福家警部補の挨拶 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M お 4-2)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488470029

作品紹介・あらすじ

本への愛を貫く私設図書館長、退職後大学講師に転じた科警研の名主任、長年のライバルを葬った女優、良い酒を造り続けるために水火を踏む酒造会社社長-冒頭で犯人側の視点から犯行の首尾を語り、その後捜査担当の福家警部補がいかにして事件の真相を手繰り寄せていくかを描く倒叙形式の本格ミステリ。刑事コロンボ、古畑任三郎の手法で畳みかける、四編収録のシリーズ第一集。

感想・レビュー・書評

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  • 始めに犯人の視点から犯行の経緯が書かれ、その後に事件の真相が明らかにされる。これを倒叙形式のミステリーというそうだ。その代表的作品とされるのが、刑事コロンボ、古畑任三郎。本作の福家警部補も男女の違いはあるが、同じく個性的な刑事である。その福家警部補の活躍4編を収録。ちなみに福家警部補は、年齢は30歳台、童顔、縁無し眼鏡をかけ、身長152cm、徹夜仕事をこなし、酒豪のようである。

  • 鋭利な推理力で犯人に迫る福家警部補の描写がクール! コロンボ、古畑の流れを汲む倒叙ミステリーの秀作。

    倒叙ミステリー独特の面白さがたくさん詰め込まれていて面白いっ
    少しのほころびから導く推理、犯人とのヒリヒリした駆け引き、とどめの論証と根拠。いやーたまりません。

    ただ本書にどこまで求めるかは難しいですね。倒叙ミステリーの骨子はホントに素晴らしいのですが、お話としてはシンプルです。
    殺人事件としての倫理感、人間の業などの描写は少なめです。また主人公のキャラクターづけも良くできていますが、コロンボ、古畑と比較してしまうと、若干人としてのセクシーさが足らないかな。

    とはいえ気軽に読めるミステリーとしては最高なので、ミステリー初心者、ドギツイ社会派ミステリーの次に読む本としてはオススメですね。次作もまだまだあるようなので、読んでみようと思います!

    【作品ごとの一言コメント】
    ■最後の一冊 ★3
    犯人役が怖い! こういう人を怒らせるのが一番怖いと思ってます、わたし。

    ■オッカムの剃刀 ★4
    このまま2時間ドラマでイケそうなストーリーの完成度(実際ドラマ化されてるけど)。狡知な犯罪者と、抜け目のない主人公の追っかけっこが見どころ。

    ■愛情のシナリオ ★5
    大好きな作品、人間身あふれた登場人物たちが完璧。
    女優の執念と優しさが垣間見れる名作!

    ■月の雫 ★3
    推理パートのプロットが見事。鮮やかな論証がされて気持ちいい!

  • 倒叙ミステリ。古畑任三郎に1番近いかも。
    警察に見えない小柄な福家警部補が鋭い観察力と記憶力で事件を解決する短編集。犯人はわかっているのでどうしてもそっちに感情移入してしまい、徐々に追い詰められていく感じが良い。

  • >NHK版もフジテレビ版も、福家が柳田をいつ怪しいと思ったかという部分をなぜ省略してしまうのか。倒叙ミステリ史に残る抜群のアイディアなのに。(大意)

    現在、フジテレビにて連続ドラマとして放映中の『福家警部補の挨拶』
    その「オッカムの剃刀」のエピソード放映時、ミステリ評論家の千街晶之さんがTwitterでこのようなつぶやきをなさっていた。無性に気になり原作本を購入。
    うん、確かに凄い。そして、これがあるからこそのラストの切れ味。タイトルも効いてくる。

    物語の最初に犯人が明らかにされ、それを探偵がどのように追いつめていくのかという倒叙ミステリというジャンル。なのでドラマを観てネタがわかっていても面白かった。

    ドラマも面白いが、映像化に際して省略されていたり改変されている部分が結構ある。
    原作の方ではかなり緻密に伏線がばらまかれており、福家も地道な聞き込みでそれを丁寧に回収していく。
    また福家の一人称ではなく、犯人を含む聞き込み対象者複数の視点から事件が描かれているので、なぜこのような発言や行動をしたのか、なぜミスを犯したり思わずボロを出してしまったのか等の心理が腑に落ちる。

    四篇収録。

    『最後の一冊』
    私設図書館長の犯罪。ドラマ未放映。

    『オッカムの剃刀』
    復顔術の権威、柳田「教授」の犯罪。
    ドラマ版とはキーアイテムが微妙に違い、それをなぜ見落としたのかも納得。小さな点だがうまい。
    そして冒頭でも書いた「柳田を怪しんだ理由」
    倒叙ミステリで......いやあまり語り過ぎるのもなんですね。

    『愛情のシナリオ』
    女優の犯罪。
    犯人と被害者の「女優としてのキャラ被り」の描写がうまい。
    ドラマ版ではセリフで説明させていたが、原作ではミステリの伏線のようにさりげなく仕込まれていて面白い。
    そしてなによりドラマ版と犯行のトリックが違う。
    ドラマ版も密室物として良かったが、原作はさまざまな伏線と連動していてこちらも良かった。
    動機の解明も自然で好き。
    伏線伏線と連呼してしまったが、犯行部分だけではない緻密な構成がよくできていて一番楽しんだ。

