切れない糸 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.94
  • (298)
  • (526)
  • (294)
  • (29)
  • (5)
本棚登録 : 3083
レビュー : 348
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488457044

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 主人公は寒がりの新井和也くん。
    「待ちに待った春の始まり」を「遠距離恋愛の彼女みたいな四月」、秋の気配を感じる九月を「最愛の恋人が去ってゆくようなやりきれなさに襲われる、そんな季節だ」と表現する彼。
    もう、本当にその通り!と彼の手をとってブンブン振り回したくなる。
    寒がりでお洒落じゃない東京都民という点で新井くんを他人と思えない私としては(新井くんからしたら迷惑極まりない話だろうけど)、さらに彼が優しくて働き者なのもとても嬉しくて、ますます応援に力が入ってしまう。
    突然実家のアライクリーニング店で働くことになった新井くんは、困っている人が寄ってくるという天性の素質(?)をフル活用し、頼れるクリーニング屋さんに成長していくのだ。
    実際の謎を鮮やかに解いているのは友達の沢田くんなのだけど、困っている人を助けているのは新井くんだと私には思える。
    「それに多少お金がかかったって、新井くんが来てくれる方がいいし」なんて言われちゃうんだもん。シチュエーションが違ったら告白にしか聞こえないよ、この台詞は。

    そして新井くんのお客さんに対する気遣いは、クリーニング店という仕事にとって1番重要なこと。
    使われている生地と汚れの原因を明らかにして最適な方法で洗うことと、相手がどんな人で何に悩んでいるのかを明らかにしてその人のこれからを一緒に考えることはとても近い。
    彼の天職と言ってしまっていいのではないか。

    これから新井くんがアライクリーニング店でどんな風に成長していくのかとても気になる。
    それと寒さを克服する日が来るのかも。
    解説で待たせ過ぎと指摘されているシリーズ第二弾を私も楽しみに待ちたいと思う。

    • まろんさん
      takanatsuさ~ん!
      ひきこもり探偵シリーズに続き、この本も読んでくださって、うれしい♪
      奥ゆかしくて優しい新井くん、いいですよね~。...
      takanatsuさ~ん!
      ひきこもり探偵シリーズに続き、この本も読んでくださって、うれしい♪
      奥ゆかしくて優しい新井くん、いいですよね~。
      丁寧に、心をこめて仕事をしつつ、お客さんを気遣う。。。
      こんなクリーニングやさんがいたら、ぜったい常連になってしまいます♪

      このアライクリーニングのパートのおばさんの娘のアンちゃんの物語『和菓子のアン』とか
      『動物園の鳥』で、あたりさわりのないことしか言わなかった松谷さんが
      成長した姿をちょこっと見せる『ホテルジューシー』など
      坂木さんの本は、それぞれ繋がりを持ちながら書かれているので
      ぜひぜひ他の作品も読んで、感想を聞かせてくださいね(*'-')フフ♪
      2013/02/25
    • takanatsuさん
      まろんさん、コメントありがとうございます♪
      新井くん、いいですよねぇ♪
      大ファンになってしまいました(笑)

      そうですよね!梅本さん...
      まろんさん、コメントありがとうございます♪
      新井くん、いいですよねぇ♪
      大ファンになってしまいました(笑)

      そうですよね!梅本さんはアンちゃんのお母さんですよね!
      『和菓子のアン』の中に新井さんの跡取りについての会話があるのを発見してにやりとしてしまいました!
      『ホテルジューシー』も含めて坂木さんの本はまだまだ気になる本がたくさんあるので、読むのがとっても楽しみです♪
      2013/02/25
  • 主人公は大学卒業間近で、父の急死で実家の
    クリーニング店を継ぐ事になった和也。
    お客さんの所に集荷と配達して、集荷した洗濯物の謎を
    解く物語。探偵役は昔ながらの喫茶店で働く同級生。
    クリーニング店の仕事のこともわかります。

