仔羊の巣 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2006年6月18日発売)
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本 ・本 (318ページ) / ISBN・EAN: 9784488457020

作品紹介・あらすじ

季節はめぐり、僕、坂木司と鳥井真一のあいだにも、ゆっくりと変化の兆しは訪れていた。ひそやかだが確実な羽ばたきの予感、それが僕を不安にさせる。鳥井がひどい風邪をこじらせたある日、僕は同僚の吉成哲夫から、同期の女性の様子がおかしいと相談される。病気の鳥井に代わって、馴れない探偵役をつとめることとなった僕は……。また、木工教室を開くようになった木村栄三郎さんのもとで出会った男性と地下鉄の駅構内で見掛けた少年が抱える悩み、そして僕自身に降りかかる悪意の連続、それらの謎を鳥井はどう解いていくのか。坂木と鳥井、2人に加わる新たな仲間と風。ひきこもり探偵シリーズ第2弾。著者あとがき=坂木司/解説=有栖川有栖

■目次
「野性のチェシャ・キャット」
「銀河鉄道を待ちながら」
「カキの中のサンタクロース」

感想・レビュー・書評

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  • ページが進まず、文字通り頑張って読んだ。
    なのに付箋がいっぱい付いた。知らないこと(漢字も含め)沢山あったんだなあぁぁ...。
    巻末に次シリーズの紹介があり、シリーズ初長編(長編好き)と書いてあったので、もうひと頑張りして次を読む!

  • ひきこもり探偵シリーズ第二弾
    相変わらずひきこもり探偵の鳥井と
    坂木君の関係性は相変わらず
    謎も殺人などの殺伐としたものではなく
    普段の生活の中のささやかなミステリーを紐解く

    時々登場するご当地おやつなどを楽しみながら
    ゆっくりとした読書にピッタリだと思う
    今回は梅むらの豆かん!←私の大好きなオヤツ!
    ああ 食べたくなってきたな…

  • 自分以外の人のことを理解するのは本当に難しい。
    作中の利明くんのお父さんの謎を読んで、心からそう思った。

    自分はこの人から嫌われている。そう思ってしまったらもうその人には近付けなくなってしまう。
    冷たくされて傷つきたくないとか、相手も嫌だろうからとか、理由はたぶんいろいろある。
    私だって嫌いだって突っぱねることも出来るし、仕方ないよと苦笑することもきっと出来る。
    でも本当は相手に認めてほしいと心から願っているんじゃないか。
    本人が又は他の誰かが、何かの間違いだよ。別に嫌ってないよと言ってくれるのを待ち続けているんじゃないか。

    利明くんが土屋さんに伝えた登くんの気持ち。
    鳥井さんが利明くんに伝えたお父さんの気持ち。
    そのどちらもずっと2人が待ち続けていた言葉だったんだなと思う。
    それがどんなに2人の心を軽くしたか、どんなに勇気づけたかを想像すると私まで嬉しくなる。
    何故か私も勇気づけられる。


    そして状況は少し違うけれど、坂木さんも鳥井さんから言ってほしい言葉があるんじゃないかなと想像する。
    きっとその一言は坂木さんを不安から解放するんじゃないだろうか。
    大はずれかもしれないけど、その言葉を私も聞きたい。
    だから3巻を読もう。ドキドキしながら。

    • まろんさん
      人の気持ちを推しはかることも、人に気持ちを伝えることも
      ちょっとしたタイミングのズレで、大きな誤解を呼んでしまったりして、むずかしいですよね...
      人の気持ちを推しはかることも、人に気持ちを伝えることも
      ちょっとしたタイミングのズレで、大きな誤解を呼んでしまったりして、むずかしいですよね。
      そういう微妙なところを、坂木さんは繊細に丁寧に描いていてくれるから、大好きです♪

      takanatsuさんの感動的なレビューを読んでいたら
      この本の表紙の仔羊も、いっしょうけんめい思いを伝えようと
      大きな口をあけて鳴いているように見えてきて、おお!と思いました(*'-')フフ♪
      2013/02/04
    • takanatsuさん
      まろんさん、コメントありがとうございます。
      ひきこもり探偵のシリーズは読んでいてはっとする瞬間がすごく多い気がします。
      分かっていたはずなの...
      まろんさん、コメントありがとうございます。
      ひきこもり探偵のシリーズは読んでいてはっとする瞬間がすごく多い気がします。
      分かっていたはずなのに意識から薄れていた大切なことに気付ける…とでも言いますか。
      「そういう微妙なところを、坂木さんは繊細に丁寧に描いていてくれるから、大好きです♪」
      本当にその通りだなと思います。
      そしてとても優しいですよね。
      今3巻を読んでいるのですが、坂木さんの涙腺がもろくなった理由も優しいなと思いました。
      「この本の表紙の仔羊も、いっしょうけんめい思いを伝えようと」
      確かにそう見えますね!
      仔羊の声が届きますように…
      2013/02/05
  • ひきこもり探偵シリーズ第2弾。
    今回も坂木と鳥井がいろんな事件?を解決して、その過程でいろんな人と繋がって。優しい物語だった。