    『月の雫』
    酒造会社社長の犯罪。
    原作では社長は男。
    とある描写はページを遡って二度読み、三度読み。
    いろいろうまいなぁと思いつつ、いつの間にか犯人の気持ちになってドキドキ。

    犯罪とは別の部分で、福家の行動によって周囲の人間の心に変化が生じたりもする。
    客観的視点で描かれる主人公で謎も多いが、つかみ所はないながらも、ぽっと灯が点るような温かさも感じられる。

  • この小説は、いわゆる倒叙ミステリーと言われる、先に犯人が分かっている状態で読み進めるタイプのものです。
    探偵役は福家警部補という小柄な女性の刑事さん。
    短編集なのですが、最初はどんな感じで追い詰めていくのかなーとワクワクしながら読みました。
    犯人に同情して「逃げ切ってくれ」とか思うのかなーとか……

    でも、特にそんなこと思うこともなく、全ての犯人に対して、ひたすら早く捕まってくれと願ってしまった私は冷たい人間なのかしら……
    福家警部補も淡々と証拠を集めて追い詰めていくので、こちらも感情的にならず読めました。

    あと、この手のミステリーは、主人公や犯人によほどの魅力がないと途端につまらなくなるだろうなぁと。

  • 初の大倉 崇裕作品。刑事コロンボや古畑 任三郎のような、倒叙形式の四編を収録したミステリーのシリーズ第1巻。情景描写よりも会話を中心に展開されているため、とても読み易く本格ミステリーというよりは、ライトノベルスに近いミステリーでした❗

    犯人達が少しずつ福家警部補に追い詰められていく様子は、丸で読んでいる自分も一緒に追い込まれているようで、とてもドキドキします❗中でも、『オッカムの剃刀』が非常に気にいっています♫第2巻も勿論読みます。

  • '21年10月11日、読了。KindleUnlimitedで。大倉崇裕さんの小説、初、というか…

    数年前に、「最後の一冊」と「オッカムの剃刀」を読んで、中断していたのを、今回改めて読み直しました。「愛情のシナリオ」と「月の雫」は、初。

    倒叙ミステリーは大好きです(あまり数は読めてませんが)。石持浅海さんの「碓氷優佳」シリーズか、特に好きですが…そこまでのインパクトは無いかな。でも、なかなか面白かったです。

    この「福家警部補」は、全四編、どれも犯人に同情的に読めてしまって、なんだか福家警部補が悪役のような気がしてしまいました(特に、最後の「月の雫」が)。でも、倒叙物って、どれもそんな感じかな?「碓井優佳」シリーズは、ちょっと違ったような…。

    「碓氷優佳」は、あまりに鋭すぎて怖いけど、「福家警部補」は、なんかこう、ねちっこいというか…TVシリーズの「刑事コロンボ」的な印象でした。「コロンボ」は、大体ラストが優しく終わるイメージがあって…凄く好きでしたが、福家さんは…ウ~ン…。

    シリーズ、次の作品も、読んでみたいと思います。



  • 両親の影響で『コロンボ』や『古畑任三郎』など見たことがあるので、この形式には馴染みがあります。
    個人的には「月の雫」が好きです。

  • 星3.5

    古畑任三郎のような感じ。
    あとがきを見たら、コロンボかぁー

    両者ともドラマで
    キャラが立っていたのですが、
    福家さんは、もうひとつかな。

    シリーズ化されているようなので、
    次を期待して星印は4つにしました。

  • 小柄でショートヘア、縁なし眼鏡、三十路は過ぎているのに幼く見える。
    警察官に見えないと言われがちな、福家警部補が犯人を追い詰める。
    最初に殺人の場面を先に描いて見せる『倒叙ミステリー』
    犯人は綿密な計画を立てている事が多く、それをわずかな違和感から、一つずつ崩していくのが特徴。
    刑事コロンボ形式だけど、コロンボほどしつこい刑事、また来たこいつ!感がないのは、福家警部補の、押しの強さを感じさせないルックスのお陰か。

    『最後の一冊』
    罪を犯してでも守りたいものがあった、図書館長。
    貴重な本を残したいという願いは崇高だと思うけれど、個人の図書館って、運営して行けるのだろうか・・・

    『オッカムの剃刀』
    科警研で数々の功績をあげた経験を持つ柳田は、復顔術の専門家だった。
    いちばん手の込んだ殺人で、頭が切れるし専門知識はあるしで手強い相手。
    ただ、4編のうちこの犯人だけは「守りたいもの」が利己的である

    『愛憎のシナリオ』
    ライバル、と見られる世間に応えて、そういう関係を維持してきた女優同士ふたり。
    隠された動機は・・・

    『月の雫』
    経営方針の違う二つの酒造会社の社長。
    大量生産か、品質か。
    容疑者がいい人でいい仕事をしていたのが切ない。
    このケースは殺人以外の解決方法があったのではないかと思うけれど・・・
    追い詰められていたのだろうなあ。

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著者プロフィール

大倉崇裕(おおくら たかひろ)
1968年京都府生まれ。学習院大学法学部卒業。97年、「三人目の幽霊」で第四回創元推理短編賞佳作を受賞。98年、「ツール&ストール」で第二十回小説推理新人賞を受賞。2001年、『三人目の幽霊』でデビュー。代表作である白戸修シリーズ、福家警部補シリーズ、警視庁いきもの係シリーズは、いずれのシリーズもTVドラマ化されている。

「2022年 『殲滅特区の静寂 警察庁怪獣捜査官』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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