殺人喜劇の13人 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488456054

作品紹介・あらすじ

共同下宿の古アパートで起きた、ミニコミ誌制作サークルのメンバーを狙った連続殺人の真相は? 青年探偵・森江春策初登場作にして本格ファン必読の第1回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 「森江春策」シリーズの第1弾なのだけれど、その後の森江から受ける印象とは違う大学生の森江による推理劇である。
    十沼京一の手記による前半、森江の推理による後半にわかれている。
    論理に基づいた推理。
    事件の矛盾点をつき犯人の行動を推測し、解明にむけて思考をめぐらす森江。
    時代背景が昔のためか古さを感じる場面も多いが、物語としての面白さには影響していないように感じた。
    トリックあり、アリバイ崩しあり、密室あり。
    本格派をめざして書かれた物語なのだけれど、少々中だるみというか読みにくいところもあった。
    思いついた案を詰め込むだけ詰め込んだ物語でとにかく長かった。
    それでも、手記の冒頭部分にすでに伏線となるべき状況がしっかりと描かれていたりとミステリーとして練られている部分も感じた。
    新人作家が意欲に燃えて書き上げた意欲作といったところだろうか。

  • 表紙イラストから新しい本のような印象をもったけれど、1990年出版の芦辺拓さんデビュー作。芦辺拓さんの本を読むのは「大鞠家殺人事件」に続いて2作目。
    アパートの名前は泥濘荘、元は廃病院。古くてボロくて不気味。この設定とタイトルから、これ、絶対、変死するやつ。たくさん死ぬやつと思いながら読む。
    探偵・森江春策、なかなか登場しない。謎がたまりにたまったところでようやく登場。名探偵ものらしく、解決編は鮮やか。おまえかーーー。

  • 芦辺拓の長篇ミステリ小説『殺人喜劇の13人(英題:Thirteen in a Murder Comedy)』を読みました。
    ここのところ、国内の作家の作品が続いています。

    -----story-------------
    京都にあるD**大学の文芸サークル「オンザロック」の一員で、推理小説家を目指している十沼京一は、元医院を改装した古い洋館「泥濘荘」で、仲間とともに気ままに下宿暮らしをしていた。
    だが、ある日メンバーの一人が館の望楼で縊死体となって発見される。
    それをきっかけに、次々と死に見舞われるサークル員たち。犯人はメンバーの一員か、それとも……? 
    名探偵・森江春策初登場作にして本格ミステリファン必読の書。
    第1回鮎川哲也賞受賞作。
    著者あとがき=芦辺拓/解説=千街晶之
    -----------------------

    1990年(平成2年)刊行された芦辺拓のデビュー作品で森江春策の事件簿シリーズの第1作……第1回鮎川哲也賞受賞作で、『弁護士・森江春策の事件』としてテレビドラマ化された作品です。

     ■綴じ違いの断章
      Ⅰ
     ■序章 奇人が集まった愛の園
     ■第一章 翼手竜の鳴く夜には
     ■第二章 泥濘荘検屍法廷
     ■第三章 暗がりに影を落とすもの
     ■第四章 遠く時刻表の遥か
     ■第五章 枕に中毒(あた)って殺された
     ■第六章 家探しガサ入れ大掃除
     ■第七章 死者に捧げる捜査メモ
     ■第八章 殺人講義レッスン一
     ■第九章 虚ろなものは死体の顔
     ■第十章 箸と鍋とでクリスマス
     ■第十一章 密偵(いぬ)には鞭を惜しむなかれ
     ■終章 血の文字を書いたのは誰だ
      Ⅱ
     ■1 森江春策、京都に帰る
     ■2 森江春策、傍聴席につく
     ■3 森江春策、説明を開始する
     ■4 森江春策、実演に移る
     ■綴じ忘れの最終章
     ■創元推理文庫版のためのあとがき
     ■解説 千街晶之

    縛り首、毒殺、密室、連続殺人の恐怖! 京都にあるD**大学のミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員たちが利用している共同下宿・泥濘(ぬかるみ)荘で会員の一人が縊死体で発見される……それを皮切りに止まることを知らないかのように連続殺人が繰り広げられていく、、、

    残った仲間の誰が犯人なのか!? 会員でもある探偵作家を目指す十沼京一も知恵を絞って推理を展開していくが……友人たちを助けるため、素人探偵・森江春策が立ち上がる。

    青年探偵・森江春策初登場作にして本格ミステリファン必読、大幅改稿で贈る第1回鮎川哲也賞受賞作。

    D**大学のミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員たちが次々と殺されていくというストーリー……時刻表トリックに密室トリック、暗号解読、アリバイ工作、誘拐、血文字によるダイイングメッセージ、劇中劇的な展開 等々、本格推理に欠かせない要素がたっぷり織り込まれたうえに、 犯人の正体や動機に意外性もあり、本格ミステリ好きには堪らない作品に仕上がっていましたね、、、

    13と言う数字への拘りも凄かったなー ちょっと詰め込み過ぎ感があることや、マニア気質が強いことがちょっと気になったかな……でも、愉しく読めました。

    以下、主な登場人物です。

    十沼 京一(とぬま きょういち)
     D**大学ミニコミ誌サークル「オンザロック」の会員。
     本作の前半部分の語り手。探偵作家を目指して小説を書いている。

    森江 春策(もりえ しゅんさく)
     「オンザロック」誌の客員執筆者。ずんぐりした体躯のボサボサ頭。
     大学入学以来、十沼の小説の愛読者であるが、十沼が考え出したトリックをことごとく見破っている。

