- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488453121
作品紹介・あらすじ
1944年6月6日、ノルマンディーが僕らの初陣だった。コックでも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ――料理人だった祖母の影響でコック兵となったティム。冷静沈着なリーダーのエド、陽気で気の置けないディエゴ、口の悪い衛生兵スパークなど、個性豊かな仲間たちとともに、過酷な戦場の片隅に小さな「謎」をみつけることを心の慰めとしていたが……『ベルリンは晴れているか』で話題の気鋭による初長編が待望の文庫化。直木賞・本屋大賞候補作。
*第2位『このミステリーがすごい!2016年版』国内編ベスト10
*第2位「ミステリが読みたい!2016年版」国内篇
*第3位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/国内部門
*第154回直木賞候補
感想・レビュー・書評
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私は料理に凝る性分がなく、極めて雑なものしか作りません。
野菜の切り方も乱雑だし、味付けは繊細さのかけらもない。
そんな私が”コック”を冠する小説を読んだのは、この本が、いろんなところで紹介されていたからです。
それも、翻訳小説の文脈で見かけることが多かった。
その紹介のされ方にちょっとした興味を抱いて、読んでみました。
なかなか、おもしろかったです。
そして、たしかに読んだ味わいは、日本の小説というよりも翻訳小説。
どこがどうとはうまく言いにくいのですが、
日本の小説にあるような(悪い言い方をすると)”箱庭感”が希薄。
”箱庭感”とは、たぶん、”みんな同じことを感じてるよね”というような共通の日常関心をベースに、ちょっと奇異な出来事をちりばめて好奇心をくすぐって、登場人物みんな「この世の終わりだ」みたいなことを煽っておきながら実はなんにも変わってなくて、で、最後は手垢のついたお説教めいたエピソードにつなげて、元の日常に戻ってみんな安心ね、というような感じ。
それに対して、この小説はむしろ、日常を相対化して揺り動かしてくれました。
この小説の中では、驚天動地の“大事件”が起こってえらいことになる、というようなことはほとんど起こりません(いや、戦場なんで大変なことは起こるのですが、それは「戦場だから起こるよね」という感覚で描かれます)。
むしろ、お話の中で登場人物たちは、目の前のありがちな事件に、普通の感覚で淡々と対処していくだけです。
しかし実は、その大前提である“普通の感覚”は、現代日本の我々とはずいぶんと異なっている。そのことが、読んでいるうちにだんだんと立ち上ってくる。
そのことによって、私の日常感が揺り動かされる。
そして、自分の“あたりまえ”が相対化され、次に、「自分はどう生きるのか?」という問いに直面させられるのです。たぶん。
だからでしょうか、私はこの小説を読み終わったときに思ったのは、
どんな状況下にあっても、自分の背筋を伸ばして、少しずつ焦らずにひとつひとつ対処していこうということでした。
なんだか私のこの感想文が、説教じみて終わってるのが、なんだか箱庭感満載でかっこわるいですね・・・【2020年4月25日読了】 -
第二次世界大戦、ヨーロッパ戦線に従軍した若いアメリカ特技兵(コック)達が戦地で遭遇した日常の謎を解くミステリー作品。
捕虜・敵国民間人への攻撃に対する逡巡や人種差別への後悔など、主人公の葛藤が丁寧に描かれており、この世界情勢下で出会えたのは本当にタイムリーだった。
著者の方のTwitter垢はフォローさせていただいて反差別的な主張には一方的に信頼感を持っているが、著書もさすがに理知的な内容だった。 -
この小説は凄いです。
1942年に志願兵として米軍に入隊した主人公のティムは、19歳でノルマンディー降下作戦に参加し、ドイツ降伏までの戦下での日々が描かれた戦争物語です。
軍では料理好きの祖母の影響もあって特技兵(コック)を志願し、自ら戦いながら兵士たちのお腹も満たす。明日命を失うかもしれない環境での友情、軍の中で起こる不思議な出来事を解明する小気味良いミステリーの要素もあり。
戦闘シーンの描写は、まるでつい先日の出来事を親友が話して聞かせてくれるほどに克明でリアリティーがあり魅き込まれる。本当に作者は日本人なのだろうか、翻訳小説ではないのかという感覚になるほどアメリカ人青年の視点に徹しているように感じる。
時代も国も異なる世界のことをどうしてこんなにも当事者感をもって描けるのだろうと感動したりする。
一方で、平和で穏やかな幸せの象徴である祖母の料理姿の描写となると、料理の匂いや音が聞こえてきそうなほどに五感に訴えてくる。
『もしあの時少し早く仕事をしていたら』、『もしあの時自分がよろめかなければ』、そういうほんの少しの違いが生死を分けてしまうのが戦地なのだと知る。きっと気づかないだけで、私達の平穏な生活も同じなんだと思った。
参考文献の多さにも驚かされる。
東西南北が苦手な私は、当時のヨーロッパの地図をプリントして、侵攻方向や場所や背景を確認しながら、理解のためにその他色々検索もしながら、先を読みたい誘惑と戦いつつ、それこそ『遅読』にて約3日かけて読みました。
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戦争物でもあまり取り上げられることのない特技兵(コック)を中心とした日常系ミステリー。しかしながら戦場は日常からかけ離れた世界であり、、、前作「オーブランの少女」で見せた、そういった非日常の世界を目の前に現出させる筆力が十分に生かされている。過酷な戦場での重い話を、どうでも良い(失礼)謎解きが推進力となってグイグイと読み進めていく。面白い組み合わせだ。
戦時下の裏切り、報復、処刑、慰安婦、強姦と言った暗部はドライに書きあらわされるのだが、人種差別については丁寧に語られており、作者のこだわりが感じられた。 -
深緑野分『戦場のコックたち』読了。第二次世界大戦下の米軍コック兵が主人公とあって、戦場における〈日常の謎〉ものかと思いきや、主人公同様に読者もまた戦争の美化されない本質に嫌が応にも向き合わさせる。
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第2次世界大戦のヨーロッパ戦線。アメリカ人の青年ティムは戦闘に参加しながら、軍の食事を調理する「コック兵」として従軍していた。料理には慣れていたが、銃を撃ち、敵を殺し、味方が殺されることには慣れていない。そんな新米の青年兵が上司や仲間と戦闘を乗り越えるごとに成長していく青春グラフティ。そして、転戦する戦場にはささいな違和感があり、それをティムたちが解決するミステリー作品でもある。
探偵役はティムの先輩コック兵、エド。彼は常に冷静沈着で何かを考えている。それは今起こっている違和感のことだったり、自分の将来や過去のこと、仲間のことだったり。さらに、エドが何者で、どんな過去を背負っているのか。それもまた、本作の謎の1つ。
料理をしていると、気分転換になり、無心になれる。戦争という生死が隣り合う極限状態の中で、料理に没頭することは兵士の精神上、意外に良いことかもしれない。ティムやエドが他人へおせっかいを焼いたり、ささいな出来事に首を突っ込むのもコック兵ならではの視点だ。
生命の大事さ、殺し合いの虚しさ、仲間との友情など、戦争小説定番のテーマも描かれているが、それよりも戦場で戦闘のことを考えない時間のすばらしさをの方を感じる作品。
きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
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きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
Kindleについては、1度実物を見てから判断をしょうと思っています。
このため、いまの状況ではKindleについては、少し先になると思います。
御心配をかけて申し訳ありません。
やま
こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
えりりんさんも、読まれたのですね!
えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、と...
えりりんさんも、読まれたのですね!
えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、とても素敵ですよ(*^^*)
こちらこそ、真似したいです。