王とサーカス (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.90
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本棚登録 : 1690
レビュー : 154
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451103

作品紹介・あらすじ

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、編集者から海外旅行特集の協力を頼まれ、事前調査のためネパールに向かう。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を送ろうとしていた太刀洗だったが、王宮では国王をはじめとする王族殺害事件が勃発。太刀洗は早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。『さよなら妖精』の出来事から十年のときを経て、太刀洗万智は異邦でふたたび大事件に遭遇する。

感想・レビュー・書評

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  • こういう本に出会えるから読書は止められない。シリーズ長編にして、ジャーナリスト・太刀洗万智の原点となる物語。2001年のネパール王族殺害事件を題材に、遠き異国の地にて問われるのは、報道の矜持。ミステリーやサスペンスに分類される本書だが、太刀洗万智の立ち振る舞いはハードボイルドを強く匂わせる。ネパールの空気を肌で感じられるかの様な描写力も圧巻。人は物事の【己にとって都合の良い側面】しか見ようとしないが、現世の森羅万象は全て表裏一体。だからこそ、世の理は複雑で残酷。私たちは否が応にもそういう世界を生きている。

  • 2020/01/22読了
    #このミス作品3冊目

    ミステリーエンタメというよりは
    メッセージ性の強い作品でした。
    少し重めですが考えさせられます。

  • 単行本を持っていながら、文庫化された時に嬉しく感じてすぐ購入した、自分にとってはかけがえのない作品だ。

    ラストシーンを知っていながらも、再読してサガルの叫びに涙が滲む。

    「じゃあ、あいつらもそうだったっていうのか? ろくな仕事もない街に俺たちを放り出して、そのろくでもない仕事さえ取り上げた連中も、あんたと同じように自分の頭で考え、まともに調べて書いたっていうのかよ。その結果が俺たちなのか?」

    報道の結果、世界中からお金が集まり、ネパールの子ども達の生存率が上がり、仕事のない子ども達が街から溢れることになっても。
    絨毯工場の仕事の過酷さが伝えられ、世界中から批判を受けた結果、その工場が閉鎖に追い込まれることで、働き手が亡くなることになっても。

    私たちは、私たちの善意を掲げられるだろうか。
    私たちの見ている世界は、断面的で主観的でしかなかったことを、「誰が」責めるんだろうか。

    ラジェスワルの言う「伝える者の独善」に対して、万智は、世界に真実を伝えることの崇高さをポリシーとしていた自分を振り返る。
    結局のところ、その崇高さの内実とは自分が食べていくために、自分が見た小さな世界をサーカスに仕立てあげて、上演しているだけに過ぎないのではないか。

    そうでないなら、なぜ、ネパールとは関係のない日本に、真実をもたらさなければならないのか。

    万智は悩みながらも、それでも己の知りたい、と思う気持ちをエゴイズムと置き、その上で肯定する。
    私はここで、万智を好きになった。
    そして、自分の報道が、何かあるものの完成の一片になるため、その責を負い続ける姿に打たれた。

    砂埃の舞う騒がしい街から始まって、人の持つ心の深淵や、傷痕のような夜闇をどんどんと見せられていく。
    くるくると変わる人物像は、たまらなく面白い。
    そして、筋書きを追いながらも、考えさせられ続ける、そのしんどさは再読しても変わらなくて、ああ、この作品がずっと読まれ続けて欲しいなと思った。

  • 新聞記者をやめフリーライターになった太刀洗万智は、事前取材のためにネパールのカトマンズにやって来る。トーキョーロッジ(この名前は後で意味を持ってくる)という宿で、アメリカ人のローバート・フォックスウェル、インド人のシュクマル、僧侶姿の日本人の八津田、宿の女主人のチャメリ、観光客相手の物売りの少年サガルと交流をしていくのだが、この辺りの描写がごく自然な感じでとても上手い。このまま事件が起こらなくて旅行記となってしまっても、充分面白いのではないかと思わせる。読む楽しみが堪能できるのだ。
    しかし、王族一家殺害事件が起こり、大刀洗は取材をすることになって、大きく物語は動き始める。そして、情報を得ようと紹介された軍人のラジェスワルが殺され、大刀洗に嫌疑がかかる。これらの事件の中で、大刀洗はジャーナリズムの意義への疑問を突き付けられ、自らの生き方を問われることになる。大刀洗は、ラジェスワルの事件の謎を自ら解決することによって、最終的には自分なりの生き方の回答を見出すことができたのだ。
    最後のどんでん返しは、あっと驚くほどではないが、上手く主人公のジャーナリストとしての生き方と関わってくる。ミステリーという形が、いい具合に生かされている。この作者は上手い!

