戦場のコックたち (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.95
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本棚登録 : 2024
感想 : 150
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488453121

作品紹介・あらすじ

1944年6月6日、ノルマンディーが僕らの初陣だった。コックでも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ――料理人だった祖母の影響でコック兵となったティム。冷静沈着なリーダーのエド、陽気で気の置けないディエゴ、口の悪い衛生兵スパークなど、個性豊かな仲間たちとともに、過酷な戦場の片隅に小さな「謎」をみつけることを心の慰めとしていたが……『ベルリンは晴れているか』で話題の気鋭による初長編が待望の文庫化。直木賞・本屋大賞候補作。

*第2位『このミステリーがすごい!2016年版』国内編ベスト10
*第2位「ミステリが読みたい!2016年版」国内篇
*第3位〈週刊文春〉2015年ミステリーベスト10/国内部門
*第154回直木賞候補

感想・レビュー・書評

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  • 戦場の恐ろしさは、今、世界中を恐怖に陥れている、新型コロナウィルス以上だと思いました。
    でも、食べ物は、人を元気にする力がありますね。
    2020年、世界は新型コロナウィルスと戦っていますが、やっぱり食べ物は人や世界を元気にしてくれのではないかと思いました。


    以下、第5章とエピローグが完全にネタバレしていますので、これから読まれる方はご注意ください。

    第1章 ノルマンディー降下作戦
    第二次世界大戦での合衆国軍のコック兵たちの物語。
    コック兵は、僕ことティム、エド、ディエゴ、マッコーリーなど数人います。
    この回は金髪碧眼の衛生兵のライナスが、みんなのパラシュートを集めているのはなぜかというお話でした。
    民家でもらったゆで玉子、1個の貴重なおいしさが伝わってきました。

    第2章 軍隊は胃袋で行進する
    ヨーロッパ戦線の真っただ中のこと。
    科学の力で卵を噴霧乾燥させると、ただの黄色い粉になり、これに水を足せば、普通の卵と変わらない粉末卵というものがあったそうです。これが、一気に600箱消えるという事件が起こります。

    第3章 ミソサザイと鷲
    合衆国兵の滞在を快く許し家族を紹介してくれたオランダのおもちゃ屋経営者のヤンセン夫妻が銃で自殺しているのがみつかりました。
    なぜ、戦場で自殺したのか。
    意味不明の手紙とともに残された8歳の娘ロッテと弟のテオ。
    そしてティムの仲間たちもどんどん死んでいきます。

    第4章 幽霊たち
    冬のベルギー戦。
    クリスマス・イブの日。
    皆、タコツボを雪の中に掘って戦っています。
    そんな中ディエゴが「夜中、タコツボにいたら妙な音を聞いた。自分が殺した敵が化けて出たんじゃないか」と言い出します。
    そして、ティムも榴弾が着弾し半月以上眠りますが、目覚めました。

    第5章 戦いの終わり
    途中から紛れ込んできた、負傷兵のダンヒルは、クラウス・ゾマーという元敵国兵でした。
    ダンヒルにはスパイの容疑がかかっていて隠せばティムも同罪で連行されてしまいます。
    ティムは衛生兵のスパークらとダンヒルを逃がす作戦を立て見事にダンヒルを逃がします。
    そして、戦争も終わり、ティムは家族の元に帰り、その晩、一緒に戦った親友たちの夢をみます。

    エピローグ
    1989年12月。
    ベルリンのマクドナルドでの再会。
    ”キッド”と呼ばれていた、ティムは64歳の老人。
    やってくるスパーク。
    ライナス。
    そして、ゾナーが現れてエドの遺品であるめがねをティムに返してくれます。
    そして、これが、今生の皆との最後の別れとなりました。

    • やまさん
      まことさん♪こんばんは。

      きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
      ...
      まことさん♪こんばんは。

      きょうは、散歩がてらJRのターミナル駅まで行って来ましたが、人が多いヨドバシカメラへは行きませんでした。
      Kindleについては、1度実物を見てから判断をしょうと思っています。
      このため、いまの状況ではKindleについては、少し先になると思います。
      御心配をかけて申し訳ありません。

      やま
      2020/04/06
    • えりりんさん
      私もこれ読みましたー!!
      こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
      私もこれ読みましたー!!
      こんな風にまとめられたらどんなにいいか♡
      2020/04/17
    • まことさん
      えりりんさん♪こんにちは!

      えりりんさんも、読まれたのですね!
      えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、と...
      えりりんさん♪こんにちは!