    今回の名言はこのへん!
    栄三郎さんとか坂木のおばあちゃんとか、人生の先輩的立場の人からの言葉が響いた。

    「想像力が足りねぇんだよ。自分のしたいことばっか考えて、他人がどうなるかなんて考えちゃいない。それが犯罪者の心理ってやつさ」

    「お前さんはこれから、もっと広い目で世の中を見なきゃいけない。世の中には、もっともっと悲しくつらいこともあるし、もっともっと楽しくて嬉しいこともある。それがわかれば、小さなことでいらつくこともなくなるだろう。そうやって、もっと大きくなんなさい。」

    「見もしない人、そこにあることも気づかない人、見えているのに見ないふりをしてる人、いろんな人がいる。でも、困っている人が司にはちゃーんと見えてる。それを困っている相手に、伝えればいいんだよ。僕はあなたを見てるよ、知ってるよ、って。」

    そして、今の自分に特に刺さったのはこれ。
    「人は、たいていのことには慣れてしまうものだという。どんなに劣悪な環境でも、虐げられた人間関係でも、慣れてしまえば我慢できるものだと。悲しみも怒りも、時と共に自分の一部になり、そして色あせる。慣れと忘却は、人にとって生きてゆくために必要な福音なのかもしれない。」
    物語とはズレるけれど、昨年度から職場で問題になっている(パワハラ?)ことがあって。その人の近くにいたからか、管理職から年度末に「大丈夫?」って確認されたのだけど、そのときに「大丈夫です」って答えてしまったら今年度もその人と同じ部署になってしまって。。。
    歓迎会でその件についていろんな人と話をしてるうちに、「あ、実は自分は思っていたよりつらかったんだな」って気づいた。その環境に慣れてしまって麻痺していたのかもしれない。
    人間、自分の置かれた環境にある程度【慣れ】ることができないと苦しくなるんだろうけど、ちょっと怖いなと思った。どうしよう、今年度。笑

    坂木と鳥井みたいに(鳥井は違うのかな)、出会えた人との繋がりをそのとき限りにしないで、ずっと大切にしていきたいなと思った。


    「それにしても今の時代、健康な心でいることはなんて難しいんだろう。鳥井だけでなく、誰もがどこかに自分なりの歪みを抱えて生きている。それを一つ一つ、僕はきちんと自分なりに消化してゆけるのだろうか。いつか、栄三郎さんのように人生の年月を経たとき、年下の人にきちんと説明できるだろうか。僕の祖母のように、幼い迷いを受け止めてあげられるだろうか。」

  • 「僕」坂木司の同僚の様子がおかしいー野生のチェシャ・キャット
    地下鉄で1時間も立ち続ける少年の目的はー銀河鉄道を待ちながら
    僕はなぜか女子高生に嫌がらせをされていてーカキの中のサンタクロース
    以上、すべて登場人物や流れがつながった3本。

    ひきこもり探偵鳥井と彼と外界のパイプである「僕」坂木司の、日常の謎シリーズ第2弾。
    1作目より読みやすかったです。
    それはたぶん、登場する「いい人」が増えてきたから。
    このシリーズは最初鳥井と坂木だけの閉ざされた関係に、巣田さんが加わり、滝本と小宮君が加わり、安藤君が加わり、栄三郎さんが加わり、中川夫妻が加わり、マリオ親子が加わり、と回を追うごとにかかわった人間が増えてゆき、そして彼らは消えることなく鳥井と坂木に交わり続ける。
    今回も地下鉄をメイン舞台にしてキャラクターが増えてゆきます。
    ある回で加害者だった人が代えがたい友人になったり、敵対していた人が別の回では素晴らしい知恵を授けてくれたりする。
    常に探偵が最上位(あるいは別次元)にいる従来のミステリーとは一線を画しているのはここではないかと。
    (有栖川センセの解説読んだばかりだから、影響うけてるなぁ・・・)

    個人的には栄三郎さんが出てくるとホっとして安心してお話が読める。だって鳥井は無礼で不安定なやつだし、坂木はお人好しですぐに泣くんだものー。
    ほっこりと面白かったです。
    未読の方はぜひ「青空の卵」を読んでからどうぞ。

