インディゴの夜 (創元推理文庫 M か 5-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488468019

作品紹介・あらすじ

「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」フリーライター・高原晶の一言から生まれた、渋谷のホストクラブ。店の評判は上々だが、なぜか次次と事件に巻き込まれる晶たち。それらを解決するために、個性的なホスト探偵団が夜の街を活き活きと駆け巡る!第10回創元推理短編賞受賞作を含む連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの再読。
    初読は単行本で読んだが今回は文庫の方で。
    単行本の初版が2005年なので15年も前の作品なので時折時代を感じる部分もあるが内容は変わらず面白い。
    私にとっての初加藤作品は確かこの作品だった。

    『クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに』
    という、主人公・高原晶の何気ない一言から相棒・塩谷馨と経営することになった<club indigo>は、ホストもスタッフも個性派揃い。
    そのindligoのメンバーたちが様々な事件に遭遇したり応援を頼まれる度にホスト探偵団を結成し奔走し解決へと導く内容だ。

    こう書くととてもコミカルでユーモア満載のドタバタミステリーっぽいが、改めて読み返してみると結構ハードボイルドしている。
    文体は軽快だし時折挟まれるユーモアも楽しいのでテンポよく読めるのだが、苦い結末の話も混ざっていた。

    当時はあまり注目されていなかった『多様性』という言葉ぴったりな作品だなと思う。
    何しろ『客の顔と名前を覚えられない』というホストとして致命的な欠陥を持っているジョン太が店ナンバーワンになれるくらいだし、他にも2メートルの巨漢キックボクサーだの元ナンパ師だのお笑い芸人風の見た目だの様々なホストがいる。
    源氏名も犬マンとかDJ本気(マジ)とか山田ハンサムとかふざけた名前がずらりと並ぶ。
    だが晶も塩谷も、表向きオーナーで教育係の憂夜も彼らのことを否定しない。

    憂夜に至っては全くの謎の人物(塩谷は知っているらしい)がなぜか晶は素性や過去について突っ込むことが出来ず、それはそれで受け入れている。
    晶や塩谷はindigoの繁盛により十分すぎる収入を得ているにも関わらず、表稼業である出版業だったりライターとしての仕事は辞められない。

    一方で歌舞伎町のトップホスト・空也のような王道ホストや50過ぎた男で柔道技が得意ななぎさママのようないかにもな人たちもいる。

    人間の数だけ様々な考え方や価値観、生き方があって、それを否定されることなく堂々と生きている姿が描かれている。
    だがそれは別の誰かを否定したり傷つけたりしないということが大前提であって、それが起きた時は晶は容赦しない。でも助けを求められれば『話を聞いてやってもいい』と言いつつ必死で奔走する。
    日頃上から目線でガラの悪い塩谷ですらそうなのだ。

    小5の生意気でおませすぎる女の子も裏を返せば必死に闘っていたし、ホスト達も出版業界の人たちもそうだった。懸命に頑張っている人たちを応援するのがホスト探偵団という位置づけだろうか。

  • 各話ハラハラする練られたストーリーで、没入感が凄い。気がついたら最後のページという感じ。個人的に大満足な作品でした!

  • 4つの短編からなる渋谷青春ストーリー。
    世界観としては石田衣良さんのIWGPシリーズに似ています。
    夜の渋谷事情。
    4つのストーリーは全てお金がらみの事件。
    金が絡むと人間ダメになる。
    うまい話なんてこの世にないんですよね...
    ライトで読みやすかったです。

  • ミステリーとしてはシンプルなプロットで、あっさり読み終えた。

  • とあるホストクラブを舞台にした事件もの。
    文体もすっきりしており、話に飽きがこない。
    今現在、底抜けに暗い気分なので正しいレビューではないかもしれないが

  • 読み終わった率直な感想は、「まあまあかなぁ」だったんだけど、巻末の荻原さんの書評を読むと「あ、やっぱりこの小説好きだったかも」と思ってしまった。単純ですみません。私が読み流していた魅力に気づかせてくれたというか。他の作品も読んでみようと思います

  • 舞台がホストクラブっていうのは新しく、出てくるキャラが個性的でおもしろい。
    でも商売柄どうしても夜の街関連の出来事が多くて、ナンパ、風俗、お酒、暴力・・・みたいなのが苦手な私にはちょっと辛いものがあり、後半ななめ読み。
    (区長の娘の話にはげんなり)
    ミステリーといえども本格的なものではないので、お気楽な感じで読める。
    昼ドラになったようで、うなづける。

  • 憂夜さんがとにかく格好良かった。

  • 昼ドラから入ったので、キャラの皆さんがドラマのイメージでした。事件を解決していくのが気持ちが良かったけど、仲間が訳あって事件起こしたのは読んでて切なかったです。

  • club indigoで一晩すごせば、世の中の大抵の厄介ごとは何とかなる。(p.287)/クラブ風ホストクラブ「club indigo」オーナー兼フリーライターの晶、もう一人のオーナーで編集者の塩谷、頼りになるマネージャーの憂夜らを中心に、チャラいけどけっこう単純でいいヤツ揃いのホストたちが事件解決に乗り出す大人の「少年探偵団」/ミステリ成分は薄め/渋谷の暗黒面が表出しているような事件ばかりやけど、部活のようなワイガヤ感がおもろい/イラストかっこいい。