      えりりんさんも、読まれたのですね!
      えりりんさんのレビューは、いつも丁寧で、ご自分の意見も入っていて、とても素敵ですよ(*^^*)
      こちらこそ、真似したいです。
      2020/04/17
  • 「よし、こいつはもう一人前になったし、俺たちの仲間入りだぞ、と確信した瞬間、せっかく育った新米の頭が爆弾を食らって吹っ飛ぶ」

    タイトル通り、戦場でコック兵として戦うティモシー・コール(ティム)たちの話。
    序盤は戦場にありながらもいくつかのプチ事件の謎解きがメインで物語が進む。でも、戦況がどんどん悪化して、ティムたちもその中に巻き込まれていく。登場人物がとっても魅力的だから余計に、物語が進むにつれて彼らが傷ついていくのがつらかったし、何度も涙が出てきた。

    登場人物みんな好きなんだけど、特に衛生兵のスパークが好きかな。
    「ほらキッド、めげてる場合じゃねえ。生きている人間を助けるぞ」
    「あれだけ看取ったんだ、それ以上に誕生の瞬間を見せてもらわにゃつり合わねえだろう」
    乱暴な感じがあるんだけど、衛生兵として怪我をした兵士の治療にあたっている。ギャップ・・・
    ほかにも作家志望のワインバーガーも可愛い。
    「僕を現実世界に戻しやがってありがとうですよ、キッド」
    エドも冷静でとてもかっこいい。
    「ティム、『悪気はなかった』は誰にでも言える。ただその屈託と恐怖心をどうするかだ。克服するもしないも、お前自身が決めなければならない。いつ死んでも後悔しないように」
    「もし俺を心配してくれるなら、外の世界でがんばってくれ。もうこんなことが起こらないように。俺たちが戦場へ行かなくて済むように」
    やっぱり登場人物が魅力的って大事!

    舞台が第二次世界大戦中のヨーロッパだから、『ベルリンは晴れているか』と同じようにユダヤ人迫害についても描かれている。
    ティムは幼い頃、近所の悪ガキに唆されて橋に人種差別を思わせる落書きをしてしまう。
    「お前自身はどうなんだコール、お前が橋に落書きしたチンパンジーと、ユダヤの星はどこが違う?」
    この台詞は怖いね。しかも、お祖母ちゃんに怒られてティムが橋の落書きを元通りに消したあとのお祖母ちゃんの言葉、
    「元どおりになるものなんてないのよ」も。これを子どものころに言われたらかなり残ると思う。
    ティムのお祖母ちゃん、すごく素敵な人だなと思った。
    「あんたと悲しみを分かちあえる人間は、残念だけどこの家族にはいないでしょうね。でもここはあんたの帰る場所で、あんたの出発点なのよ。いつだってね」
    この、戦場から帰ってきたティムにかけた言葉もすごくあたたかいなと。戦場を見てきたティムが故郷に戻ってきて平和に暮らしている人々を見たときに感じた疎外感、自分が異質なものになってしまったという感覚を、お祖母ちゃんはちゃんとわかってくれているんだな。

    「さて、どうやって生きる?これだけ巨大な動乱が起きた後、世界はどこへ転がっていくのか?日々の平凡な暮らしに戻っていけるのだろうか?」
    このまえ広島で原爆ドームや被爆直後の広島の写真を見て、この状態から今の広島に戻るまでにどれだけの人の、どれだけの力があったのか想像できないなと思ったばかりだったので、この言葉は印象に残った。

    また読み直したいな。良い本に出会えて良かった。


    「――俺のメガネなんて取っておかなくても、お前はしっかり生きていける」

  • 第二次世界大戦中のヨーロッパ、合衆国陸軍の特技兵(コック)のティモシー(ティム)は、ノルマンディー降下作戦で初陣を果たし、戦闘と炊事をこなしながら、仲間とともに戦地でのささやかな謎を解き明かし、心の慰めとする……。

    ストーリー紹介だけ見ると、様々なミステリ賞にランクインしていたこともあり、戦地という非日常の中での日常の謎を描くミステリなのかと感じますが、実際読み始めてみると戦争小説の側面が非常に強いです。
    序盤は戦況や物資などにもまだ余裕がありますが、章が進むごとに戦況は悪化し、さっきまで共に軽口をたたきあい、共に戦っていた仲間がどんどんと怪我を負い、心を病み、あるいは戦死して失われていく。
    主要人物たちはフィクションなのですが、参考文献の多さからも分かる通り、しっかりとした下調べに裏打ちされたディティールの細かさは、まるで実際に戦場に出ていた方から話を聞いているようなリアリティがあり、とにかく情緒をぐちゃぐちゃにされます。物語に感情移入してしまう方なので、胸が潰されそうに辛かった。
    けれど、昨今のこの情勢だからこそ、読んでよかったとも思えます。
    人は忘れてしまう生き物ですが、二度とこの惨劇を繰り返さないように。

    登場人物も多いですがそれぞれ個性があるので、混乱などは少なかったように思います。また、日本の小説ですが言葉選びなどには翻訳小説のような趣があり、比較的厚めの本にも関わらずぐいぐい読ませてしまう筆力にも感嘆です。