  • 過去の不幸な体験から、引きこもりになってしまった鳥井。彼が社会に出ていけるように、坂木は寄り添い面倒をみる。身の回りで起きた不可解な出来事を鳥井に持ち込むのも、彼が明解な推理力で謎解きをすることにより社会への扉を開かせるためだ

    今回も坂木の持ち込む謎解きによって土屋降介や檜山利明、矢崎明日香、地下鉄の駅員の下島や斉藤など、知り合いが増えていく

    「友達の友達はみな友達だ〜」の昔タモリがやっていたお昼のバラエティの決まり文句を思い出してしまった

    いろんな年齢層の人たちが鳥井のいれたお茶と木村さんが用意したお茶菓子を食べながら、自分の意見を言い合う
    ミニコミュニティが成立している
    鳥井は引きこもりではなくなっているのでは??と思ってしまう

    バカがつくほどいい人の坂木司
    一人で世界の悲劇を解決しようとするあまり肩に力が入ったまま悩んでいた司に祖母がかけた言葉

    「優しくしてあげればいいんだよ。困っている人には、声をかけてあげればいい。一番近くにいる人からはじめて、まだ手が届くようだったら、もう少し先の人にやさしく、そういう風にしていけばいつか遠くにも届くだろう?」

    「司が見つけてあげればいいんだよ。見もしようとしない人、そこにあることも気づかない人、見えているのに見ないふりをしてる人、いろんな人がいる。でも、困っている人が司にはちゃーんと見えてる。それを困っている相手に、伝えればいいんだよ。僕はあなたを見てるよ。知ってるよって。」

    綺麗事、理想論かもしれないけれど、昨今、目を覆い
    耳を塞ぎたくなるような児童虐待のニュース、家族でありながら家族の体をなしていない家族によって起こされた悲惨な事件、近隣の人がこんな気持ちで声掛けができていれば・・・と思ってしまう

    人ごとではなく、そんな人になりたいなと思う

    このシリーズのテーマはここにあるのかもしれない

  • 相変わらず鳥井に過保護すぎる坂木氏。会社の同僚にも、わがままな彼女持ち?と誤解を招くほど、何よりも鳥井を優先してしまう。

    同僚の不審な行動、風船やヨーヨーを持って連日一時間も地下鉄のホームに立つ中学生、坂木に嫌がらせを仕掛ける女子高生。引きこもり探偵鳥井の推理はもちろん、料理の腕も冴え・・・。

    いくらなんでもちょっと絆が強すぎるようなふたりだから、滝本のように本音で問題提起してくれる人の存在も大事。

  • 安定の(?)不安定な2人で、そわそわしながら読み進めてしまう。
    自分に危害を加えられても「気持ちはわかるよ」で許してしまう坂木や周りの優しすぎる人の態度に、「それでいいのか?」ともやっとしたけど、栄三郎さんがガツンと喝を入れてくれたのでスッキリ。
    他人の子どもの頭をゲンコツで殴るのは、今どき暴力事件にもとられそうだけど、子どもをしっかりと叱ってくれる親以外の大人がいてもいいじゃないか。
    利明くんや矢崎さんは、叱られた上で、やり直す機会を与えられた、恵まれた子たちだと思う。
    鳥井と坂木の交友関係が広がっていくのも良い傾向。不安定な2人のバランスを取るように、違う良さを持った人たちが集まる。それがこのシリーズの魅力の一つでもある。

  • シリーズ二作目。
    一作目をちょっと忘れかけているけれど…鳥井が関わる人数が少しずつ増えているような。相変わらず坂木はいい人過ぎて、こんな友人がいて良かったねと思う。年齢も関係なく、友人のように思える仲間が沢山いるのは、とても良いなぁ。

    それにしても鳥井は坂木と組んで探偵を仕事にしたらいいのでは。。笑
    幼い頃に無条件に愛を注がれるのは、とても大切なことなんだなぁ。

    次作が完結編なので、どうなるのか楽しみ。

  • 青空の卵の続編。
    僕、坂木と、ひきこもりの友人鳥井が、周りで起きる小さな謎を解くシリーズ。
    今回は警察官の友人滝本が坂木に、木工教室の先生になった栄三郎さんが鳥井に、
    良い感じに扉をノック(またはパンチ?)したなぁと思う。
    謎解きのたびに新しい仲間が増え、二人だけの世界が少しずつ広がっていく様子が温かく気持ちよい。
    続きが楽しみです。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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