    従業員のシゲさん、パートのおばちゃん、商店街の人々
    読んでいて、ほっこりとした気持ちになりました。

  • 読んでいて、心に明かりが灯るような1冊でした。

    商店街のクリーニング屋さんを舞台にした、日常ミステリーです。

    著者が、“1話限りで去ってしまう使い捨ての人物や「死ねば事件だ」のような話は書きたくなかった”と発言されていたとあとがきにあるように、描かれる人物や日々のできごとに愛情が込められているのがわかります。

    刊行はこちらの方が先ですが、和菓子のアンでお馴染みのあの人も登場します。それは、思わず親しい友人に再会したかのような嬉しさで。

    私、坂木さんの描く登場人物が本当に大好きで、誰も彼もがすごく魅力的なんです。
    「クリーニング屋」という仕事に少しずつ誇りを持って取り組む主人公も大好きだし、義理人情に厚いプロ職人のシゲさんも好き。そして共通するのはみんなとても優しいというところ。
    著者が周りに愛されて育って、それを感謝する気持ちを常に持っていることが伝わってきて、胸が本当に温かくなります。

    さて、ミステリーとしては顧客の個人情報が詰まった洋服等を集荷しながら、謎を解いていくスタイル。
    クリーニング関連の豆知識も知ることができておもしろかったです。
    クリーニングから戻ってきた服のビニール袋は外すこと、というのは知っていましたが、汚れたらすぐに洗えばいい、という素材ばかりでないこと等知らなかったこともたくさん。
    和菓子のアンでは全国のお取り寄せが登場して楽しめましたが、今回は映画が作中でいくつも紹介されます。
    物語の本筋とは違うけれど、読み手には嬉しいおまけをつけてくれるのもすごく楽しめる要因の1つです。

    『バグダッド・カフェ』はちょっと観てみたい。
    故郷らしい故郷がない私は、こういう生まれ育った町、とか、商店街の顔なじみの関係、とかすごく憧れます。
    きっと煩わしいこともあるんでしょうけれど、顔の見える関係が温かいですよね。
    読み終わってタイトルを見ると、改めていいタイトルだなぁと思ったり、次作もとても楽しみです。

  • 坂木司さんは、私が生きていく先々で必要な作家さんだと思う。

    彼の作品のほとんどに共通しているのだが、連作短編として成立している日常ミステリーなのに、その謎を解く主人公らの人生に秘められた謎が明らかになってゆく。

    いや。

    謎解きというシチュエーションの中で出会う人々がいる。そのゆるやかな繋がりの中で頑なな心がほぐれ、抱えていた重荷を肩からおろし、離れても切れることのない大切な人に出会えたことで、新しい自分を手に入れる。

    人は適切な時期に、自分が変わるきっかけとなる人と出会う。私はこれまでの人生で、そのことを学んできた。

    この作家さんの作品に触れるようになって、もうひとつ学んだ。

    自分が変わるきっかけをくれる人もまた、自分との出会いで変わるのだ。

    互いが響き合う。通じる言葉も時間の共有も必要のない、目には見えない「根」を持つ繋がり。

    「切れない糸」というタイトルは、率直なメッセージでした。この作品に出会って、私もカズのような人に拾ってほしいと思い、沢田のような友人を大切にできる人になりたいと思い、シゲさんのような大人に認めてもらえるような人生を送りたいと思った。

    もちろん、クリーニング屋のプロの仕事に初めて触れ、また尊敬する人たちが増えてきた。私には絶対にできないことを、一連の美しい動きで、生きることの一部として当たり前にこなすプロたちは、本当にすごい。

    私の心をほぐし、歪みを直してくれた。素敵な小説。ミステリーは人の心に触れるための道具と心得て、その奥の深みを味わってほしい。

    私はもう、次の坂木作品の表紙に手をかけています。

  • ★3.5
    坂木さんの小説は、一杯のコーヒや一枚のフレンチトーストが素敵なご馳走のように感じるから好きだ。
    ささいなことを素晴らしい1つのように表現するには、それが素晴らしいのだと思わせる雰囲気が必要だと思う。
    そういった小さな魅力を充分に引き出している小説だから、読んでいてなんだか心地いい。
    登場人物も魅力的で、シリーズになるらしいので第2弾も楽しみにしています。

