戦場のコックたち (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 1174
感想 : 103
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488453121

作品紹介・あらすじ

1944年6月6日、ノルマンディーが僕らの初陣だった。コックでも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ――料理人だった祖母の影響でコック兵となったティム。冷静沈着なリーダーのエド、陽気で気の置けないディエゴ、口の悪い衛生兵スパークなど、個性豊かな仲間たちとともに、過酷な戦場の片隅に小さな「謎」をみつけることを心の慰めとしていたが……『ベルリンは晴れているか』で話題の気鋭による初長編が待望の文庫化。直木賞・本屋大賞候補作。

*第2位『このミステリーがすごい!2016年版』国内編ベスト10
*第2位「ミステリが読みたい!2016年版」国内篇
*第3位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/国内部門
*第154回直木賞候補

感想・レビュー・書評

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  • 戦場の恐ろしさは、今、世界中を恐怖に陥れている、新型コロナウィルス以上だと思いました。
    でも、食べ物は、人を元気にする力がありますね。
    2020年、世界は新型コロナウィルスと戦っていますが、やっぱり食べ物は人や世界を元気にしてくれのではないかと思いました。


    以下、第5章とエピローグが完全にネタバレしていますので、これから読まれる方はご注意ください。

    第1章 ノルマンディー降下作戦
    第二次世界大戦での合衆国軍のコック兵たちの物語。
    コック兵は、僕ことティム、エド、ディエゴ、マッコーリーなど数人います。
    この回は金髪碧眼の衛生兵のライナスが、みんなのパラシュートを集めているのはなぜかというお話でした。
    民家でもらったゆで玉子、1個の貴重なおいしさが伝わってきました。

    第2章 軍隊は胃袋で行進する
    ヨーロッパ戦線の真っただ中のこと。
    科学の力で卵を噴霧乾燥させると、ただの黄色い粉になり、これに水を足せば、普通の卵と変わらない粉末卵というものがあったそうです。これが、一気に600箱消えるという事件が起こります。

    第3章 ミソサザイと鷲
    合衆国兵の滞在を快く許し家族を紹介してくれたオランダのおもちゃ屋経営者のヤンセン夫妻が銃で自殺しているのがみつかりました。
    なぜ、戦場で自殺したのか。
    意味不明の手紙とともに残された8歳の娘ロッテと弟のテオ。
    そしてティムの仲間たちもどんどん死んでいきます。

    第4章 幽霊たち
    冬のベルギー戦。
    クリスマス・イブの日。
    皆、タコツボを雪の中に掘って戦っています。
    そんな中ディエゴが「夜中、タコツボにいたら妙な音を聞いた。自分が殺した敵が化けて出たんじゃないか」と言い出します。
    そして、ティムも榴弾が着弾し半月以上眠りますが、目覚めました。

    第5章 戦いの終わり
    途中から紛れ込んできた、負傷兵のダンヒルは、クラウス・ゾマーという元敵国兵でした。
    ダンヒルにはスパイの容疑がかかっていて隠せばティムも同罪で連行されてしまいます。
    ティムは衛生兵のスパークらとダンヒルを逃がす作戦を立て見事にダンヒルを逃がします。
    そして、戦争も終わり、ティムは家族の元に帰り、その晩、一緒に戦った親友たちの夢をみます。

    エピローグ
    1989年12月。
    ベルリンのマクドナルドでの再会。
    ”キッド”と呼ばれていた、ティムは64歳の老人。
    やってくるスパーク。
    ライナス。
    そして、ゾナーが現れてエドの遺品であるめがねをティムに返してくれます。
    そして、これが、今生の皆との最後の別れとなりました。

    • やまさん
      まことさん♪こんばんは。

      きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
      ...
      まことさん♪こんばんは。

      きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
      Kindleについては、1度実物を見てから判断をしょうと思っています。
      このため、いまの状況ではKindleについては、少し先になると思います。
      御心配をかけて申し訳ありません。

      やま
      2020/04/06
    • えりりんさん
      私もこれ読みましたー!!
      こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
      私もこれ読みましたー!!
      こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
      2020/04/17
    • まことさん
      えりりんさん♪こんにちは!

