ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M つ 4-1)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 625
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488469016

作品紹介・あらすじ

私立ルピナス学園高等部に通う吾魚彩子は、あるときうっかり密室の謎を解いたばかりに、刑事の姉から殺人事件の推理を強要される。なぜ殺人者は犯行後冷えたピザを食べたのか?その後も飄々たる博識の少年・祀島らと、青薔薇のある雪の館の密室殺人、死んだ大女優の右手消失事件に遭遇する。不合理な謎が論理的解明を経て、鮮烈な幕切れをもたらす本格ミステリ三編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • ――そういう事件だ。私こと吾魚彩子がまだ私立ルピナス学園の生徒だった、二十世紀の黄昏の、ある晩秋の夜の。

    以前からずっと読みたいと思っていた、津原泰水さんの本をやっと読むことができた。
    身内が刑事だからか、何故か事件を解決しなければいけない状況に陥る一女学生。その友達二人。そして、大好きな祀島くん。背景や内容も面白いし、キャラクターがとても愛着を持てる嫌みのないキャラばかり。ここ数ヶ月で、この作家に出会えて良かったと一番感じた作品だった。特に文章の流れがとても好みだ。これから津原さんの作品を色々読んでいくという楽しみができた。

  • 高校生が探偵役のミステリ。
    2編は、ライトノベルとして1994年から95年にかけて発表されたもの。
    全面改稿されたということですが、キャラ設定はそれらしい感じですね。

    吾魚彩子(あうおさいこ)はルピナス学園の生徒で、かなり普通の女の子だが、やや直観力に優れている。
    姉の不二子が刑事で、彩子はたまたま密室殺人の謎を解いてしまったことがあるため、強引な性格の不二子に何かと協力させられるようになっていた。
    博学な祀島龍彦にあこがれて告白するが、姉のせいで誤解されてしまう‥?
    この祀島、化石マニアで何事につけても知識は豊富だが、乙女心にはまったく疎いのでした。

    彩子の親友はボーイッシュで度胸がある桐江泉と、美少女というほかにはさして取り柄がない(と人物紹介に書いてある)京野摩耶。
    刑事の不二子と、その上司(だが年下)も含め、それぞれの得意を生かして謎に挑む展開。

    「冷えたピザはいかが」はキャラのにぎやかなお目見えと、ピザをめぐる謎ときが面白かったです。
    「ようこそ雪の館へ」は、雪の日に道に迷って、カリスマ的な美人作詞家が住む館に泊まることになった一行が事件に巻き込まれる。
    館もの、とでもいいましょうか。
    ムードのある場所での不思議な事件は、高校生向きというわけでもないけれど、作者の資質を感じさせる雰囲気がありました。

    「大女優の右手」は、「瑠璃玉の耳輪」を上演中の舞台で、主演女優が死亡、死体が行方不明に?
    手套の麗人と異名をとった往年の名女優、尾崎緑が書いた幻のシナリオなど、時代がかった雰囲気が濃厚でした。
    津原泰水が小説として完成した「瑠璃玉の耳輪」を前に読んでいるので、面白く読めました。

    吾魚って変わった苗字だけど、亜愛一郎が好きなのかな?
    謎解きの基本的な面白さがしっかりありますが~解説にあるように、魔法の杖をもつ魔法使いというタイプの作家さんという気がします。

  • 冴えた推理というよりも、登場人物達のやりとりから真相が解明される。キャラクターと時代感が醸し出すゆるい雰囲気がくせになるかも。

  •  全体的になんだか懐かしい空気で読んでいた。解説を読んで、なるほど中学の時に夢中だったコバルト文庫的だったんだ!
     登場人物がとにかくいい。主役集団だけでなく、出てくる人々が楽しい。
    とぼけた雰囲気の会話も楽しいし。数々の雑学。
    化石探しとかやっちゃうかも。 

    「これまで見えていたものが見えなくなる喪失感と、これまで見えなかったものが見えてくる解放感、この相反する状態が同時に起こる幻惑的瞬間に立ち会う事、それこそ良質な推理小説を読む醍醐味なのだ」(解説より)
    犯人が最初にわかっていてもとても楽しめた。

  • 2022年10月26日追記
    2022年10月2日に作者津原泰水氏が永眠された。享年58歳、若い、まだまだたくさんの作品を生み出せたはずなのに…しかしながら津原氏の作品は、多くの読者の心に留まり続けるのだと思う。合掌。


