戦場のコックたち (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488453121

感想・レビュー・書評

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  • 深緑野分『戦場のコックたち』創元推理文庫。

    ミステリー関連の各ランキングで上位にランクインした異色のミステリー小説。

    物語は1944年のノルマンディーの戦場から始まり、登場人物は全て米国軍人である。戦場の緊迫感の中で描かれる、ちょっと緩いミステリー。

    評判ほどではなかった。

    本体価格980円
    ★★★★

  • タイトルやジャケットの感じからは想像できなくて、「えっ、そういう小説なの!?」と驚いた。
    でも、『ベルリンは晴れているか』の人だと知っていれば、納得か(笑)

    最初に、祖母の作るお惣菜が美味しくて……という所から始まるので、キッドが従軍してコックとして沢山美味しいものを作り出す話か!

    と思いきや、中盤までのミステリー色!
    そしてまあ、戦時中なんだから、当たり前だけど食材は不足しているわけで。
    コック仲間や兵士との触れ合いが多く描かれていて、美味しさにつながる温もりを感じながら、隊で起きる謎を解いていく、という形。

    中盤までは。

    そこからは、ミステリーというより、戦争、だ。
    第二次世界大戦の終盤、連合軍と赤軍とナチスという構図が、それこそ混沌と化していく。

    このまま、戦争が終わり、もしも生きて帰れてしまったら、どうしよう?
    という疑問に、読む手を止めてしまった。

    人としての尊厳って何なんだ。
    国のために、家族のために、名も知らぬ誰かを手にかけて、その行き着く先が「自分が生き延びることへの問い」だなんて。

    国に、家族の元に帰ってきた時に「何を食べるか」って大事だよね、と友人がオニギリを片手に呟いていたことを思い出した。

  • デビュー短編集『オーブランの少女』が良かったので、次の作品を期待していた深緑野分、文庫で読むので3年ぶりになる2冊目の本がこちら。分厚くてびっくり。やや幻想よりだった『オーブラン~』とうってかわってこちらは戦場を舞台にした連作ミステリ風長編。背景になる世界史を詳細に調べ上げてそこにミステリを絡めてくるあたりも、デビュー作からの作風の幅広さも、私の中では早くも深緑野分はポスト皆川博子。

    舞台は第二次世界大戦中、1944年6月のノルマンディー上陸作戦を皮切りに各地を転戦していく合衆国軍のコック(特技兵)ティムが主人公。同じくコックのリーダーで冷静沈着なエド、同僚の陽気でお調子者のディエゴ、フランケンよばわりされてるダンヒル、おしゃべりな補給兵のオハラ、口は悪いけど機転の利く衛生兵のスパーク、イケメンで調達上手なライナス、作家志望の通信兵ワインバーグら、個性豊かな仲間たちと、戦地の日常の中で起こるちょっとした謎を解き明かしていく。

    とはいえ、場所はあくまで戦場。なので当然ティムは望まずとも敵を殺さねばならず、戦地の民間人も犠牲になるし、仲間たちも次々と命を落としていく。命が無事でも心が壊れてしまう者もいて、戦争がもたらす悲劇の多様性も描かれている。

    生い立ちも出自もさまざまなキャラクターたちがこういった特殊な状況の中で友情を育む部分だけが心癒された。主人公ティムのニックネームは「キッド」素直で子供っぽく根が善良な彼ですら、戦場ではそれなりに荒むけれど、そんな自分を自覚し反省する度量があるから彼は「まとも」で、彼の戦友たちはそんな彼の普通さに救われていたのだろう。

    実際の探偵役を担うエドも魅力的なキャラクターだったけど、個人的にはライナスがお気に入りでした。イケメンだからじゃないよ!(笑)それぞれの登場人物にそれまでの人生がありドラマがある。けれど戦争は一瞬であっけなく彼らからその後の人生を奪ってしまう。その容赦なさを十二分に描き出してあって、なおかつ読みものとしての娯楽性もあり、寡作だけど深緑野分はずっと追いかけていきたい信頼に足る作家と確信。

  • カバーのイラストと紹介文から、食べ物系+謎解き要素の緩めの内容を想像していたのですが・・・。
    読んでみれば、中身はどっしり重い戦争小説でした。

    日本人作家が描くヨーロッパ戦線。
    作者名を隠したら翻訳ものと間違いそうな、自然な描写がすごい。

  • バンドオブブラザーズなどの戦争映画や、戦場であり得たであろうミステリーを織り交ぜ、残酷で醜悪な戦場・戦争を描いたフィクション作品。
    戦闘シーンで表現力が乏しいところがあったが、ストーリーとしては十分成立していた。
    名探偵であるクールな主人公の相棒が死ぬのはマジか?と思わせるが、戦友たちとの再会で締めくくるラストは感動的でよかった。
    当事者でない日本人が書いたヨーロッパ戦線の物語ではあるがあなどれない。