    水松 みさと(みずまつ みさと)
     「オンザロック」の会員。清純派アイドルのように可愛い。

    錆田 敏郎(さびた としろう)
     「オンザロック」の会員。バサバサ髪に薄あばたのカボチャ面。
     少女漫画愛好家。泥濘荘の望楼部分で首吊り遺体で見つかる。

    加宮 朋正(かみや ともまさ)
     D**大学法学部3年生。みさとの恋人。宮崎県都城市出身。
     帰省のために乗っていたブルートレイン《彗星3号》の車内で刺殺体で発見される。

    瀬部 順平(せべ じゅんぺい)
     「オンザロック」の会員。仕送りとバイト代の大半を映画のフィルムにつぎ込んでしまう映画マニア。
     泥濘荘の一室で一人で映画を見ている時に喉を切られ死亡する。

    小藤田 久雄(ことうだ ひさお)
     「オンザロック」の会員。自室で枕に仕込まれた毒針で死亡する。

    堂埜 仁志(どうの ひとし)
     「オンザロック」の会長。温厚な性格。元ワンダーフォーゲル部員。

    海淵 武範(かいぶち たけのり)
     「オンザロック」の会員。全国紙の編集局で編集補助員のバイトをしている。窓に頭を突っ込んで死亡する。

    蟻川 曜司(ありかわ ようじ)
     「オンザロック」の会員。毒舌で皮肉屋。

    野木 勇(のぎ いさむ)
     「オンザロック」の会員。

    須藤 郁哉(すどう いくや)
     「オンザロック」の会員。毒物によって中毒死する。

    堀場 省子(ほりば しょうこ)
     「オンザロック」の会員。十沼の恋人。十沼の小説の挿画を描いてくれる。

    日疋 佳景(ひびき よしかげ)
     「オンザロック」の会員。会員の中で唯一泥濘荘に住んでいない。

    乾 美樹(いぬい みき)
     「オンザロック」の会員。かたせ梨乃と見紛うようなナイスバディ。

  • 芦辺拓。大学のサークル員が暮らす洋館てメンバーが次々に殺される話。
    前半と後半に分かれており、後半は殆ど解決編で事件は前半部分で語られるが、この前半がとても読みにくく、登場人物が多い上に次々と死んていくので、頭の中て整理しきれず何度もやめようと思った。

  • 月並みな感想で恐縮だが、真相にはとても驚いた。
    もはや「驚いた」がミステリ作品への賛辞なのかどうかも分からないけれど。

    記念すべき第一回鮎川哲也賞受賞作品(の改稿作)。
    やはり、私はこの賞を獲る作品がとても好きだなと思うし、とりわけ本格ミステリが大好きだなと思う。

    まず、部屋数の多い建物がある。
    そして、その建物は外界と断絶されている。この断絶は、心理的・物理的どちらでもよい。
    そして、密室があり、殺人が起きる。
    巻頭に建物や敷地の見取り図があると尚良い。

    そして、さんざん惨劇に見舞われたその場所に、名探偵が登場する。

    古今東西、あまりにも多くのクローズドサークルが描かれてきたが、何度そのシチュエーションに身を浸そうとも飽きることがない。むしろ、その多彩さに、毎度新鮮に驚かされている。

    前置きが長くなったが、本書である。
    型通りといえばあまりにも型通りな、クラシックなクローズドサークルもの。とはいえ、本書の「館」は完全なクローズドではない。
    京都の大学のとあるサークルメンバーが身を寄せあって暮らす、もとは病院だった建物である。
    電話線は通じるし、何より早くから警察が介入している状況ではあるが、若者特有の排他的な雰囲気やその他の要素も相まって、一種閉鎖的な空間で、事件は起きる。
    そして、終盤の探偵による演繹、鮮やかな解決。そして、シリーズ第一作でもあることからか、「次」への布石のような最後。

    例えるなら、最高の老舗の幕の内弁当を食べたような、そんな安心感と安定感があった。

  • かなりわかりにくいお話でした。
    期待の森江さんが登場するのが
    あまりに遅くて、出た途端に謎解きしちゃうし
    で、犯人は、ちゃんと逮捕されたの?
    (読み飛ばした?)
    最後の贈り主も読解力のない私には
    さっぱりでした。

  • 病院を流用した学生寮で次々と大学生が殺害されていく様子が、推理作家志望の学生の手記という形で描かれていく。解決編は面白いものの、何だか文章が読みにくくて、中盤ちょっと苦労しました。

  • 前半読んでいて、こんなにも"新の探偵"の登場を待ち望んだ小説はなかったかもしれない。

    "殺人喜劇"というだけのことはある。

    前半は読むのがつらいくらいだったが、全ての謎を解く鍵は書いてあったと思う。"小説の中の小説"だと意識して読むことをおすすめしたい。

  • ながーーーい。途中から、なんか怪しいな…これはもしかしてアリバイなくないか⁇と思ってたらやっぱり犯人でした。次々と人が殺され過ぎだし、もちろん小説だからフィクションなんだけど、それにしてもリアリティーがf^_^;隔離するとか、親なら心配で帰って来い!とか、なんかあるだろうと。そして出てくる大学生がわりとギスギス仲悪くてなんか…イヤ。推理の議論してる場面も長いし。まさかの語り手が死亡するとは思わなかったのでそこは驚きましたが。合わない作家さんなのかなぁ。残念。

  • 森江春策初登場にして鮎川哲也賞受賞作。さすがに書かれた時代が時代だけあって旧さは感じられたものの森江春策の謎解きが始まるまで数多の殺人の謎解き全てはわからず。この時代だからこそできたネタもありミステリを楽しむことは十分にできた。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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