    ずいぶん前に購入し長い間積ん読状態でした。なかなかよい評判をネット上で得ていたのですが、次作『ルピナス探偵団の憂愁』がなかなか入手できず、その間に著者の別著『妖都』を読み、なんだかな~?という感想と相まって敬遠気味になっておりました。今回やっと読了しました、率直に言ってもっと早く読むべきだった!個人的好みであり素晴らしい作品でした。


    津原泰水氏についても予備知識がほとんどなく、俄然興味を持ち調べたところ…
    1989:少女作家としてデビュー ペンネームは津原やすみ
    1996:「妖都」でホラー作家へ転身、現在のペンネームへ変更
    その後ジャンルにとらわれない作品を上梓…


    そして
    2000「蘆屋家の崩壊」このミス14位
    2011「瑠璃玉の耳輪」このミス17位
    2012「11 eleven」このミス12位
    と、なんとも微妙に惜しい存在のようです。11位以下は見過ごしてることが多いのですが、実力は間違いないようです。


    さらに今作も上梓までの足跡がちょっと風変わりでもあります。1994~1995にかけて少女小説として出版された「うふふルピナス探偵団」(本書では「冷えたピザはいかが」)「ようこそ雪の館へ」を前面改稿し(本書の第1話2話)書き下ろしの第3話「大女優の右手」を加えて一般向け推理小説として出版されたようです。さらに単行本と文庫では出版社が違う、という紆余曲折を経ているとのこと。


    内容ですが、元は女子高であったルピナス学園の高校生(女3男1)が、主人公彩子の姉(刑事)が持ち込む事件をそれぞれの特性を生かし推理解決していくという流れを踏んでいます。それぞれのキャラもよく立っており、ハチャメチャな姉不二子に、毒舌なキリエ、天然お嬢様の摩耶、そして彩子の憧れの祀島くんの織り成す会話も楽しく、青春ラブコメ要素もあります。しかしながら本質は正統派と呼ぶにふさわしいロジックに支えられた本格ミステリでした。


    解説にある通り、本作は全て「なぜ?」の解決に主眼をおいており、その傾向は泡坂妻夫氏、チェスタトンによく似ていると思われます。事象の視点を変えることにより明らかになる真実は「だまし絵」の世界であり、その舞台を軽妙な会話と笑いの中で構築し得る津原氏の力量は素晴らしいものでした。


    次作『ルピナス探偵団の憂愁』をさっそく図書館予約しました、非常に楽しみです。

  • 2作目が読みたくてこの本を読んだ。
    ホワイダニットが散りばめられた上質なミステリーで、会話文が中心だけどそれも面白かった。
    強烈な主人公の姉のキャラにイラつくこともあったけど笑 たまに出てくるには面白くて笑える。
    切ない真実にちょっとしんみりするけど。

  • キャラクターがそれぞれ立っており、
    それぞれ何故?を重視した面白い話でした。

  • ずっと気になっていた今作。
    学園青春もののライトミステリーだと
    思いこんでましたが...かなりの本格派ミステリーでした。
    キャラクターや設定はコミカルな
    学園青春ものの皮を被っています。
    その中身は、注意してしっかり読んでいかないと、
    見失ってしまいそうな、想像力と論理展開による推理。
    ガチのミステリーです。

    女子高生たちが探偵となるには事件が
    大きい不自然さはあるものの、キャラクター描写
    (とくに主人公の姉である刑事。しかもがさつ。)に
    よって助けられて、気にせず没頭出来ますねー。

    今まで未読の作家さんでしたが、
    またこれで遡って読む本が増えそうな予感...。

  • 誰が探偵役なのかイマイチ分からない謎のミステリ。もとティーンズ向けというだけあってキャラクタが立っていて面白かった。   何より好きなのが、この登場人物表。誰だ、これ書いたの。   一話目「冷えたピザはいかが」からWhy?と同時にWho?でもあるのに登場人物紹介で「第一話の犯人」と書いてある。
    そして「謎の老人」のという人物の性格付け?紹介文として「謎の人物」と上下で同じことが書いてある〜。ナンダコレ?

  • 登場人物が大好きになりました!会話が洒落ていて
    面白い。

    3話の前に、尾崎翠の琉璃玉の耳輪を先に読みました。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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