  • 日本人が書いているのですが、第二次大戦時のヨーロッパ戦線の描写が意外に上手いです。日本人が、英米が舞台の作品を書くと、なんか浮ついた感じで、地に足が付かない感じがしますが、これはそう言う感じはしません。

    タイトルが、“戦場のコック”ではなく“戦場のコックたち”と複数のコックが居ることを示しています。あらすじとか、帯とかを読む感じでは、戦場に居たコックが、食べ物の話を絡ませながら謎解きをしていく、お気楽極楽な作品だと思っていたんですが、全然違いました。

    確かに、戦場での食べ物に関連した話にはなってはいますが、描かれているのは、戦場そのもの。物語が進むにつれ、話もシリアスな様相を示してきます。これは意外でしたね。

    タイトルと、表紙の画に、いい意味で騙されてはいけません。

  • 日常の謎、と言うにはあまりにも過酷すぎる日常。
    第二次大戦の最中、志願兵としてヨーロッパに赴いた青年は数々の仲間たちと出会った。その中の一人、エドはまるで名探偵のようだった。そんな彼らの非日常な日常の謎が解き明かされる。

  • あー読みきった。重たかったけど、コックという視点が救いのように感じた、それでも内容はすごく濃くて思ったより戦争や兵士たちの色が濃くて重たかったけど、でもそのなかで料理や食べ物の話が出てくるとほっとした。

    ミステリーって、謎が重視されているのと、謎もありつつストーリーがある方向に進んでいくのとある気がするけど、本作は大きな第二次世界大戦という流れがあって、それを読ませるためのミステリー要素であるような感じがした。

    謎自体もけっこう不思議で、へええと思ったけど、少しずつ戦場や主人公の立場や心情が変わっていって、それに合わせて謎も変化していく感じだった。

    エドの台詞がいちいち良かった。戦場じゃなくても明日死ぬかもしれない私たちは、やっぱり克服出来るものは、克服しておいた方が自分自身が苦しまなくてすむよなあと思う。自分がこわがっているだけで、たった一言、詫びるだけですむ話というのもあるかもしれない。そんな影に怯えるのは、戦争だとそれが強まるだけで、日常にもあるのかもしれない。

    戦争という非常事態の謎解きのなかで、戦争にかこつけていることというのが、あったのかもしれないなと思う。若者たちの何か手柄をたてたい気持ちや他人に遅れを取りたくない気持ち、若さゆえの有り余るパワー、戦争がなかったとしてもそれらは彼らを何か他のものに駆り立てたかもしれない。

    重厚な内容だったけれど、残忍な描写が苦手な人にはきついかもしれない、ミステリーっていうより歴史ものカテゴリーな気がする。
    誰かが、こんな惨劇を乗りこえてなお、世の中からなぜ絶望がなくならないのかというミステリーを解いてくれる日がきて欲しい。

  • 読み始めはあまりオモシロくなくて期待しないで読み進んだけど、少しずつ戦場でのことなども書かれてきて終盤になって盛り上がりもあったのではないかと思う。

  • ★4.0
    戦場にいながらも、戦闘とは少し無縁なコックの視点で綴られるのかと思いきや、ティムの初陣はノルマンディー降下作戦。序盤こそ仲間たちと和気藹々と楽しそうだけれど、少しずつ心身が戦争に蝕まれていくのが辛い。そして、非日常に潜む日常の謎解きが面白くはあるものの、やっぱり悪化していく戦況と容赦のない無慈悲さの方が印象的。と同時に、人を生かす食事を作りながら、同じ手で人を殺めるのが何とも皮肉。「第五章 戦いの終わり」「エピローグ」は出来過ぎな気もするけれど、地獄を体験した彼らにご褒美があっても良いと思う。

著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり のわき)
1983年、神奈川県生まれ。神奈川県立海老名高等学校卒業。パート書店員を経て、専業作家に。2010年、短編「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞の佳作に入選、作家デビュー。同作は2013年に単行本で刊行。2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、第18回大藪春彦賞候補、第13回本屋大賞候補に。2017年、第66回神奈川文化賞未来賞(奨励賞)を受賞した。2018年、『ベルリンは晴れているか』で第160回直木賞ノミネート。

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