、という彼女の矜持や正義心もあるように思います。そしてそこには『さよなら妖精』での経験もあるのかもしれない、と少し想像してしまう。

    ミステリとしての完成度はもちろんのこと、事件と人に対し惑いを抱えながらも、それでも自身の矜持と正義を信じ、真実に向き合う太刀洗。そんな彼女の姿は、ネットやSNSの発達で安易に聞いた気分に、そして知った気分になる自分には、傷ついていながらも、それでも気高くて凛々しくて、そして何よりも強く思えました。

    2017年版このミステリーがすごい! 3位

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞、14年『満願』で山本周五郎賞を受賞。『満願』は同年の年間ミステリランキングで三冠をとるなど、話題を呼んだ。近著に『王とサーカス』『真実の10メートル手前』『いまさら翼といわれても』『Iの悲劇』『本と鍵の季節』『巴里マカロンの謎』などがある。

「2021年 『黒牢城』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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