アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488464011

感想・レビュー・書評

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  • 不思議なことに読後感のさわやかな作品だった。

    なぜ「不思議なことに」なのかというと、
    ハッピーエンドとは言い難いと思うから。
    でも、悠久の時を感じさせる風を感じた。
                                                                                                                                                                                              
    現在と二年前の物語が交互に語られる。
    「現在」の語り手は、仙台にやって来た大学新入生の椎名。
    独り暮らしを始めたばかりの部屋から予期せぬことが始まる。
    「二年前」のストーリーを語るのは、琴美という若い女性。
    琴美とその友人たちの間にあった物語は、濃密で切ない。
    ひょんなことから、椎名はそこに飛び入り参加して
    彼らの物語の終わりに巻き込まれることになる。
                                                                                                                                                                                                                                                
    伊坂幸太郎さんの作品はこれが三作目。
    読んだばかりの「陽気なギャング」でいい味を出していた響野祥子さん。
    今回、ちょっとだけ出演。
    全く別の作品への 突然の登場で、嬉しくなってしまった。
                                                                                                       
    伊坂さんの作品には、ユーモアあふれる台詞回しが随所に見られ
    読んでいて楽しくなる。 
                       
    コインロッカーのあとの最後のシーン。
    琴美さんが見た夢(?)が思い出されて切ない。
    それでも、物語はまだまだ続いていくような
    未来永劫を感じさせてくれるような、そんな物語だった。

  • 「一緒に本屋を襲わないか」から繋がる、過去と現在。
    たくさんの伏線も、あれこれ考えながらも、次が知りたくて読み進めた。
    終わりは切ないけど大好きな作品。

  • 伊坂さん作品にハマっていた時期に読了。
    伊坂さんのの作品らしく、登場人物に魅力があり飽きることなく読み進められました。

    途中時系列がややこしすぎて読みづらい部分がありましたが、最後には解決。
    ドルジがこの二年間どのような心持ちで生きてきたのか。動物虐待のシーンは読むのが辛く結末も悲しいけれど、ブータンの価値観「生まれ変わりを信じる」ことで少し救われる。
    複雑なあたたかさを感じる読後でした。

  • もうね、伊坂さんは最高だと思います。過去と現在を行き来しながら物語が進み、あらゆる所に張られた伏線を回収していく…読み終わったあと、余韻に浸って10分間は放心してしまいます笑

    伊坂さんの作品には、毎回のように私の心に刺さるセリフが出てくるのですが、今回は外人に対するある登場人物のセリフが大変深く刺さりました…。「ああ、私も大学入学時は世界を知らなかったし、知る努力もしなかった。見ず知らずの他人を思いやる気持ちも持たなかったなぁ」と、昔を思い出しました。大学生以上の方にオススメしたい本です。

  • 「一緒に本屋を襲わないか」と本屋襲撃を持ちかけられる現在と、動物虐待犯を追う二年前。この二つを交互に行き来しながら話が進んでいきます。
    一見関係無さそうな二つの話が次第に交わっていく過程と、そこからの伏線回収が面白くてページを捲る手が止まらなかった。
    そして最後に待ち受ける結末は切ないながらも、心地の良い読後感だった。
    伊坂作品は初めてだったんですけど、登場人物の言葉回しや、テンポがリズミカルで、読んでて楽しかった。
    他の作品も読んでいきたいな〜。

  • やられた。

    2日前に出会ったばかりの隣人のために強盗を手伝わされる『僕』。

    それも、広辞苑を一冊、盗むためだけに。

    冒頭から違和感(何コレ!)ありまくりで、物語は、「現在」と「二年前」が交互に描写され、平行して進んでいく。

    難点を一つ言えば、本作の中で明確に区切られている「現在」と「二年前」が、頭の中で切り替えが難しかったところ。(僕の頭の問題かもしれない)

    ずっと映画を観たいと思っていた作品の原作なので、僕には映像の方が楽しめるのかもしれない。

    さて、読み始めの数十ページの段階で、ラストまでの道筋が想起される読者はいるのだろうか・・・。

  • 主人公の椎名が、アパートの隣人である川崎から本屋を襲う計画を持ちかけられるところから始まる本書。
    意味のわからないタイトルと、本屋から広辞苑1冊を奪うという、こちらも意味不明な計画に、先が全く見えない状態で読み進めた。
    話の展開が『現在』のパートと、『二年前』のパートを交互に繰り返す描写で話が進んでいく。

    『現在』のパートでは、大学生の椎名とアパートの隣人の川崎を中心に話が展開する。
    『二年前』のパートでは、ペットショップ店員の琴美とブータンからの留学生ドルジ、そしてそこに川崎が絡む形で話が進む。
    過去のパートで描かれる、動物虐待の場面や犯人の陰湿さは読んでいて不快だった。それに、ペット殺しと対峙することになる琴美のことも心配でハラハラさせられた。

    椎名が真相に近づいていく終盤、『川崎君と、ブータン人のドルジ、それからもう一人、女の子で、琴美ちゃんという子。彼ら三人には三人の物語があって、その終わりに君が巻き込まれた。』という言葉を掛けられる。

    言葉の通り、物語の終わりは淡々としていて哀しかった。ただ、ブータンのおおらかな国民性や輪廻転生の思想、それに登場人物のやり取りにクスッとさせられる場面も多く、哀しいだけではないのかなとも感じた。主人公椎名のおかげかもしれないが、少し前を向けるような終わり方が個人的にはとても良かった。

  • レビューを書いていなかったので、内容を全く覚えていないが、メモの方に記入があったので、転載しておく。
    星は読んだ当時に付けたもの。

    2011.07 図書館
    「僕はいかにも自分が主人公であるような気分で生きているけれど、よく考えてみれば、他人の人生の中では脇役に過ぎない。そんなことに、今さらながらに気がついた。」…なるほどと思う。
    「台風とかさ、地震とかと一緒。こっちが悪いことしてなくても、襲ってくるものってあるんだよ。理不尽なことって」…同感。まさに「きょうだい」からの攻撃はこれである。
    「祥子叔母さんが喫茶店を経営しているからだろう。響野という少々変わった旦那さんと、夫婦でやっている。」…喫茶店経営の響野は今まで読んだ伊坂氏作品に出てきていたと思う。

    2024.03 エッセイ『3652』を読んでいる。
    伊坂さんの初めての海外旅行は10代の頃で、弟と共に母親に強引に連れて行かれたブータンだったとのこと。
    そして2004年に本書にブータン人が登場しているとのこと。
    本作は、デビュー前に書いた小説が元になっている。

  • きちんと伊坂幸太郎の手のひらで踊らされました笑
    登場人物たち(特に琴美)に対して色々言いたくなってしまうことがあったが、本の感想では無くなってしまうので割愛…

    暗くなってしまう展開を、お得意の軽妙なテンポで読みやすく変えてしまうのはさすがでした。
    たしかに面白いのですが、ただもう砂漠や、マリアビートル並みの作品は出てこないのかなと思ってしまった。

  • あたしには何か悲しいお話しでした...

    ほぼ一気読みで堪能です。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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