屍人荘の殺人 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488466114

感想・レビュー・書評

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  • 本格推理×ゾンビというぶっ飛び設定だけど、ちゃんと本格推理しててすごい。
    まず、明智さんが序盤で死んでびっくり。その後に復活して主人公達と合流→なぜ明智さんはゾンビにならなかったの!?→それはね、、、という展開を予想していた、、、
    この作品の一番のミスリードは、探偵の助手的立場の主人公が、犯人を知っていて、あえて隠していたというもの。清々しいほどに裏切られました。
    ただ、主人公が犯人と取引した理由(死人の荷物を漁って私物を取り返すという恥辱を他人に知られたくない)が、いまいち共感できず、そこだけ腑に落ちなかったです!

  • 映画化もされた今村昌弘氏のベストセラー本。言わずと知れたミステリー小説です。シリーズになっており、ほかには「魔眼の匣の殺人」と「兇人邸の殺人」が発行されています。

     一言で表すなら、「仕掛けは本格派、文章はライトめ」という感じの本です。
     「ラノベっぽい」という意見がレビューサイトでちらほらしているのは、女性登場人物に対する主人公の独白が露骨な表現だったり、心の中でツッコミを入れる文章の雰囲気がラノベそのものだからでしょう。始終、まじめな文体の続く本格ミステリ小説とはかなり違っていて、ここは意見の分かれるところだと思います。
     トリックについては、ミステリばかりを読んでいる人には物足りないかもしれませんが、少なくとも子供だましだとか単純な仕掛けだとは思いませんでした。
     SF要素がミステリに入ってくるのにも賛否両論あるかと思いますが、私個人としては他にないオリジナリティを追求した著者ならではの作風と捉えました。良くも悪くも奇抜で、他にはない作品だと思います。

     残念だと思ったのは、
     ・「じゃない方」が残ってしまった感(=あのキャラクターには生きていて欲しかった)
     ・主人公にイマイチ感情移入できない。特に犯人に「被害者だっていいところがあったんだよ」のくだりは本当に「君は被害者じゃないからねえ……」としか言えない
     ・主人公の独白がラノベっぽくて違和感。「細身のわりに~」の辺りなど特に

     個人的には以上3点でした。
     奇抜さも面白い要素として楽しめたし、トリックも良かったのですが、続編を読むかどうかは考え中。 
     とはいえ、展開が気になって本当にあっという間に読み終えてしまいましたし、こんなに斬新なミステリも見たことがないので、興味のある方は楽しんでみてください。

  • 『ミステリ好きによるミステリ好きのための小説』
    新しい形のクローズド・サークルで起こる連続殺人事件に挑む名探偵とワトソンの話

    読み進めていくと、あることにより主人公たちは宿泊施設に籠城せざるをえなくなる。
    このとき、ミステリというよりエンタメといった感じがして、やや興ざめした節があった。この設定で何が『本格推理小説』だ?というような。
    がしかし、さらに読み進めるとそんなことはない。「これが絡んでくるんだろうな」というピースを読者に与えつつもトリックの本質にはなかなかたどり着けないようになっており、読者は集めたピースをヒントにし、誰がどうやって殺したのか、あれやこれや推理することになる。
    ……あれ?これは完全にミステリ、というか本格推理小説じゃないか。
    エンタメ要素だと勘違いしたあることは、この物語においては主軸ではなく、ただの材料に過ぎなかった。
    他の物語であることが出てきたら、それは大体、その話の主軸になることなのに、それをあえてただの材料としてミステリを成立させているため、この小説はエンタメ小説ではなくミステリ小説として傑作だと感じた。