  • 私は料理に凝る性分がなく、極めて雑なものしか作りません。
    野菜の切り方も乱雑だし、味付けは繊細さのかけらもない。
    そんな私が”コック”を冠する小説を読んだのは、この本が、いろんなところで紹介されていたからです。
    それも、翻訳小説の文脈で見かけることが多かった。
    その紹介のされ方にちょっとした興味を抱いて、読んでみました。

    なかなか、おもしろかったです。
    そして、たしかに読んだ味わいは、日本の小説というよりも翻訳小説。
    どこがどうとはうまく言いにくいのですが、
    日本の小説にあるような(悪い言い方をすると)”箱庭感”が希薄。
    ”箱庭感”とは、たぶん、”みんな同じことを感じてるよね”というような共通の日常関心をベースに、ちょっと奇異な出来事をちりばめて好奇心をくすぐって、登場人物みんな「この世の終わりだ」みたいなことを煽っておきながら実はなんにも変わってなくて、で、最後は手垢のついたお説教めいたエピソードにつなげて、元の日常に戻ってみんな安心ね、というような感じ。

    それに対して、この小説はむしろ、日常を相対化して揺り動かしてくれました。
    この小説の中では、驚天動地の“大事件”が起こってえらいことになる、というようなことはほとんど起こりません(いや、戦場なんで大変なことは起こるのですが、それは「戦場だから起こるよね」という感覚で描かれます)。
    むしろ、お話の中で登場人物たちは、目の前のありがちな事件に、普通の感覚で淡々と対処していくだけです。
    しかし実は、その大前提である“普通の感覚”は、現代日本の我々とはずいぶんと異なっている。そのことが、読んでいるうちにだんだんと立ち上ってくる。
    そのことによって、私の日常感が揺り動かされる。
    そして、自分の“あたりまえ”が相対化され、次に、「自分はどう生きるのか?」という問いに直面させられるのです。たぶん。
    だからでしょうか、私はこの小説を読み終わったときに思ったのは、
    どんな状況下にあっても、自分の背筋を伸ばして、少しずつ焦らずにひとつひとつ対処していこうということでした。

    なんだか私のこの感想文が、説教じみて終わってるのが、なんだか箱庭感満載でかっこわるいですね・・・【2020年4月25日読了】

  • 第二次世界大戦、ヨーロッパ戦線に従軍した若いアメリカ特技兵(コック)達が戦地で遭遇した日常の謎を解くミステリー作品。

    捕虜・敵国民間人への攻撃に対する逡巡や人種差別への後悔など、主人公の葛藤が丁寧に描かれており、この世界情勢下で出会えたのは本当にタイムリーだった。

    著者の方のTwitter垢はフォローさせていただいて反差別的な主張には一方的に信頼感を持っているが、著書もさすがに理知的な内容だった。

  • この小説は凄いです。

    1942年に志願兵として米軍に入隊した主人公のティムは、19歳でノルマンディー降下作戦に参加し、ドイツ降伏までの戦下での日々が描かれた戦争物語です。

    軍では料理好きの祖母の影響もあって特技兵(コック)を志願し、自ら戦いながら兵士たちのお腹も満たす。明日命を失うかもしれない環境での友情、軍の中で起こる不思議な出来事を解明する小気味良いミステリーの要素もあり。

    戦闘シーンの描写は、まるでつい先日の出来事を親友が話して聞かせてくれるほどに克明でリアリティーがあり魅き込まれる。本当に作者は日本人なのだろうか、翻訳小説ではないのかという感覚になるほどアメリカ人青年の視点に徹しているように感じる。
    時代も国も異なる世界のことをどうしてこんなにも当事者感をもって描けるのだろうと感動したりする。

    一方で、平和で穏やかな幸せの象徴である祖母の料理姿の描写となると、料理の匂いや音が聞こえてきそうなほどに五感に訴えてくる。

    『もしあの時少し早く仕事をしていたら』、『もしあの時自分がよろめかなければ』、そういうほんの少しの違いが生死を分けてしまうのが戦地なのだと知る。きっと気づかないだけで、私達の平穏な生活も同じなんだと思った。

    参考文献の多さにも驚かされる。

    東西南北が苦手な私は、当時のヨーロッパの地図をプリントして、侵攻方向や場所や背景を確認しながら、理解のためにその他色々検索もしながら、先を読みたい誘惑と戦いつつ、それこそ『遅読』にて約3日かけて読みました。

  • 戦争物でもあまり取り上げられることのない特技兵(コック)を中心とした日常系ミステリー。しかしながら戦場は日常からかけ離れた世界であり、、、前作「オーブランの少女」で見せた、そういった非日常の世界を目の前に現出させる筆力が十分に生かされている。過酷な戦場での重い話を、どうでも良い(失礼)謎解きが推進力となってグイグイと読み進めていく。面白い組み合わせだ。

