オーブランの少女 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488453114

作品紹介・あらすじ

比類なく美しい庭園オーブランの女管理人が殺害された。犯人は狂気に冒された謎の老婆で、犯行動機もわからぬうちに、今度は管理人の妹が命を絶った。彼女の日記を手にした作家の「私」は、オーブランに秘められたおそろしい過去を知る……楽園崩壊に隠された驚愕の真相とは。第7回ミステリーズ!新人賞の佳作となった表題作の他、異なる場所、異なる時代を舞台に“少女”という謎を描き上げた瞠目のデビュー短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 外世界と遮断された美しい庭園とお揃いのワンピースの少女たち、ヴィクトリア朝時代のロンドンでの女たちの策略、客の少ない安食堂でのトマトのサラダ、昭和の女学生たちの憧れと片想い、凍てつく架空の北の皇国のダークファンタジー。
    まるで、タイムトリップしたかのように、舞台ががらりと変わる短編集でした。
    どれもこれも、ワクワクする舞台設定です。
    舞台は静かに美しく幕を開けていきます。でも、暫くして私は気づいてしまう。美しい物語に潜む花のような甘い毒の香りを。そして、自分がすでにその毒に侵され始めていることに。私の全身にまわった毒は、じわりじわりと効いてきて「深緑野分」を一生忘れられなくしてしまいました。

    中でも『オーブランの少女』は、その中毒性が半端なかったです。
    まず描かれる情景描写に心を奪われます。花々が咲き乱れる庭園の圧倒的な美しさ、少女たちの細い左手首に結ばれた色とりどりのリボン、小さな乳房、汗の玉が弾ける白い肌……まるで西洋絵画を眺めているかのようでした。この美しい景色が迫り来る狂気の世界の色に染まっていく、覚めない悪夢に眩暈が起こります。

    苦い話は甘く、甘い話は苦く……

    「深緑野分」の世界に足を踏み入れてしまったのは私。羽を切られた小鳥のように、もう彼女の毒を知らなかった昨日には戻ることは出来ないのです。

  • 「少女」を共通モチーフにした短編集。
    国も時代設定も様々な少女達。
    どの少女も時代の波に翻弄されても、時にしたたかに懸命に知恵を絞り、時代を駆け抜ける姿が清々しく好感が持てた。

    特にヨーロッパの史実にミステリーを組み込ませた表題作と、深緑さんには珍しい日本を舞台にした『片想い』、架空の北国を舞台にしたミステリアスなファンタジー作品『氷の皇国』が面白い。

    『解説』で「ミステリーを、話を進める起爆剤としてとらえている」とする一方で「謎解きよりも、自分のなかの喪失感をどうやって書くか、みたいなところを考えているかも」と語っておられる深緑さん。
    今後は更に、喪失感を深く掘り起こすヒューマンドラマが読んでみたい。
    深緑さんの短編は初めてだったけれど、どの短編も一捻りあってとても面白く夢中になった。
    すっきりとまとまりもいいし深緑さんはこれが3作品目だったけれど今作が一番好き。
    これからもこんな短編集や、長編のファンタジー作品も読んでみたい。

  • 美しき庭園に隠されたもうひとつの庭の物語、醜い姉と美貌の妹を巡るヴィクトリア朝ロンドンの犯罪譚、寂れた食堂の亭主を翻弄する過去の思い出…。
    異なる場所、異なる時代を舞台に描く、少女たちをモチーフとしたミステリ短編集。

    表題作の「オーブランの少女」に、まず驚かされました。
    最初に色とりどりの花が咲く美しい庭園が活写され、その後不穏な殺人劇が繰り広げられるのですが、その対比が鮮烈な印象を残してくれるのです。
    情景が目に浮かんでくるような物語世界の構築力・リーダビリティは新人離れしていて、瞠目しました。

    割と好きなのは「片想い」。
    これは日本の戦前の女学校が舞台になっていて、いわゆる「エス」が出てくるのでわたし好みでした~。
    制限の多い時代の女性の細やかな心の動きが活写されていて、頬がゆるみました。
    前向きなラストの読後感が良かったです。

    どの短編にも現れる、強靭さと脆さが危ういバランスで同居している、そんな季節を過ごしている「少女」たち。

    平気で残酷なことをする同じ心で、愛するものに惜しみない愛情を与えることのできる彼女たちは、いつか自身が変容し、大人になった時に初めて通り過ぎた季節を思い返すのでしょう。

    彼女たちの息づかいを間近で聞いているかのように、もどかしさや切なさが伝わってきて、素敵な緊張感を味わうことができました。

  • 初めて読む作家さん
    ミステリ短編ひさびさだが、ミステリの頭ではなくて、いつも小説を読む感じで読めた。おもしろかった、ちょうどよいボリューム感。各短編、色が思い浮かぶ感じで、きれい、話は怖いのもあるけれど。

  • 面白かったです。
    初めて読んだ野分さんのお話ですが、再読でも惹き付けられました。
    歴史ものや、日本の食堂での一夜、女学校、ファンタジーとバラエティー豊かなミステリでした。
    どれもその世界にすっと入っていけます。
    特に、「オーブランの少女」「氷の皇国」が好きでした。
    オーブランの美しく病弱な少女たちは実は…とその壮絶な崩壊。序盤で書かれた悪鬼の正体がわかると恐いです。
    氷の皇国は、ファンタジーでミステリな作品大好き…となりました。傲慢な皇女も、それを軽くあしらう皇后ヴェータも良いです。
    野分さんはこの短編集ですっかり虜になり、「戦場のコックたち」が文庫化されたのでいそいそと買いました。読むのが楽しみです。

  • 私にとっては初読みの作家さんになります。
    読んでいて、ものすごい才能に溢れた人だなぁって!
    シャーリー・ジャクスンのような「オーブランの少女」
    は最高(^^)
    これから注目したい作家さんにまた出会えて幸せ。

  • 日本人の作家が書いたことに驚き。
    作者名を明かされずに読んだら海外作家だと誤解してた。それくらい異国の雰囲気作りが巧い。

    どれも少しずつテイストが違って面白かったが表題作には衝撃を受けた。
    花々咲き乱れる美しい庭園、そこに秘められた忌まわしい過去、外界と遮断された病気や障害持ちの少女たち……。
    花の名前をお仕着せられ腕に色違いのリボンを結んだ少女たちが、祝福された庭園で戯れる情景が涙がでるほど美しい。
    情景描写が非常に秀逸で、豊饒な世界観にどっぷり浸れる。
    ミステリー小説というより、少女たちの残酷さやおそろしさ、儚さや愛らしさ、哀しみにフォーカスした幻想小説の趣。
    ごくほんのりとだが同性愛(に限りなく近い女性同士の友情)要素も含むので、その手の話が好きな人にもおすすめ。奇跡的なバランスで成立する箱庭のような子供時代を描いた、寄宿舎ものとしても出色。
    皆川博子の海外ものが好きならハマる。

    表題作は誰が被害者で加害者と、一面的に断罪できないのがなんともやりきれない。
    狂気に侵された人間も元は善人で、崇高な理想や目的、なにより最愛の人を守りたいが為に行動したのだと思うと、強すぎる責任感故の悲劇だったのかもしれない。

    生き残った少女たちの決断は非情に思えるが、それこそ少女性の秘めたる二面性、無垢な愛らしさと表裏一体の無邪気な残酷さを体現してぞわっとした。
    真相を知ったあとで読むと、滅んだ庭と犠牲者の復讐を代行する老後の彼女たちがやるせない……。

    ラストから数行目ではうるっときてしまった。
    そんな傑作短編。

  • ファンになってしまった……『氷の皇国』は手がかりの配置や事件後の途切れることのない緊張感、意外な人物の推理によるクライマックスの盛り上げなど1番好み。ケーキリア皇女がな、本当に良くてな……。

  •  5編の作品を収録した短編集。

    各短編に共通しているキーワードは”少女”

     元気な少女、儚げな少女、したたかな少女、と単に少女といっても、色々なイメージが浮かんでくるのですが、この短編に出てくる少女たちは、そうしたいずれのイメージのどれかには当てはまる、そんな気がします。

     表題作の「オーブランの少女」は儚げで美しい、しかし残酷な短編。

     老婦人の姉妹の殺人事件。その真相は二人の子ども時代にある、という話です。

     箱庭のような美しい土地”オーブラン”で共同生活を過ごす少女たち。安心、安全な生活を過ごしながらも、彼女たちを監督する先生たちの言動や、集められた少女たちの境遇など、その生活はどこか不穏で、危うげな雰囲気が漂っています。そうした美しさと危うさのバランスが絶妙!

     そして、その危うさの真実が明らかになる後半も、思わぬ展開でビックリ! ミステリですが、単にミステリの枠に当てはまらない不思議な短編でした。

     もう一つ印象的だった短編は、最後に収録されている「氷の皇国」

     舞台となるのは、皇帝の独裁によって支配される古代の王国。そこで皇太子殺害の疑いをかけられ、死刑に処せられようとする少女が主人公の短編です。

     それまでの短編が仕掛けや構成で魅せるタイプのミステリだったのですが、そこから一転してのロジックを使った本格ミステリが展開されます。

     舞台設定も珍しく、また主人公たちが死刑から救われるのか、というハラハラ感も加わり、非常に楽しかった短編です。

     各短編本当にバラエティー豊か! 少し先が読めるものもあったものの、手を変え品を変え、様々なタイプのミステリを仕掛けてくる、著者の深緑さんの筆力はかなりのものだと思います。

     そして、それぞれの短編に共通する一種の残酷さや、したたかさも物語に、いい刺激を加えてくれているように思います。

     デビュー二作目の『戦場のコックたち』でものすごく話題になった深緑さんのデビュー作だけあって、その実力の片鱗を感じさせられる短編集でした。

    第7回ミステリーズ!新人賞佳作「オーブランの少女」

  • 耽美系ミステリー短編集。共通テーマは「少女」だそうで。「大雨とトマト」以外は、どれも血は繋がっていないけど姉妹のように仲の良い少女二人が登場します。

    作者のデビュー作になる表題の「オーブランの少女」がやはり面白かった。真犯人の狂気の理由が説明されないのはちょっと気になったけど、凄惨で謎めいた殺人事件の裏に隠された過去、美しい庭に閉じ込められている病弱な少女たちのイメージは美しかった。

    「仮面」の召使の少女といい、「氷の皇国」の皇女さまといい、一種の悪役がとても魅力的に描かれているのがいいですね。まあどちらも、無実の罪を着せられた人たちは気の毒ですが。

    「片思い」は唯一、日本の昭和初期の女子寮の百合っぽい話なのだけど、美少女ではない「岩様」がすごく良い子で癒されました。

    ※収録作品
    「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片思い」「氷の皇国」

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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり のわき)
1983年、神奈川県生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。パート書店員を経て、専業作家に。2010年、短編「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞の佳作に入選、作家デビュー。同作は2013年に単行本で刊行。2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、第18回大藪春彦賞候補、第13回本屋大賞候補に。2017年、第66回神奈川文化賞未来賞(奨励賞)を受賞した。2018年、『ベルリンは晴れているか』で第160回直木賞ノミネート。

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