    作中にも出てくるフーダニット・ハウダニット・ホワイダニット
    その中でハウダニットは比較的わかりやすいのかな、と感じた。ヒントが作中で述べられているため、論理的に考えるとこれしか方法がないのかな?といった感じで導き出せた。
    次にフーダニットもわかりやすい。こちらもミステリの基本だが、消去法で考えると絞り込めた。
    最後にホワイダニット。これはわからなかった!誰がどのように殺したかわかったからこそ「いや、だから何でよ?」とずっとわからないまま最後を迎えてしまった。そしてこれが語られて明らかになったとき…納得と恐怖に全身の鳥肌が止まらなかった。

    また、ミステリ小説でありがちの「これ誰だったっけ問題」も、直感的にわかりやすくなっている。
    これが読者の推理を助けるとともに、読者が物語にスッと没入できるように工夫されており、作者の優しさが垣間見える。
    「ミステリ小説って難しそうだな」「登場人物が多くて混乱する」といった抵抗感がある人にこそ、導入作品として読んでほしい一冊となった。

    ミステリ初心者にとっては読みやすく、読み慣れている人にとっては読み応えのある、万人受けするミステリ小説だと思った。
    誰にでも「まずこれを読んでみな」とオススメできる一冊です!

  • 斬新な設定に度肝を抜かれた。

    探偵コンビを始め登場人物も魅力的で一気に読了。

    心残りとしては、明智先輩があまり活躍できないまま○○○の犠牲になってしまったこと。。。

  • 映画版がつまらなかったため原作を読んだ。もしかしたら改変の被害に遭っただけなのではないかと思って。

    読んでみると、意図のわからない(不要と思われる)改変はいくつもあったが、大筋は原作通りだった。
    さすがにトリックや謎解きはこちらの方が凝っていて面白かったが、なぜこの作品がそこまで絶賛されているのかはわからなかった。

    たしかにトリックはしっかりしているし下手な後出しなどもなく、あらかじめ与えられた情報だけて推理できるようになっている(ことが多い)ので、「本格ミステリー」と読んでも差し支えないのかもしれない。
    しかし、では「傑作」と呼べるかと言われると⋯⋯。

    犯人の動機に至っては圧倒的に映画版の方が納得感があった。

    よくある王道のミステリーは読み飽きていて、奇をてらった作品が読みたい人には丁度いいのかもしれない。
    私はミステリーはまだまだ王道の作品が好きだ。

  • 今村昌弘氏のデビュー作であり、その年の各ミステリ関連賞を総ナメにしたといっていい、自分が注目しているのは宝島社の「このミステリがすごい」であるが、そこでも堂々の第1位。その時の事前情報としては「クローズドサークル」ものであることくらい、新人作家で並みいる大家の作家先生を押しやっての第1位である。もちろん気にはなっていた、そうこうしてる間に映画化、ヒロインである美少女探偵役に浜辺美波氏!気になる度が急上昇!そして文庫化されたので読了となった。


    はっきり言ってめっちゃ面白かった。本格ミステリではあるがエンタメ度が抜群であり、鮎川哲也賞の選考委員、加納朋子氏の言葉「抜群に面白かった」これがそのまま一読者である自分に刺さった。そしてシリーズ化されるようであり、マストリードのシリーズがまた増えることとなってしまった。以下ネタバレあります!ご注意ください!

























    まず驚愕の展開である、クローズドサークルを形成する要因、絶海の孤島、雪山の山荘、豪華客船、疾走する超特急、古今東西様々なシチュエーションがあり、設定としては出尽くした感を否めなかった自分である。クローズドサークルで各賞を総ナメにしていることに当初はやや当惑していたのもここに起因する。今作の成功の大きな割合はこの舞台設定であろう、今作の舞台屍人荘ではゾンビの大群に包囲されてしまうのだ!ここはそれなりの要因(感染テロ)が語られており、問題はない。ゾンビについては映像作品の方が多く、立てこもりを余技なくされる展開はお約束である。通信設備も使用不可となり、外部を頼ることもできない。そのような状況下で殺人事件が発生する。


    しかも被害者の部屋は完全なる密室で、殺害方法はゾンビに襲われたとしか思えない状況、二重の密室状況を如何にして解決するのか?このあたりまで来ると、読者はノンストップで読了へと突き進むこととなる。