    戦時下の裏切り、報復、処刑、慰安婦、強姦と言った暗部はドライに書きあらわされるのだが、人種差別については丁寧に語られており、作者のこだわりが感じられた。

  • 深緑野分『戦場のコックたち』読了。第二次世界大戦下の米軍コック兵が主人公とあって、戦場における〈日常の謎〉ものかと思いきや、主人公同様に読者もまた戦争の美化されない本質に嫌が応にも向き合わさせる。

  • 第二次世界大戦の戦場における、

    ノルマンディー降下作戦で使われたパラシュートの白い絹の生地をひっそり集めていた兵士がいたのはなぜか?
    忽然と消えた600箱の粉末卵はどこへ?
    オランダの民家で起きた夫婦の奇妙な自殺はなぜ起こったのか?
    塹壕戦の最中に聞こえる気味の悪い怪音の正体とは?

    といった日常の謎。
    個々の事件は独立しているが戦況は進行しているというダイナミックな構成。
    キャラクターたちが好きになる。
    皆川博子を連想したが、たぶんホームズとワトソンあたりが源流なのだろう。
    語り手のティム(キッド)がいい子で、彼がやさぐれていくのが辛いくらい。
    いい小説。

    ■プロローグ
    ■第一章 ノルマンディー降下作戦
    ■第二章 軍隊は胃袋で行進する
    ■第三章 ミソサザイと鷲
    ■第四章 幽霊たち
    ■第五章 戦いの終わり
    ■エピローグ
    ◇主要参考文献ほか
    ◇解説=杉江松恋

  • 第2次世界大戦のヨーロッパ戦線。アメリカ人の青年ティムは戦闘に参加しながら、軍の食事を調理する「コック兵」として従軍していた。料理には慣れていたが、銃を撃ち、敵を殺し、味方が殺されることには慣れていない。そんな新米の青年兵が上司や仲間と戦闘を乗り越えるごとに成長していく青春グラフティ。そして、転戦する戦場にはささいな違和感があり、それをティムたちが解決するミステリー作品でもある。

    探偵役はティムの先輩コック兵、エド。彼は常に冷静沈着で何かを考えている。それは今起こっている違和感のことだったり、自分の将来や過去のこと、仲間のことだったり。さらに、エドが何者で、どんな過去を背負っているのか。それもまた、本作の謎の1つ。

    料理をしていると、気分転換になり、無心になれる。戦争という生死が隣り合う極限状態の中で、料理に没頭することは兵士の精神上、意外に良いことかもしれない。ティムやエドが他人へおせっかいを焼いたり、ささいな出来事に首を突っ込むのもコック兵ならではの視点だ。

    生命の大事さ、殺し合いの虚しさ、仲間との友情など、戦争小説定番のテーマも描かれているが、それよりも戦場で戦闘のことを考えない時間のすばらしさをの方を感じる作品。

  • 同年良作が多かったのか無冠なのが不思議。
    謎解き用の殺人は多いけど、この作品の殺人は謎解きを必要としない。そこが本当に皮肉で反戦の意をより感じる。
    幸いなことに従軍の経験はないので「ノルマンディー上陸作戦」から「プライベートライアン」とか「硫黄島からの手紙」を思い出して読んだけど、映画を観てるみたいにするする読めたのは文章に拠るところが大きいと思う。
    謎解きはちょっとした疑問から始まり、連作の短編集のように話は続くのだけど、それぞれが後半の布石で、回収が本当によかった。
    エピローグは人によっては長いと感じるかもしれないけれど、知れてよかった。
    改めて人は1000年も2000年も時代が変わっても同じ問題で火を立てるし燻ってるなぁ、と。
    そして、こうして好きに小説を読んで好きに感想を述べることが出来ることは幸せなんだと再認識。

  • 深緑野分『戦場のコックたち』創元推理文庫。

    ミステリー関連の各ランキングで上位にランクインした異色のミステリー小説。

    物語は1944年のノルマンディーの戦場から始まり、登場人物は全て米国軍人である。戦場の緊迫感の中で描かれる、ちょっと緩いミステリー。

    評判ほどではなかった。

    本体価格980円
    ★★★★

  • タイトルやジャケットの感じからは想像できなくて、「えっ、そういう小説なの!?」と驚いた。
    でも、『ベルリンは晴れているか』の人だと知っていれば、納得か(笑)

    最初に、祖母の作るお惣菜が美味しくて……という所から始まるので、キッドが従軍してコックとして沢山美味しいものを作り出す話か!

    と思いきや、中盤までのミステリー色!
    そしてまあ、戦時中なんだから、当たり前だけど食材は不足しているわけで。
    コック仲間や兵士との触れ合いが多く描かれていて、美味しさにつながる温もりを感じながら、隊で起きる謎を解いていく、という形。

    中盤までは。

    そこからは、ミステリーというより、戦争、だ。
    第二次世界大戦の終盤、連合軍と赤軍とナチスという構図が、それこそ混沌と化していく。

    このまま、戦争が終わり、もしも生きて帰れてしまったら、どうしよう?
    という疑問に、読む手を止めてしまった。

    人としての尊厳って何なんだ。
    国のために、家族のために、名も知らぬ誰かを手にかけて、その行き着く先が「自分が生き延びることへの問い」だなんて。

    国に、家族の元に帰ってきた時に「何を食べるか」って大事だよね、と友人がオニギリを片手に呟いていたことを思い出した。

  • 解説の『限りなく膨らむ憎悪と、それでも捨てられない人間への信頼』が本当にその通りと感じる一冊だった。
    非常に魅力的なキャラクターの数々、話が進むにつれて凄惨な戦争の描写、どれも読み進めずにはいられなかった。

  • 2021年11月22日追記:なんか色々調べてたら深緑野分氏の画像出てきた。えーっ!女性だったのね?ビックリでした。


    単行本発刊時から注目していたが、文庫化されたのを待って購入した。こちらのサイトでのレビューや、各ランキング媒体の紹介などを見れば、第二次大戦時のヨーロッパ戦線における軍隊内の日常の謎…そしてコックが主人公…と予想していたが、既読して思うことは「日常の謎」を主体としたミステリというより、純然たる「戦争文学」ではないか?ということである。


    以下ネタバレとなり、やや批判的論調になるかもしれません。ご注意ください!








    文庫本の巻末には「主要参考文献」「映像資料」などなど公開されており、一目瞭然なのだが、今作のストーリー展開は米HBOTV制作の「バンド・オブ・ブラザーズ」をほぼなぞっている。ほとんどパクリといってもよい。作者もそれについては言及し認めているようだ。


    ストーリー展開というのは、実在した組織、第101空挺師団の足跡をなぞるため、致し方ないのであろうがノルマンディー上陸からカランタン攻略、マーケットガーデンの失敗を経て、アルデンヌの森での死闘…とTVドラマと時系列を同じにして進んでいく。最初に気づいたのは上陸地点に向けられていた野戦砲軍をE中隊が殲滅した、という箇所(E中隊こそバンド・オブ・ブラザーズで描かれる空挺師団であり、88ミリ砲群の攻略は上陸降下直後の作戦である)やがてオランダの都市の独軍からの解放によって、独軍シンパであった女性がリンチにあい丸坊主にされる個所、気になってTVシリーズを見直してみたら、予備のパラシュート(シルク製)に言及しているシーンもあった。


    とはいえ、TVシリーズには見られなかった「コック」を主人公に据え、軍隊と食にミステリ的謎解きを絡ませ、軍組織におけるさまざまの立ち位置のキャラクターを創出し、彼等を絡ませ、実に読み応えのある物語となっている。米の軍組織をここまで詳細に描ききったのが日本人である、というのは驚くばかりだった。


    今作を既読の方のレビューを参考にしたが、TVドラマ「バンド・オブ・ブラザーズ」との関連について述べられているところは、見受けられなかった。70年以上昔の世界大戦末期の戦場については想像するに困難であろう、既読の方々にはこのTVシリーズを視聴して欲しい!今なら「amazon PRIME」で視聴可能である。映像からは確かに存在した、が、それほど語られていない「戦場のコック」が確実に存在したことが実感できる。そして彼等の体験した戦場がどのようなものであったのか?上質のドラマであることは保証できる。


    実在した101空挺師団の道行き通りに、彼等の戦場は移り行き、地獄の果てに終戦となる流れであるが、ミステリとしては最後の仕掛けが待っていた。ここはTVドラマから完全に離れての展開であった。主人公ティムの心象の変化、そして仲間達の変化、それは地獄の戦場を戦い抜いていく中で確実に起こることである。命を含め様々な喪失を経ていく中で、辿り着くところとは?それは地獄で起こりうる以上、その人の数だけある答えであり、そこに善悪を差し込むことは門外漢の誰かがしていいことではないと思う。そんな中で主人公ティム達が選んだ選択は、地獄の戦場を描いた後で、人間を肯定的に描いた微かな希望に満ちたものであった。


    エピローグは1989年のベルリンだった、ベルリンの壁が崩壊した直後である。数十年ぶりの再会を果たすかつての戦友達、ダンヒルが無事であったことは本当に良かった。懐かしい、でもなんとなくこそばゆい、そんな空気が描かれていて、戦場で背中を合わせる信頼からなる友情、永遠不変の何かがあるとすれば、それしかないのだ、と感慨深く思う。地獄しか生み出さない戦場の中生まれるものなら、この矛盾はいったいなんなのだ?戦争を描いた書物、映像を体験する度常に思う、多分人間、人類は戦争を辞めることができない。