    /上客の古川まどかが殺された、第一発見者はインディゴのホスト。どうやら編集者である被害者は以前から脅迫されていたらしい。
    /ジョン太の恩人の娘、十一歳でビビッドなファッションの少女祐梨亜(ゆりあ)を預かってくれと頼まれた晶。たまたま出会った空也に憧れた祐梨亜が会いに行って行方不明になった。
    /ナンパ師が撮った女子高生の写真を巡って渋谷じゅうで追っかけっこが展開される。
    /インディゴから正統派ホストクラブ「クロノス」に移籍したBINGOが殺されその上客だった女たち三人も行方不明。「クロノス」の背後には怖い組織がいるようだが。

    ■club indigoについての簡単なメモ

    【晶】高原晶。語り手の主人公。ゴーストライター業。「club indigo」のオーナーの一人。盛況なのでかなり儲かっているがライターの仕事を辞める気はないし生活はけっこう質素。《本当に欲しいもの買って気に入った場所に住むと、なぜか全部安物なのよね。》p.48
    【浅見】翠林出版編集者。「ニコニコ元気ブックス」シリーズの仕事を晶に持ってきてくれる。
    【アレックス】古株ホスト。日米ハーフでインターナショナル・スクール出身。キックボクシングのプロライセンスを持っている巨漢で身長二メートル。
    【犬マン】ホスト。物真似が上手い。店に入る前はナンパの名手として有名だったらしい。本名は大(まさる)。
    【NP】ナンパのこと。
    【空也/くうや】歌舞伎町で最大手の、三百名ものホストを抱える王道系ホストクラブ「エルドラド」ナンバーワンホスト、ということは日本のホストのナンバーワン、帝王と言える。
    【クラナン】クラブでナンパ。
    【club indigo】渋谷東口エリアにあるホストクラブ。高原晶の「クラブみたいなハコで、DJやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに」という発言を塩谷が段取りし共同出資して開店、けっこう流行っている。高原と塩谷がオーナーで憂夜がマネージャーをつとめ、普段は憂夜が仕切っている。王道系ホストクラブがバリバリの体育会系だとしたらこちらはゆるゆるの同好会系。
    【コナン】ホスト。若手では人気ナンバーワン。
    【権藤クジラ】ホスト。
    【サム平】ホスト。
    【塩谷馨/しおや・かおる】「club indigo」のオーナーの一人。大きな出版社のパソコン雑誌の編集者。
    【出版関係者】出版関係者の多い喫茶店の条件は、場所がわかりやすい、テーブルが広い、長居ができる、煙草吸い放題。
    【ジュン】ホスト?
    【ジョン太】ホスト。巨大アフロ。客の名前と顔を覚えられない。
    【ストナン】路上ナンパ。
    【前立腺の病気がわかる本】晶が文章を書いた本。翠林出版刊行。
    【即撃ち】ナンパしたその日にセックスまでもっていくこと。
    【高原晶/たかはら・あきら】→晶
    【TKO/タケオ】ナンバーワンホスト。ソフトモヒカン。なんてことはない容姿だが「あるある話」が得意。本名は小野武雄。
    【天使のごほうび】club indigoの上客、編集者の古川まどかとライターの池下若菜がつくった本でベストセラーとなった。「ハーブティーの中に落とした角砂糖からたち上る世界一小さな陽炎」だとか「自分のしっぽとワルツを踊る子犬」だとかの陳腐なシーンが写真とポエティックな文で構成された「究極の癒やし本」。
    【DJ本気/マジ】ホスト。DJの経験はない。 
    【テツ】新人ホスト。真面目で一本気。なんでホストになろうと思ったのかわからない。本名は柳井哲(やない・さとし)。
    【なぎさ】中華ダイニングバーのママ(男性)。作中では晶の相棒として活躍する機会多し。
    【ナンパ師】ナンパを専門にやってる連中。特に職業ではない。
    【ハンサム】新人ホスト。
    【坂東イルカ】ホスト。
    【BINGO/ビンゴ】インディゴの元ホスト。頭角を現してきた頃になって辞めた。
    【豆柴】生活安全課の小柄な刑事。本名は柴田克一。風俗業関係者の中では有名。
    【モイチ】新人ホスト。元ナンパ師。
    【憂夜】「club indigo」のマネージャー。足音を立てずに歩く。本名や経歴等は謎だが、警察にも顔がきき、日本のホストのナンバーワンと言える空也も頭が上がらない人物。
    【四十三万円】なぎさママが最近飼いはじめた子犬。購入価格四十三万円だったのでホストの皆からは「四十三万円」と呼ばれているがなぎさママのつけた名前は「まりん」。晶に敵意を見せる。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。2003年「インディゴの夜」で第10回創元推理短編賞を受賞しデビュー。同作は書籍化され大人気シリーズとなり、ドラマ化、舞台化、コミック化された。他著に「モップガール」シリーズ、「アー・ユー・テディ?」シリーズ、『チャンネルファンタズモ』『ご依頼は真昼のバーへBarホロウの事件帳』『風が吹けば』『桜田門のさくらちゃん』『学スクール園王キングダム国』『ゴールデンコンビ 婚活刑事& シンママ警察通訳人』「メゾン・ド・ポリス」シリーズ、『警視庁レッドリスト』などがある。

「2023年 『警視庁アウトサイダー The second act 3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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