      えりりんさんも、読まれたのですね!
      えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、と...
      えりりんさん♪こんにちは!

      えりりんさんも、読まれたのですね!
      えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、とても素敵ですよ(*^^*)
      こちらこそ、真似したいです。
      2020/04/17
  • 私は料理に凝る性分がなく、極めて雑なものしか作りません。
    野菜の切り方も乱雑だし、味付けは繊細さのかけらもない。
    そんな私が”コック”を冠する小説を読んだのは、この本が、いろんなところで紹介されていたからです。
    それも、翻訳小説の文脈で見かけることが多かった。
    その紹介のされ方にちょっとした興味を抱いて、読んでみました。

    なかなか、おもしろかったです。
    そして、たしかに読んだ味わいは、日本の小説というよりも翻訳小説。
    どこがどうとはうまく言いにくいのですが、
    日本の小説にあるような(悪い言い方をすると)”箱庭感”が希薄。
    ”箱庭感”とは、たぶん、”みんな同じことを感じてるよね”というような共通の日常関心をベースに、ちょっと奇異な出来事をちりばめて好奇心をくすぐって、登場人物みんな「この世の終わりだ」みたいなことを煽っておきながら実はなんにも変わってなくて、で、最後は手垢のついたお説教めいたエピソードにつなげて、元の日常に戻ってみんな安心ね、というような感じ。

    それに対して、この小説はむしろ、日常を相対化して揺り動かしてくれました。
    この小説の中では、驚天動地の“大事件”が起こってえらいことになる、というようなことはほとんど起こりません(いや、戦場なんで大変なことは起こるのですが、それは「戦場だから起こるよね」という感覚で描かれます)。
    むしろ、お話の中で登場人物たちは、目の前のありがちな事件に、普通の感覚で淡々と対処していくだけです。
    しかし実は、その大前提である“普通の感覚”は、現代日本の我々とはずいぶんと異なっている。そのことが、読んでいるうちにだんだんと立ち上ってくる。
    そのことによって、私の日常感が揺り動かされる。
    そして、自分の“あたりまえ”が相対化され、次に、「自分はどう生きるのか?」という問いに直面させられるのです。たぶん。
    だからでしょうか、私はこの小説を読み終わったときに思ったのは、
    どんな状況下にあっても、自分の背筋を伸ばして、少しずつ焦らずにひとつひとつ対処していこうということでした。

    なんだか私のこの感想文が、説教じみて終わってるのが、なんだか箱庭感満載でかっこわるいですね・・・【2020年4月25日読了】

  • いやぁ、正直驚きましたね。若き素晴らしい作家さんを見つけてしまいました。
    正直この若さで、どうしてこんな第二次大戦の物語のフィクションが書けるのか、非常に不思議です。でも確かなのは参考文献のリストが非常に多いため、筆者が非常に研究熱心であるか、何かのきっかけでヨーロッパ戦線について掘り下げたのがきっかけなのかもしれない。

    にしても、ノルマンディー上陸作戦(Dデー)の様子、フランス・オランダ・ベルギーでの戦線の様子が非常に細やかに書かれており、まるでノンフィクションを読んでいるかのような迫力がありました!

    テーマは戦場のコックたちです。基本は調理が優先ですが、調理していないときは普通に銃をもって戦うという、なるほど、最前線では料理だけしているわけにはいかないんだなぁと言うのが恥かしながら初めて知った話。なので視点がなかなか面白い。ただの戦いだけの描写ではなく、コック視点での描写もあり、新鮮でした。当たり前ですが、人間は食べないとエネルギーが湧いてこないし、ポジティブにもなれない。戦闘できないわけですから、コックというのも重要ですよね。

    この物語は、さらにミステリーの要素もあり、戦場の中での「事件」を、同じコック仲間のエドと解決していくところがなかなか面白い。でも読んだ後考えると、一つ一つのミステリーが意味しているところは深い内容だったなぁと思います。

    なかなかのボリュームの本で、読了するのに時間を要しましたが、後半はあっという間でした。まさに怒涛の展開。胸がつまりそうになったり、涙したり、苦しい戦場での描写もあります。でも戦場という特殊な環境で生死をともにした仲間との熱い絆には胸を強烈に熱くしてしまいました。

    エンディングも嬉しいような、切ないような、とても読後感に余韻が残る素晴らしい作品だったと思います。

    この作者の別作品も追いかけようと思いました。

  • この小説は凄いです。

    1942年に志願兵として米軍に入隊した主人公のティムは、19歳でノルマンディー降下作戦に参加し、ドイツ降伏までの戦下での日々が描かれた戦争物語です。

    軍では料理好きの祖母の影響もあって特技兵(コック)を志願し、自ら戦いながら兵士たちのお腹も満たす。明日命を失うかもしれない環境での友情、軍の中で起こる不思議な出来事を解明する小気味良いミステリーの要素もあり。

    戦闘シーンの描写は、まるでつい先日の出来事を親友が話して聞かせてくれるほどに克明でリアリティーがあり魅き込まれる。本当に作者は日本人なのだろうか、翻訳小説ではないのかという感覚になるほどアメリカ人青年の視点に徹しているように感じる。
    時代も国も異なる世界のことをどうしてこんなにも当事者感をもって描けるのだろうと感動したりする。

    一方で、平和で穏やかな幸せの象徴である祖母の料理姿の描写となると、料理の匂いや音が聞こえてきそうなほどに五感に訴えてくる。

    『もしあの時少し早く仕事をしていたら』、『もしあの時自分がよろめかなければ』、そういうほんの少しの違いが生死を分けてしまうのが戦地なのだと知る。きっと気づかないだけで、私達の平穏な生活も同じなんだと思った。

    参考文献の多さにも驚かされる。

    東西南北が苦手な私は、当時のヨーロッパの地図をプリントして、侵攻方向や場所や背景を確認しながら、理解のためにその他色々検索もしながら、先を読みたい誘惑と戦いつつ、それこそ『遅読』にて約3日かけて読みました。

  • 第2次世界大戦のヨーロッパ戦線。アメリカ人の青年ティムは戦闘に参加しながら、軍の食事を調理する「コック兵」として従軍していた。料理には慣れていたが、銃を撃ち、敵を殺し、味方が殺されることには慣れていない。そんな新米の青年兵が上司や仲間と戦闘を乗り越えるごとに成長していく青春グラフティ。そして、転戦する戦場にはささいな違和感があり、それをティムたちが解決するミステリー作品でもある。

    探偵役はティムの先輩コック兵、エド。彼は常に冷静沈着で何かを考えている。それは今起こっている違和感のことだったり、自分の将来や過去のこと、仲間のことだったり。さらに、エドが何者で、どんな過去を背負っているのか。それもまた、本作の謎の1つ。

    料理をしていると、気分転換になり、無心になれる。戦争という生死が隣り合う極限状態の中で、料理に没頭することは兵士の精神上、意外に良いことかもしれない。ティムやエドが他人へおせっかいを焼いたり、ささいな出来事に首を突っ込むのもコック兵ならではの視点だ。

    生命の大事さ、殺し合いの虚しさ、仲間との友情など、戦争小説定番のテーマも描かれているが、それよりも戦場で戦闘のことを考えない時間のすばらしさをの方を感じる作品。

  • 深緑野分『戦場のコックたち』創元推理文庫。

    ミステリー関連の各ランキングで上位にランクインした異色のミステリー小説。

    物語は1944年のノルマンディーの戦場から始まり、登場人物は全て米国軍人である。戦場の緊迫感の中で描かれる、ちょっと緩いミステリー。

    評判ほどではなかった。

    本体価格980円
    ★★★★

  • タイトルやジャケットの感じからは想像できなくて、「えっ、そういう小説なの!?」と驚いた。
    でも、『ベルリンは晴れているか』の人だと知っていれば、納得か(笑)

    最初に、祖母の作るお惣菜が美味しくて……という所から始まるので、キッドが従軍してコックとして沢山美味しいものを作り出す話か!

    と思いきや、中盤までのミステリー色!
    そしてまあ、戦時中なんだから、当たり前だけど食材は不足しているわけで。
    コック仲間や兵士との触れ合いが多く描かれていて、美味しさにつながる温もりを感じながら、隊で起きる謎を解いていく、という形。

    中盤までは。

    そこからは、ミステリーというより、戦争、だ。
    第二次世界大戦の終盤、連合軍と赤軍とナチスという構図が、それこそ混沌と化していく。

    このまま、戦争が終わり、もしも生きて帰れてしまったら、どうしよう?
    という疑問に、読む手を止めてしまった。

    人としての尊厳って何なんだ。
    国のために、家族のために、名も知らぬ誰かを手にかけて、その行き着く先が「自分が生き延びることへの問い」だなんて。

    国に、家族の元に帰ってきた時に「何を食べるか」って大事だよね、と友人がオニギリを片手に呟いていたことを思い出した。

  • 同年良作が多かったのか無冠なのが不思議。
    謎解き用の殺人は多いけど、この作品の殺人は謎解きを必要としない。そこが本当に皮肉で反戦の意をより感じる。
    幸いなことに従軍の経験はないので「ノルマンディー上陸作戦」から「プライベートライアン」とか「硫黄島からの手紙」を思い出して読んだけど、映画を観てるみたいにするする読めたのは文章に拠るところが大きいと思う。
    謎解きはちょっとした疑問から始まり、連作の短編集のように話は続くのだけど、それぞれが後半の布石で、回収が本当によかった。
    エピローグは人によっては長いと感じるかもしれないけれど、知れてよかった。
    改めて人は1000年も2000年も時代が変わっても同じ問題で火を立てるし燻ってるなぁ、と。
    そして、こうして好きに小説を読んで好きに感想を述べることが出来ることは幸せなんだと再認識。

  • 深緑さんは『ベルリンは晴れているか』に続いて2冊目。発表順からいえば後戻りです。
    部隊はノルマンディー上陸からベルギー、オランダと転戦する第二次大戦末期のヨーロッパ。主人公はアメリカ南部出身の志願兵。銃を持って戦い、食事時にはコックにもなる空挺師団の特技兵(コック)です。
    終戦直後のベルリンを描いた『ベルリン・・』と舞台は違いますが同じような印象を受けます。
    ミステリー仕立てであるところも同じ。5つの各章で戦場の事件の謎解きをしながら、こちらが本題の多くの一般市民も巻き込む戦争の無残さ、次第に戦争の狂気に染まって行く主人公達、さらに人種差別~ナチスのユダヤ人虐殺やアメリカの黒人差別(この時代、まだ白人と黒人は別部隊なんですね)が描かれます。特に戦争の悲惨さ狂気は、あまり情緒的に陥らず乾いた筆致で客観的に描かれるのですが、それが次々に積み重なって深く迫ってきます。
    舞台やテーマのせいもあるのでしょうが、どこか日本離れしています。人物・背景など余りに上手く描かれているので、何か上手い訳者の翻訳小説を読んでいるような気がします。もっとも私は野分さん文体は苦手なのですが。。。

  • ミステリー三賞にノミネートされた作品だが、私はミステリーというよりも心理小説の面を感じた。
    様々な戦場における兵士の心理を描いた作品で、兵士間の連帯感・憎悪や恐怖などがよく描かれていると思う。
    一介の兵士があそこまで戦場の状況を把握できるものかという意見もあるようだが、そういったマイナス点を払拭する作品だと思う。

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著者プロフィール

1983年神奈川県生まれ。2010年、第7回ミステリーズ!新人賞にて短篇「オーブランの少女」が佳作入選、2013年に短篇集『オーブランの少女』が刊行されデビュー。その他の著書に、『戦場のコックたち』『分かれ道ノストラダムス』『ベルリンは晴れているか』『この本を盗む者は』がある。

「2021年 『Voyage 想像見聞録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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