    ゾンビに包囲される危機的状況でのクローズドサークル、今作のゾンビはスロータイプであり、動作は緩慢で知性もない、身体的優位性は無尽蔵のスタミナのみ、しかしこのスタミナに支えられた包囲網が与える心理的プレッシャーは、全編を通して登場人物を飲み込もうとする。これに対応していくことによってエンタメ度が上がり、タイムリミットサスペンスの様相をも呈してくるのだ!キャラごとにそのプレッシャーを丁寧に描き、各々の過去とも対比させキャラ造形にも良い影響を与えていたと思う。


    メインとなるキャラは読者代表としてのワトソン約「葉村譲」と探偵役「剣崎比留子」である。葉村くんはミステリ愛好会メンバーであり、いわゆる読者視点の普通のミステリ好きである。彼の推理はミステリの定跡であり、読者の思惑そのままである。剣崎嬢は当初より事件解決実績ある探偵少女である、彼女の視点は葉村くんとは異なる。そして彼女が導き出す真実は、葉村くん視点でヒントを得ながらも迷宮をただ彷徨う読者を、光の下へと導く鮮やかなものであった。


    映画化にあたって剣崎比留子を浜辺美波が演じている。作者はこのキャスティングを想像しながら執筆したのだろうか?時折の笑い要素も含めて、ピッタリのはまり役だったと思う。映画はまだ未視聴であるが…


    そして葉村くんの先輩、明智恭介氏が早々と退場してしまったのは残念であった。よいキャラだったのに…


    次作「魔眼の匣の殺人」単行本は上梓されている、すぐに読みたいのだけども…

  • 悪い意味で予想外の展開。

  • 心躍るクローズドサークル。本格ミステリの愉しさが詰まった逸品でした。

    時折り差し込まれる葉村の心の声も、とってもチャーミング。

    こんなに意外で王道なミステリがまだ世に生まれるんだと、ときめかざるを得ない一冊です。

  • 本格ミステリ×ゾンビ!     
    ゾンビに囲われたペンション内で密室殺人!    
    ホラーテイストなのかと思ったらそういうわけでもなく、面白い。   
    パニック物なのかと思ったらそういうわけでもなく、面白い。    
    普通にミステリ。普通に本格。大変面白い。

  • 自分が守っている当然の正論も、
    許せないと思う悪も、
    絶対ではないので恐ろしい。
    単純な絶対悪として描くこともできたはずの立浪が
    ある種魅力的な人物のように描かれていて、
    醜い部分だけを切り取って、人でなし許せないと叫ぶことは怖い。
    一方で当事者からしたらその1点だけをもって許せないと復讐に匹敵する事柄になることは当然にある。
    しかし、静原の殺意の起因となる復讐心は、もっと密接な関係性の人物が持った方がわかりやすく感情移入しやすい。
    誰かに全面的に共感することも批判することもできない。
    それはゾンビに象られたエゴや心象の投影で、ゾンビはあらゆるもののファクターである気がする。
    非現実なゾンビという特殊設定を本格ミステリに落とし込みながら、曖昧な正論や悪、エゴの象徴になっているところが圧巻される。

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著者プロフィール

1985年長崎県生まれ。岡山大学卒。2017年『屍人荘の殺人』で第27回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。同作は『このミステリーがすごい!』、〈週刊文春〉ミステリーベスト10、『本格ミステリ・ベスト10』で第1位を獲得し、第18回本格ミステリ大賞[小説部門]を受賞、第15回本屋大賞第3位に選出。映画化、コミカライズもされた。シリーズ第2弾『魔眼の匣の殺人』も各ミステリランキングベスト3に連続ランクイン。2021年、テレビドラマ『ネメシス』に脚本協力として参加。いま最も注目される期待の俊英。

「2021年 『兇人邸の殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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