  • 困ってる人や動物が寄ってきてしまう主人公が、父亡き後、家業のクリーニング屋を継いで、不可解な出来事を解決していく話。

    そこそこ楽しめましたが腑に落ちないことも多かったというのが本音です。

    ミステリーとして派手さがないとか展開が読みやすいいうことではなく、身近な事件を取り上げてるわりに、全体的に不自然な香りがするというか。

    体言止めの乱用も好きではないし、苦手とする部類の作家さんかもしれません。

  • ミステリーという感じはしなくて、主人公の成長と、人のつながりの物語という印象でした。
    クリーニングにまつわる薀蓄が面白くて、それがうまくストーリーにはまっている感じ。

    ただこの本に限らずなんだけど、安楽椅子探偵ものの探偵がスーパーマンすぎる気がして、最近どうも素直に読めないところもあるかも(^^;;;

  • 思いがけず商店街のクリーニング屋さんを継ぐことになった、大学生の新井和也クン。その周囲には、新井クリーニング店のアイロン職人シゲさん、母親、3人のパートのおばちゃん(その一人、梅本さんは「和菓子のアン」ちゃんの母親)、喫茶店ロッキーで働く沢田くん、幼なじみの糸村麻由子(不動産屋の娘)など、商店街の面々が。忘れないようにここに書いておきたい、愛すべき商店街の人たち。
    クリーニング屋は個人情報が集まってくる、そこから謎が生まれる。その個人情報を、その人のためだけに使う優しさ、と解説にあるとおり、主に沢田君の推理で解決していく、人情あふれる商店街のお話。
    文庫本解説の大矢博子さんがおっしゃるとおり、続編あってもいいですよね。まだまだ読みたい商店街物語です。

  • 坂木作品の主人公はいつも普通のカテゴリに属しているように最初は思える。
    だけど、話が進むにつれて、アライ君の温かくて人が良いところ、分別が備わっているところ、人の忠告を聞く素直な面があるところ、一つ一つ彼が好青年であると伝えてくる。

    クリーニング店はセレブとか専門性といったイメージが持たれにくい印象だけど、こんなに化学や流行に密接に関係する職業だと、初めて知って驚いた。そんなに考えてくれてるんだ、と。

    どんな職業にだってプロはいて、極めればとってもカッコいい。
    自分が只面倒だと適当にやった仕事がどんな結末を生むか、想像できるだろうか。
    ライター1つチェックがもれただけで工場が爆発する。まさかそんなことになるなんて知らなかった、では済まない。
    シゲさんの忠告一つ一つに説得力あり、やはり職人が言う最もな理由というのはとても大事だとおもった。

    仕事に手を抜いてしまう理由なんていくらでもあるけど、その理由に、どうなるか想像できてなかった。ということがあるんじゃないかと思った。

    医療関係だと手を抜けば命が失われるという最大のリスクを分かりやすくしょっている。そんな明確なリスクがあることを自分で想像できれば良いのになぁ、なんてことを真面目に考えてしまった。とても心暖まるお話だった。

  • 和菓子のアンが面白かったので、借りてみた。
    和菓子のアンちゃんが住んでいる商店街のクリーニング屋さん(アンちゃんのお母さんのパート先)のお話。

    クリーニングの工程なんて考えたことなかったけど、面白い。
    沢田の印象の方が強いせいか、主人公の印象薄い気がする。
    何で主人公のところにわけありな人が集まってくるのか、もう少し丁寧に描いてほしかった、、、


    (図書館)

全348件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年東京都生まれ。2002年『青空の卵』で<覆面作家>としてデビュー。続く「ひきこもり探偵」シリーズとして人気を得る。ナイーヴで魅力的な人間像、緻密に描かれ、爽快に解かれる日常の不思議とこころの謎が圧倒的な支持を集めている。13年『和菓子のアン』で第2回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。他の著作に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『僕と先生』『肉小説集』『女子的生活』などがある。

「2017年 『鶏小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

切れない糸 (創元推理文庫)のその他の作品

坂木司の作品

切れない糸 (創元推理文庫)に関連する談話室の質問

切れない糸 (創元推理文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする