花嫁人形 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488467067

感想・レビュー・書評

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  •  孤児シリーズの3作目。

     4姉妹のいる裕福な家庭にいながら、昭菜(あきな)は愛情も教育も与えられず孤独に育つ。

     縁故や血縁と企業が絡んで、昭菜は不幸な境遇においやられるのだが…。
     怒りを覚えた。
     大企業が子供を不幸にする、そのことに微塵の正当性はない。それがわからない阿呆ばかりで、ホントむかつくのだ。

     でもって、結局のところ自我のない昭菜は、叔父に恋をする。
     姉妹や父母の前では、平気で彼女をないがしろにし、その裏で彼女に教育を与え…本文中でもなんだかんだとそしられていたけど、ある意味最低の男なのだ。
     が、ある意味自我が欠乏いている彼女にはそれがわからない。
     むしろ、彼女主観の物語ゆえに、叔父はあくまで毅然として素敵な男性として描かれているのだ。

     恋は盲目とは、よくいったもんだ。

     彼女の生い立ちや、とある事件とか、つきつめると矛盾してることが多い。いや、そういう矛盾を抱えながら暮らしいる本岡家がそもそも病んでいるのか。
     それらを、少女の主観という、ある種の暴力で昇華していっているのは、やっぱりすごいと思う。

     結末に、なんだかんだといってうるっとしちゃったのは内緒ですww

  • 【秘めやかに。恋を、愛を、友情をー】
    『雪の断章』『忘れな草』に続いて第三弾。
    家族の物語。昭菜はこれまでの主人公以上に父と母が近い。
    それでも、感情に戸惑い行動は伴わず思いはすれ違う。
    これまでの登場人物が現れて昭菜と関わってくるシーンには、ジンとくるものがあった。

  • 本作でわかった気がするが、佐々木丸美は私には美しすぎる。

  • このシリーズのヒロインたちに対する周囲の大人の仕打ちはことごとくひどいのだけど、これは最悪だ。
    「雪の断章」ではほんの6歳かそこらの少女を女中代りにこき使い、「忘れな草」では二人の少女を常に比較することで精神的に追い詰め、この作品では学齢期になっても学校に行かせることもなく、独学でひらがなの読み書きを覚えたのを知りノートと万年筆をとり上げる。食事も満足に与えない。家族は彼女に声をかけるどころか、視線を向ける事すら稀なのだ。
    これは犯罪でしょうが!

    昭菜(あきな)の家族はもちろん彼女と血は繋がっていない。
    娘が4人もいる家にもうひとり娘がもらわれてくるのには理由があるのだけど、それにしてもこの仕打ち。

    で、例によって彼女は一緒に暮らしている若い男性に恋をする。
    育ての母の弟、つまり血は繋がっていないけれど叔父だ。
    家族同然の彼は昭菜が辛い思いをしていても、人前では無視をする。誰もいないときは優しくても、一番辛い時にかばってくれない男なんてダメじゃん。
    だけど、ロミオとジュリエットのように人目を忍んで愛し合うんだね。

    「雪の断章」では聖子が殺され、「忘れな草」では楊子が自殺し、この作品では郁が自殺し織の精神は崩壊する。
    ヒロインたちの幸せのために、何人の女性が不幸になっていくのか。
    そして、年上の彼氏たちはどいつもこいつももったいぶった話しぶりで個性がなく、ついでに言うと魅力もないなあ。

    一度も学校に通ったことのない昭菜は、週に一度、夜中に叔父の壮嗣(つよし)から学問を教えてもらうのだが、その際、学校へやらなかった両親を恨んではいけないと壮嗣が言ったセリフが噴飯もの。

    “こういうものだよと型にはめられて教壇から教えられたなら素朴な疑問などむしりとられるだろう。はいそうですかとまっすぐ受け入れて思考を停止し、そのまま大人になって社会を動かす時に、やはりあるがままの社会をはいそうですねと受け入れるだろう。思考から創造へと発展させる何かが教壇で忘れられているのだろう。”
    だからと言って教育を受ける権利をとり上げていいの?

    そして門の外に出たことがなく、もちろん買い物などしたこともない昭菜に政治や経済の勉強。

    “どんな学者が経済を科学しようとも、どんな政治家が国を治めてどんな政党が批難しようとも、人間がもっとうまい物を食べたい、もっと楽をしたいと思う気持ちがある限り経済はどんな形態をとろうともいつか軋んでくる。だから一つの政治形態をつついてあれこれ言うよりも、人間個人の欲望と見栄にすべての悪があることを知りなさい。”
    叔父・壮嗣は就職してまだ一年未満。
    実に鼻持ちならない。

    次で4部作の最後。
    すっきりと終われるのだろうか。

  • 雪の断章ほどの感動はなく、忘れな草ほどのがっかり感もなく…。

  • 孤児。血縁。企業。

  • 相変わらず天然っぽくて天才的な文体。
    佐々木丸美の作品は徐々に読んでいってるけど、毎回この文体には凄いと思わされる。
    全文が詩のようであり、少女の感性と哲学に満ちている。
    真似できない境地。

    しかしどうして彼はあんなにモテるのか。
    踏み出すこともあるけれど、自己保身と企業の論理にしばられている。
    企業の論理が人間関係の重要な部分にまで影響してしまう世界観ってのも当時の日本独自のものかも。

  • ※他作品もネタバレ。
    再読。北一商事社長の本岡家一家と叔父(社長夫人の弟の壮嗣)と孤児(昭菜)の物語。孤児という理由だけでなく、三大企業の継承権を持つ故に一家に虐げられてきた昭菜が、唯一優しく(?)してくれた壮嗣に憧れるのは分かる。ただ、世間一般でいうと壮嗣は最低だと思うよ…。すんなり矢島一族の娘と婚約した辺り、昭菜が行動しなかったらそれまでと考えていたのでは(-.-;)?祐也さんは飛鳥、高杉は葵への愛があることを感じますが、壮嗣分かりづらいよ。

  • 先が気になってついつい読み進めてしまった。
    が、結末が読めなくて、なんとなくすっきりしない。

  • 孤児シリーズ3作目

    所持していたのは講談社文庫版だが、表紙が未表示で淋しいのでこちらで登録

    ---Amazon商品内容より(「BOOK」データベースより)
    父と母、そして四人の姉妹。幸福な家庭の中で、血の繋がらない昭菜だけは教育も与えられず、孤独に育った。叔父の壮嗣は陰で時々優しくしてくれるが、皆の前では末娘の織ばかりを可愛がる。孤児という境遇と許されぬ恋に苦しむ昭菜は、ある事件をきっかけに、新たな秘密と罪を背負うことになる。血縁と企業が絡んだ宿命に翻弄される人々を描く…

    -以下覚書:ネタバレあり
    前2作の従姉妹達と違い、少なくともまともな家庭に残された昭菜
    ただし昭菜に遺恨があるため、おおっぴらに情を示せない家族

    叔父:壮嗣が今回の王子♪
    姫:昭菜は3作中一番素直
    …だけに哀れ
    野菜の皮や根を食してたのはこの娘だったか?
    …いや実際、そこは一番栄養ある部分なんだよ(笑)
    ほら、料理上手で美人になって健気だから王子をGetしたではないか(笑)

    1作目で裕也さんが会っていたのは三女:郁ちゃんだったんだっけか?

    1作目の登場人物達が多忙な時はこんな処にいたのかなどニヤリ場面あり

    未所持につき細部確認不可なのが残念

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