  • ずっと読みたいと思っていて、やっと読めた一冊。500ページ越えの大作で、読了までにずいぶん時間がかかってしまった。
    主人公は、第二次世界大戦下の合衆国陸軍で特技兵(コック)として従軍する19歳のティム。初陣を果たすノルマンディー降下作戦は手に汗握る緊迫感で描かれるが、その後はパラシュート集めの真相を追ったり、粉末卵の紛失事件を解き明かしたりと、わりにささやかな日常の謎が描かれる。お料理小説的要素も期待していたのだけれど、皆が食べるのはおもに糧食(レーション)である。
    同じくくコックで頼れるエドやディエゴ、衛生兵のスパーク、補給兵のオハラほか、同じ釜の飯(もちろん満足にとは言えないが)を食べるたくさんの仲間たちとの厳しい環境ながらも築いてきた友情は、戦地という極限の地において唯一の明るさに感じられる。気の置けない相手との和気藹々とした会話ややり取りは、どれほど心休まるものであっただろう。
    であるのだが、ナチス・ドイツ軍の猛攻激しく、戦況が苛烈さを増していくに伴い、ストーリーはどんどん悲壮感を増していく。
    オランダ人夫妻の自殺、対独協力者だった娘の死、戦線を逃れようとする兵士たちが立てる痛ましい音、そして、共に戦ってきた同朋の正体——。
    仲間が、日常が、それまでの自分が、どんどん失われていく。
    後半はページをめくる手が止まらず、駆け抜けるように読み終えた。読み終えて振り返ったとき、プロローグとエピローグがこんなにも素晴らしいと思える小説には滅多に出会えないのではないか。
    戦争によって奪われたたくさんの命、たくさんの未来。
    私たちはそうした歴史から続いてきた世界で生まれ、明日食べるものや眠る場所に困らず、今もこうして安心して生きていられる。
    その日常がいかに尊く、今後も大切にしなければいけないことであるか。ティムたちの友情に想いを馳せ、厳かな気持ちでそう思う。

  • 戦争の凄惨さだけでなく、兵士として従軍した人の精神の変化も感じられて辛くなった。
    でも、今読むことに意味のある本だと思ったし、読んでよかった。
    とりあえず今はクラムチャウダーが食べたい。

    解説に感じたことがまとまっていた。

  • 「戦史」を勉強すればするほど、人間の残虐性・国際法を遵守しない現実・力なき者から淘汰される不条理が身に染みます。
    戦場におけるミステリを解決するという、正直、万人受けするとは思えない題材ですが、心にずっしりと刻まれる作品でした。解説で杉江さんが指摘するように、深緑さんの戦場の描写が丁寧で、血と火薬の臭いを嗅ぎ取れる気がします。
    本書を読むことに力を使い果たしたので、小説の一文を抜粋して、感想と代えさせて頂きます。

    「もし俺を心配してくれるなら、外の世界でがんばってくれ。もうこんなことが起こらないように。俺たちが戦場へ行かなくて済むように。」

    〇【さいごに】
    軍事用語が多く、馴染みがあまりない人は?かもしれません。そして、美味しそうな料理はあまり登場しません。ただ、生きるための食事が描かれています。
    前情報もなく、軽い気持ちで読み、”重さ”で挫折しかけましたが、読んで良かったと思える作品でした。スラスラ読める小説も素敵ですが、重厚な小説も素晴らしいと思える作品でした。
    白でも黒でもない灰色の世界を、懸命に生き抜こう。

  • この作品は確かにミステリだけれど、「ミステリ」というジャンルに収まらない作品であるなと思った
    コックの仕事をする特技兵だから、兵士と言いつつも後方支援の仕事なのだと少々暢気な心持ちで読み始めたけれど、全くそんなことはなく、彼らは最前線に立ち、銃を構えて敵を迎え撃っているのが結構な衝撃だった
    戦場の凄惨さ、仲間たちや敵方の死、人種差別…それらを経験し主人公のティムは懊悩する
    章を経るごとに重たい展開が増えていき、なかなか読むのがしんどかったけれど、仲間たちの軽快な会話や料理の描写に少し救われる
    地の文の描写が本当に細かく、情景が目に浮かぶよう
    解説にあるように「厚く」感じる
    各章で謎が現れるけれど、どれもが解けたらすっきりしましためでたしというわけにはいかない
    それがまた現実的だと感じた