  • 短編集「真実の10メートル手前」がよかったので、こちらも購入。
    実際におきた事件を背景にしたサスペンスで、とても面白かったです。海外を舞台にしているので、苦手なカタカナの人達がいっぱい出るかなと躊躇していましたが、特に気にならずにスッと物語の世界に入り込めました。
    主人公のキャラクターも際立っていて、困難に立ち向かいながらも逃げずに奔走していく姿が良かったです。
    後味はスッキリ終わるというわけではありませんが、色んな意味で考えさせられたなという印象でした。
    映像化するなら、主人公は菜々緒さんかなと個人的に思いました。

  • たまたま王室の殺人事件で揺れるネパールに滞在していたフリーライター太刀洗万智。

    フリーライター初仕事としてこの事件のルポを書くことに…

    てっきりこの王室事件の謎を解くとかスケールの大きい内容だと思っていたので、そうではないということで若干戸惑いはあった。

    しかし、ジャーナリズムとは?を問いかけてくる骨太なストーリーで読みごたえもあって満足。
    たしかに、関係ないどこかの悲劇は最高の娯楽。それを提供する報道ってなんなのと。これは実際なんとなくそう思っていた節がある。他人の不幸で飯を食う、なんだこの仕事は?これは誰かのためになっているのかと。

    しかし旅行記ではなく、異国を舞台にした物語ってなんかいいよね。

  • 13

    長編小説は苦手だって思った矢先にこんな面白い小説に出会って覆った笑 一気読みしてしまった~

    王とサーカスっていうタイトルが秀逸
    報道とは、真実とは、に太刀洗が真っ向から挑む話
    考えることが大事だと思った

    印象的な言葉は

    自分に降りかかることのない惨劇はこの上ない刺激的な娯楽
    悲劇を消費している
    飽きられる前に次の悲劇を供給しなければならない

    裏が取れていない
    事実は事実だけど繋げるのは読者の想像
    読者はそう想像するだろうと考えて放棄してしまう
    山があることに気づけばあとは大抵うまくいく

    誇り高い言葉を口にしながら、手はいくらでもそれを裏切れる。ずっと手を汚してきた男が、譲れない一点で驚くほど清廉になる。
    どれも当たり前のことじゃないか。あんた、知らなかったのか。

    全部ハッとした。
    あーーー面白かった!!!

    2019.02.17

  • カトマンズで取材する太刀洗万智。記者の仕事の意義をどうとらえるのか。
    日常目にする記事は事実の全てを表現してはいない。記者が書かなかった事はその他大勢の人の目には触れなくなってしまう。情報の操作で人の心をある方向へ向けることができるかもしれないのか。
    書かれなかった事があると思いつつ読むしかないのかな。
    サガルの言葉を聞いて(読んで)思うのは、貧しい国と国民にとって急激な変化を起こす報道は敵か味方か?

  • タイトルがお話の根幹を表していて本当に深い。
    ただエンタメとして楽しむこともできるし、それだけで終わりにしないこともできる。読み終わってタイトルを見る度にそのことを思い出します。

  • 全く知らない土地なのに場面を想像出来るほどの情景描写だった記憶がある。数年前に読んだがラストの切なさは今でも忘れられない。
    また読む。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しデビュー。11年『折れた竜骨』で日本推理作家協会賞、14年『満願』で山本周五郎賞を受賞。『満願』は同年の年間ミステリランキングで三冠をとるなど、話題を呼んだ。近著に『王とサーカス』『真実の10メートル手前』『本と鍵の季節』などがある。

「2019年 『いまさら翼といわれても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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