  • カバーのイラストと紹介文から、食べ物系+謎解き要素の緩めの内容を想像していたのですが・・・。
    読んでみれば、中身はどっしり重い戦争小説でした。

    日本人作家が描くヨーロッパ戦線。
    作者名を隠したら翻訳ものと間違いそうな、自然な描写がすごい。

  • 第二次世界大戦、アメリカ兵として志願するティムは、味音痴のエドと知り合い技術兵(コック)に所属することになる。戦線に出て兵士として活動しながら、仲間の腹を満たすコックとしても活動する。見下されながらも、祖母のレシピをお守りにして仲間と過ごしていた。

    ノルマンディー作戦や、名前は忘れたけど失敗に終わった壮絶な作戦を実行していたメンツだということにトリハダが立つ。その中で少しホッとするようなミステリーを解決することがティムの心の拠り所だった(実際に答えを出してるのはエドだが)。

    おかしなことに、戦争が結びつけてくれた仲間の絆を感じられた。明日(ていうか今この瞬間)命を落とすかもしれないのに、一緒に過ごしている。極限の中のつながりは早々切れないし、あたたかく残るものもあれば苦々しく引っ掻き傷のようになるものもある。

    ティムの祖母は本当に大事なことを孫に教えて育ててきた。エドもまた本当に大事なことを知って仲間と接してきた。言葉として出てしまったものは取り返しがつかない。言葉を、相手を考えながら私も生きていきたいな、としんみり最後は思ってしまった。

  • 戦争とコック。あまり見慣れない言葉の組み合わせに惹かれて購入しました。コックといえども現場は戦場。激しい戦争の光景に、胸が痛む場面も多いですが、戦争を他とは異なる視点から知れる一冊だと思います。

  • ロシアによるウクライナ侵攻が勃発してしばらく経った時、書店で今読んで欲しい本として並べられていた本作。

    物語はノルマンディー降下作戦で初陣を果たす合衆国陸軍のコック、19歳のティムと彼の仲間たちが戦地で起こる不可解な出来事を謎解いていくミステリー。表紙の絵とあらすじから、もっとポップなものかと思いきや、ずっしりしっかり重い戦争の物語でした。

    前半は比較的ライトで、ティムを始めとするコックたちの日常や戦地での謎解きが楽しいと感じました。ただ後半に進み、戦況が悪化していくにつれ、ティム自身もどっぷり戦争に浸かっていってしまい、こちらも本当にキツかった。ある種ティムたちの成長と青春群像劇のようでもあるが、これは到底青春なんて呼べるものではない。

    著者はこの本を書くにあたって相当よく調べられたんだろうな、と感じるし、圧倒的な筆力で迫るものがありました。

    この現実の世界で、たったいま戦争をしている地域があり、この物語で描かれているようなことが起きているのかと思うと、本当に胸が苦しいです。戦争なんて誰が得をするのか、一部の権利者のために犠牲になるのはいつだって何の罪もない市民です。そして彼らにも彼らのこれからの人生があった。死んでしまったらその人生は続かないし、生きていたとしても戦争が起こる前の自分には戻れない。戦争は人を変えてしまう。

    一刻でも早く平穏な世の中になることを祈ってやみません。

  • 初めはこういった小説をあまり読むことがなく読み進められなかったのですが、中盤以降は登場人物同士の関係性と謎解き要素が面白くなり一気に読み終えました。

  • コックたちという書名で緩い物語だと先入観を持ってしまいますが、様々な戦争の影にあたる部分がしっかり描かれています。

    いい意味でミステリー小説とはあまり感じませんでした。

  • 戦場のコックたち
    第二次大戦、ノルマンディー上陸作戦からはじまる。主人公の語り手はパラシュート歩兵連隊、G中隊隊員で管理部付きコック、後方で料理もするが、戦場にも出る兵隊さんだ。プロローグで主人公の、平和な家庭で生まれ、兵隊に志願し、訓練、コックとなった経緯が人の好さそうな調子で語られる。語り手はノルマンディー上陸作戦から参戦し、戦闘、死に直面する、をくり返し、無謀な作戦で地味に精神を削られていく。カンナで薄く剥ぎ取っていくような。戦友の死がとどめとなり語り手の精神はついに凍りつく。戦場の暴力を、戦争を肯定しはじめる。

    何が堪えるかというと、前半で戦友エドとの謎解きの話が紛れこでんいるからだ。パラシュートの使い道、糞まずい粉末卵紛失事件、奇妙な事件の底に人間くさい動機が横たわっている。軍隊とはいえ人間の集まりであることを痛感させられるのだ。連合軍はドイツの軍事力に勝っていたわけではない。ただ人間を人肉粉砕器に放り込んで、耐えていただけだ。圧倒的な物資量には、人間、も含まれるというわけだ。後半、ジリ貧になる戦闘で壊れていく心を、幽霊という言葉が無慈悲に表していると思う。

    主人公ティムの人間性は壊れたのではなく、麻痺した段階だろうか。戦友の疑惑に対する怒りがティムの麻痺した心を揺さぶる。収容所に送られた戦友を助けるためにティムが取った行動は心を持つ人間のささやかなしっぺ返しだが、とても良かった。最後の、ユダヤ人収容所を目の当たりにした絶望的な光景がまた凄い。まだ底があるのか、というか。暴力が隠された世界に再び戻れるのか、ティムが故郷に帰り着いたとき、思い出したのは「蝿の王」のラストだ。迎えに来た船を見て泣き出す子ども達。

    ティムは子どもではない。絶望も失望も踏み越え、大人になったのだ。エピローグは大人になり老人となったティムと仲間たちの話だ。プロローグとは対になってるんだろう。最後まできっちり面白かった。ありがとうございます。

  • 深緑さんは『ベルリンは晴れているか』に続いて2冊目。発表順からいえば後戻りです。
    部隊はノルマンディー上陸からベルギー、オランダと転戦する第二次大戦末期のヨーロッパ。主人公はアメリカ南部出身の志願兵。銃を持って戦い、食事時にはコックにもなる空挺師団の特技兵(コック)です。
    終戦直後のベルリンを描いた『ベルリン・・』と舞台は違いますが同じような印象を受けます。
    ミステリー仕立てであるところも同じ。5つの各章で戦場の事件の謎解きをしながら、こちらが本題の多くの一般市民も巻き込む戦争の無残さ、次第に戦争の狂気に染まって行く主人公達、さらに人種差別~ナチスのユダヤ人虐殺やアメリカの黒人差別(この時代、まだ白人と黒人は別部隊なんですね)が描かれます。特に戦争の悲惨さ狂気は、あまり情緒的に陥らず乾いた筆致で客観的に描かれるのですが、それが次々に積み重なって深く迫ってきます。
    舞台やテーマのせいもあるのでしょうが、どこか日本離れしています。人物・背景など余りに上手く描かれているので、何か上手い訳者の翻訳小説を読んでいるような気がします。もっとも私は野分さん文体は苦手なのですが。。。

  • ミステリー三賞にノミネートされた作品だが、私はミステリーというよりも心理小説の面を感じた。
    様々な戦場における兵士の心理を描いた作品で、兵士間の連帯感・憎悪や恐怖などがよく描かれていると思う。
    一介の兵士があそこまで戦場の状況を把握できるものかという意見もあるようだが、そういったマイナス点を払拭する作品だと思う。

  • 第二次世界大戦での米国とドイツの戦いが舞台。戦争の残酷さ虚しさ、人の人生や性格をも変えてしまう恐ろしさ。なぜこんなことが行われたのか、改めて考えるきっかけになった。

  • 17歳で軍に志願し、特技兵として合衆国陸軍のコックとなった少年ティム。
    いくつかの奇妙な出来事に見舞われながらも、そこで出会った仲間たちと共にヨーロッパ戦線を駆けていく。

    ミステリ、戦争、青春、グルメと様々な要素を持ちながらも、それらのうちどれでもないと思わせる。
    第二次大戦のヨーロッパにおける合衆国軍というやや遠い話を、映画をみるような鮮やかさで書き出す筆致は流石の一言。
    序盤は後方でコックを勤め、戦場にいながらも戦いから距離のある雰囲気だったが、徐々に凄惨さを増していく様は、主人公と共に戦争に引きずられていく心地がした。

    同作者の『ベルリンは晴れているか』に比べると、ミステリ部分が非日常でなく日常に伸ばされている分、若干のまとまりを欠いたような齟齬を感じる。
    しかし、戦場におけるコック、ヨーロッパ大陸の争いに参加する合衆国という、どこか嵌りきらない視点と組み合わさることによって、いわゆる戦争モノとはちがった新しい作品に仕上がっているように思う。

    巻末の参考文献から丹念に調べ上げたであろうことを信じて読むと、やはりあのころのアメリカは他国より豊かだったのだろうと思わせる場面が目についた。合衆国に帰ってくる場面では、戦争に行く前と変わらない街の風景、平和で清潔で飢えていない人々の様子が書かれている。同時期の日本を思うと、別の時代の風景を描写しているのではと思うような光景だ。
    第二次世界大戦後も多くの戦争を経験することになるアメリカだが、どれも海を越えた先でのことだった。内戦を除くと、アメリカ国内が争いに初めてまともに晒されたのは9.11だろうか。
    物語はベルリンの壁崩壊の1989年で終わっているので、その光景を彼らが目にしたのかは分からない。
    戦争、テロ、ウイルスの蔓延。
    日常と非日常の境なんて非常に曖昧なものだが、最後にエドのメガネがなくなっているのは、それでもしっかり生きていける証だと思いたい。 

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著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深